シャル達と別れ、霧の湖へとやってきた。紅魔館なる場所に寄ったはいいが、寝ていた門番に話を聞いた所、館の主である吸血鬼もまたこの異変の調査に乗り出して今は不在らしい。新しい情報を得られそうになかったので今は湖でりょく殿を探していた。
「・・・しかし、いつ来てもこの霧の濃さには慣れないな。」
私が幻想入りするよりずっと前・・・幻想入りする輩が続出するようになったその前から在る地の一つ。だから何故ここはいつも濃霧状態なのかは知らない。この霧を人力で晴らす方法はあったりするのだろうか。手分けして探す他の二人の姿が見えるか見えないかといった距離の中、ふと見覚えのある黒の学生服の女と出くわした。
「ヴァイス・・・?ヴァイスか?」
「朱鷺宮殿・・・!?」
見間違いではない、幻想郷に来る前に世話になった一人の朱鷺宮神依本人だった。
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「・・・すまない、そのような特徴の女は見ていない。」
りょく殿を探している旨とその容姿を伝えてみるが、望んでいた言葉は出なかった。
「そうですか・・・しかし、朱鷺宮殿もここに来ていたとは・・・。」
「私も思わなかった、だが・・・私達だけではない、以前ここでペトラと出会った。その時聞いた事だが、はぁともいるらしい。」
「教官殿やはぁと殿もここに・・・!?」
二人もまた、世話になっている人達だ。今まで会えなかっただけで、いつの間にこの幻想郷に共に来ていたというのか。
「しかし、この状況で出会えてよかった。もしよければ、この異変解決のためにそなたらと行動を共にしたいのだが。」
「こらからも是非お願いしたい。教官殿らとも出来れば会いたいところだな・・・。」
湖で他に発見するものはなかったので、別の場所を探すことにした・・・
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同時刻、太陽の畑と呼ばれる場所では鬼ごっこが繰り広げられていた。ただの鬼ごっこと違うとすれば、捕まったら死ぬといった点だろうか。
「ふぅ、ふぅ・・・しつこくないか本当に・・・。」
必死に逃げる自分の後ろには足下に光る怪物やら雷やら剣を飛ばしてくる女性。もちろん面識はない。出会い頭に襲われたからこうして逃げている。周囲はひまわりだらけで自分の伸ばせる腕を絡められる程に丈夫な物がなく、追いつかれるのは時間の問題でしかなかった。近づかれた分、攻撃を避けるのも難しく、背に剣が刺さり、倒れ込む。どうやらここまでのようだ、何というか・・・この幻想郷という場所に来てからろくな目に遭わなかったな。
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「・・・これでまた一人。」
死体となった男?を一瞥し、その場を去る。他に単独行動している輩を排除するために。ここの人達もすっかり異変の犠牲を恐れて複数で行動するようになっている。こちらも複数でかかれば早い話だが、指示を受けるまでは一人ずつ幻想郷の住民を排除するのみ。これも、私が聖霊となるために。そのためにはまだ、あの人物に従わねば・・・。
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一方こちらも同時刻、迷いの竹林には身体が逆さまになった性別不明の人物と胴が分かれたウエスタン風の男がいた。
「あーあ、死んじゃった。つまんないなぁ・・・。まぁいいや、他の奴殺しに行こっと。」
逆さまの人物はどこかへ浮遊していく。あの男に指示されるのは気にくわないけど、何も気にせず他人が殺せるから別にいい。幻想郷だか何だかどうでもいいけど、実に良い場所だ・・・とか思っていた。
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目の前で霧散する異形に目もくれず、また歩みを再開する。どこを歩いてもこの異形ばかり。どこにある、この異変の解明の糸口は・・・ラムダを死なせたあの異形を放っている元凶はどこに・・・。
「あのー、すみません。」
考えているうちに視線が下に向いていたらしい。ふと前から声をかけられ、顔を上げる。白のワイシャツに赤いネクタイというOLらしい女性。
「・・・誰だ?」
名乗ろうが名乗らなかろうがどうでもいいが、言葉を掛けてみる。
「ごめんなさいね、急に話しかけて。まず確認したいのだけど、ユウさん・・・でいいですよね?」
女の言葉を聞き、自然と身構える。私の数少ない友人にこの女性は含まれていない。ならば誰だ?友人の友人か?
「・・・間違いなさそうですね。実は、あなたに話があります。」
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YKN.114 朱鷺宮神依 生存確認。
今回の犠牲は・・・
YKN.98 エリクソン ミルドレッド・アヴァロンに背後から剣を刺され、死亡。
YKN.127 アルカンジェロ 逆吊りの殺人鬼に胴を真っ二つにされ、死亡。
残り・・・159名。
YKN.108 ミルドレッド・アヴァロン 敵性存在確認。
YKN.97 逆吊りの殺人鬼 敵性存在確認。
討つべき敵は・・・5名。
あっけなく殺しちゃってるのは気にしないでほしいです。だって痛々しい描写とか書きたくないし・・・()