鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い   作:五月雨☆。.:*・゜

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相談役の怪我と怒りのジョーカー

 

 

鉄華団とタービンズそして蒔苗。彼らはクーデリアが手配した船に乗り込みアーブラウへと向かう為に海上を進んでいた。

クーデリアが手配したのはモンターク商会の船、その船長はギャラルホルンが使用している監視衛星の情報を得ているのかそれらを回避するように船を動かしギャラルホルンからの追撃を逃れていた。

 

 

船は一旦アラスカに向かいそこでテイワズの定期便の列車に乗り込みそこからエドモントンへ向かう。

クーデリア発案のこのコースはギャラルホルンに発覚しにくい事や周囲に都市部がなくエイハブリアクターによる電波障害を気にする必要が無いので堂々とMSを運べるという利点を狙っての物だった。

 

 

「良く考えられているな。」

 

 

「イシガシさんから勉強しました。私も今は鉄華団の一員のようなものです。」

 

 

船の一室、身体に包帯を巻きベットに大人しく横になっているカエデとクーデリアが話をしていた。

先の戦闘でオルガとビスケットを庇って事で受けた傷、ナイトメアの胸部を貫通した事でダメージがコンクピットの計器にも発生し小規模の爆発が起きたのだ。

それにより脇腹と額に傷を作ってしまった…出血は多かったが命に別状はなく皆は酷く安堵していた。

 

 

「それにしても……傷もそんなに深くない。もう動けるというのに大袈裟だ。」

 

 

「皆さん本当に心配してたんですよ。あの時、カエデさんが死んでしまったんじゃないかって思って私も含めて皆絶望の一歩手前でした……だから今は皆さんの安心の為にも安静してください。」

 

 

「しょうがないな。イシガシの説教よりはマシだ。だが列車に乗り換えたら動くと全員に言って貰えるか?何時も忙しかったから何もしないっていうのは変な感じだからな。」

 

 

昔から常に忙しかった故の習慣で身体に残っているのは書類にサインをする方法にMSの整備方法と仕事をする為の事ばかりだった。

 

 

ある意味仕事中毒に近い何かかもしれない。怪我もしないし病気にならなかったからこその仕事中毒。そんな事を言うカエデにクーデリアは笑った。

 

 

「やっぱりカエデさんって鉄華団のお兄さんですね。皆さんの事を本当に大切に思ってる…少し羨ましいです」

 

 

「そうか?君のことも私とイシガシはずっと前から妹分だったがな。」

 

 

「ありがとうございます。カエデさん」

 

 

そんな言葉の駆け合いで生まれた笑みからは自然と笑いが零れた。そしてクーデリアは蒔苗との話があると言って去って行った。

クーデリアを見送るとカエデはベットに背中を預けながら持ってきて貰ったナイトメアの状態報告書を読み始めた。

 

 

致命的な損傷という訳でもない為現在修理中で定期便に乗り換えるまでには完了するとの事。

それに安心すると暇になってしまい何かしようかなと考えると扉が開いた。

 

 

「カエデ兄さん、今良い?」

 

 

「三日月か、勿論良いぞ。暇だったのでな…。」

 

 

入ってきた三日月の手にはお菓子やエネルギーバーなどが入った小皿が持たれていた。

どうやら幼年組からのお見舞いの品という物らしい。

カエデは嬉しく思いながらそれを受け取り机の上に置くと三日月は先程までクーデリアが座っていたイスに座った。

 

 

「ごめん。俺が止められてなくてカエデ兄さんが怪我しなくてすんだのに…。」

 

 

「気にするな。今更起きた事を後悔しても何も変わらんぞ?」

 

 

何処かテンションが低く凹んでいるような三日月に物珍しそうな視線を送る。

実際三日月はやや落ち込んでいたのだ。カエデは三日月にとっても大切な人でもある。

そんな人が怪我をしてしまったのは自分があの機体を逃し足止めを受けてしまった事が原因だから落ち込んでいた。そんな弟分の頭を軽く撫でながらカエデは言葉を紡いだ。

 

 

「優先すべきなのはその後悔を次に活かすか活かさないかだ。私は生きてるそれが事実よ。だから三日月、この顔は辞めろ」

 

 

「カエデ兄さん……分かった。次あいつが出てきたら絶対に潰す。徹底的に潰すから」

 

 

「それでいい。それにイシガシから聞いたが必殺ファンクションを発動出来たらしいな?」

 

 

「うん、なんか無我夢中でやってた。」

 

 

「そうか。」

 

 

