偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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この人を出してもよかったのかな(性格的に)……ってことで初投稿です。

また別作品のキャラが出ますが……今回のは本気で本編に採用します‼︎

誰が出るかって? 本編見ればわかるし、分かる人は冒頭からというかサブタイトルでもう察せますよ。
 


謎の悪霊との闘いで絶対絶命 そんな中で現れる、救世主・葬送の魔法使い

 

 真上から昇っている太陽が優しく照らしつつも、肌触りの柔らかな空気が流れ入ってきている、暖冬の季節。光の一族と闇の一族──魔族と魔法少女が共存しているこの多摩町の河川敷に、一人の人物が足を踏み入れた。

 

 

「……うん、懐かしいね。ここに来るのは十年ぶりかな」

 

 

 ツインテールに結った長い銀髪を風に靡かせ、その人物──女性は河川敷の流れる川を見ながら呟いた。

 

 見た目は小柄な少女に近く見えるが、多摩町に来たのが十年前だと呟いているのを聞くに、身長が少し小さいだけの二十代女性の可能性も考えられるだろう。

 

 そんな彼女の両隣には、二人の男女が肩を並べていた。一人は女性のおでこの位置と同じ身長を持つ赤髪セミロングの少女、もう一人は少女の鼻の位置と同じ身長を持つ紫色の髪の少年だった。その内の少年の方が女性に問いかける。

 

 

「お言葉ですが───様。この町にはとある噂があるとかを事前にお聞きしましたが、本当に───様のおっしゃっていた通りの町なのでしょうか?」

 

「疑い深いね───は。まぁ無理もないか、あっちの方の──の特質をも教えたのは実際にたくさん会ったことのある私だから。種族……生まれ方もかな? それらは違うけど、どっちも実際に会ったことがないからそりゃあ私の言ってたことしか知らないよね」

 

 

 少年が礼儀正しい口調で問いかけ、女性が苦笑いを浮かべながらそう答える。よくできた弟子だけど堅すぎるのがやはり難点かな、そんな苦悩を感じながらも。どうやらこの二人は何かしらの師弟関係のようだ。

 

 そんな中、少女が少年のところへと寄り添いバシッと背中を叩いた。

 

 

「もう!! ───は相変わらず堅いし真面目過ぎるよ!! ───様がそうだと言ったらその言葉を信じてあげようよ!! 私と違って弟子になれてるんだからさ!!」

 

「……姉さんは相変わらずお気楽だね」

 

「ハァ……ま、お気楽すぎるのもどうかと思うし、私としては自分で判断した方がいいところがたくさんあるからそのままでいてほしいけどね」

 

 

 師の言葉と時の流れに身を任せるべきだと語る少女に、少年は額に手を抑えて悩ましいという心境を見せ、女性は少女の意見に同意しながらも時には自己判断するのも大切であることを語る。この流れを見るに、女性は少女の事でも何かしら悩まされているようだ。

 

 

「まぁ……───様の言う通り、僕らはどっちの方にも実際に会ったことがないから、会って話してからどうするべきか考えるけどね」

 

「うんうん、そうした方がいいよ‼︎ 早く誰かと会ってみたいなー」

 

「僕としては──は信用ならないと思うから、会うのは遅くていいんだけど」

 

 

 これから会うのだという存在に対する不安を漏らす少年に、その様子を全く見せない姉らしき少女。性格も思想も異なるものの、魂胆は同等であるようだ。

 

 ここで女性がチラリと少年の顔を覗く。

 

 彼は少女のお気楽な性格と今後出会うだろう存在との接し方に対する不安が重なっているためか、不安気な様子が表情から見て取れる程に伝わっていた。

 

 その反面、表情とは裏腹に顔色が明るいことから、何かに対する期待の眼差しを込めていると思われる。

 

 

「……やっぱりこっちは先祖の方の弟子そっくりだね」

 

 

 その表情を見た女性は、ふとそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 同日、仙寿神社にて。白哉・シャミ子・桃・ミカン・ウガルル・柘榴の六人は拓海に呼ばれてこの場に集まっていた。

 

 拓海はウガルルは呼ぶ気がなかったとのことだが、彼女の『誰かの役に立ちたい』という強い意思に根負けし、ミカンか自分と行動するという条件での同行を許可したそうだ。

 

 何故戦闘経験も実力もある白哉達が呼ばれたのか、それには理由があった。

 

 

「連続殺人の恐れのある幽霊の除霊、ですか? 何ですかその物騒すぎる案件は……」

 

「ってか恐れのあるって……実際にはまだ殺人とかしてないのか?」

 

 

 それが、拓海の陰陽師としての仕事の同担の願いだった。白哉達は魔力を用いた闘い方ができ、その魔力次第で除霊を可能にできるのではないかと拓海は考えている模様。そして何より、頼れる戦力が必要だという判断だろう。

 

 だが、今回は除霊の協力を求める最もな理由が、拓海にはあるようだ。

 

 

「実はウチの神社の周辺には、御霊魂と呼ばれる監視カメラみたいな火の玉を徘徊させているんだ。怨霊とかが出現してないかを調査し、迷った人達を出口に案内したり見つけたら俺達陰陽師に報告して除霊へと繋げたりするために、ね」

