ピースシーカー   作:イベリ

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第20話:秘境メルヴィユ

フーシャ村上空、シキが拠点とする島、秘境メルヴィユ。

 

拠点を目指し飛ぶシキは、眼下に広がっている光景を眺め、先の戦いの余韻を味わっていた。

 

「いいガキどもだった……将来が楽しみだ…その点で言えば、ベイビーちゃん…お前が俺に捕まったことは正解だったぜ?」

 

「……っ…あの子、達は……貴方なんかを……っ楽しませる道具じゃない……っ!!」

 

「ほぅ、目覚めたか……いい根性だ。気に入ったぜ。」

 

上空の風に冷めた体がぶるりと震え、目を覚ましたマキノは、シキの呟きを聞いて精一杯の抵抗を見せる。

 

ジハハハハ!と高笑いするシキに、マキノはらしくない冷笑を浴びせた。

 

「……随分と余裕そうだな。」

 

「……っ…そう…………貴方は、気づいてない…のね……っ…」

 

「あん?」

 

「貴方は……あの人を、怒らせた…っ……もう…貴方は、シーカーに勝てない…!」

 

「面白い事を言うな、ベイビーちゃん……このシキ様が負ける?ジハハハっ、有り得ねぇ。分かるか?奴が狩ってきたその辺のミーハー共とは違ぇのさ。」

 

息も絶え絶えに言葉を続けるマキノに、シキは同じように冷笑を返した。

 

それでも、マキノはどこか余裕のある態度を崩さない。自信なのか、町娘は大海賊を前に言い切った。

 

「シーカーは……貴方を許さない……貴方を、必ず倒す…地の果てまで追い掛けても…っ…!」

 

「……随分な自信だ。」

 

「だって…私のシーカーは……誰よりも強いんだもの……」

 

「………それほどの信頼か……ますます興味深いものだ…」

 

マキノの言葉でより興味をひかれたのか、シキは目を細める。

 

すると、突然全身から力を抜いたマキノは、安らかに笑った。

 

「あぁ……来て、くれた───────

 

 

 

 

 

 

シーカー…」

 

そう、マキノが彼の名を呟いた瞬間。

 

「────────────あ?」

 

背中から胸を貫く槍に気がついた。

 

ゾッと全身に怖気が突き刺さり、誰かの感情がシキの体を駆け巡る。

 

強い怒り、ただその感情だけがシキの全身を貫いた。

 

頭に強い衝撃を受けたように、シキの意識が激痛に明滅する。

 

「──────……ッ…ぶはぁっ…はぁ……!?」

 

そして、数秒するよりも前に、気合いで跳ね除けたシキは冷や汗を流す。

 

「今のは…っ……まさか、イメージを直接俺に叩きつけてきやがったのか!?ふざけんじゃねぇ…っ!痛みを伴ったイメージなんざっ…!?」

 

続け様に2本、3本と突き刺さる槍は、痛みをシキに錯覚させる。

 

本来、見聞色は相手の感情や気配を強く感じ取る能力。その延長線に未来視や、シーカーの白化などが存在するのだが、今シキが喰らったそれは、まさに荒業。

 

感情やイメージを読めるのなら、その逆。

 

イメージを送り込む(・・・・)事だってできる。

 

見聞色という覇気の性質上可能ではあるが、まずやろうと思わない。

 

可能であるだけで、そんな面倒な事をやるよりも未来視をして戦った方が余程効率がいい。こんな事をやるのは、馬鹿のやること。なにより相手の意識の隙間を縫って見聞色を叩き付けるため、極精密なコントロールを要求される。ましてやそんな事、戦闘中になんてできるはずがない。

 

けれど、痛みを感じる程に鮮明なイメージなど、触れていなければシキでも不可能だ。

 

信じられない荒業に驚愕しつつ、シキはその出処を探す。

 

「どこだ…!どこにいやがる!?───────グガッ!!?」

 

一気に見聞色で捜索範囲を広げたシキ。その範囲はフーシャ村を含む数十kmに及ぶ。

 

しかし、それでも探せるのは現地民や動物の気配のみ。

 

そして、5本目の幻想の槍がシキの胸を穿いた瞬間、その気配を辿ったシキは、地平線の彼方を呆然と眺めた。

 

