チューザー地下空洞のさらに奥に拡がる、旧プーポッパン王朝の地下遺跡は実に広大だった。目的の【メガボックス】の正確な位置にたどり着くのに、優に3日を要した。
ヒストリカら3名の前に現れた【メガボックス】は、人間の身長ほどの高さを持つ白い円筒だった。正直、直径数十メートルの球体を想定していたヒストリカは、拍子抜けらしかった。しかし、調査を始めるとヒストリカは即座に、異常に没頭した。
「…なるほど、確かにこの位置から各国のエネルギーボックスにエネルギーが流れ出しているな!全ての計算がぴったり合う!!」
「でも量子的に拡散されているので、エネルギー供給源は全く特定出来ないぞ!これは、これはどういう仕組みなんだ!?」
「…旧王朝はこいつを開発した時点で、場所を完璧に秘匿するつもりだったんだな!何という超古代文明!素晴らしい、ワンダフル、エクセレント!!!」
コマネズミのように動き回るヒストリカを、プパンは呆れた顔つきで見ていた。クロニコは彼を促し、【メガボックス】設置ルームから一旦外に出た。
2時間後、部屋から出てきたヒストリカを見てクロニコとプパンは驚愕した。先ほどの勢いはどこへやら、真っ白な顔で憔悴しきっていたからだ。
「どうしたんです?」
「…解らない、全く解らない…」
ぶつぶつとつぶやいた後、ヒストリカは堰を切ったように話し始めた。
「エネルギーを全く生み出していない」
「え?」
「エネルギーは確かに放出されている。全大陸のエネルギー量を凌駕する勢いだ。だが、ボックス自体は何らエネルギーを生み出さず、外からエネルギーが入ってきている。その入り口が見つからない。こいつは、単なる通過ボックスなんだ」
「…通過って、どこから?」クロニコが尋ねる。
「偽グランゼドーラのある並行世界が発信源と考えていた、最初は。だがここに流入しているエネルギーの量子波動形は、偽グランゼドーラのものとは全く違うのだ。より強い。遙かに強烈だ。おそらくマデサゴーラは、ここからエネルギーをかすめ取っていただけだ!」
クロニコとプパンは、黙ってヒストリカの顔を見つめる。
「考えられる結論はただ一つ。この世界でも、偽グランゼドーラの世界でもない、第3の並行世界が存在する。アストルティア・レンダーシアのマナエネルギーは、殆どがそこから来ていると言うことだ。それがどこか、なぜそこからエネルギーが来ているのか突き止めない限り、問題は何も解決しない!!」
プパンは思い出した。マデサゴーラとの死闘、勝利の瞬間を。あのとき【奈落の門】から這い出してきた無数の“悪しき竜の怨念”。竜へと姿を変え、その怨念達を一瞬のうちに炎でなぎ払ったクロウズ。そして、例によって何の説明もせずに【奈落の門】の先へと消えたクロウズ…
【奈落の門】の先は、マデサゴーラが作り出した世界だと思っていた。そうではなく、全く別の並行世界なのか?
プパンはヒストリカに、事の次第を語った。
話を聴き終えたヒストリカは、虚空を見つめつぶやいた。
「…バージョン3.0、が始まるのか?」