アストルティア戦記2550   作:しろたく

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最終話です。ビアンは主人公プパンの妹の名前です。
それにしても主人公の妹って、バージョン3以降ご都合主義的に使われすぎですよね…


20.ナドラガンド

 ナドラガンド、炎の領界。

 炎樹の丘のてっぺんに、クロウズは佇んでいた。

 

 「…私の目的が達成されるには、まだ時間が必要そうですね…」

 隣に同様に、ファルシオンが佇んでいた。彼は馬の姿を取っている。

 「全く、あなたはそうやっていつもはぐらかすようなことばかり言う。肝心なことを隠す。そんなんじゃ、いずれ勇者にもその盟友にも見放されますよ」

 「う」

 クロウズはファルシオンに向き直った。

 「…マデサゴーラ危機が落ち着いたらすぐにでも、プパン達をナドラガンドに迎えたかったのですよ。こんな内戦なんかが起こらなければ」

 「予測は出来なかったと?」

 「シンイから授かった能力には限界があるのです。全てを見通せるわけではありません」

 ファルシオンは頷き、座り直した。クロウズは語りを続けた。

 「まあ、アストルティアのエネルギー問題を一時的にでも棚上げ出来て良かった。

 あのヒストリカとか言う女性学者は気づいたかもしれませんが、結局かの地のエネルギー枯渇は、ここナドラガンドからアストルティアへのエネルギー供給量が、一時的に大きく減少したためですからね。

 まさかこれが内戦のきっかけになるとは、私もうかつでした。マデサゴーラやイッドのせいではなく、我々やこの世界のゴタゴタがCWの引き金であることをアンルシアやプパンが知ったら、私はつるし上げられるでしょう。

 退治されてしまうかもしれない」

 クロウズは我知らず苦笑し、一息ついた。

 

 「そろそろ領界の結界が解けます。こちらのエネルギー消費も、いったんは落ち着きました。ナドラガンドの存在をリリースして良い時期でしょう」

 「ビアンはなんと言ってますか?勇者の盟友と離れてから、久しいはずですが」

 「全くコンタクトが取れません。彼女は独自に動きたいようです。弟のことは、もちろん一番に気にかけています。生き返しとしては、彼女も大きな力を持つようになってきましたからね。無視出来ません」

 

 クロウズは炎樹の丘の向こうを見渡した。遙か先に【奈落の門】がうっすらと見える。いずれ結界は解け、同時に魔炎鳥が復活する。間違いなく。もう余り時間はない。

 「…やはり、迎えに行くことにしましょう」クロウズは立ち上がった。

 「我々が招待すべき者達が、一堂に会する催しがあります。場所はグランドタイタス号です。海洋上だから行動を起こしやすい。あなたも、一緒に来て下さい」

 クロウズは後ろも見ずに歩き始めた。

 ファルシオンは軽くため息をつき、瞬く間に金髪の美青年の姿を取った。そのままクロウズの後を追って、彼もナドラガンドを後にした。

 


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