鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
*
オルガが覚悟を決め、鉄華団の団員の1人であり此処まで旅を共にしてきたクーデリアの目的の実現を手伝う為に蒔苗の話を聞く決心をした直後…島にギャラルホルンの部隊が接近している事が発覚した。
蒔苗がオセアニア連邦に働きかけギャラルホルンを止めるという算段だったはずだがギャラルホルン内でも独自の指揮系統を持ったセブンスターズの第一席カルタ・イシューが直接出向いてきたとのこと。
オセアニア連邦でも抑えきれないとの事でそしてギャラルホルンからの通達があり中身は最早パターン化してきたクーデリアを引き渡せ、応じなければ武力を持って制圧する。
「最早テンプレですね。
当然応じる私達鉄華団とクーデリアさんではないのですけどまだわからないですね。」
直ちに迎撃と脱出の為の準備が行われていた。
MSの立ち上げやトラップの設置、CGS時代からの積み重ねもある為かそれらは非常にスムーズに進行していた。
カエデとイシガシの指導のお陰でもあるのだが全ての準備が済んだ時には日が昇り間もなくギャラルホルンから勧告された制限時間が終わろうとしていた。
沖に展開されたギャラルホルンの水上戦艦は島への飽和攻撃を始めて次々と発射されていく砲やミサイルだが島の中央部を狙うミサイルは次々と撃墜されていくのであった。
「何だ!?何故ミサイルが空中で一斉に迎撃されているんだ!?」
「わ、分かりません!」
「エイハブリアクターの反応を確認!!空中に展開しているMSが居ます!!」
「な、何だと!?」
「モニターにて最大望遠映像を出します!!」
艦のモニターにて出力されたのは島の上空にて居座って銃を自在に扱いながら次々とミサイルを撃ち落としていく黒い魔術師の姿であった。
歯噛みをしながら睨み付ける指揮官カルタ・イシューだが意味は成さずに迎撃は続けられていた。
「しかし、こんなにもバカスカとミサイルを撃ってくるとは余程クーデリア嬢を捉えたいと思っているのだろうな。」
空中にて静止したまま次々とミサイルを迎撃して行くカエデのナイトメアを各機は見上げながらその腕前に感心しながら弾薬を節約できる事に軽く笑みを浮かべていたのだ。
「昭弘。私の代わりに船を狙って貰えるか?敵の奴らは躍起になってかなりの量のミサイルを撃って来てるからな。」
「そりゃカエデの兄貴がミサイル落としまくってるから相手が躍起になるのも分かる。でもうっし、やってみるぜ!!」
大型のライフルを構えた昭弘は艦を狙って射撃を行った。初めての遠距離射撃だが本人としては確り狙ったつもりだったのだがそれは僅かに艦をかする程度にしか命中せずに大きな水柱を上げた。
「ちっ!外した!」
「何やってんのよ!へたくそ!あとでカエデ君にどやされるわよ!」
「い、いやだってな……」
「大気圏だと大気の影響を受けるからデータを修正して撃つんだよ。」
「まだ来ます!ミサイル追加です!」
「イシガシの兄貴!んなこと言ってったよ……!」
「昭弘、さっきの感覚身体に残ってるだろ。それに合わせて撃てば良いんだよ」
初めての大気圏内射撃は宇宙とは全く勝手が違う。流れる風や重力など様々な環境が織り成す事象が影響し射撃にぶれを生じさせる。
それによるブレのデータを素早く入力し修正を加えて射撃するのが一般的だが阿頼耶識を持った人間はそんな事をせずとも良いと三日月は言うがその時三日月は手に持っていた「SS」のペンダントを持って昭弘にアドバイスを行った。
三日月は「SS」のペンダントを出撃前にカエデから貰っていたが首に掛けるのを忘れて手に鎖を巻きつけていた。
昭弘はライフルを放った際の感覚にライフルの反動によって動いた腕にそれらが全て身体に記憶として残っていた。
それらに従って放つと弾が艦艇に見事に直撃して浸水を発生させた。
艦は大急ぎでMSの発進を行い次々と乗員は脱出して居た。
「案外、昭弘は狙撃手として資質があるかもな。」
「いや、あんなガチムチな昭弘の奴には似合わないって!それよりも海上から来る敵の迎撃手伝って!カエデ君!」
「わかった。」
次々と艦から発進してくるフライトユニットのような物を背負い海上を滑るように迫って来たギャラルホルンのグレイズ達。
それらのユニットなどを狙って射撃するナイトメアとタービンズの漏影にトリトーンとキャプテン・トリトーン。
迫ってくるのを撃つだけなので楽な作業だと思っていたが突如アラートが頭上からの敵機を知らせた。
