ピースシーカー   作:イベリ

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あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


第19話:本物

数分前まで長閑だったフーシャ村は消え去り、跡形もなくなった更地には、土塊の獅子と金獅子。それに相対する少年二人のみ。

 

「なんなんだこりゃぁ…!?」

 

「村が、ライオンになっちまった!?」

 

「ジハハハハッ!!冥土の土産ってやつだ。これが、俺の獅子威し!とくと味わえいっ!!」

 

「来るぞ!ルフィ!!」

 

「あぁ!やるぞ、エース!!」

 

咆哮をあげて突撃してくる獅子の攻撃を躱し、2人は空を舞う。

 

「ほんと、月歩は便利だ!」

 

「特に、能力者のお前はな…!来るぞ、横に飛べ!」

 

宙を舞いながら土塊の獅子の攻撃を避ける。

 

「次は右!───左だ!!」

 

「よし来た!!」

 

「ほぅ…やはり見聞色が尖っているな、エース…!!どこまで見える!?」

 

ルフィに指示を飛ばしながら、見聞色で躱し続ける2人。エースは冷静に戦況を判断しながら、攻撃のチャンスを伺っていた。

 

「ジハハハハ!!よく飛ぶな!一体増やしてみるか!!」

 

シキの言葉の数秒後、土塊からもう一体獅子が現れる。

 

「さぁ!もっと踊れ!!」

 

「ハッ!言ってろよ金獅子!すぐにテメェをぶっ飛ばしてやる!!」

 

「でもエース!これ、どうすんだ!!」

 

「狼狽えんじゃねぇぜ、ルフィ!俺達は、こんなもんよりずっと早くて強いもんと戦ってきたろ!!」

 

「───────そうだった!!」

 

ニカッと笑った2人の様子に、シキは尚の事この兄弟が欲しいと思った。

 

月歩の苦手なルフィの手を掴み、回転の反動で投げ飛ばし、回避。ルフィが腕をのばし、エースが裁ききれない背後からの攻撃を避けさせる。

 

まだ月歩を完全にものとはしていないルフィを上手くカバーしながら、善戦する。

 

2人の着地に合わせ、獅子が真上から強襲を仕掛けた。

 

「ルフィっ!!」

 

「エース!!」

 

ルフィはギアを発動させ、2人は同時に拳に覇気を纏い、獅子を殴るがエースの破壊した獅子は、すぐに再生してしまう。

 

「ジハハハハッ!!いいぞ、足掻け!!」

 

「クソッ!再生しやがった!」

 

「エース!!」

 

「ルフィ!お前はもう一体を完璧に壊せ!!」

 

考えるに、純粋に破壊力が足りないのだ。

 

ルフィの攻撃、それよりも1段劣るエースの覇気では通じるはずがない。

 

互いに相反する色を苦手とする2人だったが、ルフィとは違い、攻撃力が物足りないエースは苦心していた。破壊力で言えば、ルフィに1歩先を行かれているのだ。そんな時に、シーカーの言葉が繰り返される。

 

『いいかエース。お前の見聞色は既に開花していたルフィの上を行ってる。これはお前の才能だ。』

 

いつだったか、シーカーが語った覇気という概念の言葉、きっとあれはこの概念の本質だったのかもしれないと、今になってエースは思っている。

 

『武装色?安心しろ、お前はもう使えてる。覇気の強さは総量や強度に目が行きがちだが、本質はそこじゃない。』

 

覇気の総量や強度。それは、エースやルフィレベルになれば、シーカーと大した差はないのだと言う。しかし、シーカーと2人の間には、隔絶した差が存在する。

 

『使い方と感じ方だ。お前たちは、漠然と覇気を纏う事を目的にしてる。そうじゃねぇ、本質はコントロールだ。力むな、身体に流れる覇気を感じろ。お前達の覇気は、こんなもんじゃねぇ!』

 

(力むな……体に流れる覇気を感じろ……そうだ……俺の覇気は、こんなもんじゃねぇだろ…!!)

