ピースシーカー   作:イベリ

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おまたせ。三月つらかった……鬼のような残業もうやりたくない…

というわけでどうぞ。


第26話:太陽に

「ジンベエ!海軍の方の報告された座標はどこですか!!?」

 

「あと4海里ほど!!」

 

シキの動向を追っていた海軍より情報が入ったのがつい昨日の出来事。

 

以前よりシーカーと交流のあったジンベエに白羽の矢が立ち、助力の要請、必要であれば救助要請が出ていた。ガープから仔細を聞いたジンベエはすぐさま船を出そうと、リュウグウ王国を発つ準備をしていた時、王妃オトヒメが自分も向かうと申し出てきたのだ。

 

『ここで行かなかったら、私はきっと、生涯立ち直ることができない』

 

あの一件以降、人々に姿を見せることが少なくなったオトヒメが、久々に顔を見せて言ったのだ。

 

強く語った彼女の気持ちを汲み、無理をしないことを条件に乗船を許可した。

 

「じ、じんべえ!?本当にこれ上がれるのですか!?」

 

「掴まっとってください!海軍に指定された座標はグランドライン前半!!最速で向かうにはこの海流に乗って逆走するのが一番早い!!」

 

「うおぇ……目がまわって……なんか出ちゃいそうです…っ……」

 

「おい誰かオトヒメ様にバケツもってこい!!?」

 

後少しだとわかっていても、心配が勝つジンベエは荒々しい海流を乗りこなし、いつも以上に焦っていた。

 

何せ、敵はかのゴールド・ロジャーと覇を競っていた豪傑。金獅子のシキだ。現海軍元帥、そして英雄ガープによりようやく捕らえることができた大海賊だ。覇気の水準も、能力の凶悪さも、今の新世界にいる海賊などとは比にならないだろう。

 

そしてようやくジンベエの覇気の射程圏内に入ったとき、ジンベエは身震いするほどの衝撃を受けた。

 

(なんじゃッ!!?今の覇気は!!)

 

とてつもない威圧感を持つ覇気と神聖さを感じさせるほどに清廉な覇気が衝突し、片方が飲み込まれた。

 

激突の気配と共に叩きつけられたイメージは、正しく竜。

 

その時に、決着がついたのだと遅れて理解した。

 

シーカーは勝ったのだ、あの大海賊に、賞賛と敬意を心の中で送りながら、ジンベエはシーカーとマキノの覇気が消えかけていることに気が付く。

 

どんどんと彼らの弱い気配が近づいていることから、落下しているのだろうことはわかった。しかし、二人の気配が余りに希薄になりつつあるため、ジンベエはついに二人の気配を見失う。

 

(マズイ……!二人の気配を見失ってしもうた…!!)

 

覇気で全開に広げ二人を探すジンベエの隣に蹲っていたオトヒメが、突然立ち上がった。

 

「……ジンベエ、浮上の準備を!!私はお二人を!!」

 

「っ!?オトヒメ様!!待つんじゃ!この海流の中ではワシら魚人ですらたただじゃ済まんぞ!?」

 

しかし、その忠告を無視し、オトヒメはシャボンに包まれた船を飛び出した。

 

「急いで浮上するんじゃ!!二人も、オトヒメ様も見失ってしまう!人魚部隊、浮上後すぐに海中の三人を捜索しろ!!」

 

大荒れの海のなかを

 

新世界の以上気象、異常海流の中、二人の手を掴んだ人物は思い切り海中から跳び上がり荒波を超える船に大声で叫ぶ。

 

「─────ジンベエ!お二人はココですっ!!!!」

 

「オトヒメ様!!?あんた一国の王妃だってこと忘れてないでしょうな!?」

 

「そのような肩書!お二人の命に比べれば泡沫よりも軽い物!お二人を救えるのならば、この肩書も命も、血潮さえ!今度こそ捨てて見せましょう!!」

 

二人の気配を察知したオトヒメが飛び出し、激流のなかを突っ切って二人を引き上げた。

 

「アラディン!お早く!」

 

「わかっている!マキノの体温が下がってる!これは、覇気の消耗も激しい…それにシーカー…!内臓のダメージがひでぇ……!二人とも低体温症の症状もある!急いで体を拭いて─────」

 

そうして、体温を測っていたアラディンの手を掴み、懇願するようにマキノが縋った。

 

