鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
再び現れた鉄華団
*
地球での鉄華団とギャラルホルンの戦闘、いやアーブラウの代表選挙から約2年。
蒔苗 東護ノ介の代表再選とギャラルホルンが用いたMSに搭載されていた人道に反した人間を生体ユニットにするという腐敗の発覚による世界の縮図と情勢は大きく変化していた。
クーデリアを地球へと送り届けただけではなく蒔苗をアーブラウへと送り届けた鉄華団の名前は一気に知れ渡る事となった。
加えて鉄華団がテイワズの傘下に入りタービンズの兄弟分となる際にクーデリアとマクマードの交渉によってテイワズに齎されたハーフメタル利権、それによってテイワズに大きく貢献した鉄華団は改めてテイワズとの盃を交わし直系団体としてテイワズ内でも大きな成長を見せた。
アーブラウは弱体化し信頼度が落ちたギャラルホルンに頼るのをやめ防衛力を強化、それに当たり軍事顧問として鉄華団を指名した。
これにより地球に鉄華団支部が誕生、鉄華団整備チーフであったクランク・ゼント、整備班班長であったアイン・ダルトンが地球支部の支部長と副支部長にカエデとイシガシの推薦で就任して奮闘していたのだ。
弱体化の背景には地球外縁軌道統制統合艦隊指揮官カルタ・イシュー、地球本部監査局付武官である特務三佐ガエリオ・ボードウィンの死亡による物が大きかった。
クーデリアは火星での独立と経済の発達の為にハーフメタルの採掘一次加工輸送業務を行うアドモス商会を設立。
更に鉄華団と提携し桜農場内に孤児院を設立し社会的弱者への能動的支援と火星全土の経済的独立の為、その社長として副社長のフミタンと共に奔走する毎日を送っていた。
2年前まで名も知られず、人知れずに起業された鉄華団は今や地球圏及び圏外圏において知らぬものはいない企業となった。
その企業は嘗てヒューマン・デブリと呼ばれた子供達が立ち上げた物、そこに希望を見出した子供達は鉄華団に憧れ入団者は増え続けていたのだ。
そんな新入団員を鍛える教官職と相談役補佐に就いた2年前はまだ19歳の少年でいまは21歳になったイシガシ・ゴーラムは新入団員を鍛えていた。
「足が止まりそうになってますよ。あと5周です。」
鉄華団は今や唯の民兵組織では無くなっていた。
ギャラルホルンという組織の力の弱体化により火星の治安は悪化して来ていた。
それをカバーするように鉄華団に護衛や治安維持のための出動依頼が増えて来ていた。
武器こそ握るが目的はパトロール、今や火星では鉄華団に逆らおうという物好きはいないのだろう。
ただそこに居るだけで威圧感を与え抑止力となっているのだ。だがギャラルホルンの弱体化により出動依頼は増えており人手が不足がちになっていた。
「…あぁ……なんか川と新しい地平が見える……」
「ザック、あと半周です。デインはペースを崩さないようにしてください。」
「うっす!イシガシ兄さん!」
「うおおおおお!!が、頑張れ!俺!!」
一時はカエデと共にイシガシは教官職を退きカエデが鉄華団に提供した技術、"スターサファイア・ドライブ"通称「SS」の技術者としてカエデと共にテイワズに出向して開発などに協力していたが鉄華団からの要請を受けてカエデと共に教官職に復帰していたのだ。
イシガシは今日も新入団員に訓練を施していた。
その訓練の厳しさと励ましてくれる優しさでイシガシとカエデの前だと何時もは訓練にやる気を示さない者も真剣になる為、それまで教官をしていたシノはその気持ちを理解しても複雑な気持ちを抱いていたのだ。
今日の外周が終了して全員が座って休んでいると遠くの荒野で土煙を上げながら2機のMSが模擬戦を行っていた。
「ダンテ、反応遅いぞ!!」
「んなこと言ったって!?カエデ兄さん無理だって!?」
「ほらほら!余所見しない!!」
そこで模擬戦を行っているのはテイワズが開発した新型MS、ナイト・フレームが使用された獅電。
それを操るのはタービンズから鉄華団のMS操縦技術向上の為に出向して来たラフタとアジー、そしてそれらのメカニック指導を行うエーコであった。
テイワズ内での地位が向上して莫大な利益を齎した事で鉄華団は獅電をカエデが低価格で購入してそれらを主として運用していた。
「すっげぇ……あれがMSか……」
「かっけ!あれ初めて動かしてるんだよな?デイン」
「あぁ、確かそう」
「あれが、阿頼耶識の力か……」