 

「そんな便利なのをウロウロさせているんだね。で、そのごりょうだま? が一体どうかしたの?」

 

 

 桃が仙寿家が生み出したという御霊魂に対して関心の言葉を述べ、それに何か問題でも起きたのかと問いかける。拓海はそれを聞いて一時的に顔に影を落としたものの、腹を括ったのか真剣な眼差しで答える。

 

 

「その御霊魂は……三体の怨霊に消されたんだ。それも五十もあったのが、昨日までに全部」

 

『えっ?』

 

 

 予想以上の数の御霊魂が生成されており、それらがたった一日に起きたことではないとはいえ、全て怨霊によって破壊されてしまったらしい。

 

 何故御霊魂が悪霊によって次々と消されていったのか。白哉達が疑問に感じると、拓海が考察しながらの要因を語る。

 

 

「御霊魂は偶然見かけた人になるべく『人魂が浮いている』と警戒されないようにと、青く透明な人間の姿を模しているように見せながら行動しているんだ。多分、それが要因だろうね……あの怨霊達は御霊魂を人だと判断して、次から次へと消していったんだと思う。もしもその悪霊が人と遭遇したとすれば……世間からは不可思議な殺人事件が起きるという噂が広まってしまう」

 

「それを防ぐために俺達に協力を求めた……ということか?」

 

「あぁ、そういうことだ」

 

 

 一般人を怨霊の被害に遭わせないために大量に生み出された存在。それを数を減らされる時点で、人々に少なくとも危害が起きてしまう。それが良くないと判断してか、拓海は白哉達に協力を求めたようだ。

 

 

「そ、それなら両親にも協力を求めた方がいいじゃないのかしら? あ、もしかしてそれだと私達に協力を求められないから……だとか?」

 

「いや、昨日から除霊依頼の出張でいないだけさ。待とうにしてもその間に人々への被害が出てしまうし。でも一昨日までにも起きた出来事なんだから対策を用意するとかしなよ……」

 

「そ、そう……」

 

 

 同じ陰陽師である両親が同行しない理由を明かし、今回の除霊の件に対して触れる素振りを見せてくれなかったことに不満の愚痴を溢す拓海。

 

 眉を顰めている彼の表情を見て、ミカンは思わず苦笑を浮かべた。以前からあった悪霊の案件の対処がないのは確かに陰陽師としてはどうかと思うだろう。

 

 

「だから俺達だけデ止めなイトいけなイ……ってことニなるのカ。これハ俺達モ頑張らなイとナ」

 

「あぁ。……まぁ本当は、ウガルルちゃんだけに飽き足らず、みんな巻き込んでしまうことになるって事実を考えると、申し訳なく思えてくるけどね……」

 

 

 ウガルルの理解した言葉に対して微笑むも、友人を巻き込まければいかなくなってしまったことを悔やむ拓海。

 

 本来なら自分一人の力で悪霊を祓うつもりではいたものの、気を抜いてはならないと悟っており、より確実に除霊を成功させるには協力を惜しまずにはいられない……と苦渋の判断により、白哉達の手を借りることにしたようだ。

 

 謝罪の念を持った表情をしている拓海に気づき、シャミ子が彼の肩に手を置きながら口を開いた。

 

 

「そう気まずくなってるような感じにならないでください。私達が何かとんでもないことに巻き込まれることなんて、これが初めてってわけじゃないですから。それに……友達が大変な事態に遭ってるのを放っておける程、私達は薄情じゃないですよ。………………そうですよね? 皆さん」

 

 

 これ、みんなの気持ちも一緒に代弁してもよかったのだろうか。そんな不安が突然過ってきたのか、シャミ子はバツの悪そうな表情で白哉達に同意かどうかを問いかける。せっかくいい台詞を語ったのに台無しである。

 

 そんなシャミ子を見て、桃も思わず苦笑を浮かべた。そりゃそうだ。

 

 

「なんで自信無さげなの……? まぁ、そういうわけだよ。私達も困った時はお互い様って感じに助け助けられ合っている。だからこういったことにもみんなで解決していくつもりだよ」

 

「……まぁどちらにせよ、悪霊による殺人事件になる可能性は、考慮できないしね。それを聞いた時点で、僕らは勝手に君に協力してたと思う」

 

 

 あ、これ前半言葉選びを間違えたかな。桃のフォローしている言葉に続いて語った柘榴は、拓海にかけた言葉に対して疑念を持った。これでも事実を語ってはいたのだが。

 

 

「まぁ、そもそも貴方一人だけにそんな危なっかしいことをさせられるわけにはいかないわ。貴方の身に何かあったら、私達がどう思うのか自分でも分からないしね」

 

「んが‼︎ 拓海に大怪我したリ死んでしまったラ俺達泣きそウだしナ‼︎」

 

「死ぬとか言うのやめなさい。……ま、そういうことだ。申し訳なく思うな、寧ろもっと俺達を頼ってくれ。お前が前にも言ったように、俺達も誰かが後悔するような結末は嫌だからな」

