鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
新たな仲間とコロニーの反乱
*
ブルワーズとの戦闘後新たなに仲間が増えた鉄華団、元ブルワーズの少年達は先程まで戦っていた筈の自分達をあっさりと受け入れ良くしてくれる鉄華団の皆に驚きつつも少しずつであるが馴染み始めていた。
何より鉄華団とブルワーズではヒューマンデブリという意味での差別はまるで無く一人の人間として扱ってもらえることが大きかった。
もう此処から離れたくないという意味で必死に仕事を覚えたり馴染もうとしている子が大多数であった。
「アストン君、そろそろ区切りを付けて休憩に入ろう」
「分かりました班長」
「う、うむ」
「デルマ、此処はこうやってやるんだ。
まだ慣れていないんだから時間は掛かってもいいんだぞ。最初は丁寧にやり遂げる事を優先するんだ」
「わ、分かりました」
新入団員は基本的に整備班に入って貰いクランクやアインといった大人達の元で仕事を覚える事になりしっかりと仕事に励んでもらえている。
中々仕事の出来前と覚えがいいので教え甲斐があると2人からの評価も上場で鉄華団としても素晴らしい人材補強が出来て嬉しい限りである。
そんな風景を眺めて三日月と共にバルバトスのシステムチェックを行っているカエデは笑みを浮かべていた。
「もう慣れ始めているな…」
「皆、頑張ってるからね」
デブリ帯を突破する事約2日、クーデリアからの依頼を果たす為に地球へと向かう鉄華団だがその前に歳星で依頼された行く途中のドルトコロニー群へと荷物を運ぶ仕事をする事になっていた。
その事に付いてはクーデリア嬢は勿論納得しており了解も取れているので安心だ。
新入団員の皆にはそこで一旦タービンズが手配した迎えの船に乗船して貰って火星の本部に移動してもらいそこで働いてもらう事になっている手筈だ。
それまでの間だけでも確りと仕事を覚えて欲しいという事で始めた事だが上手く行っているようで何よりだ。
「それで『スターサファイア』を埋め込み搭載したバルバトスと武器はどうだった?」
「扱い易いよ。カエデ兄さん、それなのに前より燃費も出力も上がってて強くなってる」
「流石は私が作った特製の推進装置と武器だな。」
三日月によればデブリ帯での戦いではあの巨大なMSとかなり有利に戦えたと言っていた。
そして後から分かった事だがあの機体の正体はバルバトスと同じくガンダム・フレームの1機である『ガンダム・グシオン』であることが明らかとなった。
改めてリアクターの波形を確認してみた所リアクターを二基搭載したガンダムだと判明した。
ブルワーズはその出力を活かしてあんな重装甲にしたのだろう。
そしてグシオン以外の機体は全て売却しグシオンは一応鉄華団預かりとなり今はタービンズのドックで改装となっている。
「カエデ兄さん、これからコロニーって所に荷物届けに行くんだよね?」
「んっ?そうだ、楽しみなのか?三日月」
「違うよ。カエデ兄さん、その前に荷物の確認とかしなくていいの?前の戦闘で中身が壊れたり傷ついたりしてたら俺達が賠償金だっけ?それを払う事になるんじゃないの?」
「あぁ、その通りだ。いまイシガシに確認して貰っている。」
「そうなんだ…」
その時、イヤーカフからの通信が入ったのでテレパシーでイシガシと会話を始めた。
「(イシガシ、コンテナの中はどうなっていた?)」
「(カエデ様の予想通りでした。中身は間違いなく銃でした。しかもかなり高性能な物でしたが細工がしていました。遠隔操作出来るように…。)」
「(だろうな。一応中身は物資で良い。)」
「(かしこまりました。カエデ様)」
「我々を敵に回すとどうなるか…教えてやろう。ギャラルホルン…」
そして、カエデはイシガシとの通信を切るとバルバトスの整備にまた取り掛かり整備が終わるとカエデはブリッジに着くと、ドルトコロニーが見え始めて和気あいあいとしていたのだ。
ビスケットによるドルトコロニーの解説が入りアトラが買い物に行きたいと言うのでオルガは…。
「女だけってのもアレだな。ミカ、頼めるか?」
「…うん」
「オルガ、一応イシガシも連れて行け。三日月だけではもしもの時対処出来んだろうからな。」
カエデがそういうとイシガシがブリッジに現れた。
「あぁ、イシガシの兄貴頼みます。」
「えぇ、任せなさい。オルガ」
スペースランチでイサリビからドルトに入港したら、アトラ、クーデリア、フミタンは買い物をしていた。
その時にクーデリアがお風呂に最後に入ったのはいつかと聞かれたので答える。
「どんなに忙しくても毎日入っていますよ。」
「俺も毎日入ってる。」
