ピースシーカー   作:イベリ

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もう、前の投稿から一年以上経ってるのか…待ってる人いるかな。描きたくなったから書きます。


第21話:島の王

上空2500m、元グランドラインに存在した秘境メルヴィユ。その中央に存在する秋の模様を見せる島では、不規則な間隔で爆破音が響く。

 

「ゴムゴムのぉ〜…!!【重槍弾(バルカン・バレット)】!!」

 

「大人しくしてろ、犬ッ!!」

 

再び響いた爆破音は、ルフィとエースの戦闘の余波。今も巨大なカマキリと、巨大なオオカミを叩きのめしたところだ。

 

2人は今、メルヴィユに存在する強力な野生動物を片端から叩きのめし、従わせている。

 

その証拠に、大量の動物たちが付き従うように2人の後を歩いていた。

 

「…だいぶ倒したな…もうちょいか?」

 

「たぶんあと少しだが…こりゃ一筋縄じゃ行かねぇな。」

 

覇気を使わずともわかる、島の奥にある大きな気配。今の自分達程の強さと、巨大なシルエットがイメージとして浮かぶ。

 

そこをめざし、エースが先頭を歩き、ルフィはそれに従う。

 

しーんっ、と静まったその場で、ルフィが不安そうに呟いた。

 

「……マキノ、大丈夫かな。」

 

「平気だ。シーカーも言ってたろ、まだ何もされてないって。」

 

「でもよ……シーカーでも、アイツに勝てんのかな。」

 

「知るか、俺たちはせいぜい作戦を失敗しないようにやるしかねぇ。俺らがウジウジしてても、シーカーは勝てねぇぞ。」

 

「わかった!とにかく、これからヌシだな!」

 

「あぁ、そろそろだぞ。くれぐれも!覇気は使うな(・・・・・・)よ!」

 

「あぁ!わかってるって!」

 

シーカーの作戦により、島の王となる予定の2人は、シーカーの指示により気配を隠す為、探知されないようにする技術を教えられた。

 

二人はシーカーが直接感覚を掴ませてやらなければ習得できなかったが、それ程までに高度な技術だ。

 

「見聞色にこんな使い方があるなんざ、思いもしなかった。これなら、武装色さえ使わなければ、絶対にバレる事はねぇ。」

 

「ジンベエが言ってたシーカーの気配が掴めないって、こういうことだったのか…!見聞色を纏って、気配が外に盛れないようにしてるんだっけか?」

 

「そうだ。しっかし……世界との同化とはねぇ…考えつかねぇだろ普通…つか聞いても理解できねぇ…他人の気配を完全に真似るとかマジで意味わかんねぇぜ…」

 

ジンベエとの邂逅時、彼の言葉の意味をようやく理解したルフィは、納得したように頷き、エースは何か恐ろしい物でも見たような苦い顔をした。

 

シーカーのこの気配遮断技術は、世界との同化に等しいものだと教えられた。

 

『見聞色は意志の力という側面が武装色よりも強い。意志は常に漏れだし、止まることは無い。それをこっちの力の発散で感じ取っている。いつもの逆をすんだ。意志を内側に閉じ込めろ。簡単だろ?1度覚えればすぐできるぞ。』

 

シーカー曰く、見聞色とは意志の発露。

 

簡単に言うと自分を空気のようなものと相手に誤認させることであるが、これはとんでもなく難しい。

 

やることは、完全に心を閉ざし、あらゆる現象による僅かな意志すら外に漏らさぬ様に、緻密に体に巡らせ、見聞色で覆う。

 

すると、人の意志の発露を感じ取っている見聞色では感知することができなくなり、結果としてその場には何もいないという現象が起きる。

 

言っていることは簡単に聞こえるが、バカを言うな、簡単なはずがない。こんなもの、1度心が壊れた人間でもなければ不可能だ。

 

海賊になると言った時だって、彼は反対もせずに、そうかと苦笑した。元海軍であり、今も変わらぬ正義を掲げる兄が、時折見せる顔に関係があるのかと、エースは考えてしまう。

 

(……なぁ、兄貴……お前、何を見てきたんだよ。)

 

いやと、今は目の前のことに集中せねばと頭を振った。

 

「そろそろだ、行くぞ。」

 