カエデは三日月の頭を撫ぜた。

そして撫ぜ終わると三日月は普段通りの表情に戻りそのまま部屋から出て行った。

 

 

「やっぱりキレてたか。折角だから私の分の仕返しを三日月にやって貰おう」

 

 

その言葉がまもなく実現する事をカエデは予知していたのだ。

いよいよテイワズの列車に乗り換えたカエデは漸く動く事を許された今まで働けなかった分を取り戻すかのように整備に作戦会議等を取り仕切った。

 

 

「やっぱりじっとしてるのは私の性には合わない。」

 

 

「全くカエデの兄貴。……俺としてはもっとゆっくり休んでて欲しいんだがな。仮にも俺とビスケットを庇って出来た傷だからそうしてくれた方が安心するというか。つかもっと怪我人らしくしやがれ!」

 

 

「無理だ。」

 

 

「だよな……ハァッ……」

 

 

廊下で出会ったオルガに深い深い溜息を吐かれたカエデは彼の心配などお構い無しに今度は見張りの交代でもしに行こうと直ったばかりナイトメアへと足を向けた。

 

 

だがそんな時に列車全体に危険を知らせるアラートが鳴り響いた。カエデはイクサルフリートの服へと着替えていたので急いでナイトメアへと向かっていった。

 

 

線路上に立ち塞がった3機のグレイズリッター。地球外縁軌道統制統合艦隊司令官カルタ・イシュー率いる親衛隊が先回りして待ちうけていた。

透かさず列車は停止するとそれに合わせるようにカルタがマイク越しに声を張り上げた。

 

 

「私はギャラルホルン地球本部所属地球外縁軌道統制統合艦隊司令官、カルタ・イシュー!!鉄華団に対してMS3機同士による決闘を申し込む。

 

 

我々が勝利した場合、クーデリア・藍那・バーンスタイン及び蒔苗東護ノ介の身柄を引き渡してもらう。そして鉄華団の諸君には投降してもらう」

 

 

「おいおい!これって確かクランクのおっさんがやった決闘の合図じゃ……」

 

 

「あぁ、その通りだ。私がやったのと同じだが……まさかあのセブンスターズの第一席のイシュー家の人間が此処までやるとは……」

 

 

「如何しますクランクさん、この決闘を我々鉄華団は受けるべきなのでしょうか?」

 

 

「受ける価値がないな」

 

 

意見を述べるクランクはそう断言した。

自分が鉄華団に対して持ちかけた決闘の時とは状況が違うのだ。此方からしたら決闘を受けるメリットが無い。

あちらはクーデリアと蒔苗の身柄を押さえればだがこちらは押し通れば良いだけなのだからそれに受ける道理も無い。向こうも素直に此方が応じると思っているのだろうか。

 

 

「あぁ、クランクの言う通りだ。受ける価値がない。」

 

 

「まぁそう言う事だな。」

 

 

「全員!直ぐにMSへ!押し通るぞ!」

 

 

「おうカエデの兄貴にやった事を倍返しにしてやるぜ!!」

 

 

「シノ、嬉しいことを言うな……あっ…」

 

 

そんな時にカエデはある事を思い出した。それは先日行った三日月との会話だった。

 

 

「……いまの見張りは三日月だよな。」

 

 

「えっ?そうだけど如何したの?」

 

 

「…あいつ、私が怪我した事でマジギレしてな。多分もう……飛び出している筈だ。」

 

 

「待ってくれ!今気付いたがイシガシの兄貴も居ねぇ!!」

 

 

「あっ…」

 

 

全員の気持ちが重なった瞬間だった。

 

 

「30分、セッティングに掛かる時間を考慮し我らは待つ。準備が整い次第に正々堂々と戦おうではないか。」

 

 

言いたい事を言いきったカルタはコンクピットに戻ろうとした時、目を見開いた。

メイスを持ったバルバトスが列車から飛び出し猛スピードで此方に向かってきていたのだから。

自分が待つといってたのにそれを完全に無視しての行動に驚きつつも親衛隊の一人が声を荒げて何故カルタの言葉を無視したと咎めるがバルバトスはそのまま止まらずグレイズリッターの胸部へとメイスを叩きつけた。

軽々と浮いた機体はそのまま装甲とフレームを歪ませながら吹き飛んだ。

 

 

「カルタ様一度体勢を整えて……ぐあ!!!」

 

 

1人がカルタにそう進言するがそれよりも早く投げられたメイスによって倒れこむ。

バルバトスはそのまま立ち上がる隙すら与えずに「SS」の技術より高々と跳躍するとそのまま一気に降下しコンクピットを踏み潰した。

 

