偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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唯一の不安要素となるオリジナル回なので初投稿です。

優子のアルバイト回に白哉君をどう導入すればいいのか分からなかったものだから……


原作初登場の回よりも先に未登場キャラに出会うのって色んな意味でハラハラする

 

 多摩町に設立されている、とある公園。滑り台やジャングルジムなどは鮮やかな色をしていた。しかし、生えている木々は皆幹が太く、長い間そこで子供たちを見守っていたことが窺える。

 

 それだけでなく、アスレチックを売りにしているだけあってか、一般的な公園でイメージする遊具以外も数多くあるようだ。入口に案内板があるだけでもかなり大きく、種類が多そうだということがわかる。

 

 そしてこの日は休日。家族連れの子供達が走り回ったり、親や友達と一緒にアスレチックや遊具などを使ってはしゃいだりと、元気溢れる子供達が公園内のあちらこちらで遊び回るのが、休日の多摩町の日常風景と化しているのが常識。

 

 しかし、この日だけは違った。アスレチックや遊具で遊ぶ子達が多い中、公園のとある隅でいつもは見かけることがない人だかりが出来ていた。それは子供だけでなく、大人までもが子連れもそうでない者までもが集まっていた。

 

 人々が向けている視線の先には、ステージと思われる広々としたステージが。そしてそこには二人の人物が立っており、まるで特撮番組やバトルアニメの如く、静寂な空間の中で対峙していた。そして不意に吹いてきた微風がさらにピリピリとした雰囲気を曝け出していた。

 

 対峙している一方は、姿は正に忍者。全身に黒い忍装束を纏い、口元も黒い布で覆われている。ここまでは普通の忍者と同じ恰好だが、この忍者には一般のとは異なる容姿をしていた。

 

 その忍者の忍装束には白い縦縞模様が描かれており、その上に様々な色を持った複数の手裏剣らしき装飾が付いていた。そして目元は忍の刀に似た白いサングラスのようなものを掛けているように見え、特撮番組に出演するかのような姿となっている。

 

 

「後は貴様だけだ、妖獣使いワイト‼︎ 夜な夜な町に現れ、使役する妖獣に人々を襲わせ、食べ物や金目の物を奪い取る貴様の悪行……許しはせん‼︎ いざ、成敗‼︎」

 

 

 そう高々と宣戦布告を告げる忍者の視線の先には、一人の骸骨の姿が。骨だけであろう体躯は赤と黒の線で描かれたバツ模様の目立つ青いローブによって覆い尽くされており、右手には紺色の水晶が嵌め込まれている杖が握りしめられていた。

 

 

『カッカッカッカッカッ、よくぞ我の元まで来れたな……未来忍者・黒虹(くろにじ)よ‼︎ だが、我の操る妖獣を全て倒したところでいい気になるなよ。貴様はこの我自らの手で葬ってやろう‼︎』

 

 

 不気味な笑い声を上げる骸骨──妖獣使いワイト。水晶の輝く杖をブンブンと振り回しては、水晶を忍者──未来忍者・黒虹に向け、死刑宣告を告げる。その言葉が紡がれた後、ここまでの一連を見た周囲──主に子供達が騒ぎ出す。

 

 

「頑張れー黒虹ー‼︎」

 

「ワイトに負けるなー‼︎」

 

「黒虹ーカッコいいー‼︎」

 

「ワイトも負けるなー‼︎」

 

「どっちも頑張れー‼︎」

 

 

 ヒーロー枠とも言える黒虹を応援するものが多数、優しい情を持つ者もいるのか怪人・敵枠のワイトを応援してくれる者も少なからずとも存在していた。

 

 

「いくぞ‼︎ 我が剣技、受けてみよ‼︎」

 

『来い‼︎ 我が闇の力で返り討ちにしてくれるわ‼︎』

 

 

 敵役味方役関係なく応援してくれている優しい人衆に見届けられながらも、互いが互いの役割を果たすため、武器──刀と杖をぶつけ合う二人。テレビのようなCG等の演出はないものの、ヒーローショーでありながらテレビ放送さながらの白熱なぶつかり合いを予兆させていた。

 

 そんな中、ワイトは一人でに思い悩んでいた。

 

 

 

 ホントもう、なんで着ぐるみの中こんなにもクソ暑いの⁉︎ 早く終わってくれ‼︎

 

