偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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まさかのフリーレンの登場ってことで初投稿です。

相変わらず文才が低レベルですが、ガチバトル風の戦闘シーン続投です‼︎(だがその光景は別作品レベルで……)


世代を越え、魔王を討伐した勇者パーティーの魔法使い、再起。……えっ? 何百年も前から生きてるの?

 

 かつてこの世界には、人間の他にも異種族が存在していた。

 

 体力・力に優れ頑丈なドワーフ族と、寿命がとてつもなく長く恋愛感情や生殖本能が欠落しているエルフ族……人間側として共存して暮らしている種族もいれば、主に人間を食らう怪物である魔物に、その魔物の中でも長大な寿命と魔力に対する鋭い感受性を持っている魔族も存在していた。

 

 そんな異種族達が存在していたファンタジー──幻想的な時代。なんとその時代に生きた人類の中には、魔法が使える者が数多く存在していた時期があった。その数は光の一族である魔法少女とは比べ物にならないらしく、魔法少女が存在するという噂が皆無になる程だ。

 

 しかし、魔物が絶滅していくと共に時が流れていく内に、科学が大きく発展していくようになり、平和な時代になる毎に誰もが魔法を使う必要が無くなっていった───

 

 

 

 

 

 

 あれから約数百年後。

 

 魔法使いが盛んに増えてきた時代よりもさらに先の時代から生きてきた、エルフの魔法使い──フリーレン。

 

 勇者パーティーの一人として魔王を倒した魔法使いが、偶然目撃した悪霊に苦戦させられていた白哉達を助けるべく、かつての旅仲間の子孫と共に闇・光の一族──魔族と魔法少女の共存する多摩町に姿を現した。

 

 

「にしてもホント驚いたよ。まさかずっと昔に私の仲間に倒されたはずのお前達が、この時代で幽霊みたいなものとして復活していたなんてね」

 

『驚いているのはこちらも同じだ、フリーレン。我々魔族の事を誰よりもよく理解しており、誰よりもよく警戒し敵意を示している貴様が、何故魔族であるその女を助ける?』

 

 

 男性の悪霊がフリーレンを睨みつける。彼女が魔族に対する敵対心が強いことは、彼等を束ねていた主の魔族の話から重々把握している。だからこそ、彼女が旅仲間の子孫を連れて魔族であるシャミ子に肩入れすることに警戒していた。

 

 そんな彼の疑問に答えようとしているのか、フリーレンは突然懐から一冊の本を取り出し、それを見せつける。

 

 

「私は読んだんだよ。魔族は実は二種類存在しているのだという、この各種族の歴史の本を」

 

『……なに?』

 

 

 顰めた眉でさらに強く睨まれる中、フリーレンはその種族の歴史の本を開きながら口を動かし続ける。

 

 

「神話の時代……光の一族が定義し【世界の矩】から外れた、異形の姿の者や異能を持つ者として、ここで回復魔法を受けてる子みたいな魔族が生まれた。その時の魔力の残りカスの多くが宇宙の星々のエネルギーと混合したことによって、それらが合成され多くの『宇宙の力によって誕生した人間性の欠陥した種族』としてお前達のようなのが表向きに多く出るようになったとされている……これはあくまでも諸説となってるけどね」

 

 

 本を閉じ、シャミ子の方に視線を向ける。

 

 男性の悪霊によって受け流血していたシャミ子の背中の斬り傷は、フリーレンの仲間である少女──ナディアの持つ聖典の回復魔法によって塞がれ回復していた。

 

 そしてシャミ子は、その魔法による副作用か傷による痛みから解放された事による反動からなのか、その場で白哉に優しく抱えられながら眠りについている。

 

 シャミ子の事を想っての抱擁をしている白哉と、その抱擁を受けているシャミ子を見て、フリーレンは微笑みながら再び口を開いた。

 

 

「簡単に言えば、この子は純正……神話の方の魔族で、体の作りを含めてなるべく人間に寄せている。そしてお前達の方の特性……人間を無心かつ無差別に殺すような真似をする恐れは一切ない。だから警戒する必要はないから助けられるってこと。まぁ、昔はお前達のようなのがいなくなってからは、純正の奴等も人間らしい感情を持ってして荒れてたらしいけど」

 

 

 そう語りながらフリーレンは本をしまい込み、右手に持っていた杖を構え直した。男性の悪霊の睨みつけている瞳から更なる殺意を感じ取ったからだ。

 

