ピースシーカー   作:イベリ

10 / 28
第9話:やるせねぇ

シーカーと対峙したアーロンは、目の前の人間がどれ程に脅威であるかを本能で理解した。

 

ここで何とか殺さねば、自分たちに明日はない。壊れたキリバチを投げ捨て、男を見た。

 

「次はテメェが相手か、あのガキを───」

 

「ルフィ、よく見ておけ。今から、お前にある事を教える、聞き逃すな。」

 

「んん、わかった!」

 

その場に槍を突き刺したシーカーは、アーロンの言葉を無視して目の前に立ち、そのまま背を向けた。

 

「──────っ!?」

 

「お前に教えるのは、お前が感じるようになった…覇気という力についてだ。」

 

「ハキ…?」

 

「てめぇ…なんのつもりだ…!?」

 

「そう、覇気だ。感情の力、そう言い替えてもいいだろう。」

 

またもアーロンを無視してルフィに講義を始めるシーカーに、アーロンは我慢ならなかった。

 

魚人海賊団であるアーロンがこれほどの屈辱を味わったことはないだろう。

 

膂力に任せた拳を振り上げ、思い切りシーカーの頭に振り下ろそうとした時

 

「あっ!?シーカー!あぶねぇ!!」

 

「覇気には、基本2つの種類がある。そしてこの力は、強弱はあれど生きている人間すべてが備えている。まずは───頭部への振り下ろしの後に、下段の蹴り。」

 

「っなに!?」

 

ルフィに三つ指を立てながら説明するシーカーは、首を傾けるだけで攻撃を躱し、続けざまに繰り出される下段蹴りを飛んで躱した。その間も、アーロンに目を向けることは一切なく、何のこともないように躱し続ける。

 

「これは、見聞色の覇気。探知だったり、攻撃の予測ができるって考えてもらっていい。今日、お前の勘がやけに当たったのは、これが覚醒したってわけだ。」

 

「っの野郎…!!」

 

「す、すげぇ…全部何も見ないで躱してる!」

 

怒り狂ったアーロンが潰すように拳をに振り下ろせば、一歩前進してその攻撃を躱す。行き場のなくなった拳は地面に激突し、大きく罅を入れた。

 

「す、すごいパンチ……あんなの食らったら死んじゃう……!?」

 

「そして、誰もが備えているもう一つが───」

 

「カアァァッ!!!」

 

その瞬間、先まで攻撃を躱していたシーカーがアーロンの攻撃をまともに受けた。骨が折れるバキバキっという音を響かせながら、拳が当たった。

 

あれだけの攻撃を諸に喰らっては、シーカーもただでは済まないだろう。

 

「シーカー!?」

 

「──────ぐぅおぁぁぁぁぁっっ!?」

 

「えぇっ!?なんでアイツが痛がってんだ!?」

 

しかし、拳を押え悶絶したのはアーロンだった。

 

「それが、この武装色。見えない鎧を纏っているみたいな感じだ。防御、攻撃両方に使える。応用技だが、こんなことも出来る。」

 

シーカーがアーロンの胸に手を翳すようにすると、いきなりアーロンが吹き飛んだ。

 

「がァっ!?な、何がっ…!?」

 

「す、すげぇ…触れてねぇのに…吹き飛んだ…!!」

 

「本来3種類あるんだが…俺は3つ目は使えねぇからな。まずは見聞色だ!持論だが、見聞色を鍛えれば、自分の中にある他の色を感じやすくなって、修得速度が上がる。ま、向き不向きはあるがな。」

 

さて、授業は終了。そう切ったシーカーは、ゆっくりとアーロンに向かった。

 

悠然と歩くシーカーを見ながら、苦悶の表情を浮かべて立ち上がったアーロンは、既に肩で息をしていた。

 

内蔵を掻き混ぜるような先の衝撃波。魚人でなければ良くて気絶か、死んでいただろう。既にチュウはさっきの衝撃波でやられた。

 

「…タイヨウの海賊団……フィッシャータイガーの一味。こんな出会い方じゃなけりゃ…俺は、どうしてたんだろうな。」

 

「…はぁ…はぁ……てめぇ…!」

 

「なぁ、お前……なんでこんなことしてんだ?お前の乗ってた船の後任……海侠のジンベエは七武海になったはずだが?」

 

わかっている。けれど、人間として、聞かなければならないと思った。

 

「…ッ…テメェらが!!タイの兄貴にした事を、そのまましているだけだ!!」

 

それは、魚人族の怒り。心からのその怒りは、シーカーの強すぎる見聞色に呼応し、鮮明な過去を見せる程強烈だった。

 

 

───そんな血で……生き長らえたくねぇ!!

 

 

「何故だ…!何故俺たち魚人だけが迫害される!?」

 

 

───俺はもうっ!!人間を愛せねぇ!!

