今年もよろしくお願いします。
数分前まで長閑だったフーシャ村は消え去り、跡形もなくなった更地には、土塊の獅子と金獅子。それに相対する少年二人のみ。
「なんなんだこりゃぁ…!?」
「村が、ライオンになっちまった!?」
「ジハハハハッ!!冥土の土産ってやつだ。これが、俺の獅子威し!とくと味わえいっ!!」
「来るぞ!ルフィ!!」
「あぁ!やるぞ、エース!!」
咆哮をあげて突撃してくる獅子の攻撃を躱し、2人は空を舞う。
「ほんと、月歩は便利だ!」
「特に、能力者のお前はな…!来るぞ、横に飛べ!」
宙を舞いながら土塊の獅子の攻撃を避ける。
「次は右!───左だ!!」
「よし来た!!」
「ほぅ…やはり見聞色が尖っているな、エース…!!どこまで見える!?」
ルフィに指示を飛ばしながら、見聞色で躱し続ける2人。エースは冷静に戦況を判断しながら、攻撃のチャンスを伺っていた。
「ジハハハハ!!よく飛ぶな!一体増やしてみるか!!」
シキの言葉の数秒後、土塊からもう一体獅子が現れる。
「さぁ!もっと踊れ!!」
「ハッ!言ってろよ金獅子!すぐにテメェをぶっ飛ばしてやる!!」
「でもエース!これ、どうすんだ!!」
「狼狽えんじゃねぇぜ、ルフィ!俺達は、こんなもんよりずっと早くて強いもんと戦ってきたろ!!」
「───────そうだった!!」
ニカッと笑った2人の様子に、シキは尚の事この兄弟が欲しいと思った。
月歩の苦手なルフィの手を掴み、回転の反動で投げ飛ばし、回避。ルフィが腕をのばし、エースが裁ききれない背後からの攻撃を避けさせる。
まだ月歩を完全にものとはしていないルフィを上手くカバーしながら、善戦する。
2人の着地に合わせ、獅子が真上から強襲を仕掛けた。
「ルフィっ!!」
「エース!!」
ルフィはギアを発動させ、2人は同時に拳に覇気を纏い、獅子を殴るがエースの破壊した獅子は、すぐに再生してしまう。
「ジハハハハッ!!いいぞ、足掻け!!」
「クソッ!再生しやがった!」
「エース!!」
「ルフィ!お前はもう一体を完璧に壊せ!!」
考えるに、純粋に破壊力が足りないのだ。
ルフィの攻撃、それよりも1段劣るエースの覇気では通じるはずがない。
互いに相反する色を苦手とする2人だったが、ルフィとは違い、攻撃力が物足りないエースは苦心していた。破壊力で言えば、ルフィに1歩先を行かれているのだ。そんな時に、シーカーの言葉が繰り返される。
『いいかエース。お前の見聞色は既に開花していたルフィの上を行ってる。これはお前の才能だ。』
いつだったか、シーカーが語った覇気という概念の言葉、きっとあれはこの概念の本質だったのかもしれないと、今になってエースは思っている。
『武装色?安心しろ、お前はもう使えてる。覇気の強さは総量や強度に目が行きがちだが、本質はそこじゃない。』
覇気の総量や強度。それは、エースやルフィレベルになれば、シーカーと大した差はないのだと言う。しかし、シーカーと2人の間には、隔絶した差が存在する。
『使い方と感じ方だ。お前たちは、漠然と覇気を纏う事を目的にしてる。そうじゃねぇ、本質はコントロールだ。力むな、身体に流れる覇気を感じろ。お前達の覇気は、こんなもんじゃねぇ!』
(力むな……体に流れる覇気を感じろ……そうだ……俺の覇気は、こんなもんじゃねぇだろ…!!)
