鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
ブルワーズと2人の兄弟
*
テイワズの傘下となりタービンズの兄弟分となった鉄華団、歳星での取引やカエデのスターサファイアの武器と加工品技術契約が終了した事で漸く鉄華団の仕事に入る事が可能となった。
オルクス商会とは違い本当の意味で信頼出来る案内の元で地球を目指す事が出来る。
一枚隔てた向こう側に広がる宇宙の海へと漕ぎ出して行くイサリビとハンマーヘッドを見送る三日月、雪之丞そしてカエデとイシガシ。
彼等はバルバトスの完全整備とスターサファイアメイスの搭載の為に待機し、それが完了次第追いかける事になっているが如何にも三日月は何処かさびそうに見える。
「寂しいのか三日月?」
「うん寂しいよ、皆と離れるってそんな無かったから」
「大丈夫だ。バルバトスとナイトメアの整備が終われば直ぐに追いかけられる」
「うん、そうだね。カエデ兄さん」
普段の強さから不意に忘れがちになるが彼もまだ子供なのだ。
仲間の為なら、オルガとカエデとイシガシの命令なら簡単に銃を手に取り嘗ての上司ですら容易く殺すだろう。
そんな恐ろしさと強さから子供っぽさのない事から子供というのが如何にも頭から抜けがちだなと雪之丞は笑う。
雪之丞は出来るだけ対等な立場目線で話をしているが彼等を弟として子供として正しく扱っているのはカエデとイシガシの2人だ。
「楽しみだな、スターサファイアを加工した搭載型のバルバトス」
「カエデ兄さんのナイトメアみたいになるのかな」
装甲が薄いと言っても過言ではないナイトメアだからこそあの動きが出来るのであってバルバトスに同じような動きをされてしまったらもう手の施しようがない。
そうなったらカエデと同じ速度で敵陣に突っ込みつつメイスで相手を叩き潰していく悪魔が爆誕する事になるが是非ともそうなったらカエデの立場が狭くなるのでご勘弁していただきたい。
「お~い、三日月君にカエデ君!君達の阿頼耶識のチェックを始めるからお願い〜。」
「う~す」
「分かっている。」
整備長の言葉を受けてそれぞれのナイトメアとバルバトスに乗り込んで居た。
幾ら傘下に入れてもこんな大掛かりな整備はしてくれない筈だがどうやら三日月がマクマードに気に入られたからこそ予算上限無しという整備士にとっては夢のような条件下での整備が可能になった。
整備長は幻のガンダム・フレームを整備出来るというだけでテンションMAXだったのにスターサファイアを加工した武器と装甲が搭載されたナイトメアという存在のせいでもうテンションゲージが振り切れているのかもう目がやばい事になっている。
そして数時間後、ナイトメアとバルバトスの全ての準備が完了するとバルバトスは巨大なブースターが装備されている輸送機のクタン参型の中に収容されるとクタンの操縦席へ雪之丞が乗り込むのを確認するとバルバトスに三日月が乗ってナイトメアにはカエデとイシガシが乗って歳星を出た艦を追いかけるように宇宙へと飛び出して行った。
流石に大型のブースターがあるだけにクタン参型の速度は速くナイトメアも出力を上げて加速し並び立った。
「やはり速いな。整備されて調子が良いナイトメアでも追いつくのがやっとか。」
「エネルギーを開放されれば抜けますけどね。」
「それはそうだがあれは最終手段だ。」
「それでもナイトメアは元からバルバトスと同等かそれ以上の速度があるって事になるんだけどな、それでも十分やべぇよ」
「これなら直ぐにイサリビとハンマーヘッドに追いつくだろう。」
結果としてはそれほど時間が経つほども無くナイトメアとバルバトスのレーダーにイサリビとハンマーヘッドのリアクターの反応を捕まえる事が出来たが他の反応も拾った。
「っ!三日月!昭弘のグレイズと未登録の反応が三つあるぞ!」
「分かった、バルバトスで一気に加速して突入するから!」
「行くぞ!!」
迷う事無く出力を全開にする三日月とカエデ、イサリビをあっさりと抜かしつつ戦闘空域へと侵入するとバルバトスはクタンから出て単身で突撃して行ったのだ。
「お、おい待て俺は操縦なんかできねえぞ!?」
「御安心を…おやっさん、私が操縦モードでイサリビまで御案内致しますので…」
イシガシはそういい残すとナイトメアを操縦しているカエデの横でクタンを操縦モードでイサリビに置いて来た。