最近入団したハッシュが思わずそう呟いた。確かにダンテは今日初めて獅電に搭乗し操縦している。
それゆえらアジーに駄目出しをされまくっているが初めての操縦にしては良い方だと思われた。だがハッシュの言葉に納得するザックを見たイシガシは声を上げた。
「獅電に阿頼耶識は乗ってないですよ。確かにカエデ様が監修した学習型のコンピューターを載っていますけどあれは純粋なダンテの腕前です。まだまだ甘っちょろいですが…。」
「えっ?イシガシ兄さん。あんだけ動けてるのに阿頼耶識じゃないんすか」
「そうです。あれは300年も昔の古いローテクな技術でハイテクな最近のには載せられないんです。まぁ、我々だとどこぞのスケベ君は無理矢理に搭載していますけど…」
それは勿論シノの事である。彼は先代流星号、即ちグレイズから阿頼耶識を取り外してそれを自分の機体に搭載し直した。
本来は出来ない筈だが整備班班長代行のヤマギの努力と培われた戦闘データの移植によってそれは叶っていた。
「みんなには阿頼耶識なんて必要ないのです。学習型のコンピューターだって使い続ければ乗り手の動かし方を学習してどんどん自分で回避パターンとか攻撃の動作を覚えて行くので…」
「へぇ~……」
目の前でラフタの獅電にぶっ飛ばされているダンテを皆が見つめながらも自分もあんな風に操縦できるようになるのかと想像を捗らせいた。
矢張り憧れがあるのだろうかMSを見つめる皆の視線は何処かキラキラとしていた。そして獅電からグロッキーなダンテが降りた時、そこへ新たな機体が登場した。
「お、おい何だあのMS!?」
「すげえ!俺初めてみた!!」
「黒い、紫!!そしてマント!カッコいいな!!」
「あれってナイトメアとジョーカーじゃねえか!!やっぱりカッコいいな!!」
リフトアップされたのはカエデとイシガシの愛機でもあるナイトメアとジョーカーであった。
悪夢を魅せし幽霊の魔術師の異名を持つナイトメアと魔術師の死神の異名を持つジョーカーは圏外圏にまで轟いており宇宙海賊達はその姿を見ただけで恐怖で撤退して行くらしい。
狙われたら最後の終わりとまで言われているがそれはナイトメアとジョーカーの性能ではなくカエデとイシガシの腕前。
「さて、全員の訓練はこれで終わりですが…このままMSの訓練に入りたいっていう人は絶対に居ますよね?」
「ハイハイハイハイ!!!」
殆ど全員が手を上げていた。是非ともMSに乗りたいというので溢れていた。
本来新入団員にはまださせるべき事ではないがそれぞれの適性は早めに判断しておくに越した事は無いイシガシが判断した。そしてナイトメアとジョーカーを見つめなおすとその周囲に3機のMSが運び込まれた。
「あ、あのイシガシ兄さん、あれも新型っすか!?」
「えぇそうです。先日届いた「SS」を使用した新型、試作型MSのパンドラです。」
魔術師と死神という意味の名を持つナイトメアとジョーカーとは対照的に並び立つ獅電よりも装甲は薄く防御力はナイトメアと同様で機動力が重視しているようにも見える。
「カッコいいな!パンドラでしたっけ?」
新入団員の質問に答えたのは模擬戦の観戦を終えて来たカエデ・ビットウェイ・オズロック。
「そうだ。私の愛機ナイトメアを基にして作られたMS、機動性と安定性を持たせる為にナイトメアとは少し違う作りになっている。基本武器はホープ・エッジと呼ばれるダガーだ。」
「確かに基本的にナイトメアの方が異端って感じしますもんね」
世間一般のパイロットからしたらナイトメアとジョーカーなど使ってられない機体だろう。
「さて……これらはいま動かせるのか?」
「流石にまだ無理ですね。実は急かされて持ってきたので最終調整が終わってないんです。
取り合えず確認のメンテとOSのチェックが終われば動かせるようになりますから訓練に使うのはそれまで待ってください。後追加モーションデータの準備もお願いします」
「わかった。」
手元のタブレットのデータを確認しながら作業員はパンドラを本部のドックへと運んでいた。
テイワズの次期主力機として獅電と争いをしているパンドラはカラーを選べるようにもなっているらしい。
流石に量産性と操縦性は獅電の方が上回るが性能面ではパンドラが上回っていた。その為テイワズでは隊長機をパンドラにして他の機体を獅電にするというチーム編成を考えているとの事だった。
それを試験して評価する為に鉄華団にパンドラが搬入される事となった。
「致し方ありませんね。今日はMS訓練出来そうに無いです。地球に獅電を送る為にパンドラの搬入を急いで貰ったのが仇になりましたね、カエデ様」
