ピースシーカー   作:イベリ

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アンケ、答えてお願いします。


第8話:俺の前で

盛大に啖呵をきったルフィに、アーロンは大きく笑った。最大限の侮辱を込めて。

 

「シャーハッハッハッハッ!!こんなガキが海賊王!?笑わせてくれるじゃねぇか!お前一人で、この人数を相手にするってのか!?ちっぽけなガキが俺に一撃食らわせて勘違いしちまったか!!お前一人にゃ、何も出来ねぇんだよ!!」

 

「そうだ俺は、ひとりじゃなんも出来ねぇ。」

 

「恥もプライドもねぇときた!所詮下等種族の人間!俺たち魚人とは産まれから天と地ほどの差が存在する!海賊王?あんなものは人間が一時に夢見た幻想!真なる海賊王は、魚人である俺たちにこそ相応しい!!」

 

高笑いするアーロン一味に、ルフィはただその言葉を聞いていた。

 

「────で?終わりか。」

 

「あん?」

 

「終わりかって聞いてるんだ。俺が、海賊王になれない理由ってのは、種族ってやつか?」

 

「あぁ!そうだ!お前が下等なのは人間という種族だから!!お前たちが俺たちの同胞にそうしたように!俺たちがお前たちを踏みつけ!尊厳を奪い!頂点に登り詰める権利を持っている!!そしたら⋯⋯その海賊王とやらもなれるかもしれねぇがな?」

 

その言葉を聞いて、ルフィは安心した!とほっとしたように笑った。

 

「じゃあ平気だな、おれがなるから!」

 

「────は?」

 

「種族も、人種も、地位も関係ねぇ!海賊王は誰よりも自由な奴のおれがなる!だから、平気だ!!」

 

「何が平気だ!?わけわかんねぇこと言いやがって!イカれてやがんのか!?」

 

相変わらずの謎理論だが、その謎理論をいつもゲラゲラ笑っているシーカーはここにはいないし、なんならその場で聞いていた全員がクエスチョンマークを浮かべているが、そんなことは知らないとルフィは笑っていた。

 

「それで、俺の相手は誰だ?鼻のお前か、タコのお前か、ヒレのお前か、クチビルのお前か……それとも全員か?」

 

「ニュ〜!生意気なガキだ!!」

 

「チュ♡だが、度胸だけは認めてやろうぜ。」

 

およそ、9歳の少年が放つ気迫ではなかった。ビリビリと肌を刺すような気迫。ただ1人感じ取ったアーロンがありえないとかぶりを振った。

 

(あり得ねぇ……この俺が、人間のガキに……脅威を感じた?……どちらにしろ、こいつはここで殺さなきゃなんねぇ……)

 

勘違いか、はたまた脅威か。アーロンはどちらにしろ殺す判断を変えず、自ら手を下そうと動いたとき、ルフィにヒレと言われた魚人────クロオビが前に出た。

 

「アーロンさん、俺が出る。身の程知らずのガキに、現実ってもんを教えてやる。」

 

「……わかった。やれ、惨たらしくな。」

 

「承知。」

 

「お前か……!強そうだなぁ、俺も本気で行くか!!」

 

拳を構えたルフィに、クロオビは同じように拳を構えた。

 

「小僧、俺は魚人空手40段の達人。下等種族の貴様らには決して習得できない究極の武術─────」

 

「ごちゃごちゃうるせぇな、早く来いよ。」

 

言葉を遮られたクロオビの沸点は爆発し、青筋を浮かべながらルフィに突っ込んだ。

 

「後悔するなよ小僧っ!!」

 

「お前がな!!」

 

ニッと笑ったルフィは、シーカーとの修行を思い返していた。

 

『お前の持ち味は速度だからな……剃を使いながら戦うとなれば、腕を伸ばして戦ってちゃ隙も大きいし、効率が悪い……そうだなぁ………あ、腕を圧縮するのなんてどうだ?』

 

この数ヶ月、ルフィは能力を伸ばすことをシーカーに強制されていた。

 

