魔法の森を走る。あの少し感じの悪い吸血鬼に聖月の蘇生を頼むためにだ。あいつは表は冷たいが根は優しいはずだからやってくれるはずだ。もし首を横に振っても無理矢理やらせてやる。あいつの力なら出来ないなんてことはない。聖月を殺したあの化けもんは何なんだ?納得いかねぇ。聖月があいつに殺されるなんて。あたしが倒したときは大して強くもなかった。何があったのか聞かなきゃならねぇ。整理が追いつかないままあの吸血鬼の住む家に着く。
「・・・あん?何か・・・荒らされてねぇか?」
あいつの家には罠が至る所に異常なほど設置されている。侵入者のためとか言っていたか。だが、ドアは開きっぱなしだし以前あたしが引っかかった踏むと宙づりにされる装置は破壊されている。それだけじゃねぇ、他にも教えてもらった罠まで壊されている。
「おい、いるか吸血鬼!あたしだ!聞こえてんなら外に来い!」
かといって中に入るわけにはいかねぇ、家の中までまるでトラップハウスかってぐらいに罠があるから。だから家の中に向け大声であいつを呼び寄せようとする。だが、待っていても帰ってくるのは周囲の木々のざわめきだけだ。どっか外出でもしたのか?不在だと考え思い当たる所に行こうと足を動かすと、ふと視界に見かけないものが映った。それが何か確認しようと近づく。それは石で出来た墓だった。それに”ラムダ”と書いてあった。墓の下を見れば不自然で弄ったって分かるように無造作に動かされて若干盛り上がった土が見える。
「ラムダ・・・まさか、あの吸血鬼も・・!?」
何度か会ったことのある女の吸血鬼が脳裏に浮かぶ。荒らされているらしい家と今までなかった墓。ここで起きたことを察する。だが一つだけ気になる点はある。あの吸血鬼の能力は何でも創造するはず。なのに何故ラムダを蘇らせなかった?
「まさか・・・出来なかった?いや、そんな事あるか・・・?だが、出来るんなら墓なんざ作らねぇよな・・・とにかく、一回あいつに会わねぇと。」
何だろうとあの吸血鬼に会う必要がある。あいつがいると考えられる場所、人里へ。
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吸血鬼の家は森の結構奥にある。その距離の中間まで来たところで殺気に近い気配を感じ取る。咄嗟にあたしは後ろに飛び退いた。その1秒後にあたしがいた足場から黒い煙が雷のように上に伸びていった。正体を探そうとすると前方の木陰から黒くて姿がよく見えない異形が姿を出した。そいつを見てあたしは気づく。
「こいつ、あの時の・・・!!」
忘れもしない。あたしの親友を殺したあの異形だ。何か魔導書らしきのを持っている。あたしが殺したはずだが、目の前にいるとなるとこの異形は複数体いるらしい。聖月を殺した異形とは別だろうが、関係ない。鎖のついた棘付き鉄球を握り、異形に突進してそれを振るう。だが、異形は姿を一瞬にして消し、横に姿を出す。
「あの時はあっさり秒殺されたくせに、ざっけんじゃねぇぞ・・・!」
体を動かさず鉄球を異形に振るう。しかし異形が姿を消す方が早い。今度は背後に回ってさっきみたいな黒い煙のような雷っぽいのを幾つも撃ってくる。その時に出た音に反応できないあたしではない。すぐに横に避け、異形の方を向く・・・が、背後に鈍い痛みが走った。短いうめき声をあげ背後を見る。そこには、さっきまで対峙していたのとは違う異形が黒塗りの棍棒を持っていた。それについているのはどう考えてもあたしの血。殴られた部位が無防備だったせいで視界が90度横になる。
「マジかよ、まだいやがったのか・・・クソ、こんな訳分からん奴に・・・!」
こうも簡単に不意をつかれ、一瞬で地に倒される。聖月もこんな風にやられたのか?立ち上がろうにも棍棒を持った異形が既にあたしの息の根を止めるべく頭部に棍棒を振っていた。間に合わない、殺されちまう。無意味な反射神経に目を閉じる。
「させん!異能刀術式奥義、”閃光斬”!」
