だから今回は許して?2人をイチャイチャさせて?ね?
「……ぅぁっ……朝か…」
目を覚ましたシーカーは、しばらく天井を見ながら、昨日のことを思い返す。
あの日から4日続いた宴のあと、2人はほろ酔い気分のまま同じ布団に。子供たちは一緒に眠っているため、ベルメールが見ているからと、少し羽目を外しすぎた。
グチャっとしているシーツを洗濯して、互いに体を洗って、何事も無かったように……とは行かないだろうが、まぁそこは大人の暗黙の了解と言うやつで見逃してもらおう。
「…………シーカァー…もう……おさけぇ……」
「……夢でも俺といるのか?可愛いヤツめ。」
ペタッと額にくっついている前髪を、そっと手の甲で撫でてやれば、口をモニョモニョと動かし、最後は上機嫌そうに笑顔になる。
そんなマキノは、シーカーの胸に撓垂れ掛かるように眠っている。マキノの首筋に1つ、シーカーも同じ場所に1つ、昨夜の痕跡が見えた。
後で気が付くが、シーカーについた跡は深い歯型。痛くは無いが、良くもこう上手く付けられるものだ。
二人共が服を着ていても露出される部分であり、互いの白い肌でより目立って見えるそれは、お互いの独占欲の印でもあった。
昨日は特に長かったのもあり、いつもは早起きのマキノが、昼前までスヤスヤと眠っているが、数秒後には起きる。
「………ん、ぅ……シーカー…?」
「おはよう、マキノ。俺より遅いのは珍しいなあ。」
「……おはよう…仕方ないでしょ…?」
「可愛く言ってもなぁ?」
「もう!……ね、抱きしめて、シーカー。」
「はいはい、仰せのままに。」
少し枯れた喉の調子を治すように、咳払いをしてキスをする。そして、甘えるように首に手を回したマキノを要望通り軽く抱きしめて、髪を梳いた。
「ほら、風呂行ってこい。片付けとくからよ。」
そう言って立ち上がったシーカーの背中には、深く、大きな傷があった。
背中を袈裟に斬られたようなその傷跡は、痛ましい程に深いものだった。
それを見たマキノは悲しそうな顔をしてから、そうっとその傷をなぞった。
「どーしたよ。」
「……痛い…?私の事、恨んでる?」
「ないよ、お前を守った傷だ。名誉こそあれ、そこに恨みなんざ欠片もねぇ。」
「……そういうの、よく分からないわ。私の、せいなのに。」
「お前のせいなわけあるか。いつまでもこんなこと気にするな……お前に何も無くてよかったんだよ。」
垂れた目尻を少し撫でて、ほらっ、とベッドからマキノを追い出す。
「…ん……そろそろ、本当に起きないと。」
「だから言ったろ、さっさと行ってきな。」
はーい、と間延びした返事の後、マキノが真正面から抱きついてきた。
「…どーしたよ。」
「やっぱり……私には、貴方しか居ないわ。」
「俺もさ。」
「嘘よ、ベルメールさんもいるじゃない……」
「お前あれ信じてたのか?全部冗談だぞ、お前の反応見て面白がってただけだ。」
「えっ?」
「保証できるぞ、実際言ってたし……待て、昨日長かったのって……」
「………し、仕方ないじゃない!覇気?ってやつも私使えないし、あの人冗談なのか本気なのかわかんないんだもん!」
「アッハハハハ!そうかそうか、お前はほんとに俺が好きだな。安心しろ、お前以外は考えられんさ。ほら、速くシャワー浴びてこい。」
シーカーは拗ねながらシャワーに向かうマキノに苦笑して、掃除を始めた。
ごぽぽっと水の中で泡がたち、それがいっせいに空に上がる。
海中では、魚たちが衝撃に逃げ惑う中、2人の影が高速で水中を飛び交っていた。
「──────
襲い来る水滴の弾丸。ジンベエの群雨の威力は、1発1発が船を貫く威力。それが、ガトリングガンのように飛んでくる。
その水の弾丸の隙間を縫うように高速で移動しジンベエに向かうシーカーに、ニヤリと笑った。
「甘いわ!五千枚瓦正拳!!」
それは、水の衝撃波。ジンベエの扱う魚人空手、それは水の制圧にあり、本領を出せない地上ですら大気中の水分を揺らし、人体に大ダメージを与える。しかし、その本領は水中。その威力は倍以上に跳ね上がり、確実に対象を破壊する。
