ピースシーカー   作:イベリ

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第14話:タイヨウの国

あれから、怒涛の1ヶ月を過ごした。

 

サボの願いを無駄にしないため、2人はまずルフィとエースに報告をした。

 

どうやら、2人もサボの死を乗り越えたようで、騒ぎながら祝いの言葉をくれた。

 

村に結婚の報告をすれば、村をあげてのお祝いムード。

 

ようやくかだの、意気地無しだの散々な言われようではあったが、その言葉の裏にはどれも祝福の心がこもっていた。

 

そして、村でささやかではあったけれど、小さな式を開いた。

 

どこからかガープが揃えてきたドレスとタキシードに着替えれば、シーカーは言葉を失った。

 

結婚式は女の晴れ舞台だと聞いていたが、それは間違いでもなんでもなかった。

 

真っ白なウエディングドレスを着たマキノは、今まで見てきたどんな女性よりも美しかった。

 

場所は、海に続く一本道をヴァージンロードに見立てて煌びやかに飾られていた。

 

どうやってこんなに…と考えたのも束の間。よく見れば、ガープの部下達がヘトヘトの状態で転がって、こっちを見て爽やかな笑顔を見せていた。マキノと2人でそれを眺めて、後で盛大に労おうと苦笑した。

 

そして2人は、手を取り合ってヴァージンロードを走る。辿り着いた目の前で肩を寄せ合い、声を揃えて、大海原を前に叫ぶ。

 

『病める時も健やかなる時も、荒波のようなこの世界だけど!きっと、2人で乗り越えていきます!!』

 

この世にもう居ない1人の弟の姿を、海に重ねて。

 

2人は、未来を誓った。

 

 

 

 

 

『────そうか!お前さんたち、結婚したのか!』

 

「あぁ……悪かったなジンベエ、心配かけた。」

 

『細かい事はええんじゃ!とにかくめでたい!』

 

「ははっ、ありがとう。お前らも呼びたかったんだが、まぁ、俺の親父が海軍でな…うるさかったんだ、悪いな。」

 

『そんなもんどうでもいいわい!ワシらははみ出しものなんじゃ、友の晴れ舞台を汚す訳にも行かんじゃろうて。』

 

「そう言うなよ……お前たちははみ出しものでも、マシな部類だからよ。」

 

『ワッハッハッ!言うてくれるわ!』

 

式から1週間。マキノとシーカーの間で特に何かが変わったとかは無く、日々をいつも通り過ごしていた。

 

一応、婚姻を結んだということは言って回っていて、海軍時代の知人には報告し終えていた。

 

今は送られる大量の祝いの品を受け取り終え、ようやく開封という日々を送っている。

 

最後に、でんでん虫の連絡先を交換をしていたジンベエの元に近況報告をしていた。ココヤシ村との交易がどうなったかも気になるところだったし、ちょうど良かったのだ。

 

日々は大変ではあるが、とても幸せだった。

 

『そりゃあ祝い事じゃなぁ。お主ら、ハネムーンはもう決めたのか?』

 

「いやまだ……マキノが別にいいって言うんだが、するつもりではあるよ。」

 

『そうか……』

 

すると数秒考えた後に、ジンベエが言いずらそうに提案した。

 

『聞くだけなんじゃが……魚人島に来んか?』

 

「魚人島に?」

 

『あぁ、オトヒメ様が是非きて欲しいとな。もちろん行き帰りは儂らが送り届けるし、安全を保証する。どうじゃ?』

 

「なるほど……」

 

シーカーとしても、これは渡りに船。いつかこの村から出て移住しようかとか、今でもたまに話に上がる事があるため、その候補地は多くていいし、魚人島ならば余生も子育ても悪いことはないだろう。

 

それに、自分たちから魚人と人の輪を広げられる可能性だってある。

 

「マキノ!ジンベエに魚人島に招待されたが、行くか?」

 

「行く〜!!シーカーが言ってた人魚姫様とお友達になれるかしら!」

 

店で作業していたマキノの声が、階下から響いた。

 

「だそうだ、ジンベエ。頼むよ、日取りは適当で構わないから。」

 

『そうか!そりゃよかった!今上がる!』

 

「あいよ〜……ん、今上がる?」

 

ジンベエの言葉の数秒後、波飛沫が上がる音が港から聞こえ、言葉の意味を悟った。

 

「……あいつ俺が断ったらどうするつもりだったんだよ……悪いマキノ、今から出発だ!!」

 

「え!?今から!?」

 

呆れながら直ぐに荷物をケースに詰めて、マキノに声をかけた。

 

 

 

 

「わぁ〜……グランドラインの海の中って、こうなってるのね……!」

 

ここは既に海の中。周りはマキノの見たことの無い景色で溢れていた。

 

「そうか、マキノは見るのが初めてか!どうじゃ、知らぬ海中を行くというのも悪くは無いじゃろう!」

 

「はいっ!こんなに綺麗な景色…すこし、魚人の人たちが羨ましいです。」

 

「ワシらにとっては、これが空みたいなもんじゃが…そう言って貰えるのは嬉しい!」

 