その次の瞬間、耳に誰かの声と凄まじい金属音が聞こえる。その数秒後にそっと目を開ければ、白いオーラを纏った刀を振り下ろした直後の動きをした青い上着を羽織った白髪の女性の横姿があった。半身だけ起き上がり、女性の視線の先を見れば、粉々になった棍棒と消滅しかけている異形の姿。どうやら間一髪であたしは助けられたらしい。だが、魔導書を持った異形がまだいて、その女性に黒い煙を撃つ。しかし女性はそれを刀で受け流した。異形は立て続けに攻撃を出そうとしたが、足下の雑草が急成長して異形を捕らえた。しかも傍にあった木が引っこ抜かれて宙に浮き、上から異形を潰した。潰された異形は魔導書と共に消滅した。
「・・・そこの方、大丈夫か?すまない、拙者が出向くのが遅かったばかりに・・・。」
刀を持った女性があたしに話しかけてくる。よく見れば女性の背には9本の刀があった。右腰と左腰に3本ずつ、そして背に3本。というか、緑色のオーラを纏った刀に持ち替えている。
「安心しろ、痛くはない。異能刀術式奥義、”刀身癒突”。」
あたしが何をする気か聞く前に背後に回られ、その刀を背中に刺される。抗議しようとするが、何故か全く痛くない。どころか、背中の傷が癒えている気がする。
「あ・・・?何で刺されたのに傷が治って・・・?」
「・・・”刀身癒突”は害を与える術ではない。刀身を刺し、傷を癒やすものだ。すぐに傷を治す術は、あいにくこれしか持っていなくてな。」
刀を鞘にしまいながら女性が答える。いや、どんな術だよそれ。説明もなしにいきなり驚かすようなことしてくるんじゃねぇ。
「問おう、そなたは今起きている事を理解しているか?」
「・・・いや、さっぱり。」
「・・・分かった。戦士、一度人里に戻るぞ。」
女性がそう言うと、気の抜けた返事と共に木の陰からもう一人出てくる。垂れた獣耳に腰まで届く白の長髪をした女性だ。多分、雑草や木を動かしたのはこっちの方なんだろう。
「少し、ついてきてもらえるか。ここで話すには周囲の安全が保証できない。」
「・・・わーったよ。助けてくれた以上、敵じゃねぇみてーだしな。」
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時は少し経って、あたしは刀を持った女性と獣人に連れられる形で人里に到着した。更に料理店に通されると、そこには赤い猫耳の少女がいた。
「あっ、おかえりー!その人は?」
「森で例の異形に襲われていたのだ。事情を知らない様子だから、ひとまず戻ってきた。盗賊達は奥か?」
「そうだよ!無事でよかったー!」
「・・・盗賊?」
刀を持った女性と猫耳の少女の会話の中にあった単語につい復唱する。え、ここ盗みに入られてんのか?しかも達ってことは複数いんのか?なのに何で親しそうに話してんだ?疑問符を出してるとこで女性が奥に入っていくからとりあえず後についていくしかない。
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奥の部屋には、6人の女達がいた。一人は黒い帽子を被り、青い線の入った黒い服(へそが見えるタイプ)を着た少女。一人は青と赤のオッドアイのドレスを着た女性。一人は、周りに傘の妖怪や提灯の妖怪を引きつけて楽しそうに話してる着物の少女。一人は背中から紫色に光る茨を幾つも伸ばしている女性。一人は青いクリスタルみたいなのを食べてる女性・・・いやまて、何食ってんだ!?思いっきり硬そうな咀嚼音が聞こえてんぞ!しかもその隣に同じもん食ってる中性的な奴がいるし・・・。
「・・・皆の者、無事のようだな。」
「あら、生存者かしら?」
ドレスを着た女性がこっちを見て喋ってくる。
「あぁ、森であの異形に襲われていた。今から何が起きているのか話すところだ。さぁ、こちらに。」
刀を持った女性が丸テーブルのある椅子を引いて座るように促すからとりあえず席につく。
「まず、自己紹介から致そう。拙者のことは侍、とでも呼んでくれ。訳あって拙者は本名を言えぬのだ。周りにいる者達もな。」
「なんだそれ・・・ストレリアだ、とりあえずさっき助けてくれてサンキューな。」
「礼には及ばぬ。それと、あそこで寝始めた獣人は戦士という。」
ホントだ、移動中もあくび以外無言だったあの獣人隅で眠りこけてやがる・・・。後の奴らも次々に自己紹介をする。帽子を被った女が盗賊。ドレスの女は姫。妖怪と話してるのは歴史学者。茨を出してるのは植物選定人。クリスタルみたいなのを食ってるのは鉱山作業人、中性的な奴は捕食者。さっきの猫耳少女は料理人というらしい。・・・こいつら何で職業名を名乗ってんだ?
