シーカーと対峙したアーロンは、目の前の人間がどれ程に脅威であるかを本能で理解した。
ここで何とか殺さねば、自分たちに明日はない。壊れたキリバチを投げ捨て、男を見た。
「次はテメェが相手か、あのガキを───」
「ルフィ、よく見ておけ。今から、お前にある事を教える、聞き逃すな。」
「んん、わかった!」
その場に槍を突き刺したシーカーは、アーロンの言葉を無視して目の前に立ち、そのまま背を向けた。
「──────っ!?」
「お前に教えるのは、お前が感じるようになった…覇気という力についてだ。」
「ハキ…?」
「てめぇ…なんのつもりだ…!?」
「そう、覇気だ。感情の力、そう言い替えてもいいだろう。」
またもアーロンを無視してルフィに講義を始めるシーカーに、アーロンは我慢ならなかった。
魚人海賊団であるアーロンがこれほどの屈辱を味わったことはないだろう。
膂力に任せた拳を振り上げ、思い切りシーカーの頭に振り下ろそうとした時
「あっ!?シーカー!あぶねぇ!!」
「覇気には、基本2つの種類がある。そしてこの力は、強弱はあれど生きている人間すべてが備えている。まずは───頭部への振り下ろしの後に、下段の蹴り。」
「っなに!?」
ルフィに三つ指を立てながら説明するシーカーは、首を傾けるだけで攻撃を躱し、続けざまに繰り出される下段蹴りを飛んで躱した。その間も、アーロンに目を向けることは一切なく、何のこともないように躱し続ける。
「これは、見聞色の覇気。探知だったり、攻撃の予測ができるって考えてもらっていい。今日、お前の勘がやけに当たったのは、これが覚醒したってわけだ。」
「っの野郎…!!」
「す、すげぇ…全部何も見ないで躱してる!」
怒り狂ったアーロンが潰すように拳をに振り下ろせば、一歩前進してその攻撃を躱す。行き場のなくなった拳は地面に激突し、大きく罅を入れた。
「す、すごいパンチ……あんなの食らったら死んじゃう……!?」
「そして、誰もが備えているもう一つが───」
「カアァァッ!!!」
その瞬間、先まで攻撃を躱していたシーカーがアーロンの攻撃をまともに受けた。骨が折れるバキバキっという音を響かせながら、拳が当たった。
あれだけの攻撃を諸に喰らっては、シーカーもただでは済まないだろう。
「シーカー!?」
「──────ぐぅおぁぁぁぁぁっっ!?」
「えぇっ!?なんでアイツが痛がってんだ!?」
しかし、拳を押え悶絶したのはアーロンだった。
「それが、この武装色。見えない鎧を纏っているみたいな感じだ。防御、攻撃両方に使える。応用技だが、こんなことも出来る。」
シーカーがアーロンの胸に手を翳すようにすると、いきなりアーロンが吹き飛んだ。
「がァっ!?な、何がっ…!?」
「す、すげぇ…触れてねぇのに…吹き飛んだ…!!」
「本来3種類あるんだが…俺は3つ目は使えねぇからな。まずは見聞色だ!持論だが、見聞色を鍛えれば、自分の中にある他の色を感じやすくなって、修得速度が上がる。ま、向き不向きはあるがな。」
さて、授業は終了。そう切ったシーカーは、ゆっくりとアーロンに向かった。
悠然と歩くシーカーを見ながら、苦悶の表情を浮かべて立ち上がったアーロンは、既に肩で息をしていた。
内蔵を掻き混ぜるような先の衝撃波。魚人でなければ良くて気絶か、死んでいただろう。既にチュウはさっきの衝撃波でやられた。
「…タイヨウの海賊団……フィッシャータイガーの一味。こんな出会い方じゃなけりゃ…俺は、どうしてたんだろうな。」
「…はぁ…はぁ……てめぇ…!」
「なぁ、お前……なんでこんなことしてんだ?お前の乗ってた船の後任……海侠のジンベエは七武海になったはずだが?」
わかっている。けれど、人間として、聞かなければならないと思った。
「…ッ…テメェらが!!タイの兄貴にした事を、そのまましているだけだ!!」
それは、魚人族の怒り。心からのその怒りは、シーカーの強すぎる見聞色に呼応し、鮮明な過去を見せる程強烈だった。
───そんな血で……生き長らえたくねぇ!!
「何故だ…!何故俺たち魚人だけが迫害される!?」
───俺はもうっ!!人間を愛せねぇ!!