 

「みんな……」

 

 

 さらにミカンも、ウガルルも、白哉も、友人や人々の平和のためなら命懸けの事件解決にも協力を惜しまないようだ。困った時はお互い様。解決しなければ取り返しのつかないことが起きる可能性があるのなら尚更。そんな真剣な考えと志しを、彼等は持っていた。

 

 そんな協力的で危機にも恐れない友人達に、拓海は思わず涙を流した。命を決することにも協力的な彼等の勇敢さと優しさに、改めて共感したからだ。

 

 

「ありがとう……でも、無理はしないでくれ。俺もみんなに何かあったら嫌だからね」

 

「その台詞、もう一度そのままバットで打ち返すからな」

 

「あぁ、その辺は俺も分かってるよ」

 

 

 

 

 

 

『──様、ご報告があります。何者かが俺達の存在に気づき、排除しようと目論んでいる模様です』

 

『あの時の闘いで派手にやりすぎちゃったみたい……どうする? ──様』

 

『我々とあのお方が復活する目処の邪魔をされては、元も子もないな……この身体の性質上、動くとすればやはり今夜。その時の内に、全員殺さなければならん』

 

 

 

 

 

 

 その夜。白哉達七人は再び仙寿神社に集合した。その理由は勿論、御霊魂を全て破壊したという悪霊の除霊のためである。

 

 ちなみに拓海は既に狩衣を着ている状態である。陰陽師としての役目を果たすための事前の気合入れてのためだろうか。

 

 

「みんなへの被害をなるべく最小限に抑えるため、除霊は陽動作戦で行うことにした。蓮子、後の説明を頼む」

 

「任せてください。───御霊魂よ、今ここに現れよ」

 

 

 蓮子が陰陽札を取り出し、地面に翳す。するとどうだろうか。陰陽札が青く光ったのと同時に魔法陣らしきものが浮かび上がり、そこから三つの青く透明な人魂が現れたのだ。

 

 それらが蓮子の元へと移動したところで、彼が今回の作戦について説明に入る。

 

 

「この日のために、僕が霊術によって急ピッチ短時間で作った、三つの御霊魂です。彼等はこの後、これらの霊力を用いて青く透明な人間の形となって自律し、神社とその森を徘徊して周ります。これらを一体ずつ出して悪霊にバレないように尾行し、それらが出た途端に一気に畳み掛ける……これを三体全員除霊するまで繰り返します」

 

「なるほど。常に全員でくっついて動いて、御霊魂を囮にして一人ずつやっつけていけば、時間は掛かるけど分散して行動するよりもリスクは減る……ってことだな?」

 

「そういうことです」

 

 

 悪霊達が破壊していった御霊魂を敢えて一個ずつ呼び出し、それに気づいた悪霊に一斉攻撃を仕掛ける……という作戦に出るようだ。全員を負担を掛けにくくしながらより除霊しやすくなるようにと、拓海が提案したようだ。

 

 説明を終えた蓮子は先程呼び出した御霊魂の内の二つをしまい込み、残った一つに対して自分の前に出るようにとジェスチャーする。するとその御霊魂は人型を作り出し、彼等の前に立った。

 

 

「おぉ、本当に人型の透明な何かに見えるようになった……見せれるようにしているというか、最早実際にそれに変形してるように見えるのは俺の気のせいか?」

 

「見えるようにしていると言ってましたし、人型がいるように見せようとするために変形しているのではないのでしょうか……?」

 

 

 最早見えるようにしているとは言えないのではないか? そんな些細な疑問を感じ始めた白哉とシャミ子だが、そんなことはどうでもいいと言っているかのように拓海が声を掛ける。

 

 

「御霊魂が動いた!! 俺達も行くよ!!」

 

「「あっはい」」

 

 

 気がつけばその言葉の通り、御霊魂は既に全員の前に出て歩を進めていた。拓海にその事を指摘された桃達はその後を尾行し、白哉とシャミ子もその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 森の大木や茂みに音を立てないように、御霊魂を尾行し悪霊が来るのを待ち構える白哉達一行。しかし、数分もの間も歩き続けてはいるものの、悪霊らしきものの出現どころか変化すらない。ただ御霊魂の尾行をしているだけなのが現状となっている。

 

 

「ど、どうすんだ……? いつまで経っても悪霊らしき奴が出て来ないぞ? もしかして、今日はもう出て来ないんじゃ……」

 

「いや、それはないはずだ。あんなに破壊しておいて勝手に成仏したとの言い難いし、もしも奴らが殺人鬼なら昨日までで満足するとは思えない……」

 

 

 この日は収穫ゼロではないかという意見を否定し、拓海は悪霊が出現することに全てを賭けているかのような真剣な鋭い瞳を見せる。町を傷つける者への怒りや町を守りたいという意思によるものだろうか。

 

 

 

 刹那。すぐ近くで機械の切り裂かれる音が聞こえた。

 

 

 

 ふと白哉達が前方を向けば、そこにはサイコロステーキのように無惨に身体を切断されている人型の御霊魂が。切断された身体の隙間からは、キラリと光る透明な糸が見える。

 