「さて、ストレリア殿よ・・・話すとしよう。今起きている異変を・・・。」
「異変・・・?これ異変なのかよ?」
「あぁ。実は近頃・・・一人になった能力者や一般人を先ほどのような異形が襲う事例が多発している。」
「・・・一般人は分かるが能力者までもかよ?」
「そうだ。しかも、殺された奴は何かの呪詛に蝕まれて、どのような術でも蘇らせる事は出来ない。」
「そうかよ・・・どーりで墓なんてあったのか。」
「・・・何の話だ?」
「いや、実はな・・・」
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「なるほど、そなたの知り合いがあの異形に殺されたから、蘇生を可能とする知人に助けを請おうとしたらその知人の家の外に同居人の墓があったのか。となるとその同居人も異形に殺されたに違いない・・・しかし、その知人もまた異形に襲われていないか気がかりだな。」
「何なんだよあの異形は・・・あたしが一度異形を倒したときはあまり強くなかったってのに。」
「・・・一度の経験だからと相手の力量を見誤ってはならぬ。とはいえ、確かに拙者もそのように感じる事はあるが。」
「いやあんのかよ。というかその言い方だとあたしを助ける前にも異形と戦ってたっぽいな。」
「その事だが・・・あの異形から命を守るには他者と固まるのが得策だと考えている。そうすれば異形も倒しやすくなるのでな。」
なるほど、周りにいる奴らはそういう理由でここに集まっているのか・・・で、あたしもここに連れてこられた訳だ。
「しかし、2,3人の能力者がまとめて殺されている現場にも遭遇した。今この場で戦えるのは拙者と戦士、後は捕食者くらいだ。それでだ・・・そなたも戦えるのであれば、先ほどの拙者達のように、他の一般人や能力者達を探し、ここに集めさせるのに協力していただきたい。出来るだけ多くの者で集まれば異形に襲われても被害を食い止められると拙者は信じている。」
「・・・さっき死にそうになっていたんだぜあたしは?日和ってる訳じゃねぇけどあんたの方が強そうだが・・・」
「そこは拙者達が守ろう。お願いだ、あの異形の出所も突き止めなくてはならない・・・。」
「まぁ拒否できるほど恩知らずじゃねーしなぁ・・・ホントに危ないときは助けてくれよ?」
「もちろんだ。力の及ぶ限り、手助けしよう・・・。」
YKN.23 盗賊 生存確認。
YKN.24 料理人 生存確認。
YKN.25 侍 生存確認。
YKN.26 姫 生存確認。
YKN.27 歴史学者 生存確認。
YKN.28 植物選定人 生存確認。
YKN.29 鉱山作業人 生存確認。
YKN.30 捕食者 生存確認。
YKN.33 戦士 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・159名。
地の文とセリフの比率のなさに笑えるぜ☆ というか犠牲者いないのか今回は・・・まぁ次回で誰か死ぬだろう多分(穏やかじゃない)。今回もセリフに名前振らなかったけど誰が喋ってるか分かんないとかないかしら。結構長くなったから誤字ないか怖い・・・というか読んでくれる方々を飽きさせていないだろうか。(ジツハカンソウトカゴジ、アドバイストカホシイナンテイエナイ・・・。)