ルフィの戦闘スタイルは、基本的に前進する速度に拳を乗せる形なのだが、後方に伸ばしてそれを前方に叩きつけるスタイルでは、ルフィの剃が速すぎて拳よりも体が先に行ってしまうことが多々あった。

 

これではシーカーの言う通り効率が良くないし隙も大きい。

 

故に、今のルフィの最高威力を叩きだすには、隙が無く尚且つ高威力を弾き出せる攻撃法が必要だった。

 

今は剃との併用ができないが、いつかは編み出すと意気込んでいた。そして、シーカーの助言から生まれたこの戦闘法が、ルフィの現在の最高到達点。

 

ギチギチとゴムが擦れる音を鳴らし圧縮された腕は、肘あたりまでがバネのように縮んでいる。

 

向かってくるクロオビが射程に入った瞬間、ルフィは同じように圧縮させた足を開放し、最高威力で地を蹴った。

 

その場にいる誰もが、目を疑った。一瞬にしてクロオビの目の前に少年が移動し、既に照準を合わせていた。

 

「はっ───────!?」

 

「…嘘……あれ……!?」

 

驚愕したベルメールが理解した時には、既に決着がついていた

 

「ゴムゴムの……【重槍弾(バルカン・バレット)】っっ!!!!」

 

「ぐぅっぎああああああ!!!?」

 

自身が知り得る、最強のビジョン。それは、最も近くにいる兄の背中。

 

兄のようになりたいという少年の願いから編み出し模倣した、シーカー()の一撃。

 

速度、ゴムの反発、すべてを最高のタイミングで拳に乗せて、最高の場所───クロオビのガラ空きの胴に叩きつける。

 

反射的に防いだクロオビの硬いヒレを叩き折って胴に拳が突き刺さり、反発と共に吹き飛んだ。

 

数十メートル吹き飛んで岩に激突したころには既に意識はなく、ピクリとも動けない状態だった。

 

「クロオビ!!?」

 

「ニッシッシッシ!!俺!強くなってるぞ!シーカー!!」

 

尚も楽しげに笑う少年に、同胞を倒された魚人たちは一気に押し寄せた。

 

『クロオビさんの仇をとれ!!』

 

「っ待てお前ら!!」

 

「次はお前らだな!!」

 

今度は両腕を圧縮させたルフィは、向かい来る大群を見て、あの技が使えると心を躍らせた。

 

「ゴムゴムの……【重槍機関砲(バルカン・ガトリング)】!!!」

 

『ぎああああああ!!!??』

 

ルフィの対多数技、ガトリングの派生であるこれは、無駄なくガトリング以上の速度でその威力を徐々に上げていく。そして、最も脅威なのは、ルフィが独自の剃をしながらこの無限ともいえる拳の弾丸をバラまく事だろう。

 

その拳は、子供の物と侮るなかれ。魚人の屈強な肉体を容易く砕き、意識を刈り取る。ルフィの攻撃が終わった後にはもう、数多くいた魚人は半分以下になっていた。

 

「同胞たちを……!!小僧…死だけじゃ足りねぇぞ!?」

 

「ああ、足りねぇ!俺は死なねぇからな!!」

 

「なぜだ…なぜ邪魔をする!?お前には関係ねぇはずだ!!こんなちんけな村が滅んだところで!誰に迷惑がかかるってんだ!?」

 

「そうだ。俺には関係ねぇ。」

 

思い通りにいかなかったアーロンは、感情任せに吼えた。けれどルフィはいたって冷静だった。

 

「どこのどんな村がなくなっても、俺はなんもできねぇし、なんもしねぇ。」

 

ルフィはシーカーの背中を見て育ってきた。何度か連れて行ってもらった海賊狩りでは、助けを求められればすぐに手を差し伸べ、救ってきたのを後ろで見ていた。

 

だからこそ、シーカーの思想がルフィの心の底に強く根付いていた。

 

海兵にはなりたくない。海賊にはなりたい、けれど、シーカーのようにもなりたい。

 

だからこそ、だけどとルフィは叫んだ。

 

「俺の一番尊敬する兄ちゃんなら!!どんなに小さくても助けてって声は聞き逃さねぇっ!!」

 