 

「これは……ミカン‼︎ 御霊魂の五メートル先の、左側の大木の背後を狙って‼︎」

 

「背後ね、了解‼︎ そこそこ離れてて助かったわ‼︎」

 

 

 御霊魂を切断したであろう糸の使い手の場所に気づいた桃、すぐさまミカンにその位置を伝え、ミカンは魔法少女の姿になって魔法の矢を放つ。距離が近いと何故か緊張して撃ちづらいという彼女だが、今回はある程度距離が離れていたためその緊張はないようだ。

 

 

 

 しかし、タイミング・スピード・パワー共に良きものであったその魔法の矢は、突如として発生した、青い瘴気らしきもので生成された無機物の壁によって進行を妨げられてしまった。

 

 それも、白哉達にとって見覚えのあるであろう謎のお札から発生されたものとして。

 

 

 

「塞がれた⁉︎」

 

「しかもあのお札、見たことがあるような……⁉︎」

 

 

 一体何が起きたのかと動揺を隠せずにいる一同。その中でも一番にその事で驚いていたのが、そのお札の所持者である拓海と蓮子であった。

 

 

「仙寿家の陰陽札⁉︎ 何故あそこで発動しているんだ⁉︎」

 

「盗まれた、とも言えない……だけど、だけど何故……⁉︎」

 

 

 仙寿家しか持たないはずの、仙寿家独自で作り上げられた陰陽札。それを仙寿家ではない者が、ましてや……

 

 

「何故、霊力に弱いはずの悪霊が持っているんだ……⁉︎」

 

 

 幽霊が弱体化するという霊力を施しているという陰陽札。それを赤い外膜に纏われているかのような濃い黒色の、ゴスロリ風の衣装を纏ったツインテールの外観の少女のような姿を模した何か──悪霊を所持していることに、拓海は動揺を隠せずにいた。

 

 

「……下がってて。ダイアモンドシュート」

 

 

 そんな中、戦闘フォームの姿になった柘榴がギャップマジカルチェーンアレイを振り回しながら魔力を構成し、それで出来上がったチェーンアレイよりも巨大な鉱石を勢いよく投げつけた。

 

 しかし、それは少女の悪霊に届く前に、貴族らしきワイシャツを着込んだ左目を隠しているかのようなショートヘアーをしたかのような髪型の少年の悪霊が姿を現す。そして先程御霊魂を切断した糸を操り、微塵にも複数に分断されてしまった。鉱石よりも硬い糸のようだ。

 

 だが、それはあくまで陽動だった。

 

 

「……二人とも隙ができた。桃、今のうちに」

 

「わかってる‼︎」

 

 

 柘榴の合図と共に、既にダークネスピーチへと変身していた桃が、素早く二人の悪霊の背後へと回り込んでいた。魔力を表向きに全く出さず移動していたためか、二人の悪霊はどちらも桃の存在に気づくことがなかったようだ。

 

 背後に回り込んだのと同時に、ダークネスピーチ専用の武器である真っ黒な刀を呼び出し、悪霊を横一閃に斬り裂く態勢を取る。この一太刀で一気に除霊・成仏させるつもりだ。

 

 

「もらった……ッ⁉︎」

 

 

 だが、その一太刀を振るうことは出来なかった。その右側の真横から何かがとてつもない速さで襲い掛かり、桃に攻撃を仕掛けてきた。その殺気と()()に気づいた桃はその方向へと体の向きを変え、刀を盾代わりにしてそれを防いだ。

 

 桃の視界に見えた、襲い掛かってきた攻撃。それは……

 

 

「今のって……血⁉︎ にしては、物体みたいに重い……‼︎」

 

 

 大量の赤い液体──血液だった。だが桃の言葉の通り、その血液は触れた途端に物体のように……否、物体そのものとしての感触が伝わってきていた。それも細く硬くもゴムのように強い刺激を与えているかのような感触、正しく鞭のような攻撃であった。

 

 

『ほう……二人に全く気づかれずに素早く背後に回り込めるだけでなく、この私の陰からの攻撃に気づくことができるとはな』

 

 

 血液が飛び出してきた方向からゆっくりと歩を進めながら姿を現したのは、前方の開いたコートを羽織り首にスカーフを付けた、首辺りまで髪を伸ばしている端正な顔立ちをした男性の悪霊。

 

 悪霊が姿を現すと同時に、桃に襲い掛かってきた血液は全てその悪霊の体内に引っ込むように入っていった。どうやらあの血液は男性の悪霊が魔法によるもので操作したものだろう。

 

 男性の悪霊はそのまま二人の悪霊の間に入り、二人の前に立つ。三人の悪霊をよく見れば、顔は眼球も眉も見えない白い瞳しかパーツが存在しておらず、どちらも悪魔のような角を頭から生やしている。三人が共通している点はこの二つだろう。

 

 そして男性の悪霊はある程度の量の血液をコートの裾から物体のように浮かせながら流し、一本の長い剣を生成した。こちらはいつでもお前達を殺しにかかる、そう言い聞かせるかのように。

