鉄血のオルフェンズ 次元を超えし出会い 作:五月雨☆。.:*・゜
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イシガシの魔術の重すぎる一撃は300年間眠りについていた厄祭を永久の眠りへといざなった。
全身から光が消え爆散すると同時に鉄華団からは歓声が上がった。
「ふぅ……はっ!お前ら喜ぶのは後だ!!早くカエデを!!」
「はぁはぁ…カエデ様!!」
「イシガシ!お前は休んでろ!限界ギリギリでソウルとジャッチメント・レイを撃って無事な訳ないだろう!」
フォボスが言う通りだった、いまのイシガシはソウルとジャッチメント・レイを撃ってジョーカーを動かす体力も無かったのだ。
だが、忠誠を誓った主を1人に出来なかった。
「イシガシ兄さんは休んでて、ハッシュ、ナイトメアを確保!!急いで本部に運ぶ!」
「はっはい!三日月さん!」
「イシガシは俺が運ぶ。」
MSの適正試験で優秀な結果を上げたハッシュ。
彼にはパンドラが与えられ遊撃班のメンバーの1人として、圧倒的な強さを見せた三日月に憧れたのか彼について行くと決めたのか従順に従っているのだ。
そんなハッシュは左肩が完全に消し飛んだナイトメアの特徴的だったマントや杖型のハンマーがもげた姿を見てMAの圧倒的な強さを改めて感じつつもそんなものを倒せた三日月とイシガシとフォボスの凄さを垣間見た。
「…なんて、恐ろしい……」
目の前で自分の事など完全に忘れているのか無視されているレギンレイズの中でイオクは唯、MAの恐ろしさに震えていた。
そして鉄華団が引き上げた後に自分を探しに来たジュリエッタとヴィダールに連れられて行ったが彼の頭の中には自分を突き飛ばして身代わりに傷ついてしまったナイトメアが離れなかった。
「んでカエデの容態はどうなんだ?おいオルガ、大丈夫か?」
「あっはい、すいません……」
MAとの戦闘の約6時間後。
鉄華団の本部へと足を運んできた名瀬はそこでMAの発見と激しい戦闘があった事を聞いた。
そしてその戦いで鉄華団の相談役のカエデの愛機、ナイトメアが大破したという話も聞いた。
「身体の方は…左腕の骨と鎖骨にヒビが入ってたらしいですがそれはなんとかなったらしいです。
今では意識もハッキリしてるらしくてチビ達に泣きつかれてイシガシの兄貴とフォボスさんに怒られて困ってる所でした。」
「そっか。それなら良かったじゃねえか。家族が無事でよ。三日月も大丈夫なんだろ?」
「ええっ…!少し片目が見えにくくなったとか言ってましたけど大丈夫みたいです。あいつには今度眼鏡を作るとか考えてます」
心の奥底から深い安堵の息を吐いたオルガに名瀬は笑顔で言葉をかけた。
カエデは大怪我をしていたものの命に別状がある程の事で大事には至らなかったらしいが頭の額に切り傷が残る程度だった。
「それでMAで出た被害は?」
「獅電が数機中破、パンドラが1機小破。大半は三日月とイシガシの兄貴とフォボスさんが戦いを引き受けてくれたお陰です」
「流石あの3人って所か…んで歳星には何時来るんだ?」
「ええ、三日後を予定してます」
今回のMAでの大きな損害、それはナイトメアとジョーカーとバルバトス、そしてアキレスD9であった。
ナイトメアは言うまでもなくMAの攻撃を受け大破してしまったのでそれを含めて改修を行うという事になった。
バルバトスとジョーカーとアキレスD9はそこまで深いダメージは負ってはいないが激しい戦闘によって間接部が異常な磨耗とシステム系が三日月とイシガシとフォボスの動きに付いて行けなくなるという事態になってしまいそちらも改修が行われる事となった。
「それで整備長がMAも持ってきて欲しいと言ってたので持って行こうと思ってます」
「なるほどあの人、MAのパーツとか技術でまた魔改造する気だな?」
様々な話をしている最中だが名瀬は先程とは違った鋭い瞳をした。
「今回の一件は親父も高く評価してた。それで俺の所にある連絡が来たんだ。MAの討伐に関係あるかは分からないが月外縁軌道統制統合艦隊のラスタル・エリオンがお前達鉄華団と話がしたいって言って来やがったんだ。」
「ア、アリアンロッドが!?」
「MAの討伐……フフッ…やはり素晴らしいなガンダム……。やはりその力こそ、アグニカ・カイエルと同族の力だ……」
カエデの部屋
「それにしてもまぁ随分と派手にいったねぇ、カエデくん?それにイシガシくん」
「仕方ないだろう、本当ならばナイトメアを大破するつもりは無かったのだからな」
「ジョーカーにも負担を掛けてしまいましたからね…動きが鈍くなりましたので…」
歳星へと繋がった通信、ナイトメア、ジョーカー、バルバトス、そしてアキレスD9を送り出してある程度経った頃だった。
漸くMAによって出来た傷跡が塞がり通常業務に戻れてきた鉄華団。
歳星にて改修を始めたという連絡をしてきた整備長は漸く全面的に弄れるナイトメアとジョーカーに興奮しても怪しげな瞳をカエデとイシガシに投げ掛けていたのだ。
「MAでの戦いで確かギャラルホルンの人間を庇ったとか言ってたねぇ。それで鉄華団の皆荒れただろう?
こっちにも話は来てるよ、カエデくん?
