この4日?くらいで何があったんじゃ…
とにかく、期待を寄せてくれる方がいるということなので、頑張ります。よろしくお願いします。
初めて出来た妹のようなあの子は、寂しがり屋で、意地っ張りだ。もし、彼女が拒む様ならば、自分が連れていこうと思っていたところだったが、どうやら無駄骨に終わったらしい。
少し離れた場所で、シーカーは木に背中を預け、目を閉じながら事の行方を見守っていた。
背後から聞こえる大勢の男たちの泣き声と、そこに混じる子供の泣き声。
果たされた再会の末、落ちるところに落ちた、というところだろうか。
泣き声の方向に目をやれば、女好きの親友と目が合った。口だけで彼は礼を言うと、涙ぐんだ顔で、ニッ!と笑った。
地面に突き刺していた槍の穂先を蹴りあげ肩に担ぐと、ため息を零して苦笑する。
「......世話の焼ける野郎共だ。」
純白のコートと、銀白色の髪を靡かせながら、踵を返し船に向かう。
シーカーはその目尻を少し濡らしながら、船に乗り込み、最後の仕事に取り掛かる。
「────いつか、またどこかで会えるだろう、俺達の妹。だからいつか、その歌を...また聞かせてくれよ。」
そう呟いてから、機械帆船のエンジンを吹かせ、遠くの方に感じたこちらに向かう懐かしい覇気の元に向かった。
暫く船を走らせれば、覇気の持ち主はこちらに気がついたのか、無人島でこちらを待っているようだった。
相変わらずの漢気だと苦笑しながら、岸に船をつけてその者の元に向かう。
「……来たか。」
「あの日以来だな……今でも、鮮明に思い出せる。」
互いに過去を思い出しながら、感慨深そうに口を開いた。
一般的に高めと言われるシーカーは約175cm。しかし、目の前にいる男はシーカーの倍以上の身長に、口元を隠すようなマフラーを巻き、鋭い視線だけを覗かせていた。
「……衰えぬ覇気…いや、更に磨きがかかっている。若くしてあの"鷹の目"と同じ領域に達しただけの事はある。」
カタクリはシーカーが持つ黒槍にちらりと目をやってから、また目を伏せた。
「あんな化け物と一緒にしてくれるとは…随分と持ち上げてくれる。」
「当然だ。あの日、俺に敗北を刻んだ男だ。むしろ妥当な評価と言えるだろう。」
「何が敗北だ……ありゃ、相討ちって言うんだぜ───────シャーロット・カタクリ。」
「ふんっ、その間に船を8隻も落とされちゃ、敗北に違いないだろう────────ハートランド・ギネス。」
シャーロット・カタクリ。
グランドラインのその先、新世界を支配する4つの海賊の皇帝、その1席に存在する怪物。
"ビックマム"シャーロット・リンリンその次男。
無敗の男、超人とまで言われる完璧な男。
隙を一切見せぬその佇まいは、間違いなく最強の風格を宿していた。
しかし、そんな男にシーカーは相打ちの末逃げ果せた。
決して大っぴらに語られることでは無かったが、海軍時代のシーカーとの激突は、カタクリの戦歴に敗北を刻んだ。
「あの時…他の将星やオーブンであったなら…確実に殺されていた。本当に、俺で良かった。」
「買い被りすぎだ。相性もあるさ、俺とお前の相性は最悪だからな。」
自信に満ちたシーカーの言葉にも、カタクリは目を細め闘志を燃やすだけだった。
「……あの時、俺の見聞色が通じなかった謎……この2年間、考え続けても答えは出なかった……ウタウタの実の能力者の情報を確かめるつもりだったが…これも運命か…あの日の雪辱をここで果たす…ッ!!」
その啖呵を聞いても、シーカーは頭を搔きながら困ったように唸る。
「俺には、もう戦う理由もねぇんだがなぁ…」
「……どういう事だ?お前は海兵…俺を捕える意味はあるはずだが?」
「2年前……お前と戦った4ヶ月後か…辞めたんだよ、海軍。」
その言葉に、カタクリはらしくない程に目を見開き、疑問をうかべたがすぐに納得した。
「…なに……?いや、よく見ればお前のコート…海軍のものでは無い…新聞でほぼ毎週あったお前の記事も、ここ2年全く見なかった……お前の情報を集めてもなかったのは…そういうことだったのか…」
「せーかい……もう、俺の負けさ。こーさんだ。もう目的も果たしたし…お前一人だけなら…赤髪海賊団を1人で相手にするなんて無茶…しないだろ?」
両手を上げたシーカーに、カタクリは額に青筋を立てながら、怒気を増した。
「……俺が、それで納得できると思っているのか?」
「できるさ。お前は、戦意のない相手と無駄な戦闘はしねぇ。互いに死ぬリスクを背負ってまで、もう戦う意味もねぇだろうよ。」
それでも、シーカーは戦意を一切滾らせることなく、皮肉ったように笑うだけだった。
「貴様ァ…っっ!!!」
その様子に、拳をギリッと握ったカタクリは、シーカーに殴り掛かる。
ブワッ!と飛び散る砂塵を意に介することもなく、シーカーは目前で止まった拳越しに、カタクリの鋭い視線を見ていた。
「………いったい……一体何が貴様程の男の目をそこまで腐らせたッ!!!」
命を賭して戦った事のあるカタクリだからこそ、この言葉が言えたのだろう。
あの日、あの場所にいた海兵は、もっと高潔で、もっと誇り高い瞳をしていた。
なんなんだ、その燃え尽きたような目は!