その攻撃に、シーカーは臆すること無く槍を真下から上空に振り上げる。
たったのそれだけで、海水が衝撃波ごと上空まで打ち上がり、海が割れた。
ジンベエが信じられないという顔をしてから破顔する。
「ワハハハハッ!!なんちゅうデタラメな膂力じゃ!!ワシの技を打ち消して海水までぶち上げるとはな!それに、人魚顔負けの速度!お主本当に人か!!」
パパパンッ!!と水が破裂する音がしたと思えば、既にジンベエの背後にシーカーは移動していた。
「
ニィッと好戦的に笑った2人は、技をぶつけあった。
「じゃが!こちらも意地があるんでな!水中で負けたら面目丸潰れじゃ!七千枚瓦回し蹴りッ!!!」
『─────ッ!!』
槍と激突した武装色を纏った回し蹴りは、海を激しく揺らすほどの衝撃をもたらし、海中にシャボンを張った海賊船から観戦していた観客たちはおぉ〜と声を上げた。
「に、人間ってあんな速度で水中泳げんのか…?槍を振り上げたら海が割れんのか?」
「まぁ、シーカーだからな。」
「シーカーだしね。」
ルフィとマキノの言葉に、エースが突っ込んだ。
「それで納得すんなよっ!?」
「まぁまぁ、エース?そんなに怒らないの、言わなかった事は確かに悪いとは思ってるけど…急だったから。」
「……別に、もう怒ってねぇよ。ちゃんと迎えに来て連れてきてくれたわけだしな。」
そう、宴が始まったその日、シーカーにエースから激怒のでんでん虫があった。
『おいコラッ!?ルフィだけ連れて何旅行なんて行ってんだ!!俺も連れてけこのバカ
そして全力で飛ばしたシーカーは、その日のうちに戻ってきて、次の日には魚人達と打ち解けたエースは宴に参加していた。
そして現在、どうしても手合わせがしたいと言っていたジンベエに『
流石に水中なら負けないだろうと踏んでいたジンベエと戦い始め、それから5分間。シーカーは無呼吸で戦い続けているが、そろそろ苦しそうだ。動きが鈍くなっている。
「んー…そろそろだな、シーカー辛そうだ。」
「そうか?まだやれそうじゃねぇか?」
「いや、たぶんもうすぐ限界だぞ。息が〜って言ってるしよ。」
「はぁ?ルフィお前、何言ってんだ?」
そう言っていると、シーカーが一直線に船に突っ込んでシャボンを突き抜け甲板に着地した。
「───────ぶはぁっ!?はぁ…はぁ…死ぬかと思った……!」
「な?エース、限界だったろ!」
「な、なんでわかんだよ…!?」
「何が死ぬかと思ったじゃ。何度こっちが冷や汗をかかされたと思っとるんじゃ。」
「お疲れ様シーカー、タオルよ。ジンベエさんもいる?」
「はぁ…はぁ…さんきゅー……はぁ〜…酸素って美味いんだな」
「すまんなマキノ、しかしワシら魚人はこれが普通じゃ、必要ない。だが、その気遣いには感謝する。」
「ふふっ、いいえ。」
柔和に笑ったマキノは、後ろでギャーギャー騒いでいる子供たちにメッ!と注意してから、またシーカーの隣に陣取った。
樽に腰掛けた2人の前に、ドカッと座ったジンベエは、しかしと語り始めた。
「お前さん、元海軍じゃろう。よく海賊を受け入れられるもんじゃ。」
「あー、その事か……白ひげだろうな。その辺の認識を変えたのは。昔は、全海賊殲滅すべしって狭い考えだったが……俺の正義が定まってからは、海軍が大手を振って守れない民をナワバリとして守ってる白ひげには、敬意を払うようになった。」
「そうか。たしか、お前さんの正義は『盾となる正義』じゃったな。オトヒメ様がようお前さんの記事を見せびらかしておったから知っとるわい。」
「ああ…それから、悪行をしねぇ海賊は無視するようになった。」
「ハハハッ!やはり変わった海兵じゃ!オトヒメ様と会った時、お前さん正義のコートを脱ぎ捨て、膝をついたらしいな?」
「また懐かしい話を……」
「えっ、シーカーそんなことしてたの?」