「──────…聞こえてた⋯⋯わたしのこえ⋯っ⋯⋯!!」

 

「だから、俺は助けてって言われたら絶対に助ける!!そのために強くなった!!」

 

誰にも届かないと思っていたナミの小さな声は、確かにルフィに聞こえていた。

 

葛藤の末にたどり着いたルフィの答えは、模倣。

 

ルフィの偉大な兄であるシーカーならば、きっとこうするから。だから助ける。

 

いつか、兄も姉もずっと楽しくくらせる世界のために。

 

「俺は『新時代』を作る!!だから、お前じゃおれを止められねぇ!!兄ちゃんも姉ちゃんも、もう泣かねぇ様に!!」

 

幼馴染との約束。シーカーとの誓い。全てがルフィの力となる。

 

その言葉に、アーロンは静かに回想した。かつて自分が尊敬し、兄と呼んでいた男のことを。

 

だからこそルフィの言葉に虫唾が走った。

 

「………救えやしねぇ……お前程度のガキに、この俺が止められる筈がねぇ!!お前たちは救われた恩も返さねぇ!裏切り!憎しみを広げる!だから、奪って支配する!!もう誰も裏切れねぇように!!」

 

「……あの目…何度か見たことがある…海王類がキレた時の目だ…!!」

 

「支配…?俺の大嫌いな言葉だッ!!」

 

怒りが頂点に達したアーロンは、瞳孔を細くし、興奮状態を表していた。それは、ベルメールが言ったように、アーロンが本気になった証拠だろう。

 

アーロンの武装、大鋸キリバチを掴み、ルフィに向かうその速度はベルメールではもはや対処できない。すでに自分よりも強い目の前の少年に、すべてを賭けるしかないのだ。

 

「うわっ!?」

 

「ぬぅりゃぁぁぁあ!!!!」

 

「ぐへっ…!?」

 

「いやぁっ!?」

 

避けたキリバチの陰から飛んできた蹴りを諸にくらい吹っ飛んだルフィを見て、ナミは悲鳴を上げた。

 

ぶっ飛んでからすぐに起き上がったルフィは、目の前にいたアーロンの攻撃を躱し続けるしかなかった。

 

「うわぁ!?あぶねぇ!?」

 

「ちょこまかとサルみてぇに動きやがって……!」

 

なぜか今日は読みが次々にあたるルフィは何とか隙を探すが、なかなか見つからない。それに、集中力も切れてきた。今日の驚異的な読みも、体力もそろそろ限界に達しようとしたとき、キリバチがついにルフィを捉えた。

 

「ぐあっ!?」

 

肩に刃が突き刺さり、鮮血が弾ける。ニィッと笑ったアーロンは、そのままキリバチを持ち上げるようにして、ルフィをつるし上げた。

 

「ああぁぁぁ────ッ!!?」

 

それを見たナミとノジコが、いてもたってもいられず走り出そうとしが、それをベルメールが掴み止めた。

 

『────ッ!?』

 

「やめな!!ナミ、ノジコ!あんたらが行ったら、かえって邪魔になるよ!!」

 

「でも!ベルメールさん!」

 

「平気さ⋯⋯あの子は、諦めちゃいないよ⋯!」

 

そう、ルフィの目はまだ諦めていない。ベルメールが海兵時代、何度も見たその目は、何よりも頼もしく写った。

 

「どうだ、テメェは俺に一撃も入れることも出来ず、こうして死ぬ!!」

 

「死なねぇ…!おれは海賊王になる男だ!!」

 

尚もアーロンを睨みつけるルフィに、アーロンは嗤った。こういう自分を強いと勘違いしているガキに、現実を見せてやろう。そうほくそ笑んだ。

 

「よく見ておけ……現実ってもんを教えてやる…!!」

 

「チュ♡酷いことするぜ、アーロンさん。」

 

腰に提げていたピストルを構え、唇の魚人───チュウになげ渡し、殺れと命じる。

 

何をするのか悟ったルフィは、必死に叫んだ。

 