 

 

アーロンの記憶。フィッシャータイガーの最後を見たシーカーは、そのままギッと下唇を噛み、俯いた。

 

「……奴隷解放の英雄は……そうして逝っちまったのか。」

 

「お前たちが…同胞にそうしたように!!俺達もテメェらを所有物(・・・)にしてやるのさ!!」

 

アーロンの復讐は、筋が通っている。アーロンを責めていい人間など、きっとこの世に居ないだろう。

 

見逃す選択肢もあった。けれど、シーカーはその一言で見逃す選択肢を除外した。

 

「………お前が、海軍や政府の人間を襲っているのなら、俺は見逃すつもりだった。海賊なわけだし、お前の復讐は当然の行為だ。」

 

「………っ…なら何故!!」

 

「だがな、この人達は何の関係もねぇ……むしろお前が憎むクズ共の被害者。」

 

シーカーが海軍を見限った原因。天竜人は、無辜の民にすらも牙を剥く。気の向くままに引き金を引き、簡単に命を奪い。気にいった女がいれば当たり前のように所有物扱いをして、飽きれば捨てる。

 

そんな外道からヒトを救った英雄の意志を、無駄にしたくなかった。

 

「お前は……心から慕っていたヒトの心を無視して、自分で大嫌いな存在と同等の屑に成り下がったんだ!!」

 

「…っ……お前にっ、何がわかる!?虐げられてきた俺たち魚人の怒りが!?」

 

「命は物じゃねぇ……それは魚人だろうが人間だろうが関係ない……お前達は復讐とは言え、それを弄ぼうとした。お前はそうして、また憎しみを生み出し──────恩人の尊厳まで踏み躙った!!」

 

だから、ここでアーロンを確実に止める。

 

初めて構えたシーカーは、ある限りの力を込め、アーロンの腹に拳を突き刺した。

 

「───────っ…!!」

 

崩れ落ちるアーロンは、最後に兄と慕った男の最後を回想した。

 

────だから頼む!!お前らは島に何も伝えるな…!!おれ達に起きた『悲劇』を、人間達への『怒り』を!!

 

彼は、怒りをもって人間と接しろとは言わなかった。けれど、そんなの無理だ、アーロンには無理な話だったんだ。

 

誰よりも彼を敬愛し、虐げられる同胞に心を痛めたアーロンには、どうやっても無理な話だった。

 

続けざまに繰り出された拳が顔面に突き刺さり、地面に叩きつけられ、ようやくアーロンは意識を落とした。

 

「全員、降伏しろ。まだやりたいってなら、相手になるが……加減は出来ねぇぞ。」

 

ギッと睨んだシーカーの言葉に、魚人たちは次々と降伏し、すぐに縛りあげて1箇所に纏められた。

 

「ニュ…!あ、アーロンさん………ッ!!」

 

1人、タコの魚人が逃げたが、あの魚人は他に比べそれ程過激な思想をしていない事は、見聞色で読み取れた。

 

仕方ないと無視を決め込んで目を伏せ、作業に取り掛かろうとして、考え込んでしまった。

 

白目を向いて気絶するアーロンを見て、シーカーは拳をグッと握る。

 

自分は、どうするべきだったのだろうかと。

 

そこにパタパタっ、と軽い足音が近づいた。

 

「シーカー、お疲れ様。」

 

「………あぁ、2人はどうだ。」

 

「今は平気、村のお医者さんに見てもらってる。」

 

「そっか」

 

危機が去った村人たちの歓声を聞きながら、シーカーはアーロンを縛り終わり、被害の確認を終えた後、シーカーは1人瓦礫に腰掛け、浮かない表情をしていた。きっと、それに気がつけたのは、マキノだけだろう。

 

「なぁ、俺は────」

 

「ダメ、シーカー。助けたことを、間違いだったなんて思わないで。」

 

「…………」

 

マキノにそう言われても、シーカーの心には依然としてモヤがかかったままだ。けれど、マキノはそんな事も見越して、口を開く。

 

「例えどんな背景があったとしても、暴力から誰かを救う事が間違った事なわけ無いもの。だから、大丈夫……貴方は、間違ってない。」

 

そう最愛の人に断言されては、シーカーも苦笑するしか無かった。

 

「……ほんと、いい女だよ……お前は。」

 

「あら、惚れ直した?」

 

「ばーか、これ以上無いくらいに惚れてるよ。」

 

少し見つめあった2人は、軽く口付けをして、幼い頃のようにわらいあって、気恥しさを誤魔化した。




タバコ吸ってるキャラってすごく助かるんですよね。タバコ吸って黙ってるだけで意味深に表現できるので。

シーカー君タバコも帽子も被ってないから、深く考えてる時どうすりゃいいか悩んでしまう。

2人目のヒロインいる?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。