 と。なんとまぁくだらない悩みだこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、皆さんどうもこんにちは。平地白哉です。最近召喚獣は各々が飯を確保してるためこちらが餌あげる必要がないって事を、昨日の夜に知りました。

 

 ちなみにこの前はリリスさんの一時的なプチ現界?イベントを終わらせて参りましたー。

 

 まぁあのイベントは一言でまとめれば、その……アレだ。リリスさん、ご愁傷様でした……

 

 ただ原作と異なるところと言えば、俺が優子を鍛えてあげたのにリリスさんの息切れが半減しただけという、乏しい変化が出ただけだったな。

 

 いくら想像した動きに優子の肉体がついていけないとはいえ、原作から改善された点が一つだけかつ微量って……原作知ってる者ならば同情せざるを得ないよな、うん……

 

 あっ。そういえば俺、リリスさんにこんなこと言われてたな。確か『優子の事をこれまでよりももっと大切にしてやれ』だったっけか? それを言われて以来、何故か頭の中でずっと引っ掛かってんだよなぁ……

 

 あの言葉、もっと優子に寄り添えって意味なのか? 俺はこれまでに悩み相談に乗ったり、テスト勉強に付き合ったり、誕生日プレゼントを渡したりと、彼女のために出来ることはなんだってやってきたはずなんだが、まだ何か足りないってことなのか? うーん……これは難題だな……

 

 

「おーい、平地くーん‼︎」

 

 

 そんな事を休日の多摩川公園のベンチに座りながら考えていると、忍法愛好家の全臓がなんか息を切らしながら走ってこちらに来た。えっ、なんでゼェゼェ言ってんの? お前結構体力ある方じゃなかったっけ?

 

 

「どうした? そんなに息切らして」

 

「ゼェ……ゼェ……す、すいません平地くん。休日に申し訳ないけど、お願いがあるッス……」

 

「お願い? お前が頼み事をしてくるなんて珍しいな……もしや忍法絡みの頼み事か?」

 

 

 全蔵は中間テストではベスト10に入る程に頭が良く、忍法を覚えるだけあって運動神経もかなり良い、その上に校則も守るし学校の行事にも積極的に参加してるため、授業関連のことでは悩みを抱えてそうにはない。

 

 だから誰かに悩み相談するのは、自分が覚える忍法に関することしかないらしい。忍法として覚えるための何かしらのアイデアや、その忍法をうまく使うためにどうすればいいのかなどといった、新しい忍法に対するアドバイスしかあまり欲しがらないようだが、今回はどんな感じのを忍法として覚えたいと言うんだ?

 

 

「いや、忍法のことではないッス。一言で言えば、緊急事態なんス」

 

「緊急事態? いったいどうしたと言うんだ?」

 

 

 忍法の事じゃなかったんだな。じゃあ何事だと俺が問いかけたら、全臓は申し訳ないと思っているかのように苦い顔を浮かべてきた。何よ、躊躇ってないで早く言わんかい。言い淀んでると逆にめっちゃ気になってくるだろうが。

 

 

 

「お願いするッス‼︎ ヒーローショーのバイト、手伝ってほしいッス‼︎」

 

 

 

「………………へ?」

 

 

 えっ、バイトの手伝い? しかもヒーローショーの? 一体どういうことだってばよ? ってかお前バイトしてたんだな。

 

 全臓の話によれば、今日はこの公園で現代ファンタジー風のヒーロー番組『未来忍者・黒虹』のヒーローショーがあるらしい。全臓はその未来忍者─黒虹の着ぐるみ役でバイトすることになったそうな。

 

 その主人公が、うっかり崖から滑り落ちた先で行われた敵組織の怪人──妖獣化の儀式に巻き込まれたことで、何故か怪人化せず忍者の力を獲得。その力で組織を倒すという、子供にも大人にも人気の特撮番組らしい……なんじゃそのヒーローへの成り行きは。

 

 で、そのヒーローショーの悪役を演じる人が急に熱を出して出られなくなったんだとか。それで代わりとなる配役を何時間も掛けて走って探し回っていたってわけか……

 

 

「それで代わりの人を探していく内に時間が迫ってきてるから、一か八か俺に頼むことにしたってことか?」

 

「はい、そういうわけッス……すいません……」

 

 

 うわぁ、めっちゃ顔に影落としてるじゃん。何としてもヒーローショーを開きたいという焦りと、休日に急な頼み事をして申し訳ないという罪悪感を表に出してるよ。これ、お願い引き受けないと全臓が危なくないか? 色んな意味で。