深く沈んだ様な感覚の中、エースは自身の中に流れる覇気を感じた。
「───────これか、シーカーッ!!!」
その瞬間、エースは確かに掴んだ。身体を流れる覇気の動きを。
再び襲いかかる獅子を真っ直ぐに見すえ、エースは拳を握る。
流れる覇気を外に纏って、内部から獅子を砕く。
「今の…俺のと違ぇ…!!」
感覚でエースの覇気と違うことにか気がついたルフィは獅子を砕きながら、その覇気に驚いていた。
「ほぅ……久しく見なかったが、たった今流桜を会得したか。」
「ハハッ、こんな集中力使うのか…っ!!そう何発も打てねぇな…こんなもんを戦闘中常にやってやがんのかシーカーのやつ…!!」
ある程度の実力を得たからこそ、シーカーとの実力差はまだまだ圧倒的な物だと理解が出来る。そもそもの話、あの
「エース!今のなんだ!!教えてくれ!」
「何をするにも、あのオッサンをぶっ飛ばしてからだ!!」
「威勢がいい。だが、口だけじゃねぇ……あぁ、本当に惜しい。」
空で悠々と見ていたシキは、やはり惜しいとこぼした。
「俺の目的は、この東の海を惨劇の海にする事だ……だが、お前たちが付いてくるというのなら、見逃してやろう。ともにこの海を空から支配し、紛い物共を一掃し、真の海賊王となる!今日のことはお互い水に流そうじゃねぇか…俺の下に付け、ルフィ、エース!」
今のように、シキはこうしてある男を誘った。思えば奴も、東の海出身の男だった。
『───────シキッ!!』
嗚呼そうだ、俺は、期待をしているのかもしれない。
「俺達は、支配に興味がねぇんだ!!」
「やりてぇようにやるのが海賊だ!そうじゃなきゃ海賊になる意味がねぇ!!」
そうだ、俺はその答えを待っていたんだ
脳裏で憎たらしく笑う髭面の男は、彼が求めた本物の海賊だった。
自然と笑っていたシキは、
「─────それはつまり、ここで殺してくれって意味だよなぁ!?」
その答えに、2人は口角を上げる。
『お前をぶっ飛ばすって意味だッ!!』
シキという男がこの大海賊時代の中、数多のルーキーを見てきたが、ヤツと同じ言葉を吐いたこの男達は、彼が求める本物だった。
「気に入ったァッ!!お前達はこの俺が、念入りに殺してやるッ!!」
「やってみやがれ!!」
「ギア
2人が高速で飛び立ち、シキを挟むように移動する。
「オラァッ!!」
「だりゃっ!!」
「ジハハハハッ!いい速度だ!!だが空を駆けるお前達が、空の支配者に敵う道理はねぇ!!」
「そんな道理知るか!!」
「俺達は、自由だ!!」
空を飛ぶシキに文字通り空を駆けて追い縋る。思わぬ速度に、油断していたシキの体が固まる。
「何ッ!?」
「ゴムゴムの〜……!!」
「ぶっ飛べシキ…!!」
2人の拳が黒々と鈍く輝く。
1人は、最強の槍を夢見て
1人は、最強の拳を燃やし
互いに最強を掲げ、空の支配者を打ち砕かんと猛り、燃え上がる。
「JET・
「火拳ッ!!」
2人の燃える拳がシキの顔面を捉え、シキを大きく吹き飛ばし、村の地面に激突させる。
「やったな、ルフィ!」
「あぁ、勝ったぞ!!」
「ルフィー!エースー!」
「2人とも、怪我は?!」
着地した2人は、勝利を確信していた。それを見ていたのか、ナミとマキノも2人に駆け寄った。
「ああ、ほぼ無傷だ!」
「強ぇやつだったが、油断が仇になった見てぇだ。しっかし…フーシャ村が、無くなっちまった…」
「いいのよ、家はまた建てればいいもの。」
「村のみんなは平気か?」
「えぇ!しっかり避難できたわよ!」
そりゃよかった!とシシシッと笑ったルフィとそれにつられて笑うナミ。
微笑ましげにそれを眺めるエースだったが、そうだったと、シキを縛る為に叩きつけた場所に向かう。
「大海賊だったみてぇだが、案外呆気ねぇもんだな…さっさとジジィ呼んで、海軍に──────待て……奴は、どこに行った……ッ!!?」
しかし、その場所にシキは影も形も無く、困惑したエースは、まともに見聞色を発動させることなく、周囲を見渡した。
そして、気がついた。己の背後にある気配に。
「─────最後の攻撃、良かったぜ?ちょびっとだが、血を流したのは久々だ。」
「……ッ!!?」
シキの声が聞こえたかと思えば、既にエースを浮遊感が襲い、次の瞬間にはルフィ達が居た場所に叩きつけられていた。
「ッが…っく、そっ…!!」
「エース!?」
「シキだ、ルフィ!!まだ、やれて、なかった!!」
「にゃろう!どこだ!!?」
「───────こっちだぜ、ルフィ?」
そして、エースと同じようにルフィもその場に叩きつけられる。
「いてぇぇぇ!!?」
「クソッ、ルフィ……!!」
「2人とも、よく戦った。その歳でお前達は強い、将来が楽しみだ。」
シキが2人の頭を鷲掴みにし持ち上げ、能力で服を浮かび上がらせる。
「だが、まだ発展途上。本物の覇気を叩き込んでやる、その身に刻むがいい!!」
浮かんだ2人の胴体に拳が深々と叩き込まれる。
「ルフィ!!エース!!」
「2人とも!!」
駆け寄ろうとするマキノとナミの行く手を阻み、シキが不敵に笑った。
「行かせねぇぜ、ベイビーちゃん?」
「っ!?」
「逃げてっ、マキノさん!!」
「で、でも…!」
「いいからッ!」
「……っ!!」
非戦闘員のマキノを逃がそうと、ナミが鉄パイプを持ってシキに立ち向かう。
