騒がしい者達は去ったが、今後の方針は立てねばなるまい。この町の主要な者達、俺とリムルを抜いた総勢12名を集め、会議を始める。議題は大きく分けて3つ、
1.ゴブリンの各村の様子。
2.湿地帯の状況。
3.オークの進軍状況。
まず、他のゴブリン村だが、その多くはガビルの下についたようだ。ガビル、奴は部下からの人望はあるようだった。それに実力も不意打ちを喰らわなければゴブタを倒す事も十分可能だったろう、侮りすぎだったな。そういう面ではゴブリン達がつくのも納得できる。
それ以外の者達は、各地に逃亡したようだ。人間の国の方面へ行った者もいるそうだが、討伐対象になるだろう。そうなれば隠れ住むしか選択肢はない。
また、ガビルの傘下には7000匹程度の群を組織し、山岳地帯麓の平野に集結して野営をしてるそうだ。
ふむ、【大教授】周辺の地形情報を入手できるか?
『了、地形情報を入手します…………
失敗しました。
代案を提案、【魔法作成】にて、周辺察知魔法、
<
無論、YESだ。どうやらこの魔法は、この世界に魔素が満ちている事を利用し、【魔力感知】のスキルの範囲を拡げた魔法のようだ。
『告、<
YESと念じると、地形情報が頭に入ってくる。ついでにガビル達の野営地の場所などもわかる。
GPSのように、常に更新し続けるようだ。範囲は誰かを中心に、ではなく、このジュラの大森林を対象にしているようで、俺が森から出たら、俺がいる国や地域の地形情報を察知するようだ。
湿地帯の状況だが、リザードマンの首領が各部族を取りまとめ、1万近くの軍を組織し、自然の迷宮にて立て篭もりながら、オークを各個撃破していく構えのようだ。
リザードマンは森の中でも上位の種族のはず、そんなリザードマンが堅実に戦うとはな。さらには弱小種族のゴブリンまで戦に巻きこむとは、まさに猫の手も借りたい状況なのだろう……。
最後に、オークの進軍状況だが……。
ソウエイ「オークの軍勢、その数……およそ20万……」
リムル「はあ? 20万!?」
リムルがあまりの量に声を上げる。
それにしても、まさか20万とはな、リザードマンの対応も分かる。これでは確かに1万やそこらではな……。
それに、オーガの里を襲ったのは数千程度……一部の軍を出していただけだったとは……。
ユレム「ならば、オークの目的地は分かるか?」
大方予想はついているがな……。
ソウエイ「はっ、オークの軍勢はシス湖周辺に広がる湿地帯を抜け、リザードマンの支配領域を突き抜けるつもりのようです。しかし……」
やはりそちらへ向かったか。
リムル「しかし?」
ソウエイ「その先にあるのは、人間の住まう領域、オークが何処を目指しているのかは不明ですが、このまま突き進むのならば、いずれ人間の国家群との衝突は免れないかと……」
ふむ、人間の国を目指しているのか、それとも、森の支配権を得、リザードマンを滅ぼして侵攻を止めるか。
ユレム「さて、皆はどう思う? オークの目的は、リザードマンを滅ぼすことか、人間の国家に侵攻を続けるか」
リムル「さあな、現時点では分からない……」
流石にそうか……。
リムル「先ずはオーク共の目的が知りたいな、ソウエイ、地図みたいなものって何かあるか?」
地図……<
『是、可能です。しかし、自動更新能力はマスターの魔力の魔力を流し続けなければならないので、離れればその時点での地図のまま変化しません』
初めから自動更新能力など考えてもいない、問題なかろう。
ユレム「リムル、地図ならある」
リムルは少々驚いた様子だ。
リムル「本当か!」
<
すると、机の上にこの森のジオラマが創られる。その地図は俺がここで魔力を流しているため、リアルタイムで動いている。
カイジン「なんと……! ここまで精巧な地図が……地図はそもそもが機密情報なのに……!」
成る程、最初、【大教授】が周辺情報を察知出来なかったのはそれが理由か。
リムル「なあ、これってリアルタイムで動いてるのか?」
ユレム「ああ、俺が魔力を流し続ける事で周辺情報を察知し続けるのだ。ああ、魔力量は気にしなくて良い、対して消費せぬ。これなら自然回復で充分補える」
これほど優秀な地図も無かろう。この森限定、それも俺が魔力を流し続けるという条件付きだがな。
ただ、これでは今までのオークの進軍経路を確認するには不都合があるだろう。なので、わかりやすくまとめたもう一つの紙の地図もジオラマの横に創る。
ユレム「オークの進軍経路を確認するには、こちらの方が分かりやすいな」
皆が感嘆の声をあげる。
気を取り直して、オークの進軍経路を確認していると、1つ、リムルが違和感を感じた様だ。
リムル「なんで別働隊を分けたんだ? 森をそのまま突き進ませると何が不都合になるんだ?」
ふむ、普通に考えれば木々が邪魔だからだろう。ハクロウもそう答えた。だが、そうすると……。