 

 

「……まぁいいよ、手伝ってやる」

 

「えっ⁉︎ い、いいんスか⁉︎」

 

「ちょうどこの日は優子が杏里の親の店での初バイトの日だし、せっかくだから俺も(この世界での)初バイトをしようかなって。あ、バイト代を分けるかどうかなんてのは別にいいぜ。どうせ親が勝手に金を仕入れてくるから」

 

「お、おぉ……‼︎ かたじけないッス……‼︎」

 

 

 おいおい、気持ちは分かるけど涙を流すのやめてくれよ。なんか俺がパシリとかして泣かしてるように思えて、こっちにまで罪悪感が……

 

 しかし、この時俺はまだ知らなかった。着ぐるみを着ての仕事というものは、短時間の中でも地獄なのだということに。

 

 

 

 

 

 

 で、早速妖獣使いの骸骨・ワイトの着ぐるみを着ることになった俺なんですが……

 

 なんか視界、少し狭まってね? そして着ぐるみの中、まだ誰一人着てないのに蒸れてない⁉︎ なんで中にファンクーラーが入ってないの⁉︎ 意外と俺の体型とピッタリなせいなのか余計に暑く感じるし‼︎ そして胴体ら辺が思ったよりも重い‼︎何なのこの着ぐるみ⁉︎

 

 ヤバい。俺、早くもヒーローショーのバイト甘く見てたのかもしれない……

 

 

「妖獣使いワイトは、妖獣と呼ばれる怪人枠を操って人々に襲わせ、組織の発展のために食べ物や金目の物を奪い取るという悪行を行なっているッス。とは言っても、物陰とかでスタッフがカンペなどで動きの指示を出したり、アナウンスがワイトのセリフを勝手に喋ったりしてくれるので、平地くんはただカンペの指示に合うように適当に動くだけッス。だから先程のワイトの説明は気にしないでほしいッス」

 

 

 じゃあなんで説明したし。そう説明してる間にも俺、着ぐるみの暑さに体力蝕まれてるんだけど。せめてまだ着ぐるみ着てない時に俺はどうすれば良いのかを説明してくれない?

 

 しかも主役の黒虹の着ぐるみ着た状態でそれやるのやめてくれる? この暑い状態で後に必要ないと言う説明をしてもらわれると、なんか主人公に煽られてる気がして腹立つ。

 

 

「……にしても平地くん、着ぐるみ着てから一言も喋ってないッスね。もしかして、ワイトの役作りのために集中してるッスか? それは邪魔して悪かったッス。やり方を紙に書いて見せるだけでよかったッス」

 

 

 違うわ‼︎ ただ単にめっちゃ暑いからぺちゃくちゃ喋る暇ねーんだよ‼︎ 思ったよりも上手く『休憩させて』とかの意見が言えねーんだよ‼︎ 勝手な誤解生むな‼︎ そして察しろガキィ‼︎

 

 そんな言葉に出せない怒りを着ぐるみ越しから目で伝えていたら、黒虹ヒーローショー開始のアナウンスが聞こえた。えっ、もう始まるの⁉︎

 

 

「それじゃあ出番ッスよ平地くん。妖獣役の皆さんの後に出て来てほしいッス」

 

 

 クッ、もう引き受けてしまったのなら仕方ない。こうなったらさっさとワイト役としての登場場面を全部終わらせて、無事このヒーローショーが終わることを祈ろう。

 

 ……熱中症で倒れるなよ、俺。

 

 

 

 

 

 

 まずは先程全臓に指示されたように、妖獣役の皆さんの後から登場し、『人類の食糧と財産を我が組織のものにしてやる』 アピールするかのように適当に動き、黒虹役の全臓が出て妖獣の何体かが吹っ飛ばされた後に『一旦退いてやる』とか言って一回退場。

 

 この時の休憩時間がたったの二分。けどこの時間だけでペットボトルの水丸々一本飲み干しました。だってめっちゃ暑いもん。あっ、ここで着ぐるみの事で文句言えばよかったじゃん。やらかした。

 

 次は黒虹が敵の居場所を探すとかなんとか色々言ってから退場した後に登場。何故かクイズを出す妖獣とその問題に答える子供を見守る感じ。俺が昔前世で見たヒーローショーでも、怪人が子供達に何かしらクイズを出して景品を渡したっけか……

 