 

『……その言い方からして、まるで我々の方が偽物だと言いたげだな。昔はこちらの方がよくいたというのに』

 

「お前達が偽物だったとしたら、人間を欺く特性を持たなかっただろうし、魔王や七崩賢どころか魔法を持った魔族すら誕生しなかったと思う。それどころか、ただ単に言葉を発するだけの魔物という認識でしか済まされるはずだ」

 

 

 呟き終えた途端、フリーレンは自身の周囲に六角形のバリアを張る魔法を使用した。それと同時に、血液で出来た太い鞭が伸びバリアによって弾かれる。男性の悪霊が攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 

『御託はもういい。とにかくだ、貴様達はあのお方の復活させるのに邪魔な存在……この場で葬り去ってやろう』

 

「相変わらず派生系魔族(おまえたち)はえらく殺意が高いね……ま、いつも通りやればいいかな。ナディアは女の方……リーニエを、ガタルフはもう一人の男の方……ドラートをやって。こいつは……リュグナーは私が相手するから」

 

「了かーい‼︎」「わかりました」

 

 

 フリーレンの指示に、ナディアはハキハキとした声で背中に携えている体躯ピッタリな斧剣を持って構えながら、少年──ガタルフは冷静かつ物静かな雰囲気で頑丈な藁で作られた魔法使いの杖を手に取りながら了承した。

 

 

「あ、そうそう。君達はここから離れて休んでて。こいつらの相手は私達がするから」

 

「えっ……」

 

 

 白哉達の方を振り向き、この戦闘からの一時離脱を促すフリーレン。傷が治ったものの眠りについて戦闘の続行ができないシャミ子に対する配慮によるものなのか。

 

 しかし、その言葉に甘えて傍観に移る程に白哉達は乗り気ではなかった。見知らぬ存在に戦闘を丸投げすることなどできるわけもなく、ましてやその者の命の危険性もあるからだ。

 

 

「で、でも……相手は滅茶苦茶強いですよ? 殺意もかなり高いですし……」

 

「知ってる。こいつらの恐ろしさは、脇が酸っぱくなる程に理解しているよ」

 

 

 身の危険の考慮した白哉からの忠告を聞くも、微笑み引く気のないことを伝えるフリーレン。杖を改めて男性の悪霊──リュグナーに向け、一つ呟く。

 

 

破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)

血を操る魔法(バルテーリエ)

 

 

 同時にリュグナーが操っている血液の棘の壁に、杖から放たれた雷撃が直撃する。液体と衝突して生まれたものとは思えない、強い電撃の飛沫が強く飛び散る。

 

 

「魔力のコントロールが結構いいね。こちらの魔法をピッタリと相殺できるように、ある程度の消費する魔力の調整はしていると見た」

 

『なるべく無駄な魔力の消費を抑えられるよう、魔法を出す瞬間の魔力のパワーを見極めるようにしているからな』

 

「さすがは七崩賢の部下、といったところだね。アイツが見たらどんな感想を述べるのやら……」

 

 

 フリーレンが魔族(てき)ながらもリュグナーの魔力の扱い方を褒め、リュグナー本人が努力していることを語るも、互いが向けている敵意の強さは弱まらない。ましてや互いの強さを理解してか強まっていた。

 

 人間を食らうために人間を騙す魔族を倒す魔法使い・フリーレンと、魔族の本能を持ってして生き永らうことを妨害する者も殺害する魔族の一人・リュグナー。二人の魔法が、目の前の敵を倒すべき改めて合間見える。

 

 

 

 

 

 

 フリーレンとリュグナーのいる位置から少し離れたところ。ガタルフは少年の悪霊──ドラートと交戦していた。

 

 ドラートが使用している魔法は、魔力を糸状にして操る魔法──呼称『キルフィラメント』。

 

 名称通り魔力を糸状にする魔法であり、人間の首なら容易く切断できるほどに鋭い。また強度も随一であり、一流の魔法使いでもその糸自体に何かしらの変化を催すのは非常に困難とされている。

 

 しかし、糸自体を変化させることができないからといって、その糸への対処法がないとは限らない。

 

 故に、実はガタルフは魔力を糸状にして操る魔法(キルフィラメント)に未だに捕まってない。物を浮遊させる魔法で浮かした岩や転げ落ちている大木を、その魔法を発動させるのに使用した杖を振るうことで無理矢理投げ飛ばし、それを切断した糸の軌道を見て素早く回避したり防御魔法で防いだりしているのだ。