バルバトスと同じように加速して空域へと突撃して行くナイトメア。
モニターに映っているのは複数の敵に囲まれながら銃弾を打ち込まれ続けているグレイズの姿と反撃はしているが相手のMSはずんぐりとした厚い鎧を纏っているかのようなMSでグレイズのライフルでは傷一つついていなかった。
そして1機のMSが昭弘のグレイズに向けて斧を振り下ろそうとしたその時、頭上よりやって来た悪魔が首へと入れるように真っ直ぐと太刀を突っ込んだ。
装甲の内部へと潜った太刀は機体の内部とコクピットを一瞬で破壊しMSを再起不能とした。
「流石は三日月だな。」
「えぇ、恐ろしいことですね」
「カ、カエデの兄貴!?イシガシの兄貴!?み、三日月なのか?っというか3人とも早くねえか!?まだ数時間しか立ってないぞ?」
「あぁ、急いで来たからな…」
改めて新しくなったバルバトスを見た。
テイワズの整備長が厄祭戦当時の物を再現したと行っていたがあれが恐らく本来のバルバトスの姿に近い物なのだろう。
そしてそこへスターサファイアで加工した短い翼のような突起、それによって全体的な性能が上昇しており三日月もその動かしやすさに驚いて笑っていたのだ。
「カエデ兄さん、イシガシ兄さん!助かりました!!」
「タカキ、君まで居たのですか…」
「はい。昭弘さんと哨戒に出てたんです」
「三日月は昭弘とタカキの護衛だ。私が殿を努めようと思う。」
「分かった、カエデ兄さん、無理はしないでね」
バルバトスは軽い動きで昭弘のグレイズとタカキの乗った背負われたMWを護衛するようにイサリビへと向かっていた。
その背後から迫ってくる緑色で何処かカエルらしき印象を受けるMSにナイトメアは狙いを定めた。
「此処から行かせん。」
杖型のハンマーで敵機には大したダメージがあるようには見えなかった。
やはり重装甲タイプの敵はやりづらいので新発明を使うことにした。
ナイトメアは杖型のハンマーを背中に戻して銃を装備し直した。
「食らうと良い。」
ナイトメアの放った銃弾が直撃と同時に高熱を発しながら爆発を引き起こしマン・ロディの装甲のナノラミネートアーマーを瞬時に剥がしてしたのだ。
そして透かさずそこへ杖型のハンマーを打ち込んでみると光は腕を貫通し破壊した。
「想像以上の出来前ですね、カエデ様。スターサファイア入りのナパーム弾。」
「あぁ、敵が撤退し始めている。」
「うわああああ!!な、なんだよあれMS用のナパーム弾なのかよ!!普通じゃないぞ!!」
「くそっ!!兎に角動き回れ、隙を見せたらやられるぞ!!」
もう1機の言葉を受けて機体の見た目とは反した高い機動性を見せて此方の射撃を受けまいと動き始めるマン・ロディ。
だがしかし唯激しい動くだけで当たらなくなるのでは高速移動している機体でまともに遠距離射撃など出来ないと踏んだのだろうが…。
「ナイトメアに効くわけなかろう。」
カエデは笑いながら正確に頭部と胸部それぞれ通常の弾丸を寸分違わずに命中させて見せた。
「な、何だこいつ……!?やばい、やばすぎるぞこいつ!?」
「くそ!!一旦デブリの影に行くぞ!!」
ナイトメアに恐怖を感じたのか一目散にデブリの中へと逃げ込んでいく2機を見るとナイトメアはその隙に一気に後退し三日月の援護へと向かっていく。
だがそこでは既に名瀬率いるタービンズからの援護が到着していたのか三日月とマン・ロディを更に大型化させたような機体と交戦をしていたのだ。
そこから勢いよく遠ざかるようにしているグレイズ改を発見するとカエデはそちらの護衛につく。
「昭弘にタカキか?どうしたんだ!?」
「カ、カエデ兄さん!タカキが!!タカキが!!!!」
昭弘は何時もカエデのことは兄貴と呼ぶがいま兄さんと呼んでいた。それほどに動揺していたのだ。
昭弘のらしくない悲鳴のような声を聞きMWを見るとそこには拉げた装甲のMWがグレイズ改の手の中にあった。
それを見た瞬間ナイトメアに乗っていたカエデとイシガシの血の気が引いて行った。
「急げ!!イサリビへ!!」
「タカキ、タカキしっかりしろ!!もう着くんだ、頼むしっかりしてくれ!!!!」
イサリビのドッグへと戻ってきたナイトメアから飛び降りるようにカエデとイシガシは拉げた機体からタカキを救出しようと奮闘している皆の元へと急いだ。
カッターなどを使用し必死にMWの装甲を抉じ開けようとする中でライドの声が木霊する。
そして開いたMWの中から出てきたのはスーツの中で激しく流血し意識を失っているタカキだった。
