○ガイドブックの質問コーナーに記載の情報を参考に、門倉さんの元妻を完全二次創作で妄想しました。
○妻の名前も勝手ながら「雪子さん」としました。

○土方さんを敬愛しています。

○個人的に、仲の良い夫婦を描きたくて・・・
○自分自身の両親が離婚しており、その後父が他界。
あれから30年近く経った今、還暦を過ぎた母が言った言葉
「今の私なら、あの父さんと暮らせたのにね。優しくて好きだった」と。
私はそれを聞き、やっと自分の存在が肯定できて祝福というものを感じ取れたのでした。
その思いも込めながら描かせていただきました。

○少しイチャイチャしますのでR15とします。

妻の前だと少しカッコつけたい門倉さんにしてあります。

1 / 1
門×妻という公式だけどニッチなカップリングです。


2nd propose

 

 

何度となく死にかけて、

戦いの全てを終えた俺。

 

あれから10年後。

 

戦友と共にアメリカの土を踏むことになる。

 

文字通り、後ろ髪を引かれる思いは山ほどあるけれど・・・

 

思い出すたびに、

枯れ果てた筈の熱いものが、また、ひしひしと

こみ上げてしまいそうになる。

 

あの方の・・・

夜叉の如く白い髪が

 

俺に背を向けて往く、

踵(きびす)を返したあの背が

 

いつまでも、

いつまでも

 

瞼の奥に焼きついて

 

「トシ・・・、」

 

 

「・・・トシ、」

 

そう。

 

あの人も

 

その名で呼ばれていたな

 

「利さん」

 

 

 

「・・・ぁあ、」

 

妻に呼ばれて目を開けると

窓の向こうに眩いマンハッタンの夜景が見えた。

 

またあの夢を見ていたようだ。

 

俺は、

あれから妻と復縁し、

アメリカ行きを彼女に持ちかけた。

 

第二の人生を

俺と歩いてみないかと

二度目のぷろぽーず、

とやらを

したのだった。

 

俺も妻も、歳を重ねて

孫がいる。

 

若かったあの頃より、

今ならこうして、大抵のことは笑って済ませられるようになった。

 

お互いに、歳をとって

大人になったのかね。

 

もう一度愛し合いたくて・・・

取り戻したかったんだ。

俺が、不甲斐ないばかりに

この手から取りこぼしてしまった

数々の、目に見えない大切なものたちを。

 

眩(まばゆ)い摩天楼の灯り

そして愛しいひとが

美しくて

俺は妻を抱き寄せた。

 

「雪子、愛してる」

 

若い頃は、言わなくてもわかるだろと偉そうにしていた。

 

大切なことは

今、伝えなきゃいけない。

 

それを

不死身の男と、若いあいつらを見ていて教わった。

そして、敬愛するあのお方からも。

今日一日、一日が大事だってことを。

 

若い頃には味わうことが出来なかった美酒(びしゅ)を

気の知れた仲間、そして愛したひとと

共に味わうこの時間が

心から愛おしい。

 

ベランダへ出てみれば、

甘やかに髪を撫でる夜風が心地いい。

 

二人して悪いことをする。

 

俺は、燻(くゆ)らせていたアメリカ煙草を妻と嗜む。

シガーキッスとやらで

火種を妻が咥えたタバコの先へと移す。

 

風に弄ばれながら、

羽織ったバスローブを風除けに妻を包み込む。

 

【挿絵表示】

 

俺が息を吸って、火種が

赤々と点ると

雪子の艶かしい唇にも

紅(べに)を差すように

朱(あか)が映る。

 

紫煙(しえん)が街を渡る夜風に乗って舞い上がる。

 

踊る煙は、どこかへ消えて

流れ去ってゆく。

 

その流れの儚さに

あの人の髪が靡(なび)く様(さま)を見て

 

煙が目に染みたんだと

嘯(うそぶ)いては

涙ぐむ目を細めた。

 

 

群青色の空と眩い光が溶け合い、チラチラと目の中で散らばりながら

滲んだり廻ったりする。

 

この泪の揺れを知ってか

知らずか、

雪子が煙草を灰皿に押し付けたかと思うと

俺の腰に腕を回して背中を撫でてきた。

 

あぁ、

こんな感じ

二十年ぶりぐらいじゃないかなぁ。

下着とバスローブだけの俺の素肌に、単衣(ひとえ)を纏(まと)っただけの柔らかな温もりが寄り添って来る。

 