楽しそうにあれはなんの魚だ、とか。あの不思議な海流はなんだ、とか。マキノは新鮮な景色に目を光らせる。

 

いつも姉のような役割だった彼女を、この旅行は子供に戻してくれた。

 

「あのお魚美味しそう!」

 

「取ってやろうか?」

 

「ううん、それはいいの。食材はいっぱいあるもの。無駄にしたくないし。」

 

「そっか…なんか作らねぇか?腹減っちまった。」

 

「そうね、何かリクエストはある?」

 

「肉だな。」

 

「ふふっ…本当に、兄弟そっくりね。」

 

そうしてシーカーとキッチンに向かおうとしたマキノが、驚いたように振り返った。

 

「───────え…?」

 

「どうした、マキノ。」

 

「……あ、いや…その…なんか声が聞こえた気がして…」

 

「声?……いや、聞こえねぇな。」

 

耳を済ませたシーカーだったが、水の音以外はほとんど聞こえない。

 

自分よりも耳のいいシーカーがそういうのだから、とマキノは納得した。

 

「うーん…そうよね、海中だもの、音なんてそうそう聞こえないわよね。」

 

まさかね、と外に見える巨大な海王類に目をやってから、2人はキッチンに向かった。

 

 

 

薄暗い深海を抜け、そこは海底1万メートル。陽樹イブによってもたらされる陽光が、海底を照らし、深海の景色とは一変。一面に広がる美しい白い砂地の底は、幻想的だった。

 

「凄い…言葉に出来ないくらい……キレイ…」

 

「あの時はカッコつけて1回も振り返らなかったからちゃんと見れなかったけど……やっぱりすげぇな……」

 

「ワシらはその話聞きたくなかったがなシーカー。」

 

「ついでに教えてやるけど、正直に言えばあの時の俺最高にかっこよかったと今でも思ってる。」

 

「あら、シーカーはいつもカッコイイわよ?」

 

「おいおい、やめろよマキノ…」

 

「残念な事実吐いてから惚気けるな……まだお主を英雄視する民衆もおる。絶対に口を滑らすんじゃ……って聞け!!?」

 

シーカーもあの1度の来訪以来、ここに来たことは無い。しかもあの時は色々あったため、景色を見て回ることなんてなかったから、その感動はマキノと同じかそれ以上だった。

 

「あれは…太陽?どうして海中にあるのジンベエさん?」

 

「知ってるなら教えてくれよ。」

 

「陽樹イブが太陽光を出してくれておるんじゃ。これは地上の光を────」

 

ジンベエがこれはこうで、あれはこうで、と説明をしてくれるのだが、植物について明るい訳では無い2人はポカン、とした後に、揃って納得した。

 

「不思議な木があるのね。」

 

「不思議大樹だな。」

 

「あら、感想がお揃いね。」

 

「ハハッ、そうだな。」

 

『ね〜』

 

「夫婦揃って理解する事を諦めるな!?おのれらが聞いたんじゃろがい!?」

 

クワッ!とツッコミを入れるジンベエをよそに、2人は目の前に現れたシャボンに覆われた島を見て、圧巻される。

 

「これが、魚人島……おっきいシャボン玉の中にあるのね……」

 

「2度目だが本当に圧巻のデカさだな。」

 

そうして魚人島をキラキラとした純粋な瞳で見つめる二人を見て、ジンベエは仕方ないと微笑んだ。

 

しばらくその景色を眺めていたいとお願いして、船を泊めてもらっていると、マキノがまたも不思議そうに首を傾げた。

 

「……ねぇ、やっぱり声が聞こえない?なんというか…おっきい人の声というか…じゃーもんじゃーもんとか…?」

 

「さっきからどうしたんだよ…?聞こえねぇぞ?」

 

「う〜ん……変だわ、疲れてるのかしら…?」

 

「かもな。短い時間だったとはいえ、船の中ってのは圧迫感もあるしな。魚人島についたら、ゆっくり休もうぜ───────ん?」

 

「…ねぇ、聞こえない?ほら!」

 

相当に疲れたのだろうと気遣ったシーカーがマキノを抱き上げて、ベットに運ぼうとした時。ようやくマキノの言葉を理解した。

 

上の方向から船の数倍はあるリュウグウノツカイと、クジラに乗った巨大な人魚族が現れ、こちらに近寄る度に「じゃ〜もん、じゃ〜もん」という声が聞こえる。シーカーはようやくあぁ…と納得がいった。

 

「まさか出迎えなんて……随分と歓迎してくれるな。」

 

「ほら!聞こえるわ!じゃーもんじゃーもん!」

 

「俺のが耳はいいはずなんだが……俺もようやく聞こえたよ。」

 

近くまできたリュウグウノツカイは、船の横に着けると、背負った籠のその中からシャボンを通じてヒラリと人魚が舞い降りた。

 

天女の衣を纏い金髪を靡かせ、その人魚は真っ直ぐにシーカーを見つめる。まるで、あの日のように。

 