カタクリの心の叫びを聞き取ったように、シーカーは口を開く。
「……世界政府」
「……天竜人か……」
納得のいったような顔をしたカタクリに、シーカーは諦めたように苦笑した。
「目の前で、子供の父親が殺された。なんの罪もねぇ……ただの一般人だ…そうじゃねぇんだ…仇もとってやれねぇ…それを受け入れる海軍にも、幻滅しちまった。」
「お前の正義は……あの盾を捨てた理由も、それか。」
随分と懐かしい自分の装備を思い出し、シーカーはまた笑った。
「まさか、覚えてるなんてな……」
「お前の『防御力』にどれほど手こずらされたと思っている。お前の事を…徹底的に研究した。まぁ、それも無駄骨だったようだが。」
ガチャっ、と装備を鳴らしたカタクリは目を閉じながら過去を思い出した。
全てを穿いた槍。自分の攻撃を当然のように防いだあの聖盾。全てが、戦いの喜びを思い出させた。
振り払おうとした戦意は、けれど払いきれなかった。
カタクリは、話がわかるやつではあったが、同時に武人でもあった。
「敵意のないお前と戦うつもりは無い……だが、納得がいかないことも事実だ。だから…一撃、それで俺を納得させてみせろ。」
口元を覆う分厚いマフラーに手をかけ、それを脱ぎ捨てれば、鋭い牙を覗かせる大口が顕になった。
グッと握ったカタクリの拳が、漆黒に染る。
不器用な男だと、海賊らしくないと、
「……分かった。この一合、満足の行くまで戦えぬ詫びとして、お前に捧げよう。」
「……感謝する。」
一気に飛び退き距離をとったカタクリは、その場でドーナツのような形になりながら、猛スピードでギネスに向かう。
その技の挙動で、何が来るかを悟ったシーカーは、しかし焦らずに自身の内にある
それこそが、シーカーの二つ名である『白槍』
純白に輝く二色の覇気を纏った槍こそが、シーカーの本領であるのだ。
目の前まで来たドーナツのようなカタクリは飛び上がり人型に戻ると、その回転力を利用したまま、右腕を肥大化。
赤黒い稲妻を飛ばしながら、剛腕をギネスにラリアットの形で質量を振りかぶった。
「【斬・切・餅】ッッ!!!」
2年前、この技で着いた決着。ならば、あの時と同じ技でこの一撃を受け止める必要があるだろう。
「……これが、最後……よしっ…!」
グッッ、と屈んだ
海軍武術を幼くして極めたギネスは、それを全ての動きに応用する。全ての筋肉を連動させ、眼前に向かいその純白の絶槍を放つ。
「【
カタクリとの決着、その瞬間に完成した己の名を冠した、シーカーが出せる最高出力の技。
全力の覇気を込めた、全力の突きは、果たしてカタクリの剛腕と激突する。
瞬間
無人島を更地にする大爆発が巻き起こり、数百km離れた場所にいた馬鹿親父も、このあまりにもデカい覇気の激突を感知した。
数秒の拮抗。誰にも聞こえぬ雄叫びは、爆音に掻き消され、互いの肌を焼く程の覇気は、爆発を助長させ、2人が立っている地面すらも大きく抉った。
互いの覇気が、互いの体を容赦なく殴りつける。吹き出す鮮血、軋む骨。それでも、今は全てがどうでもよかった。
あとのことを考えるなど、この場においては無粋に過ぎた。
耐えきれぬその鋭さに、ギネスの技がカタクリの剛腕を穿いた。
支えきれぬその圧倒的質量に、ギネスの胴にカタクリの剛腕が激突した。
そして、決着がついた。
『……………』
あの一撃だけで、ボロボロの雑巾のようになった2人が、そのまま立っていた。
「……流石だ。」
「お前にそう言われるなら…俺も捨てたもんじゃねぇな……」
そう2人で苦笑して、同時に前のめりに揺れた。
小さな島1つを更地にした、既にバスターコール並の痕跡だけを残して、二人の男がその場に倒れ込んだ。