「───────ジハハハッ!!!もう、戻ってきやがったか……5億の首が3人、億超えが何十人もいたはずだぜ…!?」

 

痛みに悶えるシキは、突き刺さるイメージを起点に、大元に辿り着く。そして、その人物の気配を漸く捉えた。

 

シキの見聞色範囲ギリギリ、数十km先。見聞色を使っているから気配はわかるが、覇気を使っていなければ感知すらできない距離。

 

シーカーは、そこから痛みを錯覚させる程鮮明なイメージをシキに向けて飛ばしている。

 

シーカーという男を理解したシキは、先の言葉を訂正する。

 

「……見聞色において、奴は俺より強ぇ……ベイビーちゃん、お前の信頼、間違ったものじゃねぇ。訂正するぜ、奴は…ピース・シーカーは、俺と張れる男だ…!!」

 

先の宣戦布告を経て、力を認めた3人の男達。

 

期待と悪意を込めて、シキは虚空に呟く。

 

「……明日、グランドラインの本拠点に向かう。来るなら乗りな……歓迎するぜ?ジハハハハハッ!!!!」

 

その来訪を待ち遠しそうに笑い、拠点へと飛び去った。

 

 

 

 

マキノ達からのSOSにできる限りの速さで戻ってきたシーカーだったが、到着した時には、すでに村が更地になった後だった。

 

「ルフィ!!エース!ナミ………ッ!!」

 

弱い気配が3つ固まっている場所に急行すれば、2つの土の塔を削る、ナミの姿があった。

 

「ナミ!!」

 

「…シーカー……さん…っ…」

 

「これか……!!ルフィ、エース!?」

 

土塊の塔に巻き込まれるように顔を出しているルフィ達は、白目を向いて気絶しているし、ナミはそれを掘り出すために手をボロボロにしていた。

 

すぐに2人を救い出し、下に下ろせば、息苦しそうに目を覚まし、開口一番で2人は謝罪を口にした。

 

「…すまねぇ…シーカー…ッ!!俺達…マキノを…ッ!!」

 

「連れ去られてっ…おれっ…何も出来ながっだァ…!!」

 

「ごめんなさい…っ…!」

 

「いいんだ!今はお前たちが無事で良かった。」

 

帰ってきたシーカーが目撃した村の惨状は、絶望的なものではあったが、3人が無事でよかったと安堵する。シキが直接出向いてくるなど予想できるはずがない。

 

幸い、シキの部下になろうとしていた海賊は潰せたが、大切なマキノが連れ去られてしまっては、後手に回るだけだ。

 

いや、とそこで事の経緯を振り返るシーカー。良く考えれば、情報の出方も何もかもが都合の良すぎるものだった。

 

そこで初めて、嵌められたのだと気がついた。舌打ちを一つしたシーカーは、気を取り直して3人に尋ねる。

 

「……マキノは連れ去られたんだな?」

 

「うん……私たち…何も、できなくて……ごめんなさい…っ…」

 

「いいんだ。マキノは……気絶してるみたいだが、生きてはいる。見聞色を解除されたなら、早く救出してやんねぇと…父さんも今は新世界に居るらしいから、助けに来れねぇ。俺たちでやるしかねぇ。」

 

「こ、こっからわかったのか?すげぇなシーカー…!」

 

「あぁ、あそこくらいなら射程範囲だ。」

 

そう言って上空を指さし、遥か上にある天空島全域を見聞色で探ったシーカーは、既にマキノの居場所を掴んでいた。

 

とりあえず、と3人を手当したシーカーは、天を見上げる。

 

「敵の本丸に乗り込むしかねぇ……優先事項はマキノを救い出すことだが……現地民の捕虜までいやがる。派手な陽動は控えるべきか……いや…ルフィ、エース、ナミ…動けるか?」

 

様子を見ながら3人に問えば、3人ともが頷いた。

 

「あぁ!飯も腹いっぱい食ったし、怪我も治った!行けるぞ!」

 

「俺もだっ!」

 

「私も、行けます!」

 

「よし……あの鶏野郎を後悔させてやるぞ。」

 

初めて、3人の前で静かに怒りを発露させたシーカーに少しだけ震えたが、すぐに気を取り直した。

 

シーカーの言葉に、3人はそれぞれに頷く。

 