「……しー、かーを…たす、けて……!」

 

「……っ!!」

 

「おねがい、します……シーカーを、たすけ、て……っ……!」

 

その懇願は、小さくともこの船に乗るすべての魚人に聞こえた、あの日の再現に等しかった。

 

魚人島の負の記憶。過去に魚人島を救い、オトヒメの暗殺を阻止した夫婦を見殺しにしかけたあの日は魚人島に生きる者にとっては後悔してもしきれない十字架。

 

だからこそだろう。その瞬間、何も、誰も言えなかった。オトヒメですら、口から何か言葉を絞ろうとしていたが、うまく声を出すこともできず、口をパクパクと動かすだけだった。

 

また、自分たちは大恩人たちに同じ思いをさせてしまうと思いながらも、誰も動けなかった場で、ただ一人、マキノの手を強く、強く握ったのはアラディンだった。

 

「─────あの日、俺たち魚人は罪を背負った!あんた達という何よりも得難い隣人を裏切ったことだ!!」

 

マキノに流れてくる、後悔と手を取れなかったあの日の自分に対する嫌悪は何よりも雄弁にアラディンの心情を表してくれていた。

 

「あの日、迷って恐怖した俺たちは!!天竜人共と何一つ変わらねぇくそ野郎どもだった!!」

 

「だから…っ!だから今度こそ!!お前たちを救うことに迷わねぇ!!!」

 

その言葉に、彼の過去を聞かされていたオトヒメは、自分の体に鞭を打って声を絞り出し、マキノの手を握る。

 

「許してほしいだなど、私達はおこがましいことを、言えません。ですが、私も…!今度こそ迷いません!!見ていて、くださいっ!!!」

 

疲労とシキに与えられたダメージにより虚ろとなった目を二人に向け、マキノはゆっくりと意識を失った。

 

何とか支えていたオトヒメも、もともとの虚弱な体質により意識を失いかけるもなんとか踏ん張り、マキノを自分の手で運ぶ。

 

「私たちは、驕っていたのです。世界貴族とは違う、我々は高潔な種族なのだと…!でも、ちがう、違ったんです!ここから、私たちは変わらねばなりません…っ!認めなければ…!変わらねば、真の意味で彼らの隣に寄り添うにはっ!マキノさんが拾ってくれたこの命を使うくらいしなければ釣り合わないっっ!!!」

 

「私たちは変われるのだと!!世界よりも前に!彼らに証明しなければいけないのですっ…!!」

 

「でなければ私たちはっ!!この大切な隣人に、頭を下げる資格すらもないっ!!!!」

 

その言葉の後、マキノはしっかりとオトヒメを見つめ、何も言わずに眠るように意識を失った。

 

しかしその顔は、彼らの隣人となったあの日のような、優しい笑顔だった。

 

「王に連絡を…オトヒメが、恩人を連れて参りますと。」

 

 

 

 

 

「─────っ……ここは…?」

 

ぼんやりとした視界の中、気が付けば見慣れぬ天井を見上げ、布団にくるまれていた。

 

腕には管が幾本も刺さっており、輸血パック、点滴とつながり自分の命を繋いでいた。

 

なぜこうなっているのかあまり思い出せず、頭をひねり直近の出来事を振り返る。

 

「確か……マキノが、シキに……そう、だ…っ!!シキッ!!!」

 

ガバリと起き上がり手に繋がった管を引き抜いてかかっていたコートを羽織り、盾を装備し立てかけていた槍を掴もうとしたとき

 

「あ……?槍どこ行った…?」

 

槍が部屋のどこにもない。もしや、シキに敗北し捕まっているのか?そう考えたがすぐにそれを否定する。

 

(いや、俺を拘束しないほどシキは驕ってねぇ……なら、何だこの状況は……!?)

