鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
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鉄華団本部の団長室、そこへと繋げられた専用回線に連絡があった。
誰かと思いながら繋げた結果相手はモンタークことマクギリスであった。
彼からは改めて夜明けの地平線団討伐の礼やアリアンロッドのイオクの恥をかかせたくれた事に関する事であった。
酷く愉快そうにしながらも艦隊の一部の艦艇にダメージが入っているとマクギリスからしたら喜ばしい事が続いているらしい。
そんな声を聞きながらオルガは何処か興味がなさそうに耳を傾けていた。
オルガのさっさと本題に入れという言葉にマクギリスは言葉を切った。
「例の採掘場からの情報だが…これは本当に事実なのか?」
「あぁ、事実だが…一応周辺はアンタの言う通りに立ち入り禁止にしているぜ」
「兎も角私も火星に向かっている最中だ。警戒は厳にしてくれ」
ガンダム・フラウロスと共に発見されたMSよりも巨大な何か。
それを詳しく調べる事も余り出来ずにテイワズのデータベースにも何もなく結局地球で最も情報があるギャラルホルンのマクギリスに問い合わせてみた所その正体が明らかになったのだ。
地球で行われた忌まわしき記憶。厄祭戦の発端となった「人間を殺すこと」を基本プロトコルとして開発された大型機動兵器でありた対人殺戮兵器、MA 別名:モビルアーマー。
人類の総人口の4分の1を殺し尽くして地球の衛星である月を無残な姿にした戦の原因たる存在。
「俺とカエデの兄貴とイシガシの兄貴でアンタから送った本を読んでみたがあれマジなのか……?」
「紛れもない事実だよ。それが地球と火星間で行われたのもね」
「それはぞっとしねぇぜ……」
機械の自動化が人類にとって豊かさの象徴となっていた。
だが機械技術の発達の結果…。
やがて各勢力は戦争の自動化すら積極的に推進していった過程で効率化を突き進めていく中で開発されたMAは過剰な殺戮兵器として進化を遂げ人類の手には余る存在として人類を脅かす存在となった。
そしてその対抗策として開発されたのがMSと阿頼耶識システムだと言う。
「それもいいがオルガ・イツカ。私と手を組むという話は考えてくれたかな?」
「その話か…」
突然切り替わった話に良いのかと思いながらも話を合わせる。夜明けの地平線団討伐では一時的とはいえギャラルホルンと手を組んだ事となったのだ。
そして2年前クーデリアを送り届けるという仕事の際には協力を仰いだ相手がマクギリス。彼はその後もギャラルホルンの改革の為にと鉄華団への接触と勧誘じみた事を続けていた。
オルガの性格上組んだならば通す筋、それを利用しようとするかのように…。
そして今回マクギリスが撒こうとした餌はギャラルホルン火星支部の権限を鉄華団へと委譲するという物だ。
実質それによってえられるのは火星の支配権、火星の王の椅子である。
「火星の王、響きは悪くねえ。鉄華団の目指す場所、ある意味そこかもしれないな」
「ならば…」
「だが断るぜ!」
「っ!」
キッパリと強く言葉を口にしたオルガにマクギリスは一瞬声を吐息を震わせた。
「確かに最短で駆け上がって成り上がる道だと思う…昔の俺ならそれを飲んだ。だが今の俺は違う」
「……」
「今の俺は多くの家族を背負ってるんだ。その家族を守る為に養う為に鉄華団をやってる。その為に火星の王になる必要なんてねえし最短だとしてもその先が崖だったらどうする?意味がないんだ。」
「そうか……分かった。だが気が変わったら何時でも言ってくれ。では…」
そう言いって何処か落胆したような雰囲気のマクギリスの回線は切れた。