ベニマル「何故奴らは、俺たちの里を滅ぼしたんだ? 本隊の移動とは関係無いならば、放置すれば良かったんじゃないか?」
ハクロウ「ふむ、そう言われれば、変ですな」
ハクロウも頷く。そう、わざわざ上位種族であるオーガを攻撃する必要がない筈なのだ。食糧が目的だとしても、20万の中の数千など、そんな少数でオーガの里を襲うなど……実際にオークにも多くの犠牲が出たという。ならば何故、必要のない戦いを挑んだのか……。
曰く、オーク達は初めから敵意しか無かったらしい、つまり、オーガとの交渉が目的では無い。
やはりジュラの森の支配が目的かと言われると、上位種族オーガを相手させるにはやはり少なすぎる。
皆も考えるが、どの仮説も決定打に欠ける。
シュナ「それに……オーク達はどうやって20万もの大軍の食糧を賄っていたのでしょう?」
その言葉に、皆が固まる。
ベニマル「どうやって、だから森で食糧を集めさせ……」
ベニマルの言葉が途切れる。
リムル「ソウエイ、オークの別働隊には補給部隊はいたのか?」
ソウエイ「いいえ、見かけておりません。本隊の後方には食糧を運搬する部隊が組織されているようでしたが……数が足りません。あの数では20万もの軍を満足させるには不十分だと思われます」
大河で水の補給が出来ても、食糧の補給は精々大河を泳ぐ魚だけ、それでは間違いなく足りないだろう。つまり、オークの軍は飢えながら戦っている……?
ふと、ジオラマの方に目をやる。オーガの里の跡には、焼け残った家の跡はあっても、死体は一切ない。
ユレム「ソウエイ、いや、ベニマル達でもいいが、死んだオーガの同胞達の死体は埋めたのか?」
ソウエイを除く鬼人達が、驚いた様にジオラマを見る。
ベニマル「いえ、俺達はオーク共から逃げてきたのでそんな暇は……」
ベニマルが言う。俺はここで1つ仮説を立てた。すると今度はソウエイが口を開く。
ソウエイ「憶測なのですが、飢えたり戦死したりした仲間の死体を……食べてるのではないかと思われます。戦場跡なども調査しましたが、死体が1つも……」
オーガの里もジオラマで見た通り、死体は1つも無い。それが意味することは……オーガの死体も食べたであろうと言うこと。
リグルド「いくらなんでも……」
カイジン「アイツ等は確かになんでも食うが、流石にそれは無いだろう?」
その質問に、ソウエイが答える。
ソウエイ「いや、あくまでも憶測です。しかし、奴らの通ったあとには死体は無かった。俺たちの里にも綺麗さっぱり、何も残ってなかった。これは紛れもない事実です。そして1つ、思い当たる能力があるのですが……」
ソウエイが言葉を区切る。するとベニマルがその言葉の続きを口にする。
ベニマル「まさか……! オークロード、か?」
ソウエイ「そうだ、まだ確認はしていないが、オークロードが出現した可能性がある。少なくとも、高位のオークナイツの存在も確認した。俺たちの里を襲撃したのも、そいつ等だろう」
オークロード?
ベニマル「確かにな、あの強さならば、オークナイト、いや、オークジェネラルだったとしても不思議はない」
ハクロウ「だとすれば、全ての謎は解けますな……」
鬼人の皆は知っているようで、深刻な顔をしている。
カイジン「おいおい、そのオークロードとは一体なんなんだ? 俺たちにもわかるように説明してくれや」
痺れを切らしたように言う。
リムル「そうだな、皆にも分かる様に説明を頼む」
リムルが言うと、オークロードについて話し始める。
オークロードとは、数100年に1度、オークの中から生まれるユニークの個体で、必ず強力な支配系能力を持つスキルを持って生まれると言う。そのスキルは、【飢餓者】といい、味方にも周囲のものを喰らい尽くす習性を授け、果てることのない飢餓感に苦しめられると言う。故に、どんな者でも食べる。このスキルの最も恐ろしい点は、喰った魔物の力や身体能力、スキルをも自分のものと出来るようだ。
リムル「オークの狙いは、オーガやリザードマンと言った上位種族を滅ぼす事ではなく、その力を奪うためだったのか!?」
沈黙が流れる。その沈黙は、リムルの問いに肯定する事を意味していた。
<
【魔力感知】と同じような原理で、範囲を大幅に拡大した魔法。対象地域は自身が現在いる国や地域で、常に地形情報を更新し続けるので、索敵にも使える。
<
<
思ってたより本編長くなった。本を読み直しながらこの会議こんな長かったっけ? って驚きながら書いてた。
物語の進行速度はどう? 丁度良く進めるコツとかがあればご意見箱にお願いします
-
早すぎる、これは光なのだろうか……?
-
早い……少し待ってくれ
-
そうだ、それくらいが丁度良い……!
-
遅い、もう少し早く進めたまえ
-
遅すぎる、時でも止まったかのようだ!