「超多次元宇宙ウマドル・ファル子とファン1号の関係を巡る銀河の戦い・case1」 作:宮ちゃん♪
アーンシュラ連邦の大艦隊を迎え撃つべく出撃したのは、レーンドキ共和国7万隻を中心に、近隣3ヵ国も合わせた連合艦隊、戦闘用艦艇が合計で10万隻弱というところであった。普段ならばこれでも、類を見ない程の大戦力であるのだが、今回に限ってはそれでも圧倒的に不利な状況であり、将兵たちの悲壮的な緊張感は常にも増して大きなものとなっていた。
送り出す国民たちは、宇宙に冠たる象徴を守るための自己犠牲に心酔し、自らの国家が身を挺することに対してヒロイックな感傷を抱いていたようだが、そんな自己満足の熱狂の中で送り出される身になってみると、到底、そんな気分にはなれないのである。なんせ自分の命がかかっているだから。
それでも、スマートファルコンという現代の偶像を守るという大義は、戦地へと赴く全員が共通して抱くモチベーションではあったのだ。故に士気は決して低くはない。ただ、冷静に状況を観察できる思考力を持つ者には、そのような願望とは別種の、皮肉を言いたくなるような心情が浮かんでしまうものなのである。
今回の迎撃艦隊総司令官に任命されたロマン・バイバルス大将こそが、正しくそのような観察眼の持ち主で、このような形で責任を押し付けられたことに対して、恨みがましい思いが拭えないのであった。
ロマンとて40歳手前で宇宙軍の高級将校に上り詰めた、エリート軍人ではある。しかし、つい一月ほど前まで第8艦隊司令官として中将の地位におり、少壮の提督として実績を重ねていこうというところで、いきなりアーンシュラ軍迎撃司令官の任命を言い渡され、大将への昇格辞令と共に艦隊編成の嵐の只中へと放り込まれたのだから、溜まったものではない。準備期間が短い中で、四苦八苦しながら幕僚団を指名し、部隊編成を指揮した上で、補給部隊との打ち合わせと兵站線の確保を済ませて、何とか発進まで漕ぎ着けたのである。こんな苦労は二度と御免だが、そもそも今回の出撃が終われば忙しさで苦労することはなくなるかもしれないとも思うのだった。
こういう大事な時こそ、普段からふんぞり返ってあれこれ偉そうに支持してくる、統幕長だの宇宙艦隊司令長官だのという大層な役職についている元帥様方が、責任をもって前線に出るべきではないか。たまたま艦隊司令官に就いたばかりの若者に全責任をおっ被せて、何倍もの規模の大軍と正面から戦ってこいとは、無責任を通り越して酷吏の所業である。
そんな不満を抱えつつも、連合艦隊指揮官として、不安を顔に出すようなことは決してしないロマン・バイバルス大将である。
一方でロマン大将が驚きを隠せなかったのは、反アーンシュラ艦隊に参戦した、一神教宗教独裁国家マルアンの存在であった。周囲の国家とすら最低限の交流しか結ばず、宗教指導者の託宣を至上の方針として、秘密主義を貫く神秘の国。そんなマルアンが、よもや非常に世俗的な理由で結成された連合艦隊に戦力を提供するとは、意外の念を禁じ得なかったのである。
連合戦力が結集した後に行われた、レーンドキ艦隊旗艦ビダルに参集しての連合艦隊作戦本部設置式および初回作戦会合を終えた時、ロマンはマルアン艦隊司令官マラームサラ・アブドゥ中将に、非礼とは知りつつも、参戦理由を問うてみたのである。重厚な髭を蓄えた痩身の中年提督は、生真面目そうな鋭い眼光で年下の総司令官を見据えると、静かにこう語るのみ。
「我らの神が望まれたのだ。ファルコンとそのトレーナーの安寧を損なってはならぬ、とな。我々はそれを遵守するのみだ」
これ以上の問答は必要なかった。謎に包まれた部分が多いとはいえ、独自の価値観を有し、自らの信じる所に向かって邁進する力は他国の比ではないマルアン艦隊である。寡兵といえど強力な味方になってくれる存在であるのだから、この上なくありがたい戦力であろう。
反アーンシュラ連合としては、戦力的な劣勢は免れないことであるのだから、連邦軍の進路上にある自軍の領土内に引きずり込んで兵站路を断ち、疲弊したところを迎え撃つのが常道であろう。ロマン大将もそのことを念頭に作戦を立てた上で、自軍の補給を領土内の各星系に委託することで、部隊編成を短期間で迅速に行えるようにしたのだ。
そうして連合艦隊が最初の補給地に入港した時、彼らの下に衝撃的な知らせが舞い込んできた。
リングドン帝国がアーンシュラ連邦への加勢を表明し、5万隻を超す艦隊を発進させたというのである。