 

深く沈んだ様な感覚の中、エースは自身の中に流れる覇気を感じた。

 

「───────これか、シーカーッ!!!」

 

その瞬間、エースは確かに掴んだ。身体を流れる覇気の動きを。

 

再び襲いかかる獅子を真っ直ぐに見すえ、エースは拳を握る。

 

流れる覇気を外に纏って、内部から獅子を砕く。

 

「今の…俺のと違ぇ…!!」

 

感覚でエースの覇気と違うことにか気がついたルフィは獅子を砕きながら、その覇気に驚いていた。

 

「ほぅ……久しく見なかったが、たった今流桜を会得したか。」

 

「ハハッ、こんな集中力使うのか…っ!!そう何発も打てねぇな…こんなもんを戦闘中常にやってやがんのかシーカーのやつ…!!」

 

ある程度の実力を得たからこそ、シーカーとの実力差はまだまだ圧倒的な物だと理解が出来る。そもそもの話、あの拳骨爺(ガープ)と正面切ってまともに殴り合う時点でお察しなのだが。

 

「エース!今のなんだ!!教えてくれ!」

 

「何をするにも、あのオッサンをぶっ飛ばしてからだ!!」

 

「威勢がいい。だが、口だけじゃねぇ……あぁ、本当に惜しい。」

 

空で悠々と見ていたシキは、やはり惜しいとこぼした。

 

「俺の目的は、この東の海を惨劇の海にする事だ……だが、お前たちが付いてくるというのなら、見逃してやろう。ともにこの海を空から支配し、紛い物共を一掃し、真の海賊王となる!今日のことはお互い水に流そうじゃねぇか…俺の下に付け、ルフィ、エース!」

 

今のように、シキはこうしてある男を誘った。思えば奴も、東の海出身の男だった。

 

『───────シキッ!!』

 

嗚呼そうだ、俺は、期待をしているのかもしれない。

 

 

 

 

 

「俺達は、支配に興味がねぇんだ!!」

 

「やりてぇようにやるのが海賊だ!そうじゃなきゃ海賊になる意味がねぇ!!」

 

 

 

 

 

そうだ、俺はその答えを待っていたんだ

 

脳裏で憎たらしく笑う髭面の男は、彼が求めた本物の海賊だった。

 

自然と笑っていたシキは、あの時(・・・)の言葉を繰り返す。

 

「─────それはつまり、ここで殺してくれって意味だよなぁ!?」

 

その答えに、2人は口角を上げる。

 

『お前をぶっ飛ばすって意味だッ!!』

 

シキという男がこの大海賊時代の中、数多のルーキーを見てきたが、ヤツと同じ言葉を吐いたこの男達は、彼が求める本物だった。

 

「気に入ったァッ!!お前達はこの俺が、念入りに殺してやるッ!!」

 

「やってみやがれ!!」

 

「ギア 2(セカンド)!!」

 

2人が高速で飛び立ち、シキを挟むように移動する。

 

「オラァッ!!」

 

「だりゃっ!!」

 

「ジハハハハッ!いい速度だ!!だが空を駆けるお前達が、空の支配者に敵う道理はねぇ!!」

 

「そんな道理知るか!!」

 

「俺達は、自由だ!!」

 

空を飛ぶシキに文字通り空を駆けて追い縋る。思わぬ速度に、油断していたシキの体が固まる。

 

「何ッ!?」

 

「ゴムゴムの〜……!!」

 

「ぶっ飛べシキ…!!」

 

2人の拳が黒々と鈍く輝く。

 

1人は、最強の槍を夢見て

 

1人は、最強の拳を燃やし

 

互いに最強を掲げ、空の支配者を打ち砕かんと猛り、燃え上がる。

 

JET・重槍火銃(バルカン)ッ!!!

 

火拳ッ!!