 また退場して今度の休憩時間は五分。今度は二本も水を飲み干したよマジで……。めっちゃ喉カラカラ。ここでも文句言うの忘れてたわ。『早く終わらせてこのショーを成功してさせてやる』とだけしか考えてなかった。

 

 しばらくしたらまた黒虹が登場し、妖獣が不意打ちするも全滅。というところで俺が三度登場し、一騎討ちに。激闘の末に黒虹が勝利。ここでとうとう俺の出番は終わった。

 

 後は黒虹との握手会だが、もう俺には関係ない。さっさと着替えてしばらく休憩して帰ろう。バイト代いらないとも言ったから疲れ取ってからさっさと帰ろう。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、もうめっちゃ疲れた……」

 

 

 結局押し付けられる形でバイト代を貰い、そのまま帰路へと向かおうとする俺氏。だって言葉の通りめっちゃ疲れたんだよ? ファンクーラー未搭載の体フィットした着ぐるみを長時間着てヒーローショーの仕事とか、地獄かよ……

 

 何だろう、優子はウインナーの試食販売してるから体の負担は一切ないのに、こっちは少しずつ暑くなっていく季節の中で、ファンクーラー無しのフィット着ぐるみを着てヒーローショーで動きまくりって……この差は一体何なんだよ……

 

 

「おっ、柱が少し錆びてる吊り橋が上空に。懐かしいなぁ」

 

 

 ふと、俺は誰も渡ってないジャングルジムの吊り橋が真上にあることに気づき、そんな言葉を呟きながら見上げた。前世では小学校にあったジャングルジムにも付いてたから、よく渡っていたものだ。こういう懐かしいという思いに浸れるから、正直この公園に来てよかった……

 

 ……ん? なんかギシギシって音が、何やらロープのところから……

 

 あっ、ロープ千切れた……って。

 

 

「ギャアアアアアアッ‼︎ た、大木が落ちてくるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ⁉︎」

 

 

 嘘だろオイィィィ⁉︎ そんなになるまで古くから使われてたよあの吊り橋ィィィ⁉︎ 幸い周りには俺以外人がいないとはいえ、アレに押しつぶされたら元も子もねェェェッ‼︎ ヤバい、急いでコウラン呼んで守ってもらわないと……

 

 

 

「危ない‼︎」

 

 

 

 刹那。他に人がいるはずがないのに誰かに左腕を思いっきり引っ張られた気がして、『下がろう』という気になれてなかったのに強制的に素早く後方に下げられた途端に、()()()()()が俺のところに落ちるはずの大木を貫き粉々に砕いた。

 

 た、助かった……なんかよく分からんが助かった……誰かが助けてくれたおかげで死なずに済んだ……。召喚とコウランへの指示が追いつくか正直めっちゃ不安だったから、()()()()()が大木破壊してくれてよかった……

 

 ……ん? ()()()()()? ちょっと待って、本当にその矢って蜜柑色なの? もしそれが本当だとしたら……いやいや、さすがにこの場面では……

 

 あっ、左腕掴んでた手を離してくれた。にしても中々の腕力だったな……。魔力で筋力を補ってるだろうとはいえ、千代田桃とはいい勝負になりそうだ(何のだよ)。

 

 

「よかった……。助けが少し遅れてたら一時はどうなるかと思ったわ。あ、大丈夫でしたか?」

 

「えっ。あ、はい。おかげで命拾いしました。本当にありが……」

 

 

 刹那二回目。つーか寧ろ戦慄が走った気がする。何故なら、俺を助けてくれた人の姿を見て思わず硬直したからだ。何故なら、俺はその人を()()()()()()()()()()()()()

 

 肩近くまでの長さで蜜柑色の髪。お団子ヘアの部分には蜜柑の葉に似た髪留め。そしてオレンジ色を基調とした華やかな魔法少女の服装……

 

 うん、オレンジ色めっちゃ多いからこれは確信でき……いや、まだ本人かどうか分からんし、これは、うん。一応聞いてみた方がいいな。

 

 

「………………あの、すみません。どちら様ですか……?」

 

「え? んー、そうですね……。強いて言うなら……」

 

 

 頼む。彼女はただのコスプレイヤーであって、さっきの矢はせめて他の魔法少女が遠くから使用した能力であってくれ。彼女が使った能力であらんでくれ……‼︎

 

 

 

「通りすがりの魔法少女、ってところかしら」

 

 