 

 さらに驚くことに、ここまでガタルフは攻撃魔法らしきものを一切使用していない。足が滑って転倒しにくくなる魔法や近くにある砂を押し飛ばす魔法といった、全く戦闘向きにならない魔法しか使用していないのだ。

 

 

『使う時の手段やそれを使う瞬間、それらはほかの魔法使いと比べれば上出来と言うべきか。だがどれも攻撃魔法ではないとなると、俺達魔族のことを舐めてるとしか思えないな』

 

 

 ドラートがガタルフを睨みながら、彼の闘い方に苛立ちを見せているかのような指摘をする。それに不服を感じたのか、ガタルフは眉間に皺を寄せ反論の意思を示す。

 

 

「舐めてるとは心外だな。僕はただ、お前達のような敵を倒すための(すべ)を探しながら魔力を温存しての長期戦をすることをこだわりとしているだけだ。とはいえ、闘う機会のないこんな平和な世界で、この闘いが僕に合っているかどうかを判断することができないが」

 

『……なるほど、まるで時代に合わせた考え方だな』

 

 

 どうやらガタルフは、勝利のための手段を考察しながらの持久戦を得意としているようだ。それが自分の闘い方として最適かどうかは不明だと言うが。

 

 魔法の撃ち合いでの持久戦──即ち魔力切れを起こした者が敗北するというものだ。その上で体力の確保も考慮しなければならない。ドラートら魔族も魔力切れを恐れていないわけではない。それ故に、ドラートは表情を表に出さずとも内心焦りを見せている。

 

 

『魔力切れを狙っているとするならば、これ以上時間をかけるわけにはいかないな。早めに終わらせるとしよう……魔力を糸状にして操る魔法(キルフィラメント)

 

 

 これ以上悠長していたらこちらの方が危険だ。そう判断したドラートが呟いたのと同時に、彼の操る糸がガタルフの首に巻きつき、吊り上げる。

 

 本来なら魔力で作られた糸に首を絞められた者は一瞬で絶命するはずだ。しかし、その対策をしない程ガタルフは甘くなかった。咄嗟に首に覆った魔力の膜が、首を糸で絞められることを防いでいた。

 

 無論。ここまでガタルフの事を警戒していたドラートは、宙吊りにして勝ったと思う程に油断しているわけではない。すぐに魔力の膜の存在に気づき、ガタルフを睨みつける。

 

 

『(他の闘いへの介入も視野に入れて魔力を温存したいが……相手はあのフリーレンが連れてきた仲間だ、やむを得ない。念には念を入れ、本数や硬度も上げておくと───)』

 

 

 刹那、ドラートは自身の操る糸に違和感を覚えた。

 

 そしたらどうだろうか。ガタルフの首を絞めつけようとしていた糸が急激に緩み始め、それをガタルフによって容易く引き千切られたではないか。

 

 

『……貴様、俺の糸に何をした?』

 

「何って……“糸の硬度を自在に変える魔法”を試しただけだけど? 糸だから成功しやすいとは思っていたけど、それだと楽すぎるかとも思っていたから、この時まで使わなかった」

 

 

 名称の無い魔法……またもや戦闘向けではない民間魔法だろうか。魔力を糸状にして操る魔法(キルフィラメント)をその魔法によって無力化されたドラートは、引き千切られた己の(まりょく)を回収し、ガタルフを再び睨む。

 

 

『さっきまでは手加減していた……そういうことか?』

 

「そのつもりは一切無いよ。ただ魔法の様々な使い道を考察して、それを即座に実践で使うという闘い方をしたかっただけなんだ」

 

『まるで魔族を実験台にしているかのように……‼︎』

 

 

 試運転のように民間魔法によって踊らせているガタルフに対し、ドラートは怒りを募らせた。すぐさま新しい糸を出せるようにと構えようとした途端……

 

 足元が急に重くなったのを感じた。ふと足元を見てみれば、右足首に鍵状の足枷が嵌められていた。

 

 

『これは……⁉︎』

 

「それは“懐に入れたものを他人に付ける魔法”。これでお前は行動を一瞬だけ鈍らされた」

 

 

 またもや民間魔法。しかも懐に入れたものというが、どのようにして重く大きい足枷を懐に入れていたというのか。そもそも何故懐にそんなものを?