 

2人の燃える拳がシキの顔面を捉え、シキを大きく吹き飛ばし、村の地面に激突させる。

 

「やったな、ルフィ!」

 

「あぁ、勝ったぞ!!」

 

「ルフィー!エースー!」

 

「2人とも、怪我は?!」

 

着地した2人は、勝利を確信していた。それを見ていたのか、ナミとマキノも2人に駆け寄った。

 

「ああ、ほぼ無傷だ!」

 

「強ぇやつだったが、油断が仇になった見てぇだ。しっかし…フーシャ村が、無くなっちまった…」

 

「いいのよ、家はまた建てればいいもの。」

 

「村のみんなは平気か?」

 

「えぇ!しっかり避難できたわよ!」

 

そりゃよかった!とシシシッと笑ったルフィとそれにつられて笑うナミ。

 

微笑ましげにそれを眺めるエースだったが、そうだったと、シキを縛る為に叩きつけた場所に向かう。

 

「大海賊だったみてぇだが、案外呆気ねぇもんだな…さっさとジジィ呼んで、海軍に──────待て……奴は、どこに行った……ッ!!?」

 

しかし、その場所にシキは影も形も無く、困惑したエースは、まともに見聞色を発動させることなく、周囲を見渡した。

 

そして、気がついた。己の背後にある気配に。

 

「─────最後の攻撃、良かったぜ?ちょびっとだが、血を流したのは久々だ。」

 

「……ッ!!?」

 

シキの声が聞こえたかと思えば、既にエースを浮遊感が襲い、次の瞬間にはルフィ達が居た場所に叩きつけられていた。

 

「ッが…っく、そっ…!!」

 

「エース!?」

 

「シキだ、ルフィ!!まだ、やれて、なかった!!」

 

「にゃろう!どこだ!!?」

 

「───────こっちだぜ、ルフィ?」

 

そして、エースと同じようにルフィもその場に叩きつけられる。

 

「いてぇぇぇ!!?」

 

「クソッ、ルフィ……!!」

 

「2人とも、よく戦った。その歳でお前達は強い、将来が楽しみだ。」

 

シキが2人の頭を鷲掴みにし持ち上げ、能力で服を浮かび上がらせる。

 

「だが、まだ発展途上。本物の覇気を叩き込んでやる、その身に刻むがいい!!」

 

浮かんだ2人の胴体に拳が深々と叩き込まれる。

 

「ルフィ!!エース!!」

 

「2人とも!!」

 

駆け寄ろうとするマキノとナミの行く手を阻み、シキが不敵に笑った。

 

「行かせねぇぜ、ベイビーちゃん?」

 

「っ!?」

 

「逃げてっ、マキノさん!!」

 

「で、でも…!」

 

「いいからッ!」

 

「……っ!!」

 

非戦闘員のマキノを逃がそうと、ナミが鉄パイプを持ってシキに立ち向かう。

 

「やぁあああ!!!」

 

「おっと…!ジハハハハっ!健気だな、だが無意味だ。誰も生かしてはおけねぇ。」

 

「うぁっ…!!?」

 

「ナミっ!!」

 

ナミの首を捕まえ、シキはマキノに見せつけるように視線を投げた。

 

「このまま捕まえるのも簡単だが……お前さん、あのピース・シーカーの嫁なんだって?」

 

「…っだ、だったらなんですか!!」

 

シキは、今までよりも更に下卑た笑みを浮かべ、悪魔のような提案をする。

 

「選ばせてやる。この3人を見捨てれば、お前だけは逃がしてやる。逆に、お前が捕まるのなら…この3人は見逃してやろう。」

 

「そんなの……っ!!」

 

そんなもの、選択肢などありはしない。

 

「マキノ、さんッ!逃げて!!どうせこいつは、マキノさんを捕まえた後に私たちを殺す!」

 

「おいおい、見くびって貰っちゃ困るぜ?俺は金獅子のシキ。約束は守る男だ。」

 

「マキノ…!逃げろぉ…っ!!」

 

「俺達は…っ死なねぇ!!」

 

「ルフィ、エース…っ…」

 

「ほう、まだ立つか。頑張るな!」

 

倒れていた2人も、マキノを逃がそうと立ち上がった。

 

わかっている。ここでマキノが捕まれば、シーカーが満足に動けなくなる。最悪の場合、自分のせいでシーカーが望まない殺戮を迫られる可能性もあるのだ。

 

ここで、マキノが逃げる事が最前の可能性が高い。けれど、マキノの感情がそれを許さなかった。

 