 はい確定。俺、原作での初登場回よりも先に、陽夏木ミカンと出会っちまったよ。

 

 

 

 マジかよ。なんでこんな公園に陽夏木ミカンがいるんだよ。そしてなんで俺が優子達よりも先に彼女に会うことになるんだよ。いや、変な真似しなければ後の原作に影響しないだろうけどさ、そうならないか不安だ……

 

 と、とりあえずなんで彼女がこんなところにいるのか聞いてみるとしよう……

 

 

「あの、何故魔法少女がこの公園に? 何か異変とかでも?」

 

「ん? あぁ、ただの観光ですよ。今日はやる事がなかったものだから、この町を巡っておこうかなって」

 

 

 あ、原作初登場の時とは逆の目的で来たのか。やる事がないって、原作でも転校するまでの間も暇だとか言ってたよな? 随分先の話だけど。

 

 

「にしてもよかったわぁ、この町を巡ろうと決めておいて。もし私がここら辺に来てなかったら、きっと貴方は大変なことになってたかも……」

 

「あ、多分『かも』じゃないですね。タイミング云々が違ってたらマジ大変なことになってたと思います俺」

 

「あー……ですよね」

 

 

 なんか陽夏木ミカンがここに来てなかったら助かる可能性が低かったかもとか言ってきたので、とりあえず俺は『アンタが来なけりゃ絶対酷い目に遭ってた』と言うことに。別にとやかく言う必要はないんだけれども、『お前が来てくれたおかげで助かったんだ』ってのを伝えたくて……

 

 正直めっちゃ危なかったもん。急に降ってくる大木への対策を思いつけても、それを行う前に間に合わなかったら元も子もなかったもん。下手したら死んじゃうかもしれないし……もう正直陽夏木ミカンには感謝したい気分だよ。

 

 

「それでも助けに来れてよかったと思ってます。()()()()になったばかりなのに大怪我なんてしたら困りますものね」

 

「えぇ、全くもってその通りで……ん? ()()()()?」

 

 

 は? オイ、ちょっと待て。なんで俺のことを新社会人だと思い込んでんだよ。俺まだ義務教育完了してまだ二ヶ月しか経ってないんだぞ? まだ会社とかで働ける感じじゃないんだぞ? 何勘違いして……

 

 あ、よく考えたら俺達まだ出会ってばっかだし、身長もなんか普通の社会人っぽい高さになってる気がする……個人的に。

 

 

「ア、アラ? 間違えてました? えぇっと、どっかの会社二年目以降か、大学生の方ですか……?」

 

 

 とりあえず、この子は俺を年上だと思い込んでるな。さっきからずっと敬語使ってきてるし。俺も今敬語だけど。さっさと誤解を解くか。お互いに敬語を使うのもアレだし。

 

 

「言っとくけど俺……高一だぞ。だからお互い敬語使うのやめね?」

 

「………………えっ⁉︎ 同級生⁉︎」

 

 

 オイ、瞳孔開いてたぞ。そんなに驚きだったの? 千代田桃より四・五センチくらいデカいだけなのに、それだけで年上扱いするってどういう見聞してんの君?

 

 

「そ、そうだったのね……。出掛けてる時とかでよく貴方ぐらいの身長の会社員や店員を見かけてたから、勝手に貴方も二十歳超えかと……。後、顔がなんか普通の高校生よりも大人びてた気がしたのもあって……」

 

 

 あぁ……確かに百七十センチ前後の大人ってよく見かける気がする。それと顔か。なんか顔見て『大人びてる』とか言われるの久しぶりだな。時が経つにつれてもう言われることはないとは思ってたけどなー。

 

 

「顔の事ならもう慣れたよ。それに見た目等での他人の捉え方は人それぞれだし。ただ、それだけで『この人はこんなんだから危ない』という考えはやめてほしいなってのが個人的意見かな。悪い例が最近の魔法少女による魔族の捉え方だな」

 

「あぁ……それは同意見ね。けど私ももうそんな失敗しないようにするわ」

 

「おう。ま、俺がどう思われたのであれ、アンタに助けられたことに変わりない。だから改めて礼を言わせてくれ、ありがとう」

 

「いや、そんな大したことしてないのだけど……そう言ってくれるのなら私も嬉しいわ。こちらこそありがとう」

 

 

 よし。なんか助けてくれた人の前で偉そうな感じになっちゃった気がするけど、とりあえずお礼は言えた。俺の年齢等による誤解は解けた。これで一件落着、かな?