「へっ、派手に暴れてやる…!」

 

「乗り込んで……なら、準備しないと…ルフィ!手伝いなさい!」

 

「おう!わかった!」

 

「明日……移動を済ませグランドラインに入るらしい。それまでに準備を済ませるんだ。」

 

各々が準備のために解散したあと、月夜に照らされる島を見上げ、願うように呟いた。

 

「必ず……助けに行く。」

 

 

 

 

翌日、合流した4人は作戦決行のためにメルヴィユに乗り込んでいた。

 

「しっかし…とんでもなく強ぇ動物たちがいるんだなぁここ。フーシャ村じゃ有り得ねぇな。」

 

「あんな化け物達がいたら人間なんて滅んでるわよ!」

 

「元々はグランドラインの島だ。そりゃ生息してる動物だって強くはなるさ。」

 

空に浮かぶ森を突き進み、木々をかき分けながら、4人は行軍。彼らが通ってきた道には、一撃で気絶させられた巨大な動物たちが横たわっていた。

 

「んじゃあ、どうして現地民がいて、安全に過ごしてんだ?」

 

「あぁ、それは─────あれのお陰だろうな。」

 

エースの疑問にシーカーが答え指を指す。その先には、円状に植えられた木々に囲まれた集落が現れた。

 

よく見ると、その円の輪郭に使われている木には、動物が近づいていない。

 

「ダフトグリーン、動物が嫌う毒の粒子を漂わせる植物だ。お前たちも、あの傍で匂いを吸いすぎるなよ?」

 

「毒…!」

 

強い動物が集まる場所に生えている植物、ダフトグリーン。木が自衛の為に身につけた能力であるそれは、その島々に住む人々を守る防御壁にもなっている。

 

「とにかく、あの村に行ってみよう。少しでいい、情報を集めたい……ルフィ、エースはここで待っててくれ。ナミ、着いてきてくれ。」

 

「なんでナミだけなんだよー!」

 

「ばーか、ゾロゾロ連れて歩いてたら警戒されんだろ?なら、子供がいた方がまだ警戒はされねぇ。」

 

「あー!そっかァ!なるほど、シーカー頭いいなぁ!」

 

「っつーわけだ。待っててくれ……特にルフィ、お前に言ってるからな?」

 

「ルフィ!大人しくしてるのよ?」

 

「なんだ2人とも、シッケイだな!!」

 

まだまだ落ち着きのない弟に釘を刺して、ナミとシーカーは村に向かう。

 

「気をつけろ、ナミ。ほら、手を。」

 

「ありがとっ……シーカーさん、マキノさんはまだ無事?」

 

「あぁ、無事だ。今の所何もされてないようだ。」

 

「その……シキは…強いの?」

 

「……直接は見てねぇが……見聞色は俺が上だが……それ以外はなんとも言えん……能力も未知数だしな。父さんに、少し近い気配って言えばわかるか?」

 

「ガープさん並ってこと…?」

 

「必ずしも実力がそうとは限らないがな……けど、少なくとも10年以上のブランクがあるはずだ。俺レベルと戦うなら、そこは致命的な弱点になる。勝つさ、何がなんでもな。」

 

「うん……逆にシーカーさんが負ける光景が浮かばないというか……」

 

「負けらんねぇよ。こっちはマキノ奪われてんだ。」

 

さ、着いたぞ。とシーカーの言葉に、ナミは体を固めるが、シーカーがその緊張を読み取って、ナミの手を優しく引きながら進む。

 

閑静と言えば聞こえはいいが、実際のところ二人がたどり着いた村は、お世辞にも賑わっているとはいえなかった。

 

子供はいる、女もいる。しかし、その子供の母親かと問われれば、些か歳を食いすぎている。何より、男が一人もいない。

 

そう考えながら、村を進むと様々な目線が向けられる。

 

余所者を見る好奇の目線、怯えるような視線もあった。

 

そして、思い至る。

 

ここは、シキに支配された村なのだと。

 

そこに1人、こちらを柔らかな視線で見つめる老婆を見つけ、彼女がいいだろう、と声をかける。

 

「すまない、少し話を聞きたいんだが宜しいだろうか。」

 

「えぇ…構わないよ…あんた達は……シキの手先じゃ無さそうだ。」

 

