時は過ぎ、あたし達は妖怪の山に来ていた。とはいえ、あたしと侍だけだが。あの戦士とか名乗った奴は「眠い」の一言で同行を拒否しやがった。侍が言っていたが、あいつはかなり面倒くさがりらしい。まぁそこはなんとなくあたしも察していたが。そんな訳で戦士は万が一自分たちが不在の時の戦闘要員という理由で人里に残している。
「今のとこ静かだけどほんとに誰かいるのかよ?」
「嵐の前の静けさ・・・という言葉がある。いつ助けの声が聞こえてもおかしくはない。それに、何者かの気配はある。ひとまず、山頂まで向かうとしよう。」
正直あの異形には遭遇しないで誰かしらと合流したいけどな・・・。
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「何で山頂に着いた瞬間二人も倒れてんのを見つけなきゃならねぇんだよ!?」
そう、山頂に着いた途端二人の女が倒れていたのだ。一人は学生服の人間、もう一人は桃色の角と翼を生やして緑色の液体の入ったドデカい注射器を片手にしてる女。異形の襲撃に遭って倒れているのかと思ったがどっちも外傷は無い。多分普通に気絶しているだけか?
「落ち着け、まずは話を聞くぞ。」
侍が学生服の人間に近づいて揺り起こす。
「んぅ・・・ひっ!?だ、誰ですか今度は!?」
学生服の女は起き上がると青い目を見開いて半腰の姿勢で退く。涙目になっている辺り相当怖い目に遭ったか?
「落ち着け、拙者らに敵意はない。少し話を・・・」
「そ、そういうこと言う人程怪しい人はいないんですよ!信用しませんからね!?今すぐ私から離れてください、半径500キロぐらい!」
いや適当に言ってるんだろうけどやべー事言い出すなこいつ。
「すまない、拙者の今の実力では今すぐとなるとせいぜい半径300キロしか・・・」
「いや何で素直に言うこと聞こうとしてんだよ!?こいつの警戒心が強いだけだろうが!」
つーか今すぐでも半径300キロ離れられるとかこいつ別の意味でやべー奴だな。こいつに喧嘩売るのはやめとこ。
「でだ・・・お前何でここで気絶してたんだよ?」
「そ、それは・・・」
~回想~
「うぅ・・・私の大事な本、どこにいったのぉ?」
いつも大事にしている本を気づいたら無くしてて、探してたんです。そしたら悲鳴が聞こえてきたからビックリして何かと思ったら・・・
「私は美味しくないですううう!!」
羽を生やしてデカい注射器を手にしている女が化け物を引き連れて来て・・・
「イヤアアアアァ!?」
「ピャアアアアァ?!」
~回想終了~
「・・・いや、お前がそれで気絶したのは分かったがこっちの方が気絶したのは何でだよ!?」
まさかこいつの出した悲鳴にビックリしたからか?え、それだけで気絶するのか?
「待て、先程の話ならばこの女を追っていた異形はどうしたのだ?恐らくは例の異形だと思われるが・・・」
「そいつらならウチが適当にあしらっといたっすよ?感謝してほしいっすね♪」
別方向から新たな声が聞こえた。その方を見ると、緑の線の入った黒いボールみたいなのを幾つも浮かしてる緑髪の女がいた。
「そうか・・・感謝する。」
「うーわ、何すかお姉さん。そんな刀何本も持ち運んじゃって。歩きにくそうっすねぇ?それがかっこいいとか思っちゃってるんすかぁ?ウチ的に見たらダサいっすよ?キヒッw」
こいつ結構口悪いな・・・。まああたしはこんな奴に煽られてもキレねぇけど。
「そっちの姉さんはガラ悪そうな癖して聖女気取りっすかぁ?何か裏で愚痴言って見られたら理不尽に襲ってきそうっすねw」
「んだとゴラァ!こっちだって好きでシスター務めてんじゃねぇんだよぶっ飛ばすぞ!」
無理だった。何故か少し前の自分の行動をぴったりと言い当てられて怒りと少しの恥ずかしさに棘付き鉄球の鎖を握りしめて一度ぶつけようとするが侍に止められる。
「落ち着け・・・。今はそのような喧嘩をしている場合ではないだろう。」
「ま、また誰か来た・・・怖いよぉ・・・」
こいついつも怯えてそうだな・・・。つかこんだけ騒いでもあの翼人目覚まさないんだが。いや、こんなにビビりの女の悲鳴一つで気絶出来るんなら起きたら同じくらい面倒くさそうだが。
「で?姉さん達はここで何してるんすか?」
「あぁ、それなのだが・・・」
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「という訳で、そなたらにも拙者らと共に来て欲しいのだが・・・」
「そ、そんな事言って油断させて連れ込んでから襲ったりしないですよね!?」
学生服の女がさっきより後ろに下がって距離をとる。こいつ警戒心だけは人一倍強いな。
「そのようなつもりはない。拙者はただそなたらの身の安全を保証したいだけなのだ。」
「そう言われても・・・。それに、大事な本だってまだ見つかってないのに・・・」
「先程言っていた事か。ちなみに、どんな本なのだ?」
「緑色で少しぶ厚めの本です。1時間は探してるんですけど見つからなくて・・・でも、亡き祖父に貰った本だから諦めたくないんです。」
そりゃ大事にもするな、誰かに会っただけで逐一気絶しそうなのに1時間ずっと探してるのは意外だが・・・
「・・・物を大事にする気持ちは分かるが、それだけ探して見つからないなら諦めるしかないのではないか?もしかすればここに来た誰かが拾った可能性もあるぞ。」
「た、確かに・・・。でも必ずしもそうと決まった訳では・・・」
「ならば拙者も探すのを手伝おう。拙者らはこの異変の解決のために他の場所も調査に向かう気でいるのでな。そのついでと言ってはなんだが、もしかすればそなたの大事にしている本とやらも見つかるかもしれん。」
「ほ、ほんとうですか?何で、初対面の私にそこまで優しく・・・」
学生服の女はそこまで言って涙目になる。もしかしたら元からかもしれないが。
「見つかるといいっすねぇ?あ、ウチは断っておくっすよ?」
「は?お前あの異形に殺されてもいいってのか?」
「別に見つからなければいいだけっすよね?仮に見つかっても撒けばいいだけっすし。それに・・・ウチは団体で行動するのは好きじゃないんで♪異変の方は姉さん達が解決してくれそうだから気にしなくていいっすよね?安心してくださいっすよ、姉さん達の事は適当に眺めさせて貰うっすから。これから楽しいことが起きそうな気がするっすからね。」
そう言って緑髪の女はどこかへ歩き出した。放っといても大丈夫そうな気はするが・・・。侍は緑髪の女が消えた方を見ていたが、少ししてまだ気絶している翼人を肩に担ぐ。
「・・・行こう。元より会う者全員に話をつけられるとは思ってはいない。」
そしてあたしらはまた人里に戻る事になった。学生服の女はあたしらよりずっと後ろからついてきていた。
YKN.5 ロジカ 生存確認。
YKN.155 カルサイト・バダムスシノーネ 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・159名。
今回全く喋らなかった注射器持ちの翼人は次回喋ります(予定)。騒がしい奴なので喋らせたらただでさえ台詞過多なのに更に増えてしまうので。だったら出さなきゃいいって話だけども何しろYKN全員が出るから1話に1人でも多く出しとかないとこの後の話が長引くんですよ・・・はい、見苦しい言い訳です。