通信を終えるとジャケットを脱ぎ捨てるとオルガはベットに横たわった。
最近如何にも忙しかったからかまともに眠れていなかった。今日ぐらいは確りと眠ろうと思いながら火星の王という事に考える。
僅かに惜しかったかもと思ったがオルガは直ぐに振り払った。自分が大好きな鉄華団をそんな物の為に危険に晒すなんて有り得ない。
そう思うと心が決まった…これでいいのだと…。
考えが終わると睡魔が襲いオルガは久方ぶりの睡眠を楽しむのであった。
「やれやれ、長なったな…漸く帰って来れた」
「えぇ、そうですね。カエデ様」
歳星から帰還したカエデとイシガシは本部へと脚を踏み入れると同時に身体を伸ばした。
採掘場で発見したガンダム・フラウロスの改修とそのスターサファイア・ドライブの調整の為に赴いたが満足出来る仕事が出来た。
しかも「SS」のお陰でもあって実質上オミットされていたフラウロスの機能の修復と必殺ファンクションの認証システムまで出来たので万々歳なのであった。
「おう!カエデ兄さん、イシガシ兄さん!俺のガンダム戻ってきたって本当か!?」
「えぇ、本当ですよ。早速テスト致しますか?」
「おう!勿論だぜ!!」
「わかった」
早速トレーラーを使って搬入したコンテナを開けて見るとそこには雄雄しくも眩しい姿をした新たな悪魔の姿があった。
両肩から伸びている砲身が特徴的なガンダム・フラウロス。
シノ流に言えば新たな流星号となるのだろうか。
発見された時は銀に近い白でカラーリングされていたらしいがパンドラと同じく目立つピンク色にリペイントされていたのだ。しかもシノの自腹で…。
「うおおおおお!!こいつがガンダム・フレームかぁぁ!!!」
「すっごいはしゃいでるな……シノの奴は…」
「えぇ、そうですね…カエデ様」
一旦カエデとイシガシは魔術師(フード付き)色は紺色のイクサルフリートパイロットスーツへと着替えてナイトメアとジョーカーに搭乗して地上へと出てみるとそこには模擬戦場という名目の荒野で縦横無尽に駆け回っているフラウロスの姿があった。
ハイキックに裏拳、挙句の果てには背中に砲撃戦を行う為の砲身があるのにも拘らずバク転まで決めていたのだ。凄いというべきか余りにも無邪気すぎるというのか。
「はぁ…シノ、乗り心地はどうだ?」
「おう!最高だぜ!」
「それは良かったです。では、特殊機能と必殺ファンクションの確認と行きましょう。」
「必殺ファンクションは三日月とかカエデ兄さんとイシガシ兄さんがやってるの見てるけどよ。特殊機能って?」
そう、テイワズにて改修されガンダム用に開発された「SS」を搭載した事によって生まれたある意味フラウロスの真の姿とも言うべき物。
「シノから見て右手に赤いボタンがありますから押して見て下さい。」
「え~っと……こいつか?」
コクピット内を見回すシノは赤いスイッチを見つけて押してみる。
するとフラウロスは瞳を輝かせ始めて自動的に前傾姿勢を取り始めるとそのままガントレットを展開し始めた。
各部の装甲が動き始めてシノの驚きの声が通信越しに聞こえる中フラウロスは四足獣型への変形を行ったのだ。
「うおおおおお!!何だこりゃああああ!?」
「それがフラウロスの機能の一つだ。そのガンダムは変形機構を持っているがその形態は砲撃モードを持ってる。そしてもう一つ」
「まだあんの!?」
「高機動形態ってなっているな。でもそれはオミットに近い状態だったのをテイワズの整備長が復活させた。」
ガンダム・フラウロスは砲撃戦仕様の重火力MS、しかしナノラミネートアーマーの性質故に射撃が決定打となりにく近接武器による接近戦が推奨されるがそれでもツインリアクターの仕様上砲撃でも圧倒的な破壊力を発揮する事が可能となっている。