 

 

「それじゃ、俺そろそろ帰るわ。バイトの手伝いでマジ疲れたから、さっさとシャワー浴びてとっとと昼寝したい」

 

「そ、そう……それじゃあお大事に……」

 

 

 こうして俺はミカンと別れを告げ、そのまま帰路へと全速前進することに。「全速前進DA☆」バイトの手伝いで無茶クソ暑い思いするわ、落ちてくる大木に巻き込まれそうになるわで、どっと疲れたもん。早くシャワー浴びて……

 

 ん? ちょっと待てよ? なんか俺の左腕、柑橘類のめっちゃいい匂いが染みついている気がするのだけど。あ、これきっと陽夏木ミカンが柑橘類の香水とかボディソープとか使ってたのかも。

 

 ………………………………

 

 

 

 コレ、優子ニバレタラ『コノ浮気者ガ』トイウ誤解デナイフデ刺サレルパターン?

 

 

 

 ああああああああああああ‼︎ ヤバいってこれェ‼︎ この匂いが俺の肌に染み付く前にささっと帰って、入念にゴシゴシと俺が使うミントの香りのボディソープに上乗せせねばァァァァァァッ‼︎ でないと優子が勘違いして完全なるヤンデレモードとなって止まらず暴走案件になるゥゥゥゥゥゥッ‼︎

 

 急げェェェェェェッ‼︎ 早く家に帰るんだァァァァァァッ‼︎ そしてこの匂いを俺が使うボディソープの香りにチェンジせよォォォォォォッ‼︎

 

 こうして俺は五百メートル離れたぱんだ荘まで全力ダッシュし、僅か一・二分で到着。そしてすぐさまシャワーで全力で柑橘類の香りを落としていく。そしてその時のとバイトの疲れが重なり、そのまま居間に転がり寝落ちしました。

 

 ちなみに家政婦枠のメェール君は自分のいた世界で休暇中です。もうさすがにね、毎日現界させるわけにはいかないもの……

 

 

 

 

 

 

「ハァ、結局お土産のウインナーもらえなかった……。代わりにもらったヨーグルトも美味しかったですけど」

 

 

 私シャドウミストレス優子は今、杏里ちゃんの実家の精肉店でのバイトから帰ってきたところです。何故バイトをすることになったのかと言うと、この前の制服一式に続いて先日の健康ランド代で桃への借りがまた増えたので、それを返すために杏里ちゃんからの誘いに乗ったのです。

 

 それで週末に一日だけバイトするという事をおかーさんに伝えたら、呪いのせいで稼ぎすぎたマネーは運命レベルで逃げるから気をつけてと言われました。大半はおかーさんのドジで逃げてたみたいですけど。

 

 そんなわけで、稼ぎすぎと給料袋を取る鳥には気をつけながらバイトすることに。白哉さんと接せる時間が減るのは正直惜しかったけど、今日頑張ったらウインナー一袋待って帰っていいと言われた上、とても良い経験になれたので結果オーライと思うようになりました。

 

 前途でも一つ述べたように、いい事ばかりでもありませんでした。まさかの買い物に来てた桃と鉢合わせ。バイトする理由を言ったら『正規ルートで借金を返そうとするなんて偉い』と言われてなんかスケールの小さい魔族だと思われた気がする。

 

 しかも私がうっかり落としそうになったたこさん(ウインナー)全てを爪楊枝で刺して新しい皿に回収するという、繊細かつ素早い動きで現役時代に見えてこなかったゾーンとやらが見えて強くなれたと言う桃。これで前より更に倒しづらくなった……

 

 この後桃は大量にウインナーを買ってくれたおかげで、売れ行きが良かったと褒められたのですが、さっきも言った通り、そのせいでウインナー無くなってもらえませんでした……

 

 ウインナーもらったらそれを使った料理を作って、白哉さんにも振る舞いたいと思ってたのですが、それも叶わず……。せっかく磨きを掛けた料理の腕前を白哉さんに披露するチャンスがー‼︎ これで勝ったと思うなよー‼︎

 

 ……いや、もう過ぎたことをぐちぐち言わないでおこう。バイト代もらって桃への借りを返す時が来たのだし、それこそ結果オーライとしましょう。とりあえず、今日は早めにお風呂に入って疲れを癒さないと……

 

 

「白哉さん、お風呂借りに来ましたー。……アレ、返事がない? 寝てるのかな……あっ、鍵開いてる。入りますね」

 