 

より一層混乱し、ひとまずベットに座りなおすシーカーは体の状態を確認する。

 

「体に問題はねぇな…でも治療の跡がある、ってことは…戦った後どっかに保護された…?」

 

現状が掴めぬまま頭を抱えたシーカー。そんな時に扉がゆっくりと開いた。

 

「シーカー、今日もお見舞いにき、た………」

 

「ま、マキノ?無事だったか!よかっ─────ごふぁッ!?」

 

安堵の言葉を漏らそうとした瞬間に、彼女とは思えないほど派手なタックルでベットに再びダイブすることになる。

 

「ったぁ……おい、どうしたんだよ…まったく…」

 

そうして飛び込んできたマキノを見れば、心底安心したように笑っていた。何事かと固まっていると、マキノがようやく口を開く。

 

「大丈夫とはわかっていたの…けれど…うん、やっぱり目が覚めてくれると嬉しくって…」

 

「あー…そうか…俺はどの位ねてた?」

 

「2週間よ。」

 

「俺ってなんだかケガするといつもこんな感じだな…」

 

そう諦めつつマキノを宥め、現状を確認する。

 

「ここはどこなんだ?」

 

「魚人島の端っこにある治療院。あの場所からだと、魚人島が一番近くて設備も整っていたから、ある程度の処置を済ませた後急いでここに連れてきてくれたの。オトヒメ様とジンベエさんたちに感謝しなきゃね。」

 

「そうか……でけぇ借りが出来ちまったな。」

 

ようやく興奮から覚めたマキノは、あの時の事を語ってくれた。

 

「シキ、そういやあ倒したんだったな……その時に槍も壊れちまったな。」

 

「うん。あんなに激しい戦いだったし、仕方がないわ。それに、あの槍って海軍で初めに支給された物でしょう?きっと寿命だったのよ。」

 

「それは…何とも言えねぇな。腐っても黒刀の槍だったわけだし…未熟だったと諦めるさ。意外と愛着あったんだがなぁ」

 

「噓おっしゃい。この間2億で買い取られそうになって揺らいでたじゃない。」

 

「そりゃお前、2億となりゃなぁ?」

 

「この間の1樽80万ベリーのお酒が10樽もパーね。」

 

「やめろ!思い出させねぇでくれ!畜生!俺のとっておき……!やっぱりあいつは殺して正解だったな!!」

 

実は、シーカーは割と借金癖とは言えないまでも、衝動買いをする悪癖がある。とはいえ、すでに借金も返済し終えているのだが、衝動でバカみたいに高い酒を購入し、あまり変動のない酒場の帳簿に大赤字を多いときに半年に一回は刻むこともしばしば。

 

「ルフィたちは?」

 

「三人とは、もう連絡を取ってる。羨ましがられたけど、魚人島には自分たちの力で行きたいって。」

 

「ははッ、心意気はもう立派な海賊だな。」

 

「そうね、あの子たちがいなかったら、私たちもどうなっていたか…」

 

「そうだな、帰ったら飛び切りうまい飯でも作ってやろうぜ。ナミには、本でも買ってやろう。」

 

「そうね。」

 

そう談笑するその部屋に、控えめにノックの音が響く。扉の向こうの人物に、二人は声も聞くこともなく答えた。

 

「入っていいぜ。感謝するよ、ジンベエ、そしてオトヒメ様。」

 

「……私たちは実質二度もあなた達に命を救われた。」

 

「はい…あ、その…いいえ…救われたのは、私の方であって…」

 

マキノの言葉にうまく答えることができず、オトヒメはやり場のない感情を持て余すように、手を弄び視線を泳がせていた。

 

両者の間に、重苦しい沈黙が流れた。数秒、或いは数十秒の後に、オトヒメが意を決したように口を開いた。

 

「……お二人に、お時間をいただきたいのです。」

 

「………わかりました。」

 

二人の神妙な気配に、何やらあれあれ?と首を傾げるシーカーは、ジンベエに小声で語り掛ける。

 

「…お、おいジンベエ…なんかあの二人雰囲気おかしくねぇか?前はもっとこう、仲良くなかったか…?」

 

「おぬし…覚えておらんのか……?まさか、マキノからも……いや、この後で知ることになるじゃろう。ワシらの罪も、何もかもな。」

 

「……?」

 

なにがなんだか理解しきれていないシーカーは、そのまま流されるようにジンベエの後をついていく。その間も流れる空気はさながらお通夜。居心地の悪い雰囲気に、既に治っている傷が痛むような気がした。

 

暫くそのままついていくと、そこはあの日訪れた場所だった。

 

「海の森……なんであんなに人が…てか王もいるし…?」

 

そしてよく見れば、その場には数百を超える魚人が、何やら緊張した面持ちでこちらを見ていた。

 

魚人たちの前まで来ると、オトヒメは民たちの前に立ち、シーカーとマキノの二人を見遣った。

 