この変形機能もリアクターの出力を余さず砲撃に注ぎ込む為の物なのだが整備長はフラウロス内に残されている高機動形態のデータを発見した。
しかしそれは実質的にオミットされているに近い状態で放置されていたので折角なので「SS」を搭載すると共に復活させ必殺ファンクションを使えるようにしたとのこと。
フラウロスは人型の汎用形態で様々な状況に対応して高機動形態で素早く動きそこから砲撃形態へとなるというのが本来の運用方法らしい。
「次は「SS」の飛行テストと先程カエデ様が渡した十字架のペンダントを認証システムに入れ必殺ファンクションの練習ですよ。」
「おう!やってやるぜ!!」
ナイトメアとジョーカーと共に飛び上がるフラウロス、ナイトメアとジョーカーの速度ほどではないがやはり凄い出力で飛び上がった。
流石はツインリアクターのガンダム・フレームだけの事はあるのだろ。
次の段階に進もうと声を掛けようとした時、カエデは凄まじい頭痛と背筋が凍りつくような気持ち悪さに襲われた。
「っ!?な、なんだ…この痛みは………!!?」
「カエデ様!どうしたのですか!?」
「カエデ兄さん!?お、おい!どうしたんだよ!?」
気分が悪い、眩暈がしてきた、頭痛が止まらない。
生前から今まで感じた事も無いような物が一斉に押し寄せてきた。自分を脅かすような何かが目覚めたようが気がした。
カエデはナイトメアの向きを変えるとそこには…火星の空を切り裂く光が走っていたのだ。
「お、おいおい!?何だよ!あの光!?」
「…厄災、が……目覚め、た……?!」
スリープモード解除、状況把握。状況イエロー、プルーマ作動。戦闘開始、殺戮開始、欠陥品抹消工程再始動。モビルアーマー『ハシュマル・ゲミュート』行動、再開。
穢れた翼が目覚めてしまったのだ。
カエデ、イシガシ、シノが空を切り裂く光を見た時にクリュセの採掘場ではモビルアーマーの存在確認をする為に火星へとやってきたマクギリスを案内するオルガや三日月達がいた。
そしてギャラルホルン側の人間としてモビルアーマーの恐ろしさを語りながらその姿を確認しこれをどうするかという議論に入った所だった。
火星の空に現れた鉄の塊は空を見上げた三日月に何かを与えた。
空から降りて来るそれはMSが大気圏を突破する際に使用する大型のグライダーであった。
「ふっ!動くな、マクギリス・ファリド!!」
「この声はイオク・クジャンか。なんという事を……まさかMSで直接来るとは……」
それから降り立ったのはグレイズとその発展型と思われる新型のMS、レギンレイズと呼ばれる物であった。
そしてそのレギンレイズから聞こえる声の主はカエデがヴィダールからイシガシはカエデから聞き及んだ酷評塗れで能力に乏しい愚か者、イオク・クジャンであった。
「貴様がMAを倒して七星勲章を手にしてセブンスターズ主席の座を狙っている事は分かっている!!
ギャラルホルン全軍で対処すべきMAを隠蔽してファリド家のみで対処しようとしている事こそ何よりの証だ!!」
「どうやら誤解を招いたようだな……。だとしても貴公がMSを持ち出しこうしている事の危険性がどれほどの事が理解しているのだろうな?」
「私は貴様の戯言など聞かん!!さあ貴様を拘束させてもらうぞ!!」
一歩、レギンレイズが踏み出すとマクギリスが必死に声を上げて止まれと言った。
だがそれを自分を恐れていると解釈した戯け者、イオク・クジャンは愉悦に浸るような表情で脚を進めたのだ。
この男、イオクはギャラルホルンなら知っている筈のMAの事に関しての知識が非常に乏しい。
ギャラルホルンの兵士なら常識である「モビルアーマーが厄祭戦の原因になった」という歴史を知っていなかったのだ。
イオク・クシャンはその危険性すら分からないまま近づこうとした時に静かな駆動音が聞こえて来たのだった。