機体を翻して空を見てみると何か鉄の塊が次々と降ってくるのが見えてきた。
「おいおい!なんか降ってきたぞ。地球の異常気象かよ!?」
「そんな訳ないだろう。どんな恐ろしい気象だ。」
昭弘とカエデがそう言っている間に鉄の塊から次々とグレイズの系統のものだと思われる機体が降下して来たのだ。
それらは牽制射撃を繰り返しながら着地してナイトメア達へと向かって行くと思いきや敵機であるグレイズリッターは一列に並び始め中央の赤いラインが引かれている機体を中心にしながら剣を地面に刺しながら構えると外部スピーカーをONにして叫び始めた。
「我ら!!地球外縁軌道統制統合艦隊!!!」
「面壁九年!!堅牢堅固!!」
何やら名乗りを上げているところだったが飛来した銃弾二発が左から1番目と2番目の機体の頭部パーツを吹き飛び倒れ込んだ。
正々堂々と戦いを申し込むという前の名乗りでの攻撃に思わず敵は固まった。
そして謎の沈黙が訪れ黙っていられなくなった昭弘が口を開いた。
「カエデの兄貴、撃って良かったんだよな……?」
「あぁ、よくやった。」
「てかなんで名乗り上げてんだ?別に決闘する訳でも無いのにな」
「馬鹿だからじゃない?」
「三日月、そこまで言ってやるな。まぁ、本当の事でも言っちゃ駄目なんだ。敵を見て狙撃しない奴は居ないだろう?」
「そうだね、カエデ兄さん。ごめんね馬鹿な人達」
同じく外部スピーカーで外に聞こえるようにして会話をしていた三日月達鉄華団の会話は当然降下して来たMSのリーダーであるカルタに確りと聞こえていた。そして三日月の遠慮無しの罵倒に青筋を立てていた。
「無作法な野蛮人がぁ!!圏外圏の鉄の野蛮人に制裁を加える!!」
「鉄拳制裁!!鋒矢の陣!吶喊!!一点突破!!」
剣を構えたまま一気に加速して突撃してくるグレイズリッターに流星号が射撃を行うがそれすら物ともせず突進して来たのだ。
だがそれに怯まずバルバトスは今まで手にしたメイスよりもさらに巨大で恐竜の頭部のような形状をしたメイスを手に引きずるように前進していた。
そして先程ナイトメアとリベイクによって損傷をした2機に狙いを定めた。軽くジャンプするとそのままバルバトスは飛行を開始し巨大なメイスを一気に振り下ろすとグレイズリッターを2機纏めてコンクピットを潰しながら吹き飛ばした。
「カ、カルタ様!!我らの陣が!!」
「お、おのれぇ!!!落ち着きなさい、各機散開!!冷静に各機敵を各個撃破!!我ら地球外縁軌道統制統合艦隊が負けるはずなどない!!」
「面壁九年!堅牢堅固!」
策が破られたカルタだがそこまでうろたえる事もなく冷静に指示を飛ばして1機を複数で攻撃するように命令する。
幸いな事に先ほど此方を狙い撃って来た機体は上陸したMSと戦闘し上空の機体は沿岸部に到達したMSの対処をしている。
ならば今こそ好機だと攻め始めるが相手は阿頼耶識を搭載したMS、2機1組で襲い掛かっても攻め切れずに寧ろ押し返されていた。
「こんな戦いイシュー家の戦歴に必要ない……!!早く、撃滅なさい!!」
「カ、カルタ様!!上陸部隊との通信途絶しました!!状況不明です!!」
次々と飛び込んでくる此方にとって都合の悪い事ばかりにカルタは強く歯軋りをすると1機の部下が流星号が引いた所を追い討ちしようとした時に足場の崩落というトラップに掛かってしまった。
助けに入ろうとするがバルバトスのメイスが襲い掛かり助けられずコンクピットを斧で抉られた際の断末魔が聞こえてきてしまった。
「おのれぇぇ!!あれは!!?」
バルバトスの一撃から逃れた時に遠くからにMWが見えた。それだけなら気にも止めないがそこから顔を出している男は指示を出しているように見えた。
恐らくあれが前線指揮官、あいつさえ撃ちとれば指揮系統は崩壊すると睨んだカルタはバルバトスの足止めを部下に指示すると一直線にオルガとビスケットの乗ったMWへと向かっていった。
「良くも私の可愛い部下達を!!!」
「ビスケット!!!」
「分かってる!!オルガ!!」
反転して森の中へと向かおうとするMWだがMSとは速度の違いがありすぎていた。
その為に容易に接近され今にも剣が振るわれ自分達ごと機体が抉られようとした。
オルガは迫ってくるカルタのMSが剣を振りかぶりこちらを斬りつけようとするのが視界一杯に広がり此処までなのかと思ってしまった。三日月も必死に向かおうとしているが阻まれて間に合わない。
もう終わりなのか。そして剣が振るわれ……