「はぁ…はぁ…なんで一撃貰っただけで…こんなアホみたいにダメージ残るんだよ…っ!」
「それはこっちのセリフだ……!はぁ…はぁ…どんな硬さをしてるんだ、お前の覇気は…!右腕がイカれたぞ…!」
「それもこっちのセリフだ…てか体格差考えろ……お前5mだろ……家かよ…家が武装色纏って高速でぶつかってくるって考えたら…やべぇぞ…」
「ママの遺伝だ……好きでこんな図体してると思うか……部屋も服も椅子もベッドまで特注だ…」
互いに文句を言いながら、ダメージを回復するために呼吸を整えていた。
ギネスはこの激突を経て、果たせなかった約束を思い、悔いた。
「……悪かった…あの約束、守れなくて」
「…………構わん、お前は軍人だった……しがらみは多いだろう……意志とは別にな」
それでも、カタクリはあの日あの時の、ギネスの言葉と、強い意志を思い出した。
『………苦しいのか……お前は…!』
「決着の後、ズタボロの両者が先のようにフラフラとなんとか立ちながら睨み合っていたのに。お前は俺の一言で、目の色を変えたな。」
『倒しに行くさ…っ!!誰かがあいつに苦しめられてるのなら!!俺がアイツをぶっ倒すッ!!』
相手は海賊なのに、海賊すらも救うと言い切った言葉を、カタクリは不思議と信じていた。
けれど、それは果たされなかった。それ自体は仕方がない。元々がしがらみだらけの組織だ。
あぁ、だが。とカタクリは続ける。その声音は、心底嬉しそうで、少しだけ悲しそうだった。
「……あの啖呵は……心地いいものだった。」
「………ハハッ………お互い、立場に苦労するな。」
「……あぁ………────」
そこで、お互いに意識を飛ばした。
ぎしっ、と体が軋む音が鼓膜に響き、痛みと共に目を覚ます。
周りは真っ暗、既に気絶してから数時間経っているようだった。
「────…っ…てぇ……」
「起きたか。」
目を覚ませば、さっきの状態で倒れたまま、2人とも寝込んでいたようだ。
先に目覚めていたカタクリは、大口を歪めてニヤリと笑った。
「俺の方が目を覚ますのが早かった。今回は……いや……俺の勝ちだ、ギネス。」
「……あぁ、お前の勝ちだよ、カタクリ。」
決着のつかなかった勝負に、ようやくつけられた結末に、互いに満足気に笑った。
お互い、立ち上がれすらしない状態で減らず口を叩きあっていると、なにか音が聞こえることに気がついた。
それは、自分のバックパックからでんでん虫の通知音だった。
サァッ、と青ざめたシーカーは、最悪を想像してしまった。
「あー…やべ、定期連絡してねぇ…」
「お前が起きる2時間前から何度か鳴ってるぞ。」
「起こせぇ……」
「知らん、そこまでやってやる義理はない。」
「いや、今ほんとに動きたくない。背中に手が届かん……カタクリ、カバン開けてでんでん虫取って。」
「ふざけるな!しかもお前、ぶっ壊れた右手側に倒れやがって!能力でとるしかないじゃないか!」
「あっ、とってくれるのね……やっぱ優しいよな、お前。」
「口を閉じろ阿呆。さっさと話をつけろ。」
空間から出てきた手型の餅が、バックを器用に開けてでんでん虫を顔の前まで律儀に運んでくれた。
恐る恐る受話器を取れば、案の定焦ったような彼女の声が響いた。
『────ギネスッ!?ギネス!!返事をして!ギネス!』
思わず昔の呼び名を呼んでいるあたり、相当心配させてしまったらしいことがわかった。
悪いことしたなぁと思いながら、重々しく返事をした。
「あ、あー…こちらギネス…悪い、連絡が遅れたマキノ…」
『ギネス!あぁ、良かった!もう3日も連絡がなかったから!こんな事っ、初めてだったしっ…!今回はグランドラインに行くって言ってたから…何かあったかと…っ!!』
