リムルと共にハクロウに修行を付けてもらっていると、リグルドが走ってくる。いつも走っているな。
リグルド「大変です、リムル様、ユレム様。リザードマンの使者が訪れました!」
ふむ、リザードマンの使者か、例のオーク騒動に関係があるのか? そういえばソウエイが、リザードマンが周囲のゴブリン村のゴブリン達を保護? していると言っていたな。それに関係する事か。
ユレム「分かった、すぐに向かおう」
町の入り口へ向かう。
ベニマル「あれ? シオンはどうしました?」
ベニマルが思い出したように言う。
リムル「ああ、シオンなら朝から俺の部屋を掃除してくれているはずなんだが……」
ハクロウ「なんですと!?」
リムルが言い切る前にハクロウが驚く。ふむ、まさか、料理だけで無く、掃除も……?
シオン「リムル様、ユレム様、お茶をご用意しました」
シオンが、湯呑みに入ったお茶を名乗るダークマターを持ってきた。
ユレム「シオン、人に飲食物を作るときは、俺が教えた工程の通りに作ることを命じたはずだが?」
これは、シオンに料理を教えるにあたって最初に言った言葉だ。変なアレンジは加えず、用意したレシピ通りに作れば、ある程度のものは誰でも作れる……はずだが……。
シオン「え、えっと……これは……その……お茶に海藻を入れたら美味しいかなと……」
それだけの思いつきでどうしてこのダークマターができるのだ……?
『告。理解不能、計算不能、回答不能』
聞いてはおらぬ……。
リムル「ま、待ってくれ、どう言うことなんだ……?」
リムルが聞いてくるが、どう言うことも何もない。
ユレム「簡単な話だ。シオンの作る料理は何故か暗黒料理となる。それだけだ」
リムル「その何故かが聞きたいんだよッ!」
鋭いツッコミが返ってくる。
ユレム「何故かわからぬから、何故か、なのだ。手順通りに料理を行えば、こうなることはない事は分かっているが、少しでもそこからアレンジを加えるとこうなる。そこに理屈など無いのだろう、何度【大教授】で解析しても解析不能となる」
リムルが引いている。
ゴブタ「あ、お茶っすか! 自分、丁度喉が乾いてたんすよー」
リムル「まてゴブタ! 逝くな!」
ゴブタがお茶を飲み干す。2杯とも同時に。するとゴブタが泡を吹いて倒れる。さらには痙攣を起こしている。
ユレム「すまぬな、ゴブタよ、まだ<
ゴブタよ、お前の事は忘れぬぞ。
リムル「あぁ……シオン、今後お前が作った飲食物を人に出すときは、まずベニマルに許可をもらうように」
ベニマルがリムルに対して目で訴えかけるが、リムルは完全に無視する。もうゴブタのような犠牲は出してはダメだからな……。
去り際に<
…………
さて、そんなこんなしていると、どうやらリザードマンの使者とやらが来たようだ。
使者「出迎えご苦労! お前達にも、我輩の配下に加わるチャンスをやろう。光栄に思うが良いぞ!」
何を言っているのだ? こいつは。
リグルド「畏れながら、配下になれと突然申されましても……」
皆が反応に困っていた所、代表してリグルドが言う。
使者「ふん。貴様等も聞いておるだろう? オークの豚共が、ここに攻めて来ようとしている。貧弱なお前等雑魚共を救えるのは、この我輩だけだぞ!」
成る程、オークの脅威から身を守ってやるから配下に加われ、というわけだ。
かと言っても、ここにいる者は、守られるほど弱くはない。【魔眼】で見たところ、おそらくコイツはリグルドよりは強いだろう。だが、ベニマル達なら今すぐ焼き払う事も容易だ。尤も、油断している今なら、ゴブタでも勝てるだろうがな。
使者「そうそう、ここに牙狼族を飼い慣らした者がいるそうだな。そいつは幹部に引き立ててやる。連れてこい」
それは目の前にいるスライムだがな……。
リザードマンとの共闘自体は悪い話ではない。ただ……共闘する者が馬鹿なのは少し厄介だ。下手をすれば相手に上手く利用されるかも知れぬ。
ユレム「ふむ、飼い慣らした……というより、仲間にしたのはそこにいるスライムだが……」
俺の場合リムルの友だから忠誠を誓え、という方が正確だ、なので仲間にしたのはリムルだ。
使者「はぁ? 下等なスライムが? 冗談を言うな、根拠を見せてみろ。そうしたら信用してやる」
信じぬか……。俺はリムルに目配せをする。
リムル「ランガ」
ランガ「ハッ、ここに」
リムルの影からランガが現れる。
リムル「ランガ、ソイツがお前に話があるそうだ。聞いて差し上げろ」
ランガがリザードマン達に視線を向ける。今のランガはいつもの小型化をしていない本来の姿だ。殆どの相手は萎縮してしまう。
ランガ「主より、お前の相手をする命を受けた。聞いてやるから、話すがいい」
ランガは【威圧】しながら言う。使者以外は身体が硬直している。使者はというと、狼狽えはしたものの、なんとか威厳を取り戻したようだ。
使者「おお! 貴殿が牙狼族の族長殿かな? 我輩はリザードマンの戦士長ガビルと申す! お見知り置き下され。今申した通り、我輩はネームドである。そこのスライムより、我輩と組まぬか?」
コイツの名はガビルと言うようだ。だが、誰が名を付けたのだろうか?
