ピースシーカー   作:イベリ

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消してみたりしたけどやっぱりタイトルつけます。タイトルないとモチベーションが上がらないので。


第4話:バカ親父ども

「────シャンクスとなんて絶交だ!!」

 

「お前だけが辛いと思うなよガキッ!!」

 

あの後、緩慢に過ぎて行った時間がルフィの初めての喪失を癒すはずも無く。攻め続けるルフィに、ウタを失い喪失に暮れていたシャンクスも耐えかねて、心の内を吐き出した。

 

怒鳴ったシャンクスに、ルフィはなおも睨みつけながら、走ってどこかに行ってしまった。

 

仕方がないと追いかけようとすれば、ベックマンが手で制し、話を聞いてやってくれとジェスチャーで伝えてきた。

 

シーカーは、またもな仕方ないとシャンクスの隣に腰掛けた。

 

「……シーカー…」

 

「らしくねぇな、シャンクス。まぁ、娘を失った気持ちは…わかるなんざ共感は出来ないが、な。」

 

カランっ、とグラスの中で氷が首を傾げる。無言の時間が、少し続いた後に、決心したようにシャンクスが語り出した。

 

「…ウタはエレジアに置いてきた。苦渋の選択だった。」

 

「…なんだ、生きてんのか。てっきり死んじまったかと思ったじゃねぇか…生きてんなら良かったよ。」

 

「……新聞、見たろ?」

 

「……マキノ、今日は店じまいにしよう。後はやっとくから…お前は、部屋に戻っててくれ。」

 

「シーカー…私…」

 

「マキノ、わかってくれ。お前は、何も知らない聞かなかった……いいな?」

 

「………うん、先に寝てるわ。おやすみなさい」

 

シャンクスの問の意味を悟ったシーカーは、マキノを部屋に行かせる。

 

マキノは、シーカーの真剣な眼差しから、これも自分を守るためであることを理解して、俯きながら部屋に戻って行った。

 

そう、数週間前に発行された新聞の記事一面。

 

『赤髪のシャンクス、エレジアを襲撃。』

 

というにわかには信じがたい内容だった。

マキノもシーカーもなにか裏があるのだろうとは思っていたが、どうやらその通りらしい。

 

ルフィには真偽が分かるまでは伝えないように、と2人は徹底していた。

 

「……あの日、俺たちは次の日にエレジアを離れるつもりだった。それで、最後にと国王がウタに大きな舞台を用意してくれた────」

 

話を聞くと、ウタはそのコンサートで導かれるようにある歌を歌ったのだという。

 

それが

 

「────トットムジカ……?なんだそりゃ。」

 

「ウタが呼び出しちまった魔王だ。いくら殴ってもかすり傷もねぇ……何とか、飲み込まれたウタの体力が尽きて消えていったが…そうじゃなけりゃやばかった。」

 

「…そうか……いや、待てよ……」

 

その時、シーカーの頭にある記憶がよぎった。

 

『エレジア……あの島には古代兵器にも匹敵する魔王が居る、気をつけてくれ。』

 

シーカーが請け負った任務の連絡時、たまたま近くを通り掛かった時にその言葉を漏らしたことを思い出した。

 

「……あの子は悪くねぇんだ…ただ運が悪かった…だが、やっちまった事実は変わらねぇし、周りがどう思うかはまた別だ。ウタには…受け入れられねぇ。だから、俺達がウタを利用し、国を滅ぼしたことにした。」

 

「……なるほど。だいたい理解出来た…」

 

要は、間接的にではあるが国を滅ぼしてしまった事にウタが耐えられないだろうという事で、自分を悪者にして、彼女の憎しみを自分にむくようにして彼女の心を守ったのだろう。

 

シーンと沈黙が酒場に響き、人の息遣いと、無理やりに酒を流し込む音だけが聞こえる。

 

緊張したようなシャンクスは、シーカーを見た。

 

「なぁ、シーカー…お前がウタを────」

 

「断る。俺も、マキノも…今の平穏な生活がある。センゴクさんが目をつけていた島だ…政府側は既に真相を嗅ぎつけてるだろうな。そこまでのリスクを犯して助ける義理はねぇ…ましてや、ウタもお前も海賊だ。」

 

「シーカー、てめぇ…!ウタに対してなんとも思っちゃいねぇのかよ!?」

 

「やめろ!!…無茶を言った、悪かったなシーカー。」

 

近くに居たホンゴウがたまらずシーカーの胸ぐらを掴むが、シャンクスがそれを止める。

 

それもそうだ。ウタは懐いてはいたが、シーカーは元を辿れば海軍だ。今も交流があるし、その人間関係を壊してまで助ける義理はない。今の関係でさえ危ういのだ。

 

何より、シーカーにはマキノがいる。

 

逃亡生活にマキノを飛び込ませるのは御免だ。

 

どちらかを天秤にかけた時、この答えは当然でもあった。

 

「弁えろよ海賊。お前達がどれ程善良かを俺が知っていても、世間は違う。その道を選んだのは…ウタを引き込んだのはお前たちだろう?海賊であるという事は、そういう事だ。」

 

襟を直しながら、冷たく言い放ったその言葉は今の世の真理だった。

 

シャンクスは酒を1口含んでから、弱々しく口を開く。

 

「そうだ………ウタは、海賊なんかにゃならねぇほうがいい。いつか、俺達が枷になる。」

 

「お前が決めたことだ…文句はねぇよ……ただ……─────それ、お前の本心なのか?」

 