「おばあちゃん、分かるの?」

 

「あぁ、わかるとも。なにせ、この白髪のお兄さんはお嬢ちゃんを気遣っているからね。手の握り方を見ればわかるよ。」

 

ニンマリと笑った老婆は、座っていた隣をポンポンっと叩いて、2人を座るように促した。

 

「失礼する。ここは…」

 

「ここはメルヴィユ……グランドラインでは、秘境なんて呼ばれ方もしたね。十数年前だったかね…シキが来るまでは、平和な島だったんだよ。」

 

「そうか……それは、この村に若い女や男が居ないことも関係して?」

 

そう聞けば、老婆はこぶしをギュッと握って俯いた。

 

「そうさ……やつは、若い娘と男たちを連れて中央に向かった……宮殿を作らせているらしい。昔は、動物達とも共存してたんだ…最近、動物達も凶暴になってきたし……奴らがなにか薬を撒いてるようでね。孫を満足に外で遊ばせてやれもしないよ……」

 

「そうか……宮殿の作りについて、何か知らないか?」

 

「そこまでは……でもきっと、村のようになっているはずだよ。猛獣達が近寄らないようにダフトグリーンで。」

 

そうか…と呟いたシーカーは立ち上がり、礼を言った。

 

「それが聞ければ十分……感謝する。礼は……おいたが過ぎた獅子狩りで勘弁してくれ。」

 

そう言って笑ったシーカーに、老婆はポカンとした後に震えながら笑った。

 

「随分な自信だ……アンタは、なんでシキを?」

 

「昨日妻をな、奴に奪われた。」

 

「昨日の爆音はそういう……」

 

んじゃ、と手を振ったシーカーは聞きそびれた事を思い出し、振り返る。

 

「最後なんだが……なぜ、手に羽が?」

 

そう、ここの現地民には、二の腕辺りから腕撓(わんとう)側部に羽毛が生えているのだ。

 

種族問題はデリケートではあるが、なるべく誤解がないように尋ねれば、気のいい老婆は元気に答える。

 

「あぁ、これかい?そうだね……私達はきっと、鳥になりたいんだよ。」

 

そうニッコリ笑った老婆に、ナミとシーカーは顔を見合せて不思議そうに首を傾げる。

 

そんな二人の様子を、老婆は楽しそうに眺めていた。

 

 

 

 

「───────やっぱりあの二人いないじゃない!!」

 

戻ってみれば案の定。2人は忽然と姿を消していた。

 

「はぁ……ナミを残すべきだったか…?いや、対して変わらねぇな。」

 

「もうっ!こんな時に!!───────キャッ!?」

 

「ナミっ!!」

 

仕方ないと探そうとすると、ナミの背後から木々が倒れる音が響く。咄嗟にナミの前に出たシーカーたちの前に現れたのは、巨大なライオン。仕方ないと槍を構えるが、背中からひょっこりと顔を出した見覚えのありすぎるふたつの顔に、2人揃って肩を落とした。

 

「シーカー!!こいつ!捕まえたんだ!!」

 

「この森の主だったらしいぜ!ま、俺たちの敵じゃなかったがな!」

 

「ルフィ、エース………いや、待てよ…?」

 

呆れそうになったシーカーだったが、二人が騎乗するライオンを見て考えを変える。

 

従順そうに従っているところを見るに、強者には従うという弱肉強食の摂理と一定の強者への忠誠心があるようだ。

 

これは、使えるとほくそ笑んだシーカーは、3人を集めた。

 

「─────これから、マキノを救う。」

 

「……おう。ついに乗り込むんだな?」

 

「あぁ、だがそれにはお前たち2人の働きが重要だ。これは、天でふんぞり返る生意気な老いた獅子を叩き落とす策だ。」

 

「俺たち…」

 

「2人の…?」

 

そうして首を傾げる2人に、シーカーは悪どい笑みを浮かべながら、2人に命じた。

 

 

 

 

「お前たち───────明日までにこの島のボス()になれ。」

 

 

 

 




いや、理論上可能じゃない?感情を読み取ることが出来るなら、読み取らせたりイメージを叩きつけたりだって出来るはずや…!!映画での視界のリンクとか、相手に感覚を見せてるわけだから、これに近い感覚です。そう思ってください。

2人目のヒロインいる?

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