「仕方ない。」
「ありゃ…それじゃあMSの適正テストはお預けっすか?」
「そういう事になりますね。その代わり……」
イシガシは鉄華団のジャケットから飴玉を取り出して全員に配り終えた。
「飴玉しかありませんが皆で仲良く食べてくださいね?」
「「「はーい!!」」」
新入団員は飴玉に群がって食べ始めた。その時、カエデはこの場所に来ていたオルガに話し始めた。
「オルガ、パンドラ3機の納入確認したぞ。予定通りに2番隊と3番隊に回すけど良いか?」
「あぁ、それで頼む。カエデの兄貴。これで後は歳星からバルバトスとグシオン、本部で使う獅電がくれば戦力は十分に揃う。でかくなっていくのは良いがその分厄介事も増えてきてるからな」
提出される書類を見てオルガは呟いた。鉄華団を設立してテイワズの傘下になり2年間、オルガはカエデとイシガシによって書類仕事や挨拶回り、様々な事を必死に覚えながら鉄華団団長としてオルガは成長をしていた。
時には名瀬の、時にはカエデとイシガシの手を借りながら苦労しながら自らの成長と鉄華団運営の為の団員教育などにも手を回しながら鉄華団を引っ張って行っているのだ。
そんな鉄華団を良く思わない人間達がいる。
海賊や他の企業。海賊などを通じて鉄華団に対して攻撃などを仕掛けてなども来るので自衛の為の戦力はあって困らない。その為に歳星から戻ってきたカエデとイシガシとナイトメアを基にして作られた新型MS、パンドラ。
「そういえば運び込んだあれは?もう変わってるのか?」
「あぁ、それならシノが新人とかライドと一緒に変えてた。俺としてはノーマルカラーの白の方が好きなんだけどな……」
「シノの個性というやつでしょうか?」
「私は知らん。」
カエデはオルガから受け取った書類を見て無表情になる。最初に鉄華団でテストとして搬入されたパンドラ1号機はそのまま鉄華団実働一番隊の隊長機とされているがその一番隊の隊長はシノである。
書類にある写真には白ではなくピンクに塗装され頭部には鮫の目がペイントされて三代目流星号となったパンドラの姿があった。彼らしいと言えばらしいのだが……。
「そうだカエデの兄貴、来週末アドモス商会の仕切りで採掘現場の視察が行われるんだけど俺もそっちに行っちまうんだ。その間の団長代行頼んでも良いか?」
「あぁ、見て学んで来い。」
「補佐は私がやるので」
「ありがとうな、カエデの兄貴、イシガシの兄貴」
1週間後、鉄華団としては久しぶりのクーデリアの再会と喜んでその護衛を行っていた。ハーフメタルの採掘現場は火星にとって独立の旗印、それと同時に莫大な利益を生み出す場であった。
そんな場へと行き鉄華団としての団長として、テイワズの人間として参加するオルガは重要な立場にあった。そんなオルガの代行として団長の席に座って書類仕事をカエデはしていた。
オルガが少しでも楽になるようにとイシガシと共に遅くまで書類仕事を続けているとアラートが鳴り響いた。
カエデとイシガシが持っていた通信機からヤマギの声が響いていた。
「ヤマギ!何事だ!?」
「カエデ兄さん、イシガシ兄さん!!ユージン副団長から緊急の発進要請です!!ハーフメタル採掘場に敵が来たとの事です!」
「一番隊を直ぐに上げろ!装備はB、それと援護の為にMW隊の3班と4班もMS隊出撃後発進しろ!」
「了解です!ナイトメアとジョーカーはどうしますか?」
「ヤマギ、聞くまでも無いですよね?当然私とカエデ様は行きますよ。」
カエデは通信を切るとイシガシとカエデは鉄華団のジャケットを脱ぎ捨て格納庫へと走って行く。
途中慌しく動く団員達をすれ違いになりながらも格納庫へと到達するとイクサルフリートの服に直ぐに着替えて上を見るとそこには何時ものように鎮座するナイトメアとジョーカーの姿がある。
思わずカエデは2年前、CGSの時にナイトメアを起動した時の事を思い出しながらカエデはナイトメア、イシガシはジョーカーへと乗り込み通信を一番隊へと繋いだ。
今回出て来た新しい機体を紹介します。
操縦機体:パンドラ(ダンボール戦機 川村アミの愛機をお借りしました。)
操縦者:ノルバ・シノ
基本武器:ホープ・エッジと呼ばれるビームの刃を搭載したダガー
パンドラの説明↓
スタイリッシュな外見と白主体の機体カラーが特徴的であり、腰部に搭載された"スターサファイア・ドライブ"通称「SS」によって、ナイトメア同様の機動力・反射性能と、安定した操作性を両立している。