アーロンの記憶。フィッシャータイガーの最後を見たシーカーは、そのままギッと下唇を噛み、俯いた。
「……奴隷解放の英雄は……そうして逝っちまったのか。」
「お前たちが…同胞にそうしたように!!俺達もテメェらを
アーロンの復讐は、筋が通っている。アーロンを責めていい人間など、きっとこの世に居ないだろう。
見逃す選択肢もあった。けれど、シーカーはその一言で見逃す選択肢を除外した。
「………お前が、海軍や政府の人間を襲っているのなら、俺は見逃すつもりだった。海賊なわけだし、お前の復讐は当然の行為だ。」
「………っ…なら何故!!」
「だがな、この人達は何の関係もねぇ……むしろお前が憎むクズ共の被害者。」
シーカーが海軍を見限った原因。天竜人は、無辜の民にすらも牙を剥く。気の向くままに引き金を引き、簡単に命を奪い。気にいった女がいれば当たり前のように所有物扱いをして、飽きれば捨てる。
そんな外道からヒトを救った英雄の意志を、無駄にしたくなかった。
「お前は……心から慕っていたヒトの心を無視して、自分で大嫌いな存在と同等の屑に成り下がったんだ!!」
「…っ……お前にっ、何がわかる!?虐げられてきた俺たち魚人の怒りが!?」
「命は物じゃねぇ……それは魚人だろうが人間だろうが関係ない……お前達は復讐とは言え、それを弄ぼうとした。お前はそうして、また憎しみを生み出し──────恩人の尊厳まで踏み躙った!!」
だから、ここでアーロンを確実に止める。
初めて構えたシーカーは、ある限りの力を込め、アーロンの腹に拳を突き刺した。
「───────っ…!!」
崩れ落ちるアーロンは、最後に兄と慕った男の最後を回想した。
────だから頼む!!お前らは島に何も伝えるな…!!おれ達に起きた『悲劇』を、人間達への『怒り』を!!
彼は、怒りをもって人間と接しろとは言わなかった。けれど、そんなの無理だ、アーロンには無理な話だったんだ。
誰よりも彼を敬愛し、虐げられる同胞に心を痛めたアーロンには、どうやっても無理な話だった。
続けざまに繰り出された拳が顔面に突き刺さり、地面に叩きつけられ、ようやくアーロンは意識を落とした。
「全員、降伏しろ。まだやりたいってなら、相手になるが……加減は出来ねぇぞ。」
ギッと睨んだシーカーの言葉に、魚人たちは次々と降伏し、すぐに縛りあげて1箇所に纏められた。
「ニュ…!あ、アーロンさん………ッ!!」
1人、タコの魚人が逃げたが、あの魚人は他に比べそれ程過激な思想をしていない事は、見聞色で読み取れた。
仕方ないと無視を決め込んで目を伏せ、作業に取り掛かろうとして、考え込んでしまった。
白目を向いて気絶するアーロンを見て、シーカーは拳をグッと握る。
自分は、どうするべきだったのだろうかと。
そこにパタパタっ、と軽い足音が近づいた。
「シーカー、お疲れ様。」
「………あぁ、2人はどうだ。」
「今は平気、村のお医者さんに見てもらってる。」
「そっか」
危機が去った村人たちの歓声を聞きながら、シーカーはアーロンを縛り終わり、被害の確認を終えた後、シーカーは1人瓦礫に腰掛け、浮かない表情をしていた。きっと、それに気がつけたのは、マキノだけだろう。
「なぁ、俺は────」
「ダメ、シーカー。助けたことを、間違いだったなんて思わないで。」
「…………」
マキノにそう言われても、シーカーの心には依然としてモヤがかかったままだ。けれど、マキノはそんな事も見越して、口を開く。
「例えどんな背景があったとしても、暴力から誰かを救う事が間違った事なわけ無いもの。だから、大丈夫……貴方は、間違ってない。」
そう最愛の人に断言されては、シーカーも苦笑するしか無かった。
「……ほんと、いい女だよ……お前は。」
「あら、惚れ直した?」
「ばーか、これ以上無いくらいに惚れてるよ。」
少し見つめあった2人は、軽く口付けをして、幼い頃のようにわらいあって、気恥しさを誤魔化した。
タバコ吸ってるキャラってすごく助かるんですよね。タバコ吸って黙ってるだけで意味深に表現できるので。
シーカー君タバコも帽子も被ってないから、深く考えてる時どうすりゃいいか悩んでしまう。
2人目のヒロインいる?
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いる
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いらない