魔物の町は、俺やリムルとしても十分満足のいくものとして完成した。特に、トイレや風呂、水周りに虫除け、これはもはや渾身の出来と言って良い、風呂は残念ながらすべての家に繋げることはできなかったがな。
ただ、恐らくリムルの【大賢者】や俺の【大教授】がいなければ完成することはなかっただろう。それに、オーク達の労働力がなければこの数倍の時間はかかっていた。ジュラの森大同盟の効力を早速実感したのである。
ああ、それと……
ユレム「要らぬと言ったのだがな……」
俺の庵である。執務館で寝泊まりすれば良いだろうに。それと言い忘れていたが、俺とリムルで、内政と外政を分担する事になった。ただ、その時にリムルが何がなんでも俺に外政をさせようとはしなかったのは気になるが……。
話を戻そう。この庵だが、リムルのものが少し離れた場所にある。正直住み心地は良い、リムルの庵はスライム形に最適化されており、俺の庵は人型、さらに体格によって家具の形が変化するという<
ああ、ガビルも来ていたな。他にも、首領アビルの親衛隊長こと、ガビルの妹も来ていた。そこで皆にリムルが名前をつけ、<
このように、この3ヶ月間でさまざまな事があったものだ。今日も今日とて、何か起こるのだが……。
ユレム「さて、随分な大所帯が来たものだな」
<
カイジン「あれ、もしかして……」
何やら呟いている。
ユレム「どうした、カイジン、奴らに心当たりでもあるか?」
カイジンが言うには、ドワーフ王国には、ドワーフ王直属の空を翔ける極秘部隊がいるそうだ。アレがそれなら、来るのはドワーフ王その人である可能性も十分にある。何をしに来たのやら……。
ペガサスナイツが町外れの開けた場所に舞い降りる。問答無用で攻撃を仕掛けて来ているわけでは無いので、俺たちを敵として認識していないのだろう。
ユレム「奴がドワーフ王、ガゼル=ドワルゴか」
騎士の中でも一際覇気を放つ男だ。強いな。
カイジン「これはガゼル王、お久しぶりで御座います。なにやら物々しい出立ですが、本日は何か御用があるのでしょうか?」
カイジンが前に出て跪きながら言う。
ガゼル「久しいな、カイジン、それにスライム。余……いや、俺を覚えているか?」
ふむ、リムル、恐らくカイジンを連れて来た時のことだろうが、なにをしでかしたのだ……?
鬼人の皆はガゼル王の言葉に殺気を放つ。ガゼル王がリムルに対し、気さくに話しかけ、スライムと呼び捨てたからだろうか? カイジンはその言動に驚いたようだ。
カイジン「お、王よ!?」
カイジンは狼狽えたように言う。カイジンがドワーフ王国に居た時はこの様な対応は見せたことがなかったのだろう。
ガゼル「ふはははは、相変わらず頭が硬いな、カイジン。見て分からぬか? 今日の俺は一私人としてやってきたのだ。あくまで建前だがな。」
私人として来たにしては後ろに物々しい一団がいるが……気にしたら負けだろう。
リムル「ってことは、普通に話しても文句無いよな?」
ガゼル「当然だな、堅苦しい形式に囚われている場合ではあるまいよ」
その言い方では彼らにとってかなりの大問題を、俺たちが犯したのだろう。オークロードの件だろうがな。
リムル「じゃあ最初に名乗っておこう。俺の名はリムルだ。スライムなのはそうだが、俺をスライムと呼ぶのはやめてもらおう。これでも一応はジュラの森大同盟の盟主なんでね、前の時とは立場が違うんだよ」
リムルが人型に変化する。
余談だが、俺はリムルが不在の際の盟主代理だ。
リムル「これが本性ってわけじゃないが、こっちの方が話しやすいだろう?」
相手がリムルに対して警戒を強める。それにベニマル達のことも鬼人だと言うこともバレている。だが、俺はそれほど警戒されていない様だ。妖気を一切漏らしていないからだろう。別にこの町で魂を偽る必要はないが、彼らが来た時にあらかじめ使っておいたのだ。尤も、ガゼル王には警戒されている様だが。
リムル「驚かせたみたいで悪かったな。こっちの方が話しやすいだろうと思って変化しただけだ。そこの婆さんが言った通り、これは俺のスキル【万能変化】による変身で、一種の擬態だからそんなに警戒する必要はないぞ」
ガゼル「それを判断するのは俺だ。敵が味方か断定できぬ者の言葉など、信じられる訳もなし」
その通りではある。だが、どう信頼を得るか……。
リムル「疑うのはいいが、それじゃあ会話が成立しないんじゃないか?」
ガゼル「安心するがいい、貴様を見極めるのに言葉など不要、俺の剣で、本性を見極めてやるわ。この森の盟主になったなどとホラを吹く貴様には、分というもの教えねばなるまい。貴様が盟主と言うならば、貴様の後ろにいるその男が盟主と言った方が信憑性も出よう」
ガゼル王が俺を見ながら言う。やはり、俺は警戒の対象の様だ。
ガゼル「その剣が飾りでないのならば、俺の申し出を受けるがいい」
手に持っていたハルバードを脇に控えていた騎士に渡し、剣を抜くガゼル王、リムルの刀を見てから目を輝かせていた。見た目に反して意外と戦闘狂なのだろうか?