俺と同じく歳を重ねたとはいえ、艶(つや)の増した女・・・

男の身体には無い、言い表せぬ柔らかさが

ひび割れた俺の心にも、優しく馴染んでくる。

 

「利さん、どんな悲しみも、あるお坊さんは日にち藥だとおっしゃいました。」

 

「・・・そうか、、、そうだな。月日の移ろいが一番の薬か。・・・その通りかもしらんな、」

 

「あなたの傷も、悲しみも、私に預けてはくださりませんか。・・・あの頃の若すぎた私には、支えきれませんでした。でも、今なら・・・」

 

「い、いやぁ、そんな・・・雪子まで背負わなくてもいいよぉ・・・」

 

あぁ照れくさい!

妻の優しくも真剣なその表情が、

美しい弁天様か天女様に見えてしまい、愛おしさに負けてバスローブの中へ包み込む。

 

「利さん、あなたは私が支えますから。そして、かけがえのない親友たちがいるじゃありませんか。」

 

「ユキ・・・」

 

見下ろせば、バスローブの中に抱きすくめられながら、俺の素肌に頬を寄せる可愛い妻。

その頬は薄紅色に染まっていた。

 

二人して、もう孫のいる中年だ。

しかし、俺にとってはずっと可愛い天女様なのだ。

 

色っぽい・・・

年甲斐もなく、

身体が疼いて熱くなってくる・・・

 

「な、部屋に戻ろう」

 

「はい・・・」

 

頬を染めながら二人は

部屋に入ると

カーテンを閉めて

広いベッドに横たわった。

 

妻を背中から抱きしめ、首筋に軽く接吻をした。

こちらではキッスなどと言うそうだが、少しまだ面映(おもはゆ)いな。

 

白くて線の細いうなじ。

そこから首筋へと続く緩やかな曲線に、また唇を寄せた。

「雪子・・・」

耳元にそっと囁きかけ、

腕を前に廻して抱きしめる。

細い指が俺の指と絡む。

冷たい金属の感触が、その左手薬指にはある。

これは、外国の文化なんだそうだ。

夫婦で左手の薬指に指輪をして愛を誓い合う。

これをしていれば、俺たちはもう離れ離れにはならない、そんな気がする。

 

へへ、なんだってまた・・・

心中立てみたいだぜ。

 

若い頃にも、愛し合っていたつもりだった。

 

けれども、運命の悪戯が俺たちを引き離してしまった。

 

あの会えない時間が

今の俺たちを作ったのだとしたら、

全てが必要な時間だったのだろう。きっと・・・

 

 

妻は、顔を見られるのが恥ずかしいのだろうか。

こうして俺に背中を向けて抱かれるのを好む。

俺は、顔が見たいのになぁ・・・

「雪子、ね、こっち向いてみてくれないか?」

 

「・・・ええ、恥ずかしいです、そんな」

 

「ね♡お願い」

 

俺は妻の目の前にじわじわとまわり混んで顔を覗き込んだ。

猫が物欲しげに機嫌をとりにくる時みたいに。

 

「ねぇってば、」

 

俺は囁くようにして、妻の前に寝そべった。

もう、いい歳なんだけど・・・おっ母さんに構えとねだる子供みたいだ。

 

空白の時間には

俺がまさに夢中になっていることがあったからなのと、

その時が長かったせいかな。

 

こういう温もりだの、惚れた腫れたは無縁だった。

 

でも、妻以外の女性に金を払って相手をしてもらうだなんて・・・

あのお方ほどの色男でもあるまいし。

脱獄王のような軽妙さも無く、口説き文句も何かと裏目に出やすく、甲斐性なしの俺にはできやしなかった。

 

俺には、唯一無二の相棒とふざけ合って酒を酌み交わす方が楽しくて仕方なかったんだ。

"肛門ほじりジジイ"などと悪態をつかれながらもな。

 

あいつとなら、気遣いもしないし。

飽きもせず、酒をちびちびと舐めながら、

"トッパぶち"なんぞしながらね。(花札のことを北海道の一部の地域でこう言う)

あいつときたら、

俺が札幌で死にかけた時

ベソかいてたんだそうだよ。

なんつうかね、

俺が死んで、泣いてくれるやつがいることが嬉しかった。

一生の友だと思う。

順番なら、俺が先だけど

俺が先か、お前が先か?

