ピースシーカー   作:イベリ

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長生きしたけりゃ、値段が下がっても殺せ。賞金がなくとも、船員は皆殺しにしろ。それが、長く賞金稼ぎやるうえでの鉄則だぜ、坊主……大切なもん守りてぇなら、尚更な。

────ある賞金稼ぎの教訓


第24話:白槍VS金獅子

「【斬波】ッ!!」

 

「【空割(ブルワリ)】ッ!!」

 

水面すらも割って見せる飛ぶ斬撃と、シーカーの白槍が激突する。数瞬の拮抗を見せたあと、シーカーの白槍が斬撃を打ち消し、シキに迫る。

 

「うおぉっ!?」

 

それを間一髪で回避したシキの背後の大地が、縦に割れた。

 

冷や汗と共に、シーカーの殺意が紛れもない本物であることを理解する。

 

(大地を割りやがった!?これほどの覇気使いとは…!!)

 

顔を顰めた瞬間、シキの目の前からシーカーが掻き消える。

 

間髪入れずに真後ろから突き出される槍をギリギリで避け、大きく距離をとる。

 

(ちぃっ!?コイツ、本当に浮遊系の能力者じゃねぇのか!?ワプワプの実、でもねぇ……正真正銘素の速度!)

 

空の覇者を自負していたシキを上回る速度。予備動作も、空を蹴る音も無い移動は、シキに苦戦を強いた。

 

「どうした、自慢の機動力は?」

 

「小僧がッ、少し勘違いしてや居ねぇか?そうやって特殊な覇気を纏うのはお前だけじゃねぇんだぜ!?」

 

そう啖呵を切ったシキの気配の変化に、いつかの記憶が引き出された。

 

「覇王色を纏うか。まぁ、ロックスの海賊団その一員。できねぇはずがねぇな。」

 

「ほぉ?この使い方も、ロックスのことも知っていやがるのか。」

 

「銀斧、アイツとやった時にな。」

 

「なにぃ…?」

 

その言葉に、シキはピクリと反応した。

 

「そうか…謎が解けた。お前の正体にもな?」

 

「……へぇ、そうかよ。」

 

「脱獄後に仲間を集めるため、探した内の1人に奴がいた。暫くした後にやつにあったが死に体、死ぬ寸前に俺が間に合っただけだった。」

 

シキが脱獄し水面下で仲間を集めるにあたってまず考えたのは、ロックス時代に船を共にした元仲間たち。

 

百獣のカイドウ、ビッグマム、白ひげエドワード・ニューゲート、王直、そして銀斧。

 

ネームバリュー、実力共に高水準であるシキが認めた本物の大海賊達に声をかけていた。しかし、どれもこれも我の強い船長の器を持つ者達だ、誰一人として首を縦に振るものはいなかった。

 

その中にいた、確実な実力者である銀斧が、ボロ雑巾のような状態で倒れていた。

 

「奴は左足と右腕を奪われ、死ぬまで後数分だった。ガープやセンゴクにやられた物とばかり思っていたが……後の新聞で知った、アイツはたった一人のガキに無様に敗北し、そして死んだのだとな。」

 

「………」

 

「ようやく理解した。お前という実力者が無名のまま生温い東の海にいるわきゃねぇ。ハートランド・ギネス。通りで、ピース・シーカーという男の情報がなかったわけだ。えぇ?ガープの息子ぉッ!!」

 

「ッ!!」

 

猛ったシキは、覇王色を全開に大気を軋ませながら急接近。

 

覇王色を纏った斬撃とシーカーの聖盾が激突し、白い稲妻と黒い稲妻が奔り、大地が悲鳴をあげる。

 

「ジハハハッ!!!俺の覇王色をも防ぐかぁ!!流石はガープの息子!お前は本物だァッ!!」

 

「クッ!?」

 

大きく吹き飛ばされたシーカは岩山に激突。衝撃に肺の中の空気をすべて吐き出したように呻いた。

 

「どうした、威勢がいいのは最初だけか?」

 

「言ってろ…!」

 

飛び出したシーカーはそのままシールドバッシュの体制のままシキに突撃。直線速度では大きく有利をとれているシーカーの覇気を纏ったバッシュが激突し、シキを吹き飛ばすが、流石フワフワの実の能力者。一瞬で体勢を立て直し、再び2人の攻撃により稲妻が奔る。