「おう!」

 

二人は、この魔境の王に相対する。

己の縄張りに入り込んだネズミを見下ろし、鋭い眼光で2人を射抜く。

 

「デッケェ鳥だなぁ…!」

 

「……いや、これデカすぎねぇか!?」

 

約20m程の巨躯を誇るその鳥は、島民からも主と恐れられていた猛獣だ。

 

先程倒した大ムカデの猛獣を噛み砕き啄む姿は、圧倒的な捕食者を思わせる。

 

覇気を使うまでもない強者の波動は、2人の体を無意識に震わせていた。

 

「ははっ…強ぇな…アイツ!」

 

「ブルっちまったかルフィ?見学してていいんだぜ?」

 

「バカ言うな!俺がビビるわけないだろ!エースこそ、手が震えてるぞ?」

 

「ばーか、こりゃ武者震いだ。」

 

にぃっ!と笑った2人は一気に叫ぶ。

 

『行くぞ!』

 

月歩で空を駆け上がり、一気に接近。シキとの戦いで空中戦の経験を積んだ2人の立体機動は、シキ戦の拙さを一気に無くした。

 

「食らってけ!」

 

「ギア・セカンド!ゴムゴムのぉ〜…JETピストル!!」

 

2人の弾丸のような拳が怪鳥に突き刺さる。

 

しかし、その拳を全く応えた様子もなく、ギロリと2人を睨んで、1つバサリと翼を動かした。

 

「うおわぁっ!?」

 

「ルフィっ!?うおっ!?」

 

その動作だけで打ち出された突風により吹き飛ばされた2人は、地面に叩きつけられた。

 

「ってて…おい、ルフィ、平気か!?」

 

「あぁ、ゴム人間だからな!」

 

「あーあー、そうだったな。本当に便利なやつだぜ。しかし、どう倒すか……!」

 

あまりにも大きな体すぎて、攻撃が内部まで浸透しないのだ。

 

(今まで覇気に頼りすぎて、基礎攻撃力を疎かにしてきたしっぺ返しか……キツイぜこりゃ…!)

 

最近攻撃に覇気を磨く事に意識を向けすぎて体作りを疎かにしていた事は理解している。現実問題今のような特殊な状況でも無ければあまりないだろう。

 

出港までの時間の無さに焦りを感じていたことも確かだ。体づくりはいつでも出来るが、覇気に関してはシーカーという最高の師が居る今でなければできないことが多い。

 

現状、純粋な肉体強度であればエースはルフィに負けるだろう。

 

ほとんどが我流の鍛え方と、一流からの指導を受け続けて来た差もある。

 

「ケッ!シーカーはお前贔屓だよなぁ本当。」

 

「はぁ!?それ言うならエースだろ!?模擬戦なんて俺まだ武器ありでやって貰えねぇんだぞ!?」

 

「まぁ、動きとかは俺のが上だしな。」

 

「それでも───────っ!エース、避けろ!」

 

言い合う2人を突如影が包み込む。見上げればれば巨鳥が2人を握りつぶさんと、その鋭い鋭い鉤爪を持った足を広げていた。

 

咄嗟に避けた2人はその速度に空中戦は不利だと感じたのか、走りつつ策を練る。

 

「どうすっかなぁ……デカすぎて巨人でもねぇと攻撃通じねぇんじゃねぇかこいつ!」

 

「とにかくデッケェ攻撃じゃねぇと、俺が巨人族みてぇにデカかったら…デカかったら……─────巨人……っ!」

 

その瞬間、なにか思いついた様ににんまりと笑ったルフィは、エースに向き直る。

 

「い〜いこと思いついた…!!!」

 

「なんか策があんのか?」

 

「多分!これなら行ける!」

 

自信満々のルフィに仕方がないと呆れながらも、エースは巨鳥と向き合った。

 

「時間は!」

 

「1分!こいつくらいデカいと、溜めが欲しい!」

 

「上等!来いよヌシ!俺が相手してやる!」

 

 

 

 

 

 

「いいか、ナミ。作戦が始まったら救出はお前に任せることになる。」

 

「うん!シキとか、ソイツらを相手にしなきゃいけないもんね!仕掛けも済んだのよね?」

 

「当然だ、仕掛けはお前に渡しておく。」

 