それを見たイシガシはドッグにある応急キットを取るとタカキの元へ向かうがカエデの声が聞こえた。
「イシガシ!!それでは間に合わん!!」
「しかし!!カエデ様!!」
「私に任せろ!!全員そこを引け!!」
鉄華団全員は普段大声を出すことの無いカエデに驚きその場で立ち止まった。
その隙にカエデはタカキの元に行き心臓の場所に手を置いて目を閉じるカエデの背中から青黒い影が出て来た。
「…出て来い、暗黒神ダークエクソダス…」
「んだよ、あれ…」
「ダークエクソダス、タカキの中に入り命を繋ぎ止めろ…あとは頼んだぞ、イシガシ」
カエデはそう命令するとダークエクソダスはまた青黒い影になってタカキの身体に入るとイシガシが輸血パックと包帯を持って応急処置を始めた。
必死な応急処置は医務室から治療道具を持ってきたクーデリアとそれを受け取ったテイワズからの仲介役にしてお目付け役のメリビット・ステープルトンが来るまで行われた。
メリビットが治療を行おうとした時驚いた、応急処置とはいえ自分がやる事がもうかなり少なくなり後少し行えば大丈夫というところまで来ていた。
「後は私がやります、イシガシ君は医務室のメディカルナノマシンベッドを!!」
「此処はお願い致します。」
そう言って去って行くイシガシを見送ったメリビットは応急処置が行われたタカキの治療を行うが簡単な最終工程しか行うとそのまま数人の手を借りてタカキを医務室へと連れて行った。
「イシガシ兄さん!!タカキは!!?」
医務室へと駆け込んできたオルガと昭弘、連絡を聞いてすっ飛んできたのだがそこには正常な心拍音を立てる計器と呼吸をしながら横たわるタカキを見守る1人の女性とイシガシの姿があった。
息を荒げながら入ってきたオルガに対してイシガシは…。
「無事ですよ。」
「良かった……本当に…」
その時、三日月に肩を借りて医務室まで来たカエデの姿があった。
「どうやら…命を繋ぎ止めたらしいな…」
「はい、しかしカエデ様。何故あのような危険な行為をしたのですか!!1歩間違えれば貴方様も死んでいたかもしれないのに!!」
「あぁ、だが結果的には賭けに勝ったのだ。それに私が無茶をしなければタカキは高確率で死んでいた。」
カエデはゆっくり歩きながらタカキの元へ向かうと頭を撫ぜた。
「私の命とタカキの命…それを天秤に乗せただけだ…。」
「…………はい…」
「カエデの兄貴、なんて無茶をしたんだよ…でもタカキとカエデの兄貴が生きててくれて良かった。」
その時、昭弘がカエデとイシガシに先程の影について尋ねた。
「あれは化身。人の思いが形となって現れた実体を持たない存在が人の視覚に見える姿を取ったものです。」
「人の思いが形になった…」
「俺達も使えるの?」
三日月は何気ない一言で言ったつもりだが…イシガシは否定する。
「不可能です。私とカエデ様しか使えませんし使う事に体力を奪われ続けるのです。」
「…そうなんだ…残念…」
三日月は化身が使えなくて残念そうだがその時
「イシガシ君、貴方は船医を兼任してるんですか?」
鉄華団の内部状況に詳しくないメリビットはそう尋ねると頷いた。
「大体私とカエデ様が皆が出来ない仕事請け負っています。鉄華団にはまともに教育を受けられてない子とか経験がないこが多い上にテイワズとの交渉で漸くまともなお金が入ってきたばかりなので、私とカエデ様が重要な所は全て…」
それを聞いてメリビットは相当驚いていた。
イシガシとカエデの年は見た所10代後半、それなのにどれだけの苦労を重ねているのだろうか。
そして苦労せざるを得ない鉄華団の状況の悪さにも驚きと心のどこかで船医が居ない事を責めようとした自分を恥じた。
雇っていないのではなくいままで雇えない状況だったのだから。
「カエデ様、そろそろ化身をタカキの中から引き出して下さい。これ以上はカエデ様の身体にも異変が起こります。」
「あぁ、出て来い、ダークエクソダス。」
カエデの呼び掛けで暗黒神ダークエクソダスはタカキの身体から出て来てカエデの身体にまた宿ったのだった。
この後、体力が戻ったカエデとイシガシは自分達を襲ってきたのがブルワーズという海賊であることが発覚し加えてそこに昭弘の弟が居るという驚愕の事実までが明らかになった。
そんな中カエデが口にしたのは…。
「なら決まりだな。全員、昭弘の弟を助け出すぞ。」
「ありがとう、みんな、カエデの兄貴。」