 

「グボッ!?やはり、速いな…!だがぁ!これしきで制空権を握っただなんて思ってねぇだろうなぁ!?」

 

くんっ、と手を空に翳したシキ。すると、瓦礫や砂が一つに混ざり合い、獅子の形を成す。

 

「【獅子威し・黒鉄巻(てっかまき)】!!」

 

顕現した獅子は黒く染まり、強力な武装色の覇気を纏う。

 

「数の有利は得た。卑怯とは言うまいな?」

 

「それで有利になったつもりか?父さんの話も誇張だなこりゃ。」

 

「ジハハハッ!ほざけ小童ぁ!!」

 

地鳴りのような咆哮をあげて襲い掛かる土塊の獅子。しかし、シーカーは油断なく構え、穂先を獅子に向ける。

 

「【刺穂黎・瀑牙(しぼり・ばくが)】ッ!!」

 

それは、数年前にシャンクス相手に放ったものとは練度の桁が違う。最近ますます若返ってきた白髪交じりの父の拳とタメを張る絶技。加えて、シーカーの武装【鋭化】により、触れた部分の覇気を乱され、獅子は覇気を維持出来ずに貫かれ、構成していた土塊ごと彼方に吹き飛ばす。

 

「厄介だな…!その白い覇気!」

 

「だろうな、覇気の概念を根底から覆すもんだと言われちゃいたさ。つーか、いいのか?」

 

「あん?」

 

脈絡のない言葉に首を傾げた次の瞬間。シキの耳元でシーカーが嗤った。

 

「油断大敵だぜ?」

 

「なッ────ガァッ!!?」

 

ザクリと背後から脇腹に突き刺さった穂は、体を貫通。すぐさま引き抜き、シキの体を蹴り飛ばして壁面に叩きつける。

 

降り立った2つの影が、シキを見下ろした。

 

ぼたぼたと溢れ出る血潮、ジュクジュクと熱を持つ腹部、久方ぶりに感じた死の気配。しかし、それよりもシキは目の前の事実に驚愕する。

 

 

 

 

 

「どういう、ことだ……!?な、なぜ……お前が、二人(・・)いる!?」

 

 

 

 

 

そう、シキの眼には間違いなくシーカーが二人いる。おかしな状況にシキは狼狽えた。

 

(どういうことだ…!?奴は二人いる、俺の見聞色でも間違いなく…!!)

 

肉眼でも、熟練の見聞色ですら、その場にシーカーは二人いることを証明してしまっていた。

 

『驚いたか?見聞色で視ても俺が二人いることを感知しているだろう?』

 

「ま、まさか…これも、イメージを叩きつけてるってのか…!?」

 

その言葉に、シーカー達はニヤリと笑った。

 

『ご明察。お前はこれから、何が本物なのかを見抜かなければ俺には勝てない。』

 

「こいつ……!」

 

ただでさえ速度で上回られているというのに、それが二人になったことで、圧倒的に不利になった。

 

(ガープやセンゴク、ロジャーとは別の強さ……!久しぶりだ、ここまで追い詰められるのは…!!)

 

シキが正面から戦った者の中で、明確に強いと呼べるものは三人。全盛期のガープ、センゴク、そして海賊王のロジャー。しかし、この三人とシーカーは違う角度の強さを持っている。

 

(巧い、とにかく巧い!こと覇気の制御に関して言えば、生来の覇気に物言わせる大味のロジャーを凌ぐ!過去現在を見ても、俺の知る人間にこれほどの覇気使いはいなかった!)