「そうらしいわい。コートを脱ぎ捨て跪き『人への不信がある事は理解している。だがどうか、ただの人間があなた達を守る事を許して欲しい。』じゃったか。海軍としてでなく個人として。正義の名の下に平等な正義を執行する固い意思。その後の戦闘では魚人達を庇い、怪我を負ったが4億の首を捕らえた。」
「なんで一言一句違わず知ってんだ…恥ずかしいからやめてくれよ。」
「あら、かっこいいじゃない。流石ね、シーカー?」
「よしジンベエ、もっと褒めたたえろ!」
「現金じゃなお前さん……海軍とはいえ、人が魚人を庇ったんじゃ。王妃が嬉々としながら言いふらしておったわ。帰り際は恩着せがましい言葉もなく、ただオトヒメ様に部下共々敬礼をして立ち去った。伝わっておるぞ、あれぞまさに、正義の所作とな。」
「ぅ…お……面と向かって言われると恥ずかしさヤバいな……」
「あっ、珍しい。シーカーがこんなに照れるなんて。」
「ほう?英雄殿にも弱いところはあるっちゅうことじゃなぁ?」
からかいを投げてくるジンベエに苦笑しながら水分を補給していると、ふと当時を思い出した。
「……あの日の前日、俺の船は結構ヤベェやつに襲われてな。『火災』と『旱害』……アイツらは強かった。」
「百獣海賊団!?四皇の大幹部2人か!!良く無事でいられたもんじゃ!?」
「相性も良かった。俺はフィジカルに自信を持つバカとは相性がいいんだ。奴らもその典型だったな…だが、特に『火災』はそこいらの幹部とはレベルが違った、他とは頭ひとつ抜けてる。あの頃は、船を守りきれねぇと判断して、逃げるしか無かったからな。」
百獣海賊団、現最強の海賊と恐れられる四皇の海賊団である。ワノ国を拠点としているが、シーカーが過去に大量に逮捕した傘下の報復に来たのだ。
「その帰りだな、魚人島に海賊が逃げたと通報があったのは。まぁ、あの二人と比べれば消化試合みたいなもんだったさ。魚人島には補給の意味もあったしな。」
「ふむ……よく働くのうお前さんは。」
「海軍なんざこんなもんさ。」
割とキツい職場だったなぁと思いながら、シーカーは笑った。
「そろそろ浮上しようかのう。貿易の話も進めんとなぁ。」
「そうだったな、作業も終わった頃だろ。」
浮上した船体が海上に飛び出し、シャボンがパチンッと割れる。
港には、大箱を大量に運んでいるアーロンが控えていた。
「兄貴!魚人島に贈る最初の貨物ここに置いとくぞ!」
「保存もバッチリ!しっかり送り届けてよね!」
「承知したぞベルメール!良いかアーロン!迷惑かけるんじゃないぞ!!」
「ハハっ!1週間もすれば随分と馴染んだもんだな、アイツも。」
すっかりとミカン農家が板についたアーロンに呆れていれば、つまみ食いを見つけたアーロンは速攻で下手人を捉えた。
「おいコラガキ共!!摘み食いすんなって何度言えばわかんだ!!」
「げえっ!アーロンにバレた!」
「逃げるぞルフィ!!」
「逃がすかこの糞ガキぃ!!」
遠くでは、ぎゃー!?と叫ぶ子供の叫び声が響き、タンコブをしこたまこさえたエースとルフィが引き摺られてやってきた。
「ったくこの餓鬼共…何度手ぇだしゃ気が済むんだ。」
『ズ…ズビマゼン……』
「お前らの反省は反省じゃねぇ。痛みという教訓でしかお前らは学習できねぇ……いや、嘘ついた、それでもお前らは学習しねぇわ。」
2人の扱いにも慣れたようで、結構な事だと2人して笑ったマキノとシーカーは、港で積荷の作業を手伝いながら、笑っていた。
「お二人さん、もう手伝わなくていいぜ。あと少しだし、休憩していてくれ。今日の夜にはこの村を出る。」
「あぁ、わかった。気をつけろよ、アラディン。」
「ははっ、俺たちにそれを言うか?まぁ、ありがとよ。」
副船長の魚人、アラディンと握手したシーカーは、マキノの手を取って貸家に戻った。
2人が借りた家は崖の上にあり、ちょうど太陽が沈む所がよく見える位置にあった。場所も良く、景観も良かったため、ちょうどいいと別荘としてここを借りることにしていた。