 

 玄関のドアを開錠させるなんて不用心すぎません? まぁこの時間帯なら、私がお風呂を借りに来るだろうと考えてあらかじめ開けているのでしょうけど。

 

 とりあえず部屋に入ってみれば、居間で寝転がっている白哉さんの姿が。スゥスゥと寝息を立てている。やっぱり寝ているんだ。

 

 それにしても……

 

 

「……フフッ。寝顔、初めて見ました。可愛いですね」

 

 

 いつもは大人びて何処かの美少年アイドルみたいなイケメン顔をした白哉さんだけど、寝顔となるとこんなにも可愛さを出すなんて、なんだか他の人に見せるのが勿体無いですね。もし私が携帯持ってたら、連写しまくって印刷しまくって、部屋中に飾ってみたい……

 

 って、ダメダメダメダメダメダメダメダメ‼︎ また愛が重くなってる‼︎ 部屋の周りに好きな人の写真を飾りまくるとか、どんなヤベー奴なんですかホント‼︎ いくら白哉さんの事が好きだからって、そんなことしちゃダメだぞシャドウミストレス……

 

 

 

 アレ? なんか、白哉さんから香水の匂いが……

 

 

 

 え? 白哉さん、香水なんて付ける人じゃないですよね? 女の子じゃあるまいし、そんなことしなくてもいい匂い出してくれそうですし……

 

 けど、この鼻に透き通って香る良い匂いは明らかに香水だ。しかも蜜柑なのかレモンなのか分からないけどスッキリとした匂いだ。ここまでの強い匂いは、桃が白哉さんの腕に一瞬触った時でも付かなかったのに……

 

 まさか、今日で白哉さんにすごく絡んできた女の人の匂いが……⁉︎

 

 ………………違う、そんなはずがない。白哉さんを狙っている人なんていないはず。寧ろいてほしくない。そんなはずはない。嘘だと言ってほしい。

 

 嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って嘘だと言って……

 

 って、アレ? とりあえず落ち着けシャドウミストレス優子。もう一度白哉さんに付いてる匂いをよく嗅いでみて。

 

 香水の匂い、ほんのちょっとしかしてない。これって、偶々香水の匂いが強い人とぶつかって、その時に偶々付いた匂い、なのでしょうか……?

 

 しかももっと嗅いでみたら白哉さんが入浴時によく使ってたというミントのボディソープの香りの方が多い気がする……

 

 これってもしや、私の早とちり? 先程白哉さんが自身に付いた香水の匂いを洗い落とすのに必死だったことに気づかず、残ってしまった微量で被害妄想を強くしてしまったに過ぎなかった……?

 

 ………………今日はもう厄日です。お土産のウインナーもらえなかったし、微量の香水の匂いで大きな勘違いをするし、もう穴があったら入りたい……

 

 でも、こんな私が暴走しないようにと、白哉さんは私に気を遣って香水の匂いを落とそうとしていた。私を暴走させまいと一人で頑張っていた。頑張る方向性がおかしいですけども。

 

 嗚呼、こんなにも私なんかのために無茶をしてくれるなんて、白哉さんはどこまでお人好しな人なんでしょうか。けど、そんな彼だからこそ、私は彼の事を……

 

 

「白哉さん………………んむっ……んむっ?」

 

 

 この時、私は自分が今何をしていたのか、自分の顔に伝わる感覚を通して気づいた。

 

 

 

 無意識に、自分の唇と白哉さんの唇を重ね合わせていた。しかも寝ているがために無防備となっている彼に対して。

 

 

 

 ………………………………って。

 

 

「めぴゃああああああああああああ⁉︎」

 

 

 わ、わ、わわわわわわわわわわわわ、わ、私ってば、ね、寝込み中の人に対してなんてことをォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ⁉ あぁいや、キ、キ、キ、キスができそうなくらい、びゃ、白哉さんは隙だらけになってるなーとは思ってはいたけど、ほ、本気でする気はなかったんですよォッ!!

 

 あーもう最悪!! ライバル強くしてしまうし、ウインナーもらえなかったし、大いなる勘違いするし、無意識に寝込み襲ってキスしちゃうし、今日の私は本当にどうかしてるゥ!!