「お、落ち着け…俺は無事だから。てか、み、3日……」
「…そんなに気絶していたのか。」
さっき起きたばかりで、そんなに時間が経っていると思わなかった2人は、思わず声を出してしまった。
『…ねぇ、誰かいるの?』
「あぁ、いや…気にするな…連絡が遅れて悪かった……今…ちょっと、戦ったあとでな…ボロボロなんだ。」
『貴方が、ボロボロになるくらい…?!大丈夫なの!?』
「あぁ、そこは問題ない……朝にはもうだいぶマシになる…そしたらすぐ帰るよ…」
そう言ったら、大きくため息を吐いたあとに、でんでん虫が泣き始めた。
でんでん虫は、喋っている本人の感情を読み取り、それに応じた表情をしながら、声を届ける。
つまり、今マキノは泣いているという事だ。
『…っ……ほんどに…良かった……心配で…心配で……っ…!』
「心配をかけた、ごめん……必ず帰るよ……なぁ、マキノ。帰ってしばらくしたら、どこか旅行に行かないか。」
『ほんと…?』
「あぁ、ホントさ。」
『…っ……うん…っ…楽しみにしてる……だから、帰ってきて…ね?』
「必ず帰る。俺が約束破ったことあったか?」
『……ふふっ、ない…少なくとも、私には。』
「な?だから、待っててくれ。ここからなら、飛ばせば1週間かからない。」
『うん……ねぇ、ギネス……愛してるわ。』
「俺もだ、愛してるよマキノ。旅行先、考えとけよ。」
『わかった……早く、帰ってね。それじゃあ、気をつけて。』
ガチャりと切れた通話の後に、ふぅとため息を吐く。どこか居心地の悪い気持ちのまま、カタクリをみれば
「……
「マキノを殺す気か?行くわけないだろ。新世界に行けってのかよ。」
「まさか東の海で旅行か?随分と枯れた大人しい旅行だな。」
「ほっとけ……どこでも、俺はあいつがいればいいんだ。その方が性に合ってるし…東の海でも、行きたい場所はあるからな。」
「ふっ…そうか。苛烈なお前を知る俺としては、穏やかに過ごすお前は、どうも想像ができんがな。」
「もう、随分と…その生活が馴染んだもんさ。」
少しの沈黙の後に、カタクリは感慨深そうにため息を吐きながら、体を起こした。
「身体中が軋む……本当に、たった一撃でお互いこうもボロボロになるか。」
「実力はほぼ拮抗してる。俺もお前も、この辺にいるにはおかしいレベルの覇気使いだ。こうもなるさ。」
耐久力が段違いすぎるがな、と呟きながら、ギギっと体から鳴る音を感じて、ギネスはカバンから包帯と薬を取り出し、手当をしながら立ち上がったカタクリを眺めた。
「行くのか?」
「あぁ……ウタウタの能力者が単独なら、連れて帰るつもりだったが…赤髪のところにいるとなれば、一筋縄では行かない…それに、今回は事実確認も含めたものだったからな。」
そっか、と手当を再開したギネスに背を向けて、歩き始めた。
「…これで、終わりだ……ギネス。」
「ああ……終わりだ、カタクリ。」
肩越しにニヤリと笑ったカタクリの別れ際は、清々しい程に男らしかった。
5日後、フーシャ村にようやく帰れたシーカーを待っていたのは、マキノの痛いほどのハグと、豪快に笑うガープ、そして元直属の上司だった。
映画の出来が良すぎてウタを救済する事を投稿直前までずぅっとやめたかった。
けどもうこの話には直接出番ないからいいやって思って赤髪海賊団の音楽家やっててもらいます。
何か違う未来があれば、フーシャ村から海賊王と共に出航していたことでしょう。
ルウタ、いいよね。
※前書きあとがきがこんなに長いのは今回だけです。だから許して。
2人目のヒロインいる?
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いる
-
いらない