 

そうして、ようやくシキは慢心と油断を捨てる。足から二刀を引き抜いて久方ぶりにその手で扱う。

 

「能力での小細工もお前にゃ通用しねぇ。ならば、俺は剣士としてお前に対抗するまでだ。」

 

「なるほど……互いにこっからが本番ってことか。」

 

纏う覇気を見ぬいたシーカーはシキの本気を感じた。さすがは大海賊と言われた男だ。覇気も、剣気も今の海軍には上澄みの一部を除いて対抗できるものは皆無だろう。

 

だが、恐れることは無い。

 

あの時の再演というだけの事だ。正真正銘、今回はたった一人でだが。

 

ルフィとエースは既に勝利、残るは己の勝利のみ。ナミが回収したマキノの意識を回復させることも出来た。4人と捕虜は既に脱出済み。もう力を抑える必要は無い。

 

シーカーも抑えていた覇気を解放。

 

数秒の睨み合いの末、先にシーカーが動く。滑るように石突きを鷲掴み、横に殴りつける様に振り抜く。

 

「【乱尾空(ランビック)】ッ!!!」

 

「【獅子舞・歌武羅(カブラ)】ァッ!!」

 

二刀の横一閃と、シーカーの横凪の一閃が激突。

 

触れることもなく大気を揺らすその衝突は、激戦の開始の合図だった。

 

左右に散ったシーカーはシキを挟むように位置取る。

 

「【酒覇流道(シュパルトウ)】!!」

 

飛ぶ斬撃ならぬ、飛ぶ突きが両側から無数に放たれる。

 

左右から迫る攻撃を見聞色と能力で飛び回るシキを追撃する。シーカーは飽和攻撃によって、シキの視界埋め尽くし、逃げ場をなくしその場にシキを縫い付ける。

 

その無数の攻撃の中から、シーカーが左右から突貫。息もつかせぬ攻撃に、シキは舌打ちをした。

 

『【空割(ブルワリ)】ッ!!!』

 

真上から振りかぶった2つの槍を二刀で受け止めた時、シキは再び驚愕する。

 

(衝撃に重さまで…っ!?)

 

どちらかが幻であると理解しているのに、衝撃も重さも、確かに感じている。

 

(これがイメージだってのか…!?俺との戦闘中にっ、これ程正確なイメージを構築し俺に叩きつけているってのか…!?)

 

ただの幻と甘く見ていたシキは、認めていてなお、シーカーの見聞色の異常さに戦慄する。

 

流れる冷や汗、揺れる感情を読み取ったシーカーは、ニヤリと笑った。

 

「どうしたよシキッ!!覇気がッ!乱れてるぜ!?」

 

「ぐぉぁぁあっ!?」

 

乱れた覇気の一瞬を突き、覇気を爆発。シキの防御諸共吹き飛ばす。一蹴りで追い付いたシーカーは蹴りの連打を浴びせ、顔面を掴みシキを真下に叩きつけるように投げる。

 

「お前は所詮過去の遺物ッ!!」

 

「ガッ!?ぶぐぁッ!!?」

 

「俺には油断も驕りもねぇ!」

 

一気に月歩でシキのもとに跳んだシーカーは、脚に覇気を収束。鋭化により脚が純白に発光し、静かにその場を押し潰すような圧が支配する。

 

「英雄とほぼ殺し合いを数年間続けて鍛え上げた覇気だ!ブランクのあるオマエごときに負けてらんねぇんだよッ!!」

 

そして、遂にシキの目前に迫ったシーカーは、シキの胴体ど真ん中にその脚を叩きつける。

 

「【銃脚・周豪(しゅごう)】ッ!!」

 

最大威力の攻撃を土手っ腹に撃ち込まれ、シキは岩盤を破壊し、大きなクレータの真ん中で大の字に倒れる。ピクリとも動くことなく、完全に再起不能状態。

 

それを見届け、着地したシーカーは槍を支えに膝をついた。

 

「はぁッ……はぁッ……!」

 

多大な覇気の消耗。正直なところ、ぎりぎりだった。シキのボルテージが上がるのがもう少し早ければ、今立っていたのは自分ではなかったかもしれない。

 

「程度だなんていったが…ギリギリだった……!」

 

覇気のレベルも高く、耐久力も並ではなかった。

 

油断も慢心もなく、開幕から全力で飛ばしたことが功を奏したということだ。

 

一息ついたシーカーは、上空に浮かぶ島で待つマキノ達に合流するために跳び上がると、島の淵から見下ろしていた三人の下に着地する、それを見た三人がわらわらと寄ってきた。

 

「大丈夫かシーカー!?あの鶏のおっさんは!?」

 

「馬鹿、ここに来たんだから倒したに決まってんだろ!?」

 