っていうやつだね。

 

兄弟盃を交わしたようなもんだ。

 

あいつといると、

恋しい女のことや可愛い娘のことさえも忘れていられる時間で、

感傷に浸る間もなかった。

 

俺は、全て失った男のはずなのに、

今は大事なものなら

全てがここにある。

 

娘だって、俺たちの離婚のせいで天災にでも遭ったかのようにして

家、家族、友達、先生、馴染んだ場所から離されたわけだからな・・・

それはずっと心に引っかかっていたことだ。

小さな心と体に、あの立つ瀬のない侘しさは、計り知れない。

 

あの子は、泣きたいのに泣けなかったそうだ。

強い子だからな。

 

辛かっただろうね・・・

 

今は、その時に泣けなかった分の涙を拭ってくれる男と夫婦になったと聞く。

俺によく似た歳上の男だと聞くから、

なんとも・・・

 

ごめんな、

心から、いつもそう思う。

 

 

そうだ、青い目の嬢ちゃんは今頃元気にしているだろうか。

"不死身"とは、つがいになって子供でも生まれた頃だろうか。

仲良くやってるといいが。

 

あの子に、娘の面影を重ねてしまったこともあった。

 

情けない父さんだけど、

誰かを、何かを、守りたかったんだよ・・・

 

死んじまうかも知れないほどの事が何度となくあって怖かったけど・・・

 

せめて、離れていたって何かしたかった。

 

そして、あのお方の、

お役に立ちたかった。

武士の倅として、命をかけて。

 

お前たちが幸せに暮らせる土地を創ってから死にたかったんだ。

囚人たちでさえも、開拓のために命懸けで道路を創ったんだ。

俺だって・・・

役に立ちたかった。

 

もう、砂をこぼすように

この手から

大切なものを

とりこぼしたくなんかない・・・

 

「雪子・・・ごめんね、」

 

「私のほうこそ、ごめんなさい・・・」

 

俺たちは、何度も何度も

こうして謝っていた。

 

そして、何度も何度も

「愛してる」

 

そう、言葉を交わした。

 

何年もし忘れていた

くちづけさえも・・・

 

若かった頃のように、

何度も、何度も

 

目を閉じて、

静かに唇を重ねあう。

 

お互いの顔を触れ合い、

体温を確かめ合って。

雪子の頬に温かいものが伝うのを、指先に感じた。

 

この、柔らかな温もりに安らぎを感じながら、

同時にその海へ

戻りたいと希(ねが)うのが

男という生き物なのかも知れない。

ここ、亜米利加国(アメリカ)のお話には、男があばら骨から女を生み出したとされるけれど、

俺は昔から、女から生まれてきたのは男のほうじゃないだろうか?そう考えている。

妻子を守るためにみっともなく泥臭く戦うけれど、

けっきょくはまだ心の奥には乳離れできぬ寒がりな赤子が棲んでいる。

 

その証に、柔らかな乳を未だに求め、胎(はら)の中へ戻りたがる。

 

寒かったよ・・・

 

愛しいひとの温もりを抱きしめて、年老いてしまった俺でさえも

まだ、相も変わらず

この天女様に甘えて抱かれる。

 

すっかり白くなって、

脂っ気の減ったこの髪を

撫でてもらえると嬉しくて目を細める。

 

もう、若い頃みたいに

勢いはないけれど

 

暖め合いたい。

身体だけじゃなくて、

心まで、魂の奥まで。

 

 

生まれた時も、死ぬ時も

裸で

何も持たず

小さく

孤独なんだ

 

だからこそ、

暖め合いたいんだ。

 

俺は、何者かを演じては

平気なふりをしていた。

 

悲しくなんてないわけがないのに

いつしか道化の狸を演じていた。

 

今は、やっと

自分を生きている気がする。

 

共に、命をかけて戦った

戦友と共に

あのお方の勇姿を伝える為に、映画を創るんだ。

 

そのために、髪の毛と顎の髭を伸ばした。

 

男と、おとこの約束

 

この、銀色の髪は

あのお方との、ある種の

心中立てなのかも知れない。

 

指先に、自分の白銀色(しろがねいろ)の髪を巻いて

指輪のようにしてみれば

 

目に見えなかった

いろいろな

"愛"

のかたちが

見えてくる気がした。

 

愛を生み、愛に包まれて

最期は死に征(ゆ)きたい

 

愛する人を腕の中に抱(いだ)きながら微睡(まどろ)む。

 

土方さん・・・

もう少し、遅くなりますよ。

 

心の中で手をあわせた。


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