飛竜に乗ったルシェンダ・プパンと、天馬に乗ったアンルシア・セラフィは、ほぼ同時にチューザー地下空洞の北方1kmの位置に集結した。空洞の前には、ドワーフ警備兵が配置されているようだが、ごく少数だ。
上空から注意深く進んできたが、大軍がこちらへ向かっている様子はない。メギストリス軍とドルワーム軍は、キラキラ大風車塔の正面で向き合っているようだ。ドルワーム軍の本隊が到着するまで、膠着状態が続くだろう。こちらに大部隊が向けられることは、少なくとも一両日はない。
「…ラミザめ、本当に小部隊でここに突っ込んだと見える。やはり完全に隠密に事を運ぶつもりだな」ルシェンダがつぶやく。
「軍の侵攻がブラフに過ぎない証拠ですね。それにしても、これだけの犠牲を出してまで【メガボックス】を狙いに来るとは」アンルシアが答える。
その時、後方から砂煙を上げ、100名程度の小部隊が駆け寄ってくるのが見えた。かなり不意を突かれ、アンルシア達はとっさに身構えた。
部隊の先頭には姿の大きく異なる3名が立っていた。ウェディ・プクリポ・そして大柄の猫族だ。プクリポが真っ先に呼びかけた。
「ルシェンダ様!ラグアスです!」
ルシェンダは流石にビックリした様子で、ラグアスに答えた。
「ラグアス王、なぜここに?それに、この部隊は一体…」
「ヴェリナードのヒューザ、それにキャット・リベリオです」
ヒューザが一歩進み出た。「俺が話すよ、ラグアス王」
ヒューザはことのあらましを語った。
元々はリベリオからの情報で、ラミザの狙いがチューザー地下空洞にあると知ったこと、動く意思を見せないヴェリナード魔法戦士団に業を煮やして、先回りしようと独断で出航したこと。メギストリス領に上陸直後、オルフェアの最前線に向かおうとしているラグアス王と遭遇したこと。ラグアスもラミザに会いに行こうとしていることを知り、小部隊のみを引き連れてこちらに急遽向かったこと…
「ヴェリナードから同行した本隊には、風車塔方面への援軍に向かってもらったニャ」リベリオが補足する。
「それに、ガートランド軍が上陸したのも確認したニャ。4,000の大軍ニャ。これでドルワーム機甲旅団が全軍上陸しても、そう簡単にはやられないニャ」
「そうか、なるほど」ルシェンダが唸るように答えた。
「しかし、我々も最近になって知ったラミザの真の目的地を、貴公らがいち早くつかんでいたとは、驚きだな。キャット・リベリオよ」
「だーかーらー、キャットバット情報網をなめるなと言ってるニャ!!」
リベリオは3倍マシで胸を張った。アンルシアが思わず吹き出す。
「で、どうするんだ?ラミザの野郎はもうこの地下空洞に入ったんだろう。一刻の猶予もないんじゃないのか?」ヒューザが促した。
「もちろんだ。思った以上に防護が手薄なので、トラップを警戒していたのだが、これは突っ込むほかになさそうだな」ルシェンダが応ずる。
セラフィは集まったメンツを改めて眺めた。大賢者ルシェンダ、勇者姫アンルシア、勇者の盟友プパン、メギストリス王ラグアス、ヴェリナードのヒューザ、猫族キャット・リベリオ。そしてアラハギーロ王国の元スライムである、セラフィ自身。
「役者が揃った、と言うことでいいですか?」セラフィは尋ねた。
アンルシアが力強くうなずき、一行は一斉に動き出した。