 

 そして、悪態をつくように拓海は呟く。

 

 

「悪霊三体が一度に……これは誤算だった」

 

『人間には固まって行動するという習性が存在している。その習性を活かし、先程のように囮となったものを我々が襲撃すると同時に仕掛けてくると予想できた。だからこちらも、一人以外を物陰に隠すという形で逆手に取ったのだが……』

 

 

 突然人間の特性について語りだした男性の悪霊。まるで前までは人間の事を知らずに生きてきたかのような素振りを見せ、その人間の特性を利用していたことを明かしながら、桃の方を見据える。

 

 

『それによる不意打ちに、まさか気づいた上に防ぐとはな。中々に高めな反射神経を持っていると見た。そしてそれを活かせるようにと動いた二人の魔法使いも中々の手練れのようだ』

 

「そう……それはどうも」

 

 

 今度は桃のここまでの行動パターンを、その前に動いたミカンと柘榴の攻撃に賞賛を与えた。

 

 しかし、低い音程で聞こえていたからして、桃はそれが心を込めて発言したものとは思えなかったようだ。悪霊が人を欺くために語ったものなのか、はたまた元からそのような音程の持ち主なのかは不明である。

 

 

『そのような興味深い人間がいくつかいるからこそ……』

 

「……来るよ」

 

 

 剣を構え、一歩前へと出る。彼に続くように、二人の悪霊もそれぞれが持つ武器(まほう)を構え、白哉達を見据える。桃も態勢を整えながら同じく構え、柘榴が白哉達に今すぐ戦闘フォームになって戦闘態勢を整えるようにと促す。

 

 そして……

 

 

『私達は、ここにいる人間達を殺さなければならない。お前達のような戦闘経験のある者達ならば尚更だ』

 

「クッ……‼︎ 私が彼の相手をする‼︎ みんなは他の二人をお願い‼︎」

 

 

 男性の悪霊が振り下ろした剣が桃の刀と鍔迫り合いとなり、少女の悪霊が放つ青い光の弾丸が拓海に陰陽札による防御霊術を発動させ、少年の悪霊の操る糸が柘榴のギャップマジカルチェーンアレイを捕らえた。

 

 

「……この糸、魔力で高い硬度のものとして作られている」

 

 

 ギャップマジカルチェーンアレイを縛りつけている糸を見て、柘榴は徐に呟く。魔力で物の硬度を決めているということは、その魔力の量・質次第では通常では破壊されないのは確かとなり、ましてや並みの魔法を用いての……それどころかそれなりの魔法を使っても破壊されない可能性があるだろう。

 

 

「……みんな気をつけて。この糸、滅茶苦茶硬い。捕まったら、最悪死ぬかも」

 

「死ぬかもしれなイ程ヤバいのカ!?」

 

「ッ……‼︎」

 

 

 魔力の糸に何かをチェーンアレイから流し込んでいる柘榴の忠告を聞き、ウガルルは愕然とした表情を浮かべる。

 

 そんな中、糸に何やら電流が流れ込み始めた。それに気づいた少年の悪霊はすぐさまその糸を引き戻し、電流から逃れると同時にチェーンアレイを引き離す。

 

 柘榴から離れても尚、未だに感電している己の糸を見つめる少年の悪霊。少しでも行動に移すのが遅ければ自身の安全は保証できなかっただろう、そのような危機感を覚えながら。

 

 

『ほう……なるほど。俺の糸に電撃に関する魔法を流し込み、体内へと攻撃を仕掛ける気だったのだな』

 

「……正解。勘が鋭いね」

 

『あの時から己の無能さを恥じていたからな。霊体として蘇って以来、様々な手段への対処法を予測するようにしている』

 

「……そう。昔にどんな苦い思い出があったのか知らないけど、勉強熱心なのはいいことだ。でも、人殺しという悪事のためにやってるってのは、あまりにも受け入れ難いね」

 

『………………俺達は、()()という概念を知らないだけだ』

 

 

 柘榴と少年の悪霊は、互いの次の出方を窺い睨み合う。仕掛けてくるであろう読みを間違えれば、この命は一瞬にして取られるだろう。そう危惧しながら。

 

 そんな中で、少女の悪霊の動きも変わる。

 

 

模倣する魔法(エアファーゼン)

 

 

 そう呟いた途端、彼女が使用していた陰陽札が姿を変え始める。それは己の身の丈を拡張させ、槍の形を生成させていく。やがて変形が終わったその武器らしきものを悪霊は手に取り、優雅に振るった。

 

 その槍は、金や青の縁で覆われた銀色の円錐状となっていた。

 

 その形状の槍こそ、白哉達がよく見てきた……否、白哉が戦闘の時に必ず使用する愛用の武器。

 

 

「びゃ、白哉さん……アレって……‼︎」

 

「セ、セイクリッド・ランスに変わっただと……⁉︎ オイオイ、何かの間違いだろ……⁉︎」

 

 

 そう……白哉が所持している様々な魔法──技を持つチート武器であるセイクリッド・ランスを、少女の悪霊が錬成するような形で手に取ったのだ。盗まれたわけではない。だが見た目からして、彼女が持ったのも本物のセイクリッド・ランスそのものだった。