夕暮れ時、ベッドの上で本を読むシーカーの隣で、肩を枕にしながら昼寝をするマキノを起こさないように、慎重に起き上がる。
「紅茶でも飲むか……」
「私も飲む。」
「起こしたか?」
「ううん、寝てなかった。」
「そうか、いつもので?」
「うん、いつもので!」
そうして湯を沸かし、予め作っておいたミカンの砂糖漬けを取り出して、淹れた紅茶にポチャンっと落とす。
「ほら、出来たぞ。なんてことは無いフルーツティーだがな。」
「ありがと…ん〜、いい香り!やっぱりシーカーの紅茶は美味しいわね。これ、ベルメールさんのみかんでしょう?」
「そりゃな、あとこれミカンのドライフルーツ。」
「うん、やっぱり美味しいわね、ベルメールさんのみかん。」
お茶と菓子をつまみながら、ゆったりとした時間を過ごす。
いつものように、村で忙しなく店を回すのもいいが、こうして何も無い時間を2人で過ごすのも、やはり好きだった。
ソファーに2人で寄りかかって、水平線に沈む太陽を眺めていれば、どちらからともなく手を握った。
『夕日が見える場所で、指輪を渡されたら、ロマンチックよね。』
いつだったか、本を読みながら呟いた彼女の言葉。
頃合だ、最高のシチュエーション。今しか、ないだろう。
深く息を吸ったシーカーは、コートの内ポケットにある箱を意識しながら、話を切り出した。
「……なぁ、マキノ。俺達も、気がつけば20を超えたな。」
「……そうね…なに?老けたって言いたいの?」
「まさか、お前は変わらず……ずっと綺麗だ。」
「シーカー……ありがとっ。」
ニヤニヤと上がる頬を隠すようにそっぽを向いたマキノの手を取って、ポケットの箱を取り出した。
その箱を見て、マキノは色々と察したのだろう。頬に浮き出た赤は、夕陽に照らされたのかはわからないが、それでも、シーカーの目からマキノは目をそらさなかった。
「俺は……あの時空っぽだった。燃え尽きて灰色だった俺を、お前は隣で、ずっと満たしてくれた。なんども、何度も。」
「……うん。」
「あー…だから……」
「んふふっ、だからぁ〜?」
「えーと……あー……」
色々と言葉を考えて、やはりらしくないと頭を搔いて、ストレートに伝える事にした。
「俺は!お前とこれからを生きたい!いつも隣で、俺を支えてくれたお前を、今度は俺が支えたい!だから、俺と───────」
プルプルプルプル
最後の言葉を紡ごうとした時。緊急用でんでん虫が鳴き出した。
ブチッと、シーカーが確かにキレる音がマキノにも聞こえた。
ミシミシと軋みをあげる箱を潰さないようにそっとポケットにしまって、マキノの頭を1つ撫でて、気持ちを落ち着かせる。
苦笑したマキノは、早く行って上げて、と目を伏せてソファーの背もたれに寄りかかった。
仕方ないとでんでん虫を取れば、聞こえてきたのはしばらく聞いていない声だった。
『シーカー!?シーカーか!!』
「あん?ドグラか?」
『そうだ…!その、今日!天竜人が来たんだ!!おれ、それを見に行こうとおもってぃよー!?』
ダダン一家その1人、山賊ドグラ。あまり交流は無いが、行けば話すくらいの仲だ。しかし、彼の慌てようは凄まじく、どうやらこれだけでは無さそうだ。
「…あぁ、それが?」
『俺…み、見ちまったんだよ…!アイツらが、横切った小舟を砲弾で沈めティるのをよぉ…!』
「…………あぁ。」
その言葉に、嫌な予感がシーカーを襲う。
なにか、取り返しのつかない事が起きた気がして─────
『その船の中に!!サボがいて!砲弾で船ごとふっ飛ばされちまったんだよ!!』
最悪の予感は、往々にして当たってしまう。
早くシーカーのガチバトル書きたいなぁ。
2人目のヒロインいる?
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いる
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いらない