 

 

「あだっ⁉︎ タ、タンスに膝ぶつけた……」

 

 

 気がつけば私はその場で横になって、タンスの角に膝をぶつけて悶絶していた。どうやら私は自分がした事に対する羞恥心で堪えたのか、赤面してた顔を押さえながらその場でゴロゴロと転がりまくっていたようです。ぶ、ぶつけたところが足の指じゃなくてよかったけど、結構痛い……

 

 でも、どうしましょう……。白哉さんが私のキ、キスで起きてる可能性があるとは思えないけど、どちらにせよ、この後どんな顔で白哉さんを見ればいいというのですか……

 

 だって、びゃ、白哉さんは寝込み中の時にキスされたのですよ? 寝てる時の感覚さえ覚えていたら、私に何をされていたのかを覚えていてくれるでしょうけど、そうでもない場合は『気がつけば無意識中の私に純潔を奪われた』という事実を知らぬままになるんですよ? この事を言っても信じてもらえるか、信じてもらっても幻滅したりしたりしてしまわないかとか、そんな恐怖をも感じてしまいます……

 

 どうしよう……私、取り返しのつかない上にかなり恥ずかしいことをしてしまいました……愛が重いってレベルじゃないですよこれ……

 

 

「んっ……? ゆ、優子? どうしたそんなところで蹲って?」

 

「ぬぴょォォォォォォッ⁉︎」

 

 

 お、思わず可笑しな叫び声を出してしまった……

 

 びゃ、白哉さんが起きてしまった……‼︎ 私が大きい声出したりその場で転がりまくったりしてしまったから、それらの音がうるさくて起きてしまったんだ……‼︎

 

 け、けど、まだ私が彼にキスしてしまったこと、バレてない……ですよね? 白哉さんもキョトンとした顔をしてるってことは、きっとそういうことですよね⁉︎

 

 

「ど、どうした? 何かあったのか?」

 

「べ、べ、別に、大したことじゃないですよ⁉︎ そ、それじゃあ私、お、お風呂借りておきますね‼︎」

 

「お、おう……?」

 

 

 や、やっぱり変な反応しちゃったから怪しまれてる……で、でもキスした事がバレてないからまだよし……ですよね?

 

 と、とにかく‼︎ 白哉さんにこの事を詮索される前にさっさとお風呂に入って、今の出来事は忘れておきましょう‼︎ うん、そうした方がいい‼︎ そうと決まれば早くバスルームに向かわないと‼︎

 

 

 

 結局寝るまでに至っても忘れることは出来ませんでした。キスしてる瞬間が鮮明に記憶されているせいで、他の事をして紛らわそうとしても無意味でした……

 

 あうぅ……。明日は白哉さんの顔、ちゃんと見れるかな……

 

 

 

 

 

 

 昼寝していたから気付かなかったけど、優子いつの間にか部屋に入ってきてたんだな。つーか優子達がお風呂借りに来るのって大体夜八時以降だから、俺三時間程寝てたんだな。俺、今日そんなに疲れてたのか……

 

 で、起きた時には優子が何故かタンスの横で蹲ってたんだけど、一体どうしたというんだ? 陽夏木ミカンが使ってた香水やシャンプーの香りがまだ俺の体に付いていたから、という反応ではなさそうだから、誤解はしてない……よな?

 

 優子がどう思っているのかの真相は明らかにはなってないけど、とりあえずヤベー様子にはなって無さそうだから良しとしよう。これ以上深く考えても地雷を踏みそうだしな。

 

 ………………ん? なんか、唇に甘いものを食べたような感覚がしたけど、俺、今日スイーツとか食べてない……よな? 着ぐるみ着た影響でも無さそうだけど、何なんだ……?

 

 




気づけ白哉君! 君は今、魔族の明るい未来を担う責任を持たされてるぞ!(ナレーション風)

で、ミカンm……ゲフンゲフンッ、ミカンさんを何故原作初登場回よりも先に出したのかというと、単なる思い付きです。白哉君を無理にシャミ子のアルバイト回に入れるのもなぁと思い、急遽作ったオリジナル回でどうせ原作キャラ出すなら彼女出そう。ちょうどそれで繋がりそうな原作回もあるし!! ってことで入れました。いい加減やったなオイ(自分で言うなし)。

ちなみに身長について触れられたところがありますが、白哉君の身長は170cmです。危機管理フォーム改・マーク2・セカンド・弐號機でも、同じ身長になるかギリギリ届かないかって感じです。シャミ子の身長140〜145cmに+25cmのヒール履いてますもの、ギリギリラインなのも仕方ないね。
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