 

 

『私の魔法は、人間が動いている時の体内の魔力の流れを記憶することで相手の動きをコピーし、忠実に再現して模倣することができる。お前の体内に眠る魔力さえ探知出来れば、それに刻まれてる記憶から再現することも容易い』

 

「少しの魔力に気づけることもできて、しかもそこから持ち主の記憶を探って、それを基に武器を再現……それでさっき陰陽札も使えたってわけか。なんだよそのチート魔法はよォ……‼︎」

 

 

 チート能力を持ってるのはお互い様だけどな、白哉は少女の悪霊の魔法に嫉妬しながら睨みつける反面、心の中でブーメラン発言をした自分に対して苦笑する。

 

 そして何かに気づいたのか、表面にも苦笑を浮かべるようになる。

 

 

「いや……それでも脅威にならないってことを祈るしかねェな。動きとか闘い方をただ単にモノマネするだけで、本人が使っている時よりもパワー云々の方はまだ優しいって可能性もあるしな」

 

『モノマネ……』

 

「あっ、真似事の方が意味は合ってるかもな。失礼だけど」

 

 

 自分がこれからしようとしていることが、ただのモノマネに過ぎない。そう指摘されたかのように、『モノマネ』という言葉を聞いて図星を突かれたのか、少女の悪霊は白哉を睨みつけているかのように目を細めたが、すぐにその目つきを解いた。

 

 

『………………それ、前にも似たようなことを言われた。ならその分、タクティスみたいなものでカバーすればいいだけ』

 

「言ってくれるな……なら本家の実力ってものを見せ『フレイムフロスト』って危ねェッ⁉︎ シャイニング・ウォール‼︎」

 

 

 呟きに対する意見を出そうとするも、少女の悪霊が炎と氷を重ね合わせた渦を放ってきたため最後まで言い切れず。白哉はすぐさま光の障壁を仲間達を囲うように造り出し、その渦からシャミ子と拓海の身を護った。

 

 渦が治まったかと思えば、シャイニング・ウォールが解除されたのと同時に、今度は悪霊が彼の元へと素早く詰め寄ってきた。それに気づいた白哉は次の行動に移す。

 

 

「ライフベール・ダブル‼︎」

『エドヒセブ・エレキック』

 

 

 白哉が瞬時にセイクリッド・ランスの槍身から放たれる濃い白色──乳白色ながらも透けた光を纏うと、悪霊が電撃を纏わせたセイクリッド・ランスを本物である愛用の武器で防ぐ。

 

 衝突して火花が散った途端、鉄の摩擦の発生と同時に電流が白哉のセイクリッド・ランスを通して彼の身体へと通っていく。しかし、白哉が発動させた技は、身体の内部を守るライフベールの強化された防御技。身体の外膜に襲い掛かるはずの攻撃も塞がれているのだ。

 

 

「次の行動への判断が早いな……‼︎」

 

『あのタイミングでなら殺せると思ったんだけど』

 

 

 槍を振るって悪霊を押し飛ばし、敵ながらも賞賛の言葉を掛ける白哉。悪霊の方はあの頃合いでなら一人は殺害できる可能性があったと思い込んでいたらしく、それが上手くいかなくて悔やんだようだ。

 

 一方、桃は物体のように操作されている血液を押し流すも、男性の悪霊の身体に刀の刃先すら当てられないことに焦りを見せる。

 

 

「(血の硬度まで変えられて、鞭や弓矢みたいに形までも自在に……しかもそれを盾代わりにもできるなんて……彼は相当の手練れだね。ここまで苦戦を強いられているのは誰何以来かな。彼女程に苦戦しないとは思うけど)」

 

 

 男性の悪霊を賞賛する言葉を内心で思うも、いつまで経っても自分の攻撃が直接届かないことに悪態をつく桃。早い内に除霊して町の脅威を減らさなければならないのだが、思ったよりもかなり手こずってしまっていることに苛立ちを感じているようだ。

 

 しかし、似たような心境でいるのは相手側も同じである。

 

 

『(洗練された戦士の如く、次々と私の血を操る魔法(バルテーリエ)を弾いている。武闘派の魔法使いでもこのような動きができる奴は見たことがない……やはりこいつは危険だな、復活する手段を探している我々にとって)』

 

 

 今まで自分が闘ってきただろう敵とは違う動きや身のこなしに、男性の悪霊も苦戦を強いられていた。そして自身の魔法に対処できている桃を賞賛するも、彼もまた、彼女のその強さを危惧していた。

 

 このままではお互い悪戦苦闘を強いられる。そう悟った男性の悪霊は口を開く。

 

 

『これはお前の正々堂々の精神に反することになるだろうが……仕方あるまい。闘いに勝ち、お前を殺すために、この手段を使うとしよう』

 

「………………反するとか言っておきながら、心にもないことを思ってるような言い方だね。……いや、()()()()()()()()……?」

 

 