リムルが申し出に乗る。ルールはガゼル王の一連の攻撃を防ぎ切ったらリムルの勝ち、リムルは攻撃しても構わない、というものだ、この男、恐らく剣の技術ならばともかく、剣だけでも戦闘力ならばハクロウと同等以上はあるの見て良いだろう。そして、
試合が開始すると言うその時……
トレイニー「その勝負、私が立ち会いましょう」
トレイニー達が現れた。するとガゼル王はリムルがホラを吹いた、と言う言葉を訂正する。しかし試合は止められぬ様だ。特に止める理由もないが。
開始の合図と共に2人は動く。暫く様子見をし、リムルが斬りかかる。あれは一度ハクロウに攻撃を当てた剣、スライムの特性を活かし、間合いを悟らせない技だが、読まれていたかの様に流される。それから、ガゼル王は【英雄覇気】を使うが、リムルは気合いで相殺する。するとリムルは、迷いを捨てたかの様に剣と一体化する。リムルの刀が重なって見えたほどである。
ガゼル「そうだ、それでいい。では、そろそろいくぞ!」
ガゼル王はそう宣言し、視界から消える。ふむ、この感覚には覚えがあるな、ハクロウの隠形法の感覚だ。するとリムルの真下から攻撃が来る。リムルはどうにか対応する。しかし、次の瞬間、上段からガゼル王の剣が振り下ろされる。が、リムルの刀によって受け止められていた。
トレイニー「それまで! 勝者はリムル=テンペスト!」
リムルの勝利である。魔物達は歓声を上げるが、ドワーフ達は面白くなかったのであろう。ガゼル王が手加減したのだと言うが、一喝される。
ガゼル「それにしても、よくぞ俺の"朧・地天轟雷"を見切ったものよ。見事だったぞ、リムル」
リムル「いや、偶然だよ。その技、俺の師匠が使ってたのを見たことがあるんだ」
ハクロウが今の技を使っていたのである。そう、今のと全く同じ技を。
ガゼル「なんだと? まさか、その師匠と言うのは……」
ハクロウ「ほっほっほ、見事でしたなリムル様、剣の声が聞こえた様で、何よりです」
いつのまにかハクロウが立っていた。どうやら避難誘導を終え、ゴブタ達に任せてきたようである。
ガゼル「失礼ですが、剣鬼殿ではありませんか?」
かしこまった態度でガゼル王がハクロウに問いかける。やはり知り合いだったようだ。
ハクロウ「ほう、あの時の若造が……見違えたぞ。いや、ドワーフ王に対して、失礼でしたな。先ほどの剣気、如何なる猛者かと思ってみれば、ワシ以上の剣士へと成長したようで重畳ですじゃ」
どうやら、300年ほど前にハクロウが幼少期のガゼル王に剣を教えていたようだ。ハクロウは一体何歳なのだろうか……?
ガゼル「それと、お前の名も聞いておこう。お前は先ほど、俺の剣を目で追っていたな?」
ガゼル王が俺の方を見て言う。
ユレム「ああ、俺もハクロウのあの技は何度も見ているのでな、どう剣が流れるか分かって仕舞えば造作もない」
ガゼル「はっはっは、いくらどう来るかわかっていても、俺の剣を完全に見切るのはそう簡単なことではない。素直に誇って良いことだぞ?」
ユレム「ふむ、そうなのか? ならばありがたく誇るとしよう」
さて、言い訳するとリアルな都合がキツくて、執筆に手が出せない現状です。ちょっと年が明けてから4月辺りまでは投稿頻度が月一になるかもです。次回はミリム登場までやりたいですね。
さて、投稿頻度激落ちの数ヶ月間、今度こそ幕間をやりたいと思います。考えている内容はありますが(1つくらい)、読者様方のご意見をお恵みいただきたく思います。ってことで、活動報告の、【ご意見箱】に幕間の案をお願いします! オネガイ