1つ頷いたシーカーは、手にした情報を整理する。

 

「城は建設中。広さに関してはそれほどだが、地下も含めればそこそこになるだろう。」

 

「まずはマキノさんの救出ね、シーカーさん場所はわかる?」

 

そういって、遠距離から観察しその形からおおよその形を割り出した簡易的な地図に、印をつける。

 

「位置は分かってる。上空から見たこのガラス張りになっている場所に隔離されてるみたいだ。この城全体に島民の気配もある、その人達の解放と誘導も頼みたい。」

「それなら、この城を囲む様に配置されてるダフトグリーンをどうにかしないと……作戦自体が上手くいかないわ!」

 

「そうだな。まずは2人が上手くいかない限りどうも出来ん。だが、じきにアイツらがどうにかして連絡が来るはずだ。」

 

「敵の情報は……目立ってるのはこの2人……1人と1匹?」

 

「らしいな。Dr.インディゴに、大猿のスカーレット。こいつらは2人に対処させる。感じた限り、アイツらのちょっと上くらい、覇気使ってどっこいか。良い踏み台になる。倒した後お前と合流させたいが…そのへんできるのはエースだな。ルフィはそのまま暴れさせるか…」

 

「いや、エースの言うことなら聞くから、エースと合流してからこっちに来てほしいわ。」

 

「うし、それで行こう。あとは……ほら、来たぞ?」

 

シーカーがニヤリと口端を上げると、向こうの空に巨大な影が現れ、その背中から二人の顔がひょっこりと現れた。

 

「お~い!!ナミー!シーカー!」

 

「なってきたぜ、シーカー!この島の王に!!」

 

「ルフィー!エースー!って何あのバカでかい鳥!?」

 

「おわ、でか……いや、だが十分だ。よくやった二人とも!」

 

二人の到着により、手札がすべてそろった。これより、反撃の時だ。

 

「マキノを取り返して、老いた金獅子を地獄に叩き落すぞ。」

 

「任せて!」

 

「お礼参りと洒落込むか!」

 

「にっしし!おう!」

 

 

 

シキの居城。その管制室では秒刻みで天候の観測が行われる。

 

「今の所、天候に大きな変化は見られません。」

 

「そうか、続けてくれ。」

 

「かしこまりました!それと、これを。」

 

各地で見つけた優秀な航海士を攫い、時には勧誘していたシキに、抜かりはない。

 

短くなった葉巻を灰皿に擦り付け、シキは手渡された資料に目を通す。

 

「ピース・シーカー、25歳。東の海を中心に賞金稼ぎをしているようです。配偶者はピース・マキノただの村人のようです。」

 

「────情報はこれだけか?」

 

「はい…活動開始時期以外、それ以前の情報も全てありません。偽名かと思われますのでその線で情報を探っている途中です。」

 

そうか…と口を真一文字に伸ばしたシキは、懐から新しい葉巻を取り出す。

 

「─────それで、連絡はついたか?」

 

その言葉に、部下はピクリと肩を跳ね上げる。見える感情は恐怖だろうか。恐る恐ると言った具合に、部下は口を開く。

 

「そ、その……既に何日も前から連絡が途絶えているため…シキ様が東の海に降り立った頃には、既に壊滅したものと……」

 

その言葉を聞いて、一拍置いてから深く考え込んだシキは、静かに呟いた。

 

「集めた奴らは、弱かったか?」

 

「そっ、そんなことは!グランドラインでも、選りすぐりの極悪人共…でした……5億超えが3人…1億超えの賞金首は数十人用意していました……掻き集めた5000人全て、1級の海賊。間違いありません!」

 

「見誤ったか……こればかりは仕方ねぇ。元々保険として蒔いた誘き出すための情報。奴が乗らなきゃあの場で戦闘になってた……俺と言えど、なんの手札もなしに今奴と戦うのは愚策だ。ラッキーだったと考えよう。」

 

その部下は、シキが敵に対してそこまでの評価をつける所を、初めて見た。

 

いつものように無慈悲でありながら、ジョークを吐く姿ではなく、1人の海賊の顔をしていたのだ。

 

「だが、手札も無いわけじゃねぇ。アイツの女は有効に使えそうだ。Dr.インディゴ、どうだ?」

 