ランガ「トカゲ風情が……我が主達を愚弄するとは……」
ランガが怒っている。下手をすればガビルの命は無いだろうな。流石に止めるか?
ガビル「どうやら貴殿は騙されているようだ。良かろう、我輩の力で貴殿を操る者を倒して見せようでは無いか。誰が相手をするのだ? なんなら、全員でも構わぬぞ!」
力の差がわからぬとはな……。ただ、誰に行かせたものか、リグルドでは少し荷が重いようだ。だが、ランガやベニマルなどで行かせればやりすぎる……。
いや、ちょうど良いものが来たようだな。丁度良いタイミングで目が覚めた様だな。
ゴブタ「あれ? 何やってんすか?」
そう、ゴブタである。
どうやら解毒された事で【毒耐性】を獲得したらしい。
やはりあの暗黒料理は毒と判定されるようだ。今度<
リムル「お前……無事だったのか!?」
ゴブタ「それが聞いてほしいっす! 川を泳いでいたら、急に楽になってきて、優しげな声が【毒耐性】を獲得したとか言ったんすよ!」
確実に泳ぎ切ってはいけない川を泳いでいた気がするのだが、気のせいか?
まあ良い、ゴブタはこのタイミングで来てしまった以上、ガビルと戦うことは決定事項である。
ランガ「ククク、良かろう。では、我も認めるほどの男を倒せたら、話を聞いてやろう」
何か喚いているが、問題なかろう、ゴブタならば、この油断したガビルに勝つ事は十分可能だ。
リムル「ゴブタ、遠慮はいらん、やれ! 負けたらシオンの料理をたらふくご馳走してやる!」
ただの罰ゲームである。
ユレム「問題ない、ゴブタ。お前の実力ならば十分奴に勝てる。それに、勝ったらクロベエにお前専用の武器を頼んでやる」
ゴブタを鼓舞する。
ゴブタ「マジっすか!」
ユレム「無論だ」
そう言うとゴブタは、とてつもないやる気を出す。背後に炎が見えるほどだ。この分なら問題なさそうだな。
ランガ「我に力を貸せと言うならば、貴様の力を見せてみろ。では、始めろ!」
戦闘が開始される。ゴブタは身構え、ガビルは悠然と槍を片手に立っている。
ユレム「リムルよ、この戦い、どう見る?」
一応、リムルの意見も聞く。
リムル「いや、流石にゴブタに勝機は無いんじゃ……そもそもゴブタの得意武器はナイフだし……」
まずは配下を信じた方が良い気がするぞ……?
ユレム「成る程、確かにゴブタの得意武器はナイフ、長物ではあまり距離感を掴めぬかも知れぬな」
リムル「だろ?」
だがルールを一つ、見落としている。
ユレム「だが、武器を使わなければならぬ。と言うルールは初めから存在しないぞ?」
リムル「……あ!」
リムルも気づいた様だ。
ゴブタは大きく振りかぶり、槍をガビルに思い切り投擲する。勿論ガビルは問題なく槍を叩き落とす。だが、一瞬だけガビルの意識が槍に向いていた。
その瞬間には既にゴブタは影に潜っている。
ユレム「やはり使える様になってた様だな」
ガビル「何処へ隠れた!?」
ガビルが慌てて見回すが、その時既に、勝負はついていた。ゴブタはガビルの後ろから伸びている影から飛び出し、ガビルの意識外から首に蹴りを食らわせる。
ガビルは死んではおらぬ様だ。だが気絶しており、回復には少々時間が必要だろう。
ランガ「勝負アリ、勝者ゴブタ!」
ランガのその宣言により、皆、喝采の声を上げる。
ユレム「よくやった、流石だゴブタ。約束通り、クロベエにお前の武器を頼んでおこう」
リムル「さ、流石だな、ゴブタ。見事だったぞ!」
リムル……棒読みだぞ……。
ユレム「さて、勝負はついた。其奴の配下になるのは断る。尤も、オークと戦うのに協力する。と言う話ならば、検討しよう。だが、今日はさっさと帰るが良い」
人騒がせなリザードマンの使者は帰っていった。
次回には多分オークロードの軍と戦い始められるかな?
物語の進行速度はどう? 丁度良く進めるコツとかがあればご意見箱にお願いします
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早すぎる、これは光なのだろうか……?
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早い……少し待ってくれ
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そうだ、それくらいが丁度良い……!
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遅い、もう少し早く進めたまえ
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遅すぎる、時でも止まったかのようだ!