 

バルバトスは地上戦仕様の為に足をヒールのようにし反応速度を高めているがそれは踏み潰す際にも有効な武器となり機体のコンクピットを貫き潰した。

 

 

「な、なんと卑劣な!!誇り高き私の親衛隊をっ……!!!」

 

 

「……後は、お前だ……俺はカエデ兄さんと約束したんだ」

 

 

「待ちなさい、三日月。その者を殺す役目を私にも譲ってくれませんか?」

 

 

三日月の乗るバルバトスに通信を繋げたのはナイトメアとはかなり装備が似ていた黒い機体。

 

 

「この声、イシガシ兄さん?」

 

 

三日月は映し出されたモニターを見るとイクサルフリートの服を来てガンダムフレームに乗っていたイシガシがいた。

 

 

「その機体ってイシガシ兄さんの機体?」

 

 

「えぇ、トランプでは「切り札」と言われているJOKER。これこそが私の機体、ナイトメアの原型!ジョーカーです!」

 

 

ジョーカーはバツ印の赤眼の双眼、妖しく笑う口元、杖型のハンマーではなく赤い鎌、ナイトメア見たいにマントは無いがナイトメアと同様な雰囲気を感じていた。

 

 

「セブンスターズのカルタ・イシューさん。私は今から貴方を殺します。何故ならば…貴方は私の敬愛すべきカエデ様を亡き者としようとした!!それは私にとっては許されないことだ!!貴様の罪をあの世で後悔するが良い!!行きますよ!三日月!!」

 

 

「わかった、イシガシ兄さん」

 

 

メイスを持ち直したバルバトスは一気に迫りながらメイスを振りかぶるがカルタはそれを素早く回避するだがバルバトスでは無くジョーカーから発せられている覇気と殺意が異常である事が自分を圧倒しているかのように感じられた。

 

 

「今度、あんたが出てきたら…潰す。徹底的に潰すってカエデ兄さんと約束したんだ…」

 

 

カエデとの約束とカルタへの怒りが今まで以上にバルバトスの動きを機敏に鋭くしていた。

 

 

剣の一撃を身体を沈めて回避するとそのままジョーカーの鎌を叩きこみ吹き飛ばし追撃に鎌をグレイズリッターの肩へと切り付けた。

 

 

ジョーカーの鎌の内部に仕込まれていた刃が作動し肩の装甲を切断し破壊していた。再びバルバトスがメイスとジョーカーは鎌を振り切ると今度はグレイズの脚部が潰れた。

 

 

「私は、私は恐れない!!」

 

 

「あっそ、だったら……」

 

 

「そうですか…」

 

 

通信越しに聞こえた声はイシガシと三日月の声だった。

 

 

「「なら!!」」

 

 

「「さっさと死ね!!」」

 

 

ジョーカーとバルバトスにコンクピットを思いっきり殴りつけられた機体は雪原を転げ回るように回転しボロボロになった装甲の切れ目から機体から発せられる熱で溶け出した雪がコンクピットの内部にまで入ってきていた。

 

 

傷だらけになったカルタは気丈に振舞いながら目の前の悪魔とJOKERを睨みつけながらまだ戦おうとするが残っていた最後の四肢である右腕を叩き潰されてしまった。

 

 

完全な達磨になったグレイズリッターを三日月とイシガシは静かに見下ろした。

そして止めをさすためにバルバトスはメイスで剣を折るとジョーカーは鎌でその刃を握りコンクピットへと差し向けた。

 

 

「これで終わりです。セブンスターズ、カルタ・イシュー。」

 

 

自分の誇りである筈の剣が折られ鎌が自分へと向けられている。

そんな現実をカルタは受け入れられなかった。そして一筋の涙を流した時にその場に新たな悪魔が姿を現した。

 

 

新たなエイハブウェーブの反応と共に高速で迫ってきた機体は銃弾をバルバトスとジョーカーに浴びせかけながら雪上を滑るように登場した悪魔、新たな姿となったキマリスであった。

 

 

バルバトスは身構えるがキマリスは銃弾で雪を巻き上げるとそれを煙幕のようにしながらボロボロとなったグレイズリッターを抱えるとそのまま撤退して行った。

追おうとするがイシガシに止められたのだ"速度が違い過ぎる"とその言葉で三日月は身体から力を抜いた。

 

 

「……カエデ兄さん、約束守ったよ…」

 

 

今、三日月は十字架と月のマークが入ったペンダントを握り胸の中にあったのはカエデとの約束を守れたという達成感で溢れていた。

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