報告員の隣に控えていた道化の様な化粧に、白衣という特徴的な男は、この船にいる研究員であるDr.インディゴ。

 

「お頭、悪いが暫く女の研究には着手できない。いい所なんだ。」

 

「まぁいい。あのベイビーちゃんはどうだ?使えそうか。」

 

「えぇ、まぁ、はい。覇気という目に見えない力を扱うので…なんとも言えませんが、初期検査では、やはり通常の個体よりも感受性が著しく高かったという結果は出ました。スカーレットが気に入りすぎているのが面倒ですが。」

 

「ウホッウホホー!ウッホー!」

 

「えっ?嫁にしたい!?お前それは流石に無理だろ。」

 

「なんで猿の言葉がわかるんだよッ!!先祖猿か!?」

 

「はっ────ばあちゃんっ!?」

 

「違ぇよ!!」

 

『ハイッ!』

 

「………」

 

即興のコントに報告係の者は黙りこくったままポカンとしてしまう。しかし、そんな態度を気にすることも無く、何も無かったかのように続けた。

 

「まぁ、その辺は任せる。引き続き頼むぞ。」

 

「はっ!」

 

部下を下がらせ、シキは葉巻に火をつける。

口に溜まった煙を味わってから、濃い煙を吐き出す。

 

「……そろそろグランドラインか…奴らは?」

 

「今の所この島に乗り込んだという情報はありません。」

 

「そうか…ビビって乗り込んでこないはねぇわな。あのレベルの覇気で乗り込んでこないはずがねぇ…警戒は怠るなよ?」

 

「……はっ!畏まりました!」

 

監視でんでん虫のチェックを入念にし、いつでも迎え撃てる準備を整える。シキ自身、力の衰えは年々強くなっている実感がある。それ故に、準備は怠らないのだ。

 

それは恐れではなく、シキ自身の周到さを如実に表していた。

 

来るシーカーに向けて、シキはニタリと笑う。

 

「……さぁ、来るなら来いよシーカー…俺は、絶対にお前を部下にするぜ?ジハハハ!!ジハハハハッ!!」

 

そうシキが笑った瞬間、派手な爆発の衝撃が居城まで届き、驚きの表情の後に、ようやく来たかと笑った。

 

直後、あわただしく管制室に飛び込んできた部下の言葉に、その笑みは消えることになる。

 

「シキ様!大変です!奴ら、秘境中の動物たちを引き連れてやってきました!?」

 

「はぁ?ダフトグリーンがあるだろうが!なに騒いでやがる。」

 

「そ、それが!いつの間にか爆弾が仕掛けられていたようで、すべて吹き飛びました!?」

 

「なッ!!!?馬鹿な!!俺も見聞色で常に見張っていたはずだ!?奴の気配どころか、あの餓鬼どもの気配だって感じてねぇぞ!?」

 

「シキ様、お急ぎを!すでに目前まで迫っています!」

 

準備する余裕はなかった。思考を防衛から殲滅に切り替える。

 

「Dr.インディゴ!スカーレット!行くぞ!」

 

2人に合図を出し、自分がいち早くバルコニーからシーカー達を見下ろした。

 

「ジハハハハハッ!壮観だな!これ程猛獣どもが集まり、こちらに攻めてくるとは!正に百鬼夜行!戦争は久々だ!存分に暴れよう!」

 

久々の強敵、自身の再臨をこの男を従える事で世に知らしめ、世界を支配する。溢れ出したシキの意志が、その場を埋め尽くす。

 

その様はある種のカリスマを放ち、その場にいた大勢の部下すらも、ただ1人の意志が飲み込んでいく。

 

「野郎共!!恐れるな!お前たちの後ろには俺がいる!!猛獣は数で推し潰せ!餓鬼共に、ホンモノを見せてやれ!!」

 

痛みも苦しみも、恐怖も後悔も、全てを飲み込み、支配欲だけが男達を塗りつぶす。

 

『ウオオオオオオオッッ!!!!』

 

向かう数千の軍勢を一瞥もすることなく、先頭を歩くシーカーは、ただシキだけを睨みつけていた。

 

「ジハハハハハッ!!シーカー!始めようぜ!!俺とお前の戦争をよォ!!」




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2人目のヒロインいる?

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