 桃は違和感を覚えた。人は言葉を発する時は、何かしらの感情を零しながら口を開くのがよくあること。上手くその感情を隠そうとするも、それを堪えようとして表情が複雑になってしまうケースも存在する。

 

 しかし、男性の悪霊にはそのような仕草すらしていなかった。無情、ただ無情に言葉を並べているかのように聞こえる。感情など一切出さずに……否、持たずに語っている。そう見えるという曖昧さを感じさせず、確信に繋げているかのように。

 

 

『お前に一つ、私達の闘い方……共通している特徴について教えてやろう』

 

「共通している特徴……?」

 

 

 

『私達は、言葉の通じない猛獣であり、人間を欺くことを得意としている化け物なのだ』

 

 

 

「‼︎ 白哉さん危ない───キャアッ⁉︎」

 

「なっ……優子ッ⁉︎」

 

「えっ……⁉︎」

 

 

 ふと少女の悪霊と闘っている白哉達の方に視線を向けると、そこには()()()()()()()()()()()()()()()()()シャミ子の左脇腹と背中を斬りつけ、血飛沫を上げさせていた。よく見れば彼女は白哉を押し飛ばしており、咄嗟の判断で彼を庇ったと見て取れる。

 

 

「シャ、シャミ子ッ⁉︎」

 

『私達は目の前の敵だけを相手にするとは言っていないが、そのように闘うのだと匂わせている。つまりはそういうことだ。最も、欺くというのは言葉によるもので行うのが主流だが』

 

 

 白哉と桃がこの光景に愕然とする中、男子の悪霊はこの機を逃すまいと、剣となっている血液を鎖へと変形させ手に取る。そして自律しているその鎖はシャミ子の両腕を一つに纏めるように強く縛りつけ、男性の悪霊の元へと引き寄せた。

 

 斬撃を受けたことによる傷口から伝わる痺れる痛み。鎖によって縛りつけられたことによる絞めつけによる痛み。二つの痛みが激しく重なってきたことにより、シャミ子は身動きが取れず、乱れた荒い呼吸をするしかなかった。

 

 そんな身動きが取れずほとんど無力な状態のシャミ子。そんな彼女に慈悲など与えられるわけもなく、男性の悪霊は左腕に太い円錐状の刃に変形して纏った血液をシャミ子の首元に突きつけた。

 

 

『動くな、武闘派の魔法使い。少しでも攻撃しようとする素振りを見せれば、私はこの女から先に殺す』

 

「ッ……‼︎」

 

 

 桃はシャミ子を助けたくても助けられない状況にある。斬撃を飛ばそうにも攻撃範囲が広く狭くすることも出来ず、下手すればシャミ子にもさらに深い傷を与えてしまう。何しろ下手な動きをすれば、先に男性の悪霊がシャミ子の首を刎ねる可能性もあるからだ。

 

 この状況の中で、シャミ子を遠距離からの攻撃で助け出せるのは白哉だけである。彼にはダイレクトスナイプなどの遠距離攻撃ができる技を多く使える上、いざという時の近距離戦にも長けている。

 

 他に遠距離から攻撃できる者としては、それを一番得意とするミカンが適している。しかし彼女は柘榴・ウガルルと共に少年の悪霊の相手をしていて気づいておらず、何よりいざという時の近距離戦を苦手としている。

 

 そのため、白哉がシャミ子を助けられる唯一の希望となるのだが……

 

 

「クソが……ッ‼︎ 優子を離せ───」

 

『お前の相手は私。あとそこの陰陽師もね』

 

「ッ……‼︎」

 

「邪魔をするなァッ‼︎」

 

 

 それを彼の本来の敵である少女の悪霊が許さない。セイクリッド・ランスを振るい、拓海諸共行手を阻む。白哉と同じく遠距離戦にも長けている拓海も阻害されているとなると、今シャミ子を救えるのは桃ただ一人しかいなくなってしまった。

 

 

「(クッ……‼︎ 早くどうにかしてシャミ子を助けないと……‼︎ でも下手に動けば悪霊はすぐさまシャミ子の首を刎ねる……‼︎ 一体、どうすれば……)」

 

 

 シャミ子を助け出そうにも身動きが取れずに葛藤する桃。どのような手段を用いればシャミ子に危害なく救えるというのか、苦虫を噛みしめながら刀を持っている手の握りを強めていると。

 

 

「も、桃……わ、私ごと、彼を倒しちゃってください……‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

『ほう……』

 

「ゆ、優子⁉︎ お前、何を言って……⁉︎」

 

 

 シャミ子がまさかの自己犠牲を申し入れた。彼女のその判断に桃は愕然とし、男性の悪霊は剣を下ろしながら予想だにしない決断をするシャミ子に興味を示し、白哉はそれを許さんとする声を上げる。無論、彼の気持ちは桃も同じ。

 

 

「そ、そんなこと……私にはできない‼︎ シャミ子分かってるのッ⁉︎ 貴方ごと攻撃したら、最悪死ぬかもしれない……二度と白哉くんに会えなくなるかもしれないんだよッ⁉︎」

 

「分かってます……ッ‼︎ 白哉さんと一生お別れするようなこと、私だって本当は受け入れたくないです……ッ‼︎ でも……」

 