鉄華団の皆が火星支部に殴りこみをかけそうになったのをイシガシくんとオルガ団長とビスケット補佐と一緒に必死になって止めたってねぇ。」
「はぁ、あいつらを甘やかし過ぎてギャラルホルンを滅ぼそう!って事になってたからな。
イシガシが殴り込み組に入っていたらと思うとゾッとしたぞ…三日月はバルバトスがあったら本気で殴りこみに行ってただろうな。」
「私はMAに全ての怒りをぶつけたのでそのような事は致しません。カエデ様が命じればやりますが?」
「やらんでいい。良いか絶対殺るなよ!!」
「あはは、それにイシガシくんってキレると敬語外れるんだってねぇ!見てみたかったねぇ。」
「嫌です。今後も見せるつもりは無いので…ご了承下さい。」
「そうかい、残念だよ。それでバルバトスの件だったね!これを見てくれるかい?」
そう言いながら出力されたのは改修終了予定のバルバトスの姿とそのデータであった。
それを見た瞬間、カエデとイシガシは思わず目を丸くした。
「……えっ」
「いやぁ!私渾身の設計だよ!!残されていた三日月くんのデータを最大限に発揮するようになるにはこれが一番効率的なんだよ!!」
「これは…なんというか…」
「ですがだからってこれは……凄すぎです。ご立派なモノっていうレベルを超えていますよ!」
流石のカエデとイシガシも若干引き気味になる完成した姿をしているバルバトス、一般的なMSからすると正に異形の悪魔といえた。
ルプスのスマートなシルエットは一体何処に行ったのだろうと言えるほどにビルドアップしている上に背中には翼のようなものまで背負っているのだ。
「何をどうしたらこうなった!?」
「バルバトスを全体的にビルドアップして私のやりたい事を!!主にMAの要素を盛って見たらこうなったのだ!」
「はぁ…頭が痛い話だ。」
「もしかして私とカエデ様とフォボスの機体も同じようにしたのですか?」
「勿論さ!イシガシくん!!」
力強い返答共に現在改修中のアキレスD9のデータが出力された。
元々頭がおかしい凄まじい突貫力を持つアキレスD9であったが、今回のハシュマルの戦闘でアキレスD9はもっと上へと登る事が出来ると確信出来たフォボスが更なる強化改修案を提出してそれを整備長が一応否定しても同様のコンセプトで改修したものであった。
「因みにフォボスが出した改修案ってなんだ?」
「色々書いてあったけど、簡単に纏めると
二刀流の武器を大きくすれば強い!!
装甲を厚くすれば硬くて攻撃が通らない!!
ブースターを増やせばナイトメアやジョーカーより速い!!だったね。
全く子供のような発想だったよ。だけど私も同じコンセプトでそれを実行したけどね。」
「あいつは…全く」
ハッキリ言ってフォボスが提出した物よりも酷い事になったらしいがフォボスは酷く満足げにこのまま進めて欲しいと行っていたらしい。
続いてナイトメアとジョーカーのデータも出力されたがそれを見た瞬間にカエデとイシガシは硬直した。
見る者に言いようもない恐怖を与えそうな、不気味な笑みを称えたマスクが特徴的な機体になって頭部にあったセンサーにはハシュマルに付いていた赤い宝玉が追加されてカラーリングもベース機から反転したような白基調のものとなっていた。
ジョーカーはカラーリングは変わらなかったが頭部にのセンサーはナイトメアと同じであり駆動系をかなり弄って性能が向上したことによって文字通りナイトメアの専売特許だった分身を作るほどの機動力を持つことになった。
「「………(絶句)」」
「ふふん!どうしたんだい!?ハッキリいってバルバトスの改修よりも手を入れたからね!!MAから解析した厄祭戦時の技術をふんだんに盛り込んだこのナイトメアとジョーカー!!恐らく最早君達にしか扱え切れない代物となっているよ!!」
「わ、私のナイトメアが……魔術師じゃ無くなってるじゃないか!!?」
「カエデ様!お気を確かに!!」
「いやいや!悪夢を魅せし幽霊の魔術師が何を言うんだい!?」
そんなこんなもあってそのまま改修が進められる事になったナイトメア達を引き続き整備長に頼むと何処か疲れたのかカエデは外に空気を吸いに行く事に決めたのだ。
既に日も落ちて夜空が広がっている火星の空、ひんやりとした空気が身体に当たりながら深呼吸をして振り向くそこにはフォボスが立っていた。
「怪我は、もう良いみたいだな」
「大丈夫だ、骨だってちゃんと戻っているんだ」
「そうか」
無愛想に何時もどおりの鉄仮面ぶりを披露するフォボスにカエデは何処か違和感を感じた。
確かに無口で表情変化が少ないが彼は静かに燃える熱血漢、なのに今の彼は何処か落ち込んでいるように見えるが気のせいではないだろう。
「すまないな、俺がお前をフォローすると言っておきながらあのような事に…これでは生前と同じだな。」
「まだ気にしてるのか?お前が悪い訳じゃ無い。
元は私が無理言って出たせいだ。生前もそうだっただろう。」
「……」
どうにも納得してなさそうにするフォボスにカエデはデコピンをして暖かい紅茶を持って来たイシガシと共にこれからの事や生前の事を夜が明けるまで話し込んでいたのだ。
そしてその翌日
「月外縁軌道統制統合艦隊司令官、ラスタル・エリオンだ」
「鉄華団団長、オルガ・イツカ」
「鉄華団相談役兼教官、カエデ・ビットウェイ・オズロック」
「同じく、鉄華団相談役補佐兼教官、イシガシ・ゴーラム」
そして、事態は大きく変わろうとしていた。