「…シーカーさん、あの日。あなたは当時の事を覚えていらっしゃらない…そうでしたね。」

 

「…あの日…4年前の事か。だったら、まぁ、そうだぜオトヒメ様。それとこの人たちは何か関係が…?」

 

こくりと頷いたオトヒメはあの日の顛末をぽつりぽつりと語り出した。

 

曰く、あの日魚人は理解したのだと。我らが蔑んでいた存在と何も変わらぬと思い知らされたこと

 

曰く、結果的に救うことができただけであり、マキノの心を傷つけたままにしてしまったこと

 

曰く、最も得難き隣人を最悪の形で裏切ってしまったこと

 

オトヒメの語りを聞き終えたシーカーは頭に手をやって、そうだったな、と呟いた。

 

「…俺も失念していた。あんた達と、俺たちの問題はずっと俺が思うよりも根深いものだった。その法律も、忘れていたよ。」

 

「いいえ、そうではありません。私たちに自覚がなかった。それだけなのです。」

 

「…マキノはこのことを俺に4年間隠し続けた。あの日の傷をそのままに。」

 

「……っ!」

 

「だが、あんたの努力は否定したくない。嫌うのは、この記憶を持つのは自分だけでいいと、俺に口を閉ざした。」

 

わかるよな?と、オトヒメに目線を向けると、覚悟を決めたように民もネプチューンとオトヒメもジンベエも、アラディンとその船員もその場に手を、頭を擦り付ける。

 

「国を代表して…いいえ、魚人を代表してあなた達に謝罪を。」

 

「民は、悪くないんじゃもん。すべては、歴史に屈しあのような法を敷いた我々王族の責任。どうか、この通りじゃもん。」

 

そういって土下座をするオトヒメとネプチューンを見て、マキノは少し視線を迷わせた。

 

「私たちは、驕っていた。私たちは違うと、誰かを虐げる者たちとは違うのだと…けれど思い知ったのです。あの日あの場所で、私たちは変わらねばならないと!」

 

「お主らに許されるなどとは思っておらん。だが、ここで懺悔せねば、振り返る事すらできなくなってしまう!」

 

「厚かましいことは百も承知している!!許さなくていい!だからあの日の事に、俺たちなりにケジメをつけさせてくれ!!あんたたちを裏切ったこと!!信頼を無下にしたこと!!すまなかったッ!!」

 

「すまなかった、マキノちゃん!」

 

「ごめんよ…!!アタシも、あの時何もできなかった…!!」

 

オトヒメ、ジンベエ、アラディンの言葉に、堰を切るように民からも謝罪の声が上がる。

 

よく見れば、頭を下げる魚人の中にはあの日自分たちに弁当を持たせた店の店主の姿もあった。

 

その姿を見て、マキノは不安げな視線をシーカーに向ける。しかし、シーカーは彼女の視線に応えることなく、首を横に振った。

 

「心に従え、それに…聞いてみろよ。な?」

 

その言葉に、マキノは意を決して目を閉じる。あの日、あの時に発現した己の力。今までずっと嫌っていたこの力を、使って再び誰かの声を聴く。

 

怖い、怖くて仕方がない。けれど、それよりも、もう一度信じてみたくなった。

 

耳を澄ませ、マキノは見聞色を呼び起こす。

 

「─────────」

 

全ての声を聴いたマキノは、一つ一つに意識を向け、その声を、その後悔を、余さず聞き取る。一歩一歩、過去を踏みしめながら。

 

(この声も…あの声も…あの日に聞いた…あの場所にいた人たちの声…)

 

あの日、あの場所に来ていた魚人のすべてがこの場で頭を下げていた。

 

「嘘つきなんて、もう、言えないわね……」

 

マキノは、心を落ち着かせそっと覇気を閉じた。

 

わかっている、悪いのは歴史であって彼らではない。だから、自分のこの傷にもケジメをつけるべきだろう。

 

一歩、また一歩踏み込むマキノの体は、嘘のように軽かった。

 

オトヒメの前まで行ったマキノはいつものように柔く語り掛ける。

 

「オトヒメ様。顔を上げてください。」

 

「……マキノ、さん…」

 

「私たちは確かに、あの日裏切られた。それは間違いがない。あの日から絶縁状態で…でもたぶん、貴方達がうちまで来ても、きっと突っぱねていた。」

 