 

 歯軋りしながら、シャミ子は涙目で語る。死ぬのが恐くないはずがない。それ以上に白哉に二度と会えなくなる事態になる事に恐怖を覚えている。

 

 だが、それ以上に。

 

 

「そうやって私の命を渋っていたら、他の皆さんまでこの悪霊をいつまで経っても倒せずにいて、最悪みんなが死んでしまう恐れが出てしまう……そんな結末なんて、私は見たくないです……ッ‼︎」

 

「シャミ子……」

 

「優子、お前……」

 

 

 誰にでも優しい性格を持っている彼女だからこその、最も恐れている事態。それを回避するためならばと、シャミ子は腹を括り悪霊を巻き込み命を投げ捨てる覚悟を決めたようだ。

 

 そんな自己犠牲になる意思を示している彼女を見て、男性の悪霊は溜め息混じり悪態をつく。

 

 

『……これはよくないな。この女は人質には向いてない』

 

 

 地面に向けて下ろしていた剣の刃の先端を再びシャミ子に向け、腰に据えるかのように両手で持ちながら構える。

 

 

『ならばせめて、貴様の仲間が辛い思いをして貴様を殺す前に、私がすぐに楽にして、その重荷を持たせないようにしよう』

 

「優子ッ‼︎」「シャミ子ッ‼︎」

 

 

 シャミ子の命を危険を察知し、目の前の敵を無理矢理押し飛ばしながら、悪霊の斬撃を止めようと全速力で駆け寄る。だが悪霊の剣を振るうスピードの方が早く、シャミ子の首は横薙ぎに───

 

 

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 

 

『ッ⁉︎ 全員退避‼︎』

 

 

 斬り飛ばされることはなかった。何処からともなく一筋の光の奔流が男性の悪霊……否、三人の悪霊に目掛けて放たれ、それを感知した悪霊達は皆して白哉達から素早く離れ、その奔流を回避した。

 

 男性の悪霊は咄嗟の回避に専念していたためか、シャミ子を拘束していた自身の魔法を不本意に解除してしまい、その好機に気づいた白哉によって抱えられ、人質としていた彼女を手放してしまった。

 

 

「ゆ、優子‼︎ 大丈夫か⁉︎」

 

「あ、あれ……? 私、まだ生きてる……?」

 

「ッ……よかった……ッ‼︎」

 

 

 シャミ子は既に自分は殺害されたと思い込んでいており、今でもまだ生きているという事実に困惑していた。そんな事などお構いなしに、白哉は彼女が無事であることを確信し、彼女を優しく抱きしめた。

 

 

「ナディア、渡された聖典があるよね? それでそこの魔族の傷を治しといて」

 

「はーいわかったー‼︎」

 

 

 ふと、デフォルメの虎の顔と『SCARY LIKE A TIGER』という白い文字が書かれてある黒いパーカーを着た、赤髪セミロングの少女が白哉とシャミ子の元へと駆け寄る。左手に何やら分厚い書物を抱えながら。

 

 

「き、君は一体……?」

 

「あっ動かないでね。今そこのお姉さんの傷を治すから」

 

 

 少女はそう言って白哉の問いかけを遮り、書物を開きながらシャミ子に向けて右手を翳す。

 

 するとどうだろうか。その手から優しい黄緑色の光がシャミ子の体を包み込み、彼女の傷を肌で埋めさせているではないか。

 

 白哉がその光景に目を疑い、痛みの引き始めたシャミ子が『えっ……⁉︎』と動揺する中、更なる乱入者が。

 

 

「あの……本当にあの魔族を治療させて大丈夫なのですか?」

 

 

 紫色のワイシャツを前方に出している赤いコートを羽織っている、先程の少女の鼻の位置と同じ身長を持つ紫色の髪の少年が、隣にいる一人の小柄な女性にシャミ子を治療してもよいものかと問いかける。

 

 

「心配ないよガダルフ。さっきの彼女の言葉と表情を見て分かった。彼女はこの町側の魔族だ」

 

 

 紅い水晶を付けた身丈と同じ長さの杖を持ち、白を基調とした服装、銀髪ツインテールと麻呂眉に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()女性。彼女は少年にそう答えると、男性の悪霊の方に視線を向けた。

 

 

『……正直驚いた。まさかこんなところで、貴様に会うとは思っていなかったぞ………………

 

 

 

 フリーレン』

 

 

 

「久しぶりだね、首切り役人の魔族ども。まさか幽霊として蘇っていたとは思わなかった」

 

 

 フリーレン。かつて魔法が盛んとなる前の時代にて、勇者ヒンメルのパーティーと共に魔王を撃退したと言われている、長寿な種族・エルフの魔法使い。

 

 そんな彼女は今、魔族と魔法少女が共存するこの多摩町に足を踏み入れていた。

 

 




はい、『葬送のフリーレン』からフリーレンが参戦です‼︎
二次創作でとある魔族を同行させてるから、『まちカドまぞく』に出しても多分問題ない……はず。

次回、フリーレンが戦います‼︎ お楽しみに‼︎
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