 

 そんな疑問を解決させる隙など与えんと、ガタルフは新たな魔法を放つ。杖の先端から六弁花の図式となる魔法陣が展開され、一筋の光が煌めき出した。

 

 

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

『ここで、攻撃魔ほ───』

 

 

 圧の強く太い奔流となる閃光が放たれる。それはドラートの言葉を遮り、彼の身体を大きく貫通させる。光が収まった時には、彼の胴体は首・腕・足を残してぽっかりと空いてしまっていた。

 

 そのまま彼の体は断末魔を上げる間もなく消し炭の如く散り散りとなり、やがて風に散らされていった。

 

 

「この闘いで一つ、分かったことがある」

 

 

 塵となって飛ばされ見えなくなっていくドラートを見て、ガタルフは呟く。

 

 

「魔力の糸でも糸の硬度を自在に変える魔法──民間魔法は通用し、戦闘でも役に立った。まだまだ民間魔法にも可能性はあったようだ。今後この魔法が使えるかどうかはとてつもなく怪しいけど、いい経験になった。魔族ながらも礼を言うよ、ありがとう」

 

 

 この闘いでまた一つ勉強になった。そのような事を感じたガタルフは、敵である魔族に対して無心に見えるかのような感謝の言葉を述べたのだった。

 

 

 

 

 

 

 銀色に輝く斧剣と金色に煌めく槍が、交差し火花を散らし、鍔迫り合いとなっては何度も一時的に引き離してから再びぶつかり合う。

 

 斧剣を操るナディアとセイクリッド・ランスを模倣した少女の悪霊──リーニエ。形は違えどパワーのある武器の扱いは男性に負けず劣らずな二人が、それぞれの力を持ってして互いに押し合っていた。

 

 

「やるねー‼︎ そんなデカい槍を容易に扱えるなんて、やっぱり魔族だから力持ちなのかな? 羨ましー‼︎」

 

『女の癖にそんな重たいの振り回してるお前に言われたくない。けど、あの時の戦士に並ぶほど力強くもない。お前もテクニックとやらで闘ってるの?』

 

「ん? あの時の……? あぁ、先祖と闘ったことあったんだ。で、やっぱりまだ届いてないかぁ……」

 

 

 何度目かの鍔迫り合いから離れ、ナディアは首を傾げるも、質問の意味を理解してかリーニエの問いに答えることにした。斧剣を右手だけで軽々しくブンブンと振り回しながら。

 

 

「言っておくけど、私はただ単に振り回してるだけなんだよねぇ。何せ私は自称【ゴリラパワーのナディア】だし」

 

『身軽かつ素早く力を振り翳せる奴はゴリラとは思えない』

 

「えー? じゃあ何に例えればいいの?」

 

『知らない、自分で考えて。いや、そんなこと考える時間なんてどのみち無駄か』

 

 

 なんだこのお気楽そうな人間は。どうでもいい問いかけをしてくるナディアに対し、リーニエは彼女の強さがどれ程なのかを警戒しながらも呆れたかのような瞳を見せる。

 

 これ以上彼女との闘いに時間を掛けたくない。そう感じたリーニエはセイクリッド・ランスの先端をナディアに向け、口を開く。

 

 

『凍ってそのまま砕け散れ。ブリザードタイフーン』

 

 

 セイクリッド・ランスの槍身を中心に、氷の礫と共に竜巻が巻き起こる。それが前進してナディアに向かって吹き荒れてくる。その竜巻に巻き込まれれば零度によって凍りつかれ、鋭利な礫や竜巻の風力によって身体ごと砕け散る可能性があるだろう。

 

 

「氷の竜巻、ってとこかな? 上等‼︎」

 

 

 しかし、ナディアはその竜巻の前から逃げようとはしなかった。それどころか、自身の両手に持つ斧剣を天に掲げ……

 

 

海割斬(かいかつざん)‼︎」

 

 

 一筋に振り下ろした途端、海が割れるかのように竜巻は一瞬にして相殺されてしまった。風は散り散りとなって消え、その圧によって発生した熱が氷を一瞬にして溶かし、冷気をも消し飛ばしてしまった。

 

 

『………………はっ?』

 

 

 これには物静かで感情をはっきりと出さない性格のリーニエも、ナディアのその力強さに思わず呆気に取られたような声を上げるしかなかった。

 

 

「……うん、やっぱりそうだと思った」

 

 

 振り下ろしたことによって地面に刺さった斧剣を見ながら、ナディアは語り出した。

 

 

「君