少し呆れる様に苦笑したマキノは、けれどそのまま続ける。

 

「でも、それも…もうおしまい。」

 

「────────」

 

いつか、ルフィやエースたちに教えた、友達同士の仲直りのようにまぶしい笑顔で手を差し出した。

 

「……いいの、ですか…っ」

 

「あなた達の心は嘘をついていない。だから、本当にこれでおしまい。もちろん、次が有ったら…わからないけれど。」

 

マキノは、少し俯いたまま、けれど意を決したようにオトヒメを見た。

 

「私、は…あなたに、貴方達を裏切った、のにっ……っ…!!」

 

縋るように手を伸ばしたオトヒメの手を握りネプチューン、ジンベエ、アラディン、市民たちの順番で目線を移し、あの日のように笑った。

 

 

 

 

 

 

「また、始めましょう。私たち、友達、でしょう?」

 

 

 

 

 

 

その言葉に、オトヒメは決壊。子供のように泣きじゃくりながら、ごめんなさいと繰り返し、マキノに抱き着いた。地上では見ないほどに大柄なオトヒメの抱擁に驚きながら、マキノは呆れる様に笑って、慰める。

 

ごめんなさい

 

もういいの、もういいんだよ

 

そのやり取りを繰り返す背後で、市民と王は号泣しながらお祭り騒ぎ、二人の周りを囲むように、同じようなやり取りを繰り返していた。

 

そのやり取りを眺めながら、シーカーは落ちるところに落ちたか、と見守っていた。そうして、この結末に何も言わないシーカーに、ジンベエとアラディンが気まずそうに声をかける。

 

「よいのか、シーカー。」

 

「ん~?なにが?」

 

「お前の答えを、俺たちは、その…聞いてねぇからよ…」

 

「マキノはワシらを寛大にも受け入れてくれたが…お主の口からは…」

 

「その事ね。俺は関与しない。そもそも、あの法も知ってたし。つーか覚えてねぇから実感ねぇんだよなぁ。」

 

「それでよいのかお主…」

 

「いんだよ、少なくともマキノの決定にケチ付けるつもりはねぇさ。」

 

「お前もたいがい寛大な男だよ。」

 

「そりゃぁな?感謝しろよお前らぁ?都合のいいときに体よく使ってやる!」

 

「ワッハッハッハ!そりゃあ怖いもんじゃ!じゃが恩人に言われちゃあ無下にもできんから、仕方なく、仕方なくじゃが、体よく使われてやろうかのう?」

 

ニヤリと笑った3人は、もう一度、既に御祭り騒ぎが宴会に変わりつつある光景を眺め、天を見上げる。

 

「俺たちは、何も変わらねぇ。」

 

「ああ…」

 

「日の光こそここには届かねぇが、ともに太陽の下を歩き、太陽の下に死ぬ。なんも、変わりなんざありゃしねぇのさ。」

 

「そうさな…進む方向は間違えんように舵を取らねば。本当に大切なものも見失ってしまう。」

 

しんみりとした空気の中、それを斬り割くように市民が笑顔で駆け寄ってきた。

 

「お三方!!これ、受け取ってくれ!!」

 

「っと、はは、あんがとよ!」

 

「今日はお祭りになる!きっと後悔させない!楽しんでくれ!!あ、そうだ!あんた達夫婦の銅像を建てようって話が出てるんだ!」

 

「そうさせてもらうよ。だが、銅像は勘弁してくれ。俺たちはただの一般市民だ。」

 

『お前のような一般人がいてたまるか!!』

 

アラディンとジンベエの突っ込みに不服そうに顔を顰めたシーカーに、市民は満足したように笑ってまた祭りの中心に戻っていった。

 

市民に投げ渡されたビール瓶を片手で受け取り、キンと涼しげな音を立てながら握り直す。

 

ふっと互いに目を合わせ、無言のままそれぞれの瓶を持ち上げた。

 

突き出されたガラス瓶の口が照らされ、キラキラと並ぶ。

 

微かに揺れる琥珀色の液体のその向こうに映る隣人たちの顔を見て、三人は口角を上げた。

 

「何にだ?」

 

「ハハハっ!決まっとるじゃろう?」

 

「ま、そりゃそうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タイヨウに!!』

2人目のヒロインいる?

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