「…おい、何してんだ!お前達の相手は俺だろうが!!」

 

「お前じゃ相手になんねぇんだよ。弱いやつは、何も守れねぇ。」

 

「やめろ⋯!やめろよ!!」

 

ジタバタと動くルフィだが、痛みに顔を歪めその抵抗を弱めた。

 

ニィッと下卑た笑いを浮かべるアーロンは、言った。

 

「人間に生まれたてめぇの弱さを、恨むんだな。」

 

「──────ッ!!」

 

部下がピストルの引き金に指をかけた時。ベルメールは2人を抱きしめ庇うように背を向けた。今度こそ、終わりだと。そして、ルフィに目を向けた。

 

恨まない。ここまで頑張ってくれた、あの小さなヒーローに、せめて逃げてと言うように、笑った。

 

 

その口が、ありがとう。その言葉を紡いだ。

 

 

ベルメールのその笑顔を、ルフィは何度か見たことがあった。

 

助けが間に合わず、シーカーが抱える腕の中で死んだ老人。海賊を1人足止めし、せめて誰か、1人でも多く生き残って欲しいと願い、息を引き取った。

 

子供を隠すように抱きしめ、お願いしますと願い、安堵しながら死んで行った名も知らぬ女を。

 

ルフィは知っていた。

 

あれは、後に託す者の笑顔だ。

 

カッと血が上ったルフィは、全ての力を振り絞るように叫んだ。

 

 

 

 

「─────シーカァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

その瞬間、ベルメールに銃を向けていたチュウが、弾けるように吹き飛んで、ピクリとも動かなくなった。

 

「チュウ!?」

 

先のクロオビの数倍は吹き飛んだチュウに駆け寄る他の魚人は、焦ったようにアーロンを見た。

 

ギッ、と拳を握ったアーロンは、腹いせに目の前のルフィを殺そうとキリバチを振り上げ、地面に叩きつけようとした。

 

「───────よくやったぞ、ルフィ。」

 

アーロンがキリバチを振り上げた瞬間、どこからか吹いた風が、ルフィに突き刺さっていたキリバチを叩き折り、そのまま攫って行った。

 

「マキノ、止血だけしてやってくれ。この人も、腕の固定だけでいい。」

 

「うん、わかったわ。」

 

「あ、アンタ……」

 

「安心しな。すぐに終わるよ、ベルメール少尉。」

 

懐かしい称号は、ベルメールに痛みを忘れさせるほどに衝撃的だった。

 

「私のこと、知ってんの……?」

 

「つるさんに聞いた。不良娘だが、いい海兵だったとね。東の海にいるとは聞いてたが、こんなところにいたなんてな。」

 

白い髪を揺らし、ベルメールたちを背に立った男の手には、黒い槍と木の円盾。その姿に、ベルメールは聞き覚えがあった。

 

「……うそ…白槍……?」

 

血を失ったベルメールは、その言葉を最後に意識を失った。

 

心配する子供たちを慰めながら、マキノが戦いの被害が及ばない場所まで下がる。

 

それを見届け、シーカーはようやく目の前の海賊に視線を向けた。

 

(この俺が……人間の動きを捉えられなかった……?有り得ねぇ…!!)

 

信じたくない現実と、目の前で起こった現象に、アーロンは背筋に氷を突っ込まれたような気分だった。

 

「アーロン…タイヨウの海賊団か……ボルサリーノさんに捕まってたはずだが……」

 

シーカーは、語気を深く沈めたが、次の瞬間には、眦を釣りあげていた。

 

「だがよォ……お前は、もう二度と牢獄からは出られねぇ。」

 

冷静に見えるようだったシーカーは、内心で激しく燃え上がっていた。

 

「─────子供の目の前で親を殺そうとしたな……それだけは、許せねぇ。」

 

シーカーの特大の地雷を踏み抜いたアーロンは、この東の海の実質的な支配者と対峙した。

 

 




正直ヒロイン増やしたくないけど、読者様的にどうなんすかね

以下アンケ内容、シーカーのヒロインは増やす?です。言葉足らずかもしれないので追記します

2人目のヒロインいる?

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