「マキノさんは無事よ!って、シーカーさんも傷だらけじゃない!速く手当てしましょう!」

 

「おーおーわかったわかった一気にしゃべんな……!」

 

結構ダメージが来ていたシーカーは、とにかくマキノの下に近寄ると、マキノは少し憔悴した様子ながら、シーカーの姿を確認すると柔らかく微笑んだ。

 

「お帰り、なさい……シーカー……」

 

「あぁ、ただいまマキノ。遅くなって悪かった。」

 

「信じてた……来て、くれるって…だから、いい、の。」

 

そういってまた満足そうに笑ったマキノを抱きしめると、確かに彼女のぬくもりを感じた。そのぬくもりが、守れたことの何よりの証のようで、誇らしかった。

 

「さぁ、帰ろう。俺たちの────」

 

ふと、そこで気が付いた。

 

なぜ、まだ島が浮いている?

 

その直後、最大級の警鐘を鳴らしたシーカーの本能が無意識にマキノを抱き寄せ、盾を構えた。

 

ガギンッ!と刃を防ぐ盾の向こう側には、倒したはずのシキがボロボロのままに立っていた

 

「流石といったところか。だが、捕えたぜ?」

 

「シキッ────がァッ!!?」

 

「シーカー!?」

 

そのまま覇王色により吹き飛ばされたシーカーは、なんとかマキノへの衝撃を無効化したが、その分の衝撃がすべてシーカーの体に集中。多大なダメージを負ってしまった。

 

「シキッ!?」

 

「野郎!行くぞルフィ、ナミ!!」

 

「あぁ!!」

 

「うん!!」

 

即座にシキに飛び掛かった3人だったが、シキは振り返りざまに触れることもなくを吹き飛ばし、空中に放りだされた。

 

「きゃぁぁぁぁあ!!!?」

 

「ナミッ!!」

 

「クソぉぉぉっ!!シーカー!マキノォォォ!!」

 

何も言わぬまま、落ちていく三人を眺めたシキは、肩を揺らしながら息を吐き出す。

 

「今、俺はオメェ達にすら構う余裕もねぇ…!」

 

ビタビタッと、地面を濡らす大量の血すら無視して、シキは狂暴に嗤い、歩み寄りながらシーカーに言葉を投げかける。

 

「大技の直前、お前が見聞色での分身を解いたとき……俺はお前のイメージの叩きつけ、それをやってのけた!一か八かだったが、運は俺に味方したらしい…!!二度とできる気はしねぇがなぁ!」

 

あの一瞬、シーカーは最大威力を叩き出すため、イメージの送り込みを止め、リソースを威力のみに割いていた。ゆえに、見聞色での探知を十全に行えなかったゆえにシキの分身を見ぬくことができなかった。

 

(完全に、倒したと思っちまった…!賞金稼ぎの鉄則も、忘れていた…!!)

 

今のたった一撃でこれほどのダメージ。なんという覇気だろうか。

 

大海賊の覇気とやらは、本物らしい。

 

しかし、シーカーにも意地がある。

 

「すまない、マキノ……これから、少し揺れる。」

 

「いいの…私の事、気にしないで……置いて、シキを……」

 

「できるか。お前が死んだら、どのみち俺も死んでやる。」

 

勝気に笑ったシーカーに、マキノは安心したように身を預ける。

 

マキノを落とさないように、固く結びつけしっかりと固定する。

 

「掴まってろマキノ。」

 

「うん……!」

 

「ジハハハ!!卑怯とは言うめぇ?これが海賊だ、諦めな!」

 

「もともとテメェみてぇな海のクズに正々堂々なんざ期待してねぇよ!」

 

槍を横に振りぬき、覇気を纏う。その白い輝きは、シーカーの精いっぱいだった。

 

互いに震える足に活を入れ、獰猛に嗤った。

 

「はぁッ……はぁ…ジハハハ!!互いに満身創痍か……テメェが死のうと俺が死のうと、絞り切ろうやガープの息子ォッ!!」

 

「はぁ……はぁっ…!来いよ大海賊……!テメェの野望も心臓も、この白槍が穿ってやるよォッ!!!」

 




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2人目のヒロインいる?

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