「……私が、貴方について行けば、3人は見逃してくれるんですか…!」

 

「あぁ、必ず。」

 

「マキノ、さんっ……!!」

 

苦しげにシキの手の中で呻くナミに、マキノは震えながら笑いかけた。

 

「大丈夫…きっと、あの人が、来てくれるから…っ!」

 

「健気だねぇ…あぁ、感動しちまったぜ!さぁ、行こうかベイビーちゃん………あん?」

 

マキノを連れ去ろうとして触れた時、彼女の中に眠る見聞色に、シキは気がついた。

 

「ベイビーちゃん…まさか覇気使いだったとはな…いや、これは……封じられている?自分でって訳じゃなさそうだな……他人が干渉して封じたのか?なんつー繊細で高度なコントロール……シーカーの実力はこれ程までか…いや、おもしれぇ。」

 

ぐっ、とマキノの頭を掴んだシキはにやりと笑った。

 

「あうっ……!!?」

 

「面白い見聞色だ。夢での未来予知か……研究すりゃあ、予知装置にできるか?面倒だ、無理やり解除させるか。」

 

それは、マキノにとってあまりにも地獄のような言葉だった。

 

あの地獄が、また訪れるのだ。

 

「かい、じょ……?まって……やめてっ…!嫌ぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「マキノにてぇ出すんじゃねぇ……っ!!」

 

「やめろぉ…っ…やめろよッ…!!」

 

立ち上がり猛ったルフィとエースに向けて、シキは残酷に告げる。

 

「覚えとけガキども……弱ぇ奴は、何も救えねぇのさ。」

 

「助けっ、助けてっ…シーカー!!シー───────いやぁあああああああっ!!?」

 

頭のてっぺんから爪先まで、電流のように流れた覇気。あの時とは違い、激しい痛みがマキノを襲う。

 

悲鳴の後、数回痙攣したようにピクピクと震え、マキノは気を失った。

 

「っマキノさんっ!!?」

 

そしてその叫び声に、ナミの悲鳴に、ルフィとエースは怒りの限界を超えた。

 

 

 

やめろっつってんだろうがァァァッ!!!

 

 

 

身体を突き抜けるような威圧に、シキは目を見開いた。

 

「なにぃッ!!?は、覇王色……ッ!!?」

 

「もう一度だルフィ!!絞りだせぇッ!!」

 

「ゴムゴムのォ〜……ッ!!!」

 

砂塵を巻き込み突撃した2人に、冷や汗を掻きながらも、シキは尚不敵に笑う。

 

「ちょいとヒヤッとしたが……まさか2人とも、王の資質か…惜しい、だが1つの海賊団に王は何人もいらねぇ、待つのはただの破滅だ……学習しねぇとな……獅子威し『地巻き』!!」

 

隆起した地面が目の前まで迫った2人を飲み込み、2人を封じる土の塔を作り出した。

 

「チクショウッ!!マキノを離しやがれニワトリ野郎!!」

 

「口が過ぎるぜ…小僧!!」

 

『うわぁああああああッ!!!?』

 

「ルフィ!エース……!!?」

 

シキが握り潰すように手を翳せば、2人を締め付けるように土の塔が捻れる。

 

悲鳴をあげる2人に、ナミは何も出来ずただ唇を裂けるほどに噛み締めるだけだった。

 

「さて……手に入れるもんも手に入れた、戻るとしよう。」

 

「なに……アレ……!?」

 

今までさしていた陽の光が突如遮られたと思えば、空を島が覆っていた。

 

信じられない光景に、ナミは目を見張っていたが、まさかと思考を巡らせ、思い至った。

 

「─────能力で……島を浮かせてるの…!?」

 

「正解だぜ…?ベイビーちゃん!!」

 

ふわっと浮かび上がったシキが、マキノを抱えナミを見下ろした。

 

「奴が帰ったら伝えといてくれ。嫁は預かったってな!!ジハハハハッ、ジハハハハ!!!」

 

高笑いと共に、シキは空に浮かぶ島へと消えていった。

 

3人はこの日、敗北の味と、本物の海賊を知った。

 




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2人目のヒロインいる?

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