ユレム「来い、<
膨大なエネルギーが放出される。それと共に、黒い粒子があたりへ散らばる。その黒い粒子が集まり、1本の長剣の形となる。禍々しくも、幻想的な雰囲気を醸し出す闇色の長剣。
ここ、魔王城デルゾゲードでのみ出せる、魔王の魔剣。破壊神の権能を使い作り出す、理外の代物。その等級は、少なくとも
トウジ「剣……? 霊神人剣と同等以上のエネルギーだと? それは、一体……!」
ユレム「理滅剣ヴェヌズドノア、破壊神の権能により作られる、魔王の魔剣だ」
トウジが向かってくる。トウジが間合いに入るよりも前に、理滅剣を横薙ぎに振る。
トウジ「間合いの外で剣を……? なッ!?」
トウジの身体が切り裂かれる。
トウジ「これは……一体? 何故……! 間合いの外で振ったはず……!」
ユレム「間合いの外だからと言って、相手を斬れぬとでも思ったか?」
これこそが、理滅剣の真価。それは、理を滅ぼす力、この剣の前において、あらゆる理は無に帰す。躱しても避けられぬ。1+1は、0にも3にもなる。ただ滅べ、それこそが理滅剣の前に許される唯一の理だ。
トウジ「【成長者】も発動しない……となると、俺の動きに問題はなかった……? だが、攻撃を喰らった、見えないだけで間合いが自由自在の剣……? いや、だとしたら【成長者】は俺の目をその剣が見える眼に作り替えるはず……」
ふむ、【成長者】といえど、理外の事象には対応できぬようだな。そういえば、あの【成長者】、随分と守備範囲は広いようだな。ここまで来ると成長というより、適応の方が正しいかもな……魔虎羅か?
トウジ「ダメだ、今は答えは出ない……戦うしか無い!」
気づいた時にはトウジは俺の後ろに回り込んでいる。少々俺の方が遅れて迎撃する。が、
トウジ「な!? 確かに今は……」
ユレム「先に切った方が早いとでも思ったか?」
さて、どうする? 勇者よ。
トウジ「…………」
…………
おかしい、明らかに。先に切っても俺の方が切られている。射程外だとしても何故か切られる。いったい何故……いや、まて、ユレムはアレを破壊神の権能だと言った。つまり、何かを破壊する事でこんな現象を実現させているんだ。だとすれば、何を破壊している……?
トウジ「分かったぞ……! 魔王ユレム!」
ユレム「ほう?」
あの剣が滅ぼしているもの、それは……。
トウジ「その剣は、恐らく、法則や道理、そうなるはずの事を破壊している。違うか?」
ユレム「正解だ。だが、知ってどうする? 見たところ、【成長者】も発動していないようだが?」
そう、【成長者】は理外の事象には対応できない。おそらく、コレという対抗策がないからだろう。そもそも今回の場合俺の成長関係ないし……。正直、ここからは賭けになる……!
正面から向かっていく。すると、ユレムは先ほどと同じように、剣を振る。が……
トウジ「<
聖なる炎を放つ、ユレムは剣で魔法を切る。それによって、攻撃が中断される。その瞬間、俺はユレムのすぐ側に加速する。ユレムも気づいたようで、迎撃を行う。だが、俺の方が速い、だから……
……途中で剣速を抑えてから振り抜いた。ユレムの剣は先に到達し、俺の身体を斬り裂く……事はなく、俺の剣を素手で掴んでいるユレムがいた。
ユレム「なるほど……考えたな。だが、1度勢いを殺してしまった剣など、ただのナマクラも同然だ」
身体が切り裂かれる。嗚呼……負けた。
…………
トウジが行ったのは、理を滅ぼした事を逆手に取る戦術だ。理滅剣で滅ぼした理は、滅びたままでは矛盾が生じ、結果が存在しなくなる。だから、滅びた理は本来とは違う結果になる。
例えば「1+1は2である」と言う理を滅ぼせば、その答えは2以外の何か、つまり、1や3、10にも100にもなり得ると言うことだ。
今回の場合、俺は「先に攻撃した方が速い」と言う理を滅ぼした。だから、先に攻撃した方が遅くなる。なので、先に攻撃を当てた俺の攻撃は当たる前に、トウジの攻撃が発生した。俺はその攻撃を防ぎ、その後に俺の攻撃が発生し、トウジを切り裂いた。恐らく、俺に攻撃が防がれていなければ、その後に俺の攻撃が発生することも無かったやもしれんな。
ユレム「お前の勝ちだ。トウジ」
トウジ「……! 情けのつもりか?」
何を言うか……。
ユレム「お前は俺に奥の手を出させ、完全にとは行かずとも攻略してみせた。これを勝ちと言わずしてなんと言う?」
トウジ「いや、でも……。譲る気はないか……分かった。今回は勝ちを貰っておく、だが、まだ本当の意味で勝ったとは思っていない。次は勝つ」
それを聞き、俺はふっと笑う。
ユレム「ああ、貰っておけ」
そう言うと、トウジは八神騎士団の者たちの方を向き、口を開く。
トウジ「皆んな、今、俺が戦ってみて分かった。魔王ユレムは、人に仇なす存在では無い。出来るなら、皆んなにもついてきて欲しい!」
反対意見はなさそうだ。
トウジ「では、我々、八神騎士団は、魔王ユレムの
八神騎士団「はいッ!!」
八神騎士団の者達が俺の前に跪く。<
トウジ「(ユレム、最後に1つ、聞いてもいいか?)」
ふむ、聞きたいことか……。
ユレム「(なんだ?)」
そう問うと、トウジからその質問が来る。
トウジ「(お前は……国枝 陽太か?)」
トウジとユレムの関係とは!?