「やぁあああ!!!」
「おっと…!ジハハハハっ!健気だな、だが無意味だ。誰も生かしてはおけねぇ。」
「うぁっ…!!?」
「ナミっ!!」
ナミの首を捕まえ、シキはマキノに見せつけるように視線を投げた。
「このまま捕まえるのも簡単だが……お前さん、あのピース・シーカーの嫁なんだって?」
「…っだ、だったらなんですか!!」
シキは、今までよりも更に下卑た笑みを浮かべ、悪魔のような提案をする。
「選ばせてやる。この3人を見捨てれば、お前だけは逃がしてやる。逆に、お前が捕まるのなら…この3人は見逃してやろう。」
「そんなの……っ!!」
そんなもの、選択肢などありはしない。
「マキノ、さんッ!逃げて!!どうせこいつは、マキノさんを捕まえた後に私たちを殺す!」
「おいおい、見くびって貰っちゃ困るぜ?俺は金獅子のシキ。約束は守る男だ。」
「マキノ…!逃げろぉ…っ!!」
「俺達は…っ死なねぇ!!」
「ルフィ、エース…っ…」
「ほう、まだ立つか。頑張るな!」
倒れていた2人も、マキノを逃がそうと立ち上がった。
わかっている。ここでマキノが捕まれば、シーカーが満足に動けなくなる。最悪の場合、自分のせいでシーカーが望まない殺戮を迫られる可能性もあるのだ。
ここで、マキノが逃げる事が最前の可能性が高い。けれど、マキノの感情がそれを許さなかった。
「……私が、貴方について行けば、3人は見逃してくれるんですか…!」
「あぁ、必ず。」
「マキノ、さんっ……!!」
苦しげにシキの手の中で呻くナミに、マキノは震えながら笑いかけた。
「大丈夫…きっと、あの人が、来てくれるから…っ!」
「健気だねぇ…あぁ、感動しちまったぜ!さぁ、行こうかベイビーちゃん………あん?」
マキノを連れ去ろうとして触れた時、彼女の中に眠る見聞色に、シキは気がついた。
「ベイビーちゃん…まさか覇気使いだったとはな…いや、これは……封じられている?自分でって訳じゃなさそうだな……他人が干渉して封じたのか?なんつー繊細で高度なコントロール……シーカーの実力はこれ程までか…いや、おもしれぇ。」
ぐっ、とマキノの頭を掴んだシキはにやりと笑った。
「あうっ……!!?」
「面白い見聞色だ。夢での未来予知か……研究すりゃあ、予知装置にできるか?面倒だ、無理やり解除させるか。」
それは、マキノにとってあまりにも地獄のような言葉だった。
あの地獄が、また訪れるのだ。
「かい、じょ……?まって……やめてっ…!嫌ぁぁぁぁぁっ!!?」
「マキノにてぇ出すんじゃねぇ……っ!!」
「やめろぉ…っ…やめろよッ…!!」
立ち上がり猛ったルフィとエースに向けて、シキは残酷に告げる。
「覚えとけガキども……弱ぇ奴は、何も救えねぇのさ。」
「助けっ、助けてっ…シーカー!!シー───────いやぁあああああああっ!!?」
頭のてっぺんから爪先まで、電流のように流れた覇気。あの時とは違い、激しい痛みがマキノを襲う。
悲鳴の後、数回痙攣したようにピクピクと震え、マキノは気を失った。
「っマキノさんっ!!?」
そしてその叫び声に、ナミの悲鳴に、ルフィとエースは怒りの限界を超えた。
『やめろっつってんだろうがァァァッ!!!』
身体を突き抜けるような威圧に、シキは目を見開いた。
「なにぃッ!!?は、覇王色……ッ!!?」
「もう一度だルフィ!!絞りだせぇッ!!」
「ゴムゴムのォ〜……ッ!!!」
砂塵を巻き込み突撃した2人に、冷や汗を掻きながらも、シキは尚不敵に笑う。
「ちょいとヒヤッとしたが……まさか2人とも、王の資質か…惜しい、だが1つの海賊団に王は何人もいらねぇ、待つのはただの破滅だ……学習しねぇとな……獅子威し『地巻き』!!」
隆起した地面が目の前まで迫った2人を飲み込み、2人を封じる土の塔を作り出した。
「チクショウッ!!マキノを離しやがれニワトリ野郎!!」
「口が過ぎるぜ…小僧!!」
『うわぁああああああッ!!!?』
「ルフィ!エース……!!?」
シキが握り潰すように手を翳せば、2人を締め付けるように土の塔が捻れる。
悲鳴をあげる2人に、ナミは何も出来ずただ唇を裂けるほどに噛み締めるだけだった。
「さて……手に入れるもんも手に入れた、戻るとしよう。」
「なに……アレ……!?」
今までさしていた陽の光が突如遮られたと思えば、空を島が覆っていた。
信じられない光景に、ナミは目を見張っていたが、まさかと思考を巡らせ、思い至った。
「─────能力で……島を浮かせてるの…!?」
「正解だぜ…?ベイビーちゃん!!」
ふわっと浮かび上がったシキが、マキノを抱えナミを見下ろした。
「奴が帰ったら伝えといてくれ。嫁は預かったってな!!ジハハハハッ、ジハハハハ!!!」
高笑いと共に、シキは空に浮かぶ島へと消えていった。
3人はこの日、敗北の味と、本物の海賊を知った。
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2人目のヒロインいる?
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いる
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いらない