「─────今でも、覚えています。ボロボロの貴方が魚人達を庇い、悪を打ち倒した勇姿を。そして、何よりも嬉しかった。貴方が私たちを『人』として見てくれていたこと。私達は、片時も貴方と言う【友】を忘れたことはありません……例え貴方が全てを捨て、名を変えていたとしても。」

 

『俺の後ろには守るべき『人』がいる。俺が、引くワケねぇだろ。』

 

昔、自分が言い放った言葉を思い出して、シーカーは照れくさそうに頭を搔く。

 

「……相変わらず義理堅いお人だ……お久しぶり……いいや……初めまして。ピース・シーカーと申します。お会いできて光栄です、オトヒメ様。」

 

「はい……初めまして、シーカーさん…!」

 

感極まった様に涙を流す人魚。人呼んで、【愛の人】────オトヒメはいつかのようにまた手を差し出す。

 

「……また、私たちを貴方の友にしてくれませんか?」

 

差し出されたその手に、あの日を重ね、シーカーは微笑む。

 

「……えぇ、喜んで。」

 

そして、あの日のように握手を交わす。

 

友好の架け橋が、また繋がる。いつの間にか周りを囲むように島民がその様子を見守っていたが、その表情はとても明るいものだった。

 

過去、シーカーが来た時の様に鋭い視線を向ける魚人は少ない。噂だが、天竜人すらも屈服させ、調印をもぎ取ってきたと聞いている。

 

全てオトヒメの努力の賜物と言えるだろう。

 

「あら…そちらの方は…?」

 

はわはわとシーカーの後ろを右往左往するマキノを、オトヒメが不思議そうに見遣れば、シーカーはマキノを捕まえて、前に押し出す。

 

「紹介が遅れました。先日、私の妻になった────」

 

「ぴっ、ピース・マキノです!は、初めまして……お、オトヒメ様…!」

 

ガチガチのマキノとは対照的に、微笑ましいものを見るようなオトヒメは、黄色い歓声をあげた。

 

「まぁ!シーカーさんの!良く来てくださったわ。遠かったでしょう?」

 

「い、いえ…ジンベエさん達がしっかりと送って下さったので…!」

 

彼女には珍しく伏し目がちな態度に、シーカーは「ははーん?」と理由に勘づいてくすくすと笑うが、オトヒメはその反応に少し陰りを見せた。

 

「…私たちは、怖いかしら…?確かに、あなたより随分と大きいけれど、危害を加えたりは絶対にしないわ。」

 

「あっ、いや…その…っ違くて…!」

 

「いや、違いますよオトヒメ様。憧れの人魚姫に会って感極まってるだけです。」

 

「しっ、シーカーっ!!」

 

「人魚姫……?もしかして、私?」

 

「いや他に誰がいると言うんです。」

 

キョトンとしたオトヒメは、すぐにぱぁっと表情を明るくして、マキノの手を取った。

 

「もう私は随分と貴方よりも年上だけれど、人魚姫だなんて呼んでくれるのね!」

 

「は、はひ!も、もちろん!こんな綺麗な人、私見たことなくてっ…!その、し〜かぁ〜…!」

 

「お会いできて光栄です、大騎士ネプチューン。」

 

「ほっほっ、儂も会えて光栄じゃもん。妻の友として、よくしてやって欲しいんじゃもん。」

 

「えぇ、私の妻とも、仲良くなれそうですしね。」

 

更にテンパってシーカーに助けを求めるが、シーカーは巨大な男性の人魚────国王ネプチューンと談笑していた。

 

助けを求めるマキノには気づいているが、こうして焦る彼女が珍しく、面白いから放っておこうという魂胆だろう。マキノは顔を見なくてもわかる。

 

すると、オトヒメは何かを見透かしたようにニンマリと笑って、マキノの手を両の手で包んだ。

 

「私は確かに王族だけれど、そう緊張しないで?私達は、あなた達人の良き隣人になりたいの。」

 

「………!」

 

船の移動中、彼女については聞いていた。彼女は親愛と尊敬を込めて【愛の人】と呼ばれている。それは、種族に関係なく与えられる、真なる愛だと。

 

「是非、彼と一緒にリュウグウ城にいらして?そこで私の天使、私の人魚姫のお友達になってあげてほしいの。勿論、私ともね?」

 

嘘は、この人はついていない。直感か、そう信じたかったのか、マキノは自然とそう思えた。直接心に語り掛けるような彼女の言葉は、思っていたよりもずっとすんなりと入ってきた。

 

なにより、彼女の心が少しだけわかった気がした。

 

「─────はい!」

 

少しだけ緊張が解けたマキノに、柔く微笑んでから、船を誘導する。

 

関所から門を潜れば、色とりどりのサンゴ礁と、空を飛ぶクジラや、魚達。そして、マキノ憧れの人魚たちが、こちらに手を振っていた。

 

国民を背に、オトヒメは手を広げまた笑った。その笑顔は、正しく愛に溢れた笑顔だった。

 

「国民を代表して歓迎します!ようこそ、リュウグウ王国へ!」

 

 




式は絶対グダる確信があるので回想で脳内再生してください。

2人目のヒロインいる?

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