「だよな、昔は3日間から5日間入らないなんて普通だったからな…」
「カエデ兄さんとイシガシ兄さんに怒られた記憶があるよ。」
「当たり前のことを言っただけですよ。」
その言葉にアトラとクーデリアは頷いていた。
色々話していると女性陣が鉄華団の着替えや洗剤などを買いに行ったので三日月とイシガシとビスケットは外で待っていた。
ビスケットにとってドルトコロニーは憧れだったりとか此処でお兄ちゃんが働いてるなどの話を聞いていると女性陣が帰って来た。
「会っていかないの?」
アトラにそう言われて急に来たら迷惑じゃないかと頬を掻くビスケットにイシガシは…。
「本当のご兄弟ならば嫌がる訳は無いと思いますよ。」
「あっ、イシガシさんはビスケット君をお願いします。」
アトラにそう言われたのでイシガシは頷き三日月達にはホテルに戻るように告げてイシガシは三日月に3人に近づく不審者に気をつけることを忠告しながらイシガシは"あるもの"を三日月に渡した。
「……これ持ってるけど。なんで?」
「三日月が持っているのは実弾でしょう。それは麻酔弾ですなので使って下さい。もしかしたら捕虜からなにか聞けるかも知れないですから。」
「わかった、あとで返すね。」
三日月はイシガシから受け取った麻酔銃を懐に締まったらビスケットが実の兄に電話をかけて合流地点を決めたらしいのでイシガシはビスケットの後を追ったのだ。
ビスケットの兄side
火星にいるはずの弟から連絡が来た。どうやら弟は仕事でこちらに立ち寄ったらしい。
ナボナさん達の組合に武器を流した鉄華団という連中もこのドルトコロニーに来ているようだし、あいつがデモに巻き込まれてはいけないと上司に休憩を貰って会社を出た。
ビスケットと会うのは何年ぶりだろうか。
こちらも、おそらくだがあちらも忙しくて連絡は取り合えていなかったので久しぶりの再会に心が踊っていた。
トルドコロニーで起きている会社と労働者の軋轢を何とかしようと躍起になっている俺にとってはビスケットとの待ち合わせ場所に向かうのがとても心地よいものになっていた。
「サヴァラン兄さん!」
「おぉ、ビスケット……大きくなったな。」
自分の名前を呼ばれてその先を見れば多少ふくよかになってはいるがあの顔を忘れたことは無かった。
言葉は意外にもすんなりと出てきてビスケットに近づくと自然と笑みが零れていた。
「ビスケット、お前ちょっと太ったか?」
「はは…うん、まぁね」
火星の暮らしが窮屈でやせ細ってるのではないかと思ったが杞憂だったらしい。
きっと良い食事を摂っているのだろう。
再会を喜びあったところでビスケットと同じジャケットを着ている少年について尋ねた。
「あの人はイシガシさん、俺の同僚です(イシガシ兄さんに紛らわしくなるから同僚って言うように言われなかったら普通にサヴァラン兄さんの前で兄さんって呼ぶ所だった。)」
紹介されたイシガシ・ゴーラムという青髪の男は俺に一瞥するとすぐに視線を外した。
常に何かを警戒しているような様子に怪訝に思うも何か言いたげな弟へと目を戻した。
「それでビスケット、話ってなんなんだ?」
電話で話があると言っていた。どんな話かは分からないが、こいつの表情からいい知らせなんだろう。
「俺、会社に入ったんだ。いや会社って言ってもまだまだ名も上げれてないんだけど…」
「おぉ……そ、そうか。良かったな」
「うん、良かった。今やってる仕事が終わればクッキーとクラッカを学校に通わせれる。それにおばあちゃんにも楽させてあげれると思うんだ。」
どうやら弟は俺以上に立派になっていたらしい。
頭がいいからとドルトコロニー幹部の家に養子として招き入れられた俺さえエリート街道を歩んでいるとはいえやっていることは会社と労働者の仲介役。
一触即発の状態を何とか収めようとしているけれど…どうにも上手くいかない。
対して弟は置いていった妹達や祖母をしっかりと守っていてくれているらしい。
「ありがとうビスケット。オレの代わりに…」
「ううん、いいんだ。俺が鉄華団に入れたのも兄さんのおかげだし」
「……なに? 鉄華団だとっ!?」
「えっ、サヴァラン兄さん?」
まさかこいつが鉄華団に!? 動揺したオレに顔を覗き込むようしてくるビスケットに悟られないように「なんでもない」と表情を変えた俺はとある女のことについて尋ねた。
「ビスケットはクーデリア・藍那・バーンスタインっていう女の人を知ってるか?」
「え?知ってるというか、俺達が今やってる仕事がクーデリアさんの護衛なんだ」
「なっ!?」
なんということだ……。いや、けれどこれはチャンスだ。クーデリアの身柄を確保してギャラルホルンに突き出せば……!
「そうなのか! いや、火星独立運動の旗印の女性には1度でいいから会ってみたかったんだ!」
「え? それなら近くのホテルにいるから会えるけど……」
「本当か!? ぜひ頼むよ!」
良くこんな嘘が出てくるなと我ながら感心する。
だがせっかくビスケットが運んできてくれたチャンスだ。
此処で物にしなければナボナさんを初めとした組合のみんなに俺やビスケットも助かるんだ。
「じゃあ車を回してもらうから、ビスケットはお嬢さんに連絡をしてくれないか? 2人で会いたいって」
「う、うん、わかったよ。兄さん」
俺はそう言って立ち上がると、ビスケットが使う電話から2つ離れた外からは中が見えないボックス電話に入り仲間に連絡を取ろうとした。
その時だった。
「動かないで下さい」
腰にスーツ越しでもわかるくらい冷たくどす黒いものを突きつけられた。
「な…」
「喋らないで下さい」
先程の無機質な声とは違う。
従わなければ殺すという明確な殺意を向けながら先程まで俺達に目もくれていなかった少年はいつの間にか俺の背後に回って拳銃らしきものを突き付けていた。
「良いですか。今から私の言うことを聞けば貴方の望みを全て叶えてあげます。」
オレの望みを? 何を言っている?
「労働者の理不尽の解消。家族や仲間を大切に堅実で幸せな人生を送らせてあげますよ。」
「なっ!?」
何故それをと声を出そうとしたらより強い力で拳銃の銃口を押し付けられた。
どうして今日会ったばかりの少年が俺の夢やナボナさん達のことまで知っているんだ?
一刻も早く、この少年から離れないといけないというのに大声で叫んだとしても俺を殺してこの少年はすぐに逃げるに違いない。
そうなれば、こいつがナボナさん達を助ける理由はなくなってもしかしたらこいつがナボナさん達を殺すかもしれない。
「ほ、本当に叶えてくれるのか?」
「えぇ、私とあの方と契約すればですけどね。」
「け、契約?」
まるで悪魔の囁きのように心臓を掴まれる。
「どんな行為にも代償は付き物ですよ。違いますか?」
「うぅ……! わ、分かった。君に従うよ」
俺は少年の言うことを仕方なく了承すると誰にも見られないように用心しながら電話ボックスを出た。
するとビスケットが急ぎ足でこちらにやってきた。
「た、大変だ! ってアレ、イシガシ兄さんは?」
「に、兄さん?彼が?同僚じゃないのか?」
「サヴァラン兄さん、あとで話すよ!!」
「此処です。どうしました?」
「あぁ、実は!」
するりと同じボックスから出てきたというのにビスケットは先程俺に銃口を突きつけていた少年を兄と呼んでいた。
しかし、そんなことを気にしてる余裕が無いのか話を進めた。
「フミタンさんとクーデリアさんが?」
「うん、三日月とアトラが目を離した隙にいなくなったらしいんだ!」
クーデリアというワードに思わず反応しそうになったが、俺は押し黙ると彼等の会話に耳を傾けた。
「分かりました。2人は私とカエデ様と三日月で探しますのでビスケット、君は兄を連れてホテルに行きなさい。」
「え、でも、イシガシ兄さん。サヴァラン兄さんは……」
「いいから早く行きなさい!市街地はこれから危なくなるんですよ!」
イシガシという少年はそう言って足早にこの場から離れると俺達兄弟だけが置いてけぼりとなった。
「……悪い、サヴァラン兄さん。こんなことになって…」
「え? あぁ、いいよ。見つかるといいな、2人共」
「うん、きっと大丈夫だよ。イシガシ兄さんとカエデ兄さんの2人なら」
ビスケットは彼とカエデと言う2人を心の底から信用しきっているような目で彼の小さくなっていく後ろ姿を見つめていた。
俺もみんなの命の手綱を彼に握られている以上、彼を信じるしか無かった。