……装甲を抉る音が島に木霊した。周囲に飛び散ったオイルはまるで血のように地面を塗装していた装甲の破片は肉片のような無様な姿を晒していた。
「あ、あれ……俺生きてるのか……!?お、おいビスケット無事か!?」
「う、うんなんとか生きてるみたい……で、でもなんで……?」
オルガもビスケットも確かに無事だったMWは森の木々に突っ込んでやや傾いているが確りと無事であったのだ。
だが何故自分達は生きているのか…先程の攻撃はどうなったのか…思わず目を後ろに向けてみた。
だがその時、2人が目が映し出したのは見たくない物だった。
そこにあったのは胸部にグレイズリッターの剣が杖型のハンマーを貫通して装甲が抉られながらも攻撃を防いでいたナイトメアの姿だった。
「お、おい嘘だろ……?カエデの兄貴!!!!」
「カエデ兄さん!!!!」
あの時、MWに攻撃が当たろうとした時その間に最大出力の機動力でナイトメアが割って入ったのだ。
最大出力でグレイズリッターに肉薄したナイトメアは身体を張ってオルガとビスケットを守った。
通信に悲鳴じみた2人の声が響いていたのだ。
無事なのかそれを知りたいと言う一心で通信機に声をぶつける。
「兄貴、おい返事しろよ!!カエデの兄貴!!!」
「お願いです!カエデ兄さん返事をしてください!!」
「カエデ様!!!」
「………どう…ら無事、な感じ…で…安…心……した…ぞ…」
「!!!カエデの兄貴!!大丈夫なのか!!?」
通信から漏れてきたカエデの声は小さく薄れていて掠れていた。苦しげな息遣いと痛みに耐えるような声が聞こえた。
ナイトメアのコンクピットは胸部。
コンクピットを貫通しているのかもしれないそんな心配が過ぎりながらもナイトメアは必死にグレイズリッターを抑えつけていた。
「わた、しの……弟、分……たちには……指一本、ふれさせは……」
「えぇ!いまだ生きているのか!!ならばこんどこそ引導を……!!な、何!!?」
「おい…お前、カエデ兄さんに何をやってる…!!」
自らを抑え付けていた機体を振り払ったバルバトスは怒りのままに巨大なメイスを振りかざした。
それは展開し獰猛な肉食恐竜のようにカルタへと食らい付きそのまま易々と持ち上げるとグレイズリッターを地面へと叩きつけた。
それでも三日月の怒りは収まらないメイスを頭部へと叩き付けて粉砕しても収まらない。
三日月はバルバトスの認証システムに十字架と月が入ったペンダントを入れて必殺ファンクションを発動したのだ。
始めて発動するがカルタの機体を逃がさぬように…。
「お前が……!!!必殺ファンクション!!インパクトカイザー!!!」
バルバトスはメイスを地面に叩きつけると底から火柱が上がりカルタの機体を傷付けたが今度はコンクピットを重点的に潰そうとした時に残った機体がカルタの機体を庇うように躍り出てると自分を蹴り体勢を崩してその隙にと言わんばかりに最大出力で撤退していた。
「待て……!!!」
「ミカもうそいつらことは良い!!それよりもナイトメアを寝かせるんだ!!」
「オルガ……分かった……!」
バルバトスはメイスを手放すとナイトメアを抱えてその場にそっと横にするとそこへ飛び乗ったオルガはコンクピットを開ける。
どうか無事であってくれとオルガは願いながらハッチが開くとそこにはモニターに飛び散った血と眠っているかようにしているカエデの姿があった。
「お、おい嘘だろ……!?おい嘘だよな……!?」
「オルガ!!早く、早くカエデ兄さんを治療しないと!!手遅れになる前に!!!イシガシ兄さんも準備してる!!!」
「あ、あぁ!!分かってる!!」
カルタが撤退した事で戦闘は終了しギャラルホルンも引いて行った。
「早く!カエデ様を此方へ!!」
「イシガシの兄貴!!」
全員が基地に戻ると全員はそこでイシガシに教わって通りに応急処置をしているオルガとイシガシ本人だった。それを受けているカエデの姿に言葉を失ったのだ。
必死に応急処置をするオルガとイシガシの鬼気迫る表情と眠るようにしているカエデに誰もが最悪の事を連想してしまった。
「これで、良い筈だ……良い筈、だよな……!?」
「えぇ、良くやりましたね…オルガ…。」
「イシガシの兄貴…」
でも身体が震え喉が枯れていた。そんな感覚に襲われ押し潰されそうになった時そっと自分の頬に暖かい感触があった。
「……あぁ…上手く…出来たな……」
意識を取りも出したカエデの言葉とややぎこちない笑顔が浮かんだ時、鉄華団全員は島全体が震えるような大歓声が巻き起こった。