シンっ、と静まり返った酒場で、誰かが唾を飲む音が聞こえる。

 

「海賊は仲間だけが助けだ。救えるのはお前たちだけ……あの子の頼りはお前たちだけなんだよ。」

 

「…あの子に海賊は……幸せにしてやれねぇ…」

 

「誰がそれを不幸だと決めた、全部────お前だろ、シャンクス。そこにあの子の意思はなかった。」

 

「……っ…」

 

「どんな子だとしても…拾って、育てたお前には、あの子を1番傍で見届け、願いに耳を傾ける義務があるんじゃねぇのか?例えそれが、どれだけ残酷な真実だとしても。」

 

「あの子に真実を話せってのか!?優しいウタが、耐えられるわけねぇだろ!?」

 

「ならッ!それをひっくるめて支えてやるのが親だろうが!!俺には親も兄弟もいねぇ!!でも、それは分かるぞ!!子供の幸せを願うだけでなんもしねぇのか!?フィガーランド・シャンクス!!お前はそんな男じゃねぇだろ!!」

 

叫ぶシャンクスの胸ぐらを掴んで、店が軋むほどに怒気を発した。

 

ジッ、と睨み合った2人。シーカーが突き放すように手を離す事で、また沈黙が訪れる。

 

シーカーの目を見たシャンクスは、崩れ落ちるように床に座り込んで、帽子を深く被った。

 

今まで抑えていた物が、ウタとの思い出の全てが、シャンクスの頭の中でリピートされる。

 

 

「……………………………ウタ……」

 

 

 

 

 

 

『────シャンクス(お父さん)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「────………っ会いてぇ……ウタに……会いてぇよぉッ………!!」

 

ボロボロと涙を流すシャンクスを見下ろしながら、シーカーは椅子に座り直した。

 

「………なら行けよ。それが出来んのが海賊だろう。」

 

「……許して、くれっかなぁっ…」

 

「殴られまくって、謝り倒せ。そんで、目一杯抱き締めてやれ…それが、償いだ。」

 

「あぁ…っ…あぁ…っ!!」

 

おかしらぁ!と、暑苦しい船員達が身を寄せあって、男全員が泣き出した。

 

むさ苦しいことこの上ない光景だが、全員があの子の親のような存在だ。親というのは、こんなにも暖かい存在なのかと、1人噛み締めた。

 

仕方ねぇなぁと苦笑しながら、シーカーはとっておきの樽を開ける。

 

「おら、飲めよ。俺のとっておきだ。この酒は俺の奢りだ!空にしてけよバカ親父ども!!」

 

「野郎ども、この酒に誓え!必ずウタを迎えに行くと!あの子にとって、最高の親になってみせると!飲めぇー!!」

 

『お"お"ぉぉぉッッ───!!!!』

 

「ハハッ、汚ねぇなぁ…」

 

そうして事が収まってようやく、ルフィを抱えたベックマンが帰ってきた。

 

「話は纏まったようだな。迷惑をかけたらしい。」

 

「ホントだよ、大迷惑だ……だが、お前達は俺の予想以上に、ちゃんと親をやってたんだな。」

 

「……よせやい、照れくさくなっちまう。」

 

「ルフィは、話ついたのか?」

 

「まぁな…存外コイツは大人だ。あんなこと言ってたが、何とか謝ろうとその辺をチョロチョロしてた。今は、泣き疲れて寝ちまってる……『強くなりてぇ』とよ。」

 

「………そうか。」

 

背中で眠るルフィを撫でれば、パチッと目を覚まし、大きな瞳がシーカーを捉えた。

 

「シーカー……俺…」

 

「行け、ルフィ。お前が思うことを、ぶつけてやれ。それが友達ってもんだ。」

 

ぐしぐしッと涙を拭ったルフィは、勇み足でシャンクスの元に向かった。

 

互いに謝り、ウタを迎えに行くと言って、また2人して泣きあっている。

 

やかましい奴らだ、と思いながらカウンターで頬杖をつきながら眺めていると、隣にふわりと、嗅ぎなれた花の香りが腰を下ろした。

 

「……終わったのね、流石…私のシーカー。」

 

それは、騒がしくなった音を聞き付け、解決したのだろうと下に降りてきたマキノだった。

 

「……悪かった。お前は聞かない方がいいと思った。」

 

「ううん…いいの。それも、私とこの村を守る為だもの…けど、わがまま、聞いて……」

 

「…なんだ?」

 

「暫く…このままでいさせて。」

 

ぎゅうっと、力いっぱい抱きついたマキノは、涙を隠すように顔を埋めた。

 

安心の涙が漏れるマキノを隠す様に、騒がしい中心を避けて端の方で震える背中を摩る。

 

特にウタに懐かれていたマキノにとって、ウタは本当の妹のような存在だった。こうして安堵の涙を流す事も、不思議じゃなかった。

 

「……生きてるってさ。」

 

「……うん…」

 

「……迎えに、行くってさ。」

 

「……うん…」

 

「だから、大丈夫……俺達は何も失っちゃいない。取り戻せるんだ。」

 

「……っ…うんっ……」

 

ぎゅうっと、背中に回った細い腕の力が強くなった。

 

マキノを慰めながら、シーカーは今も騒がしく泣き喚いているバカ親父共を苦笑しながら眺めていた。

 

 




ルフィと合わせるつもりは無いけど、これくらいの救いがあってもいいよね。本編じゃほんとに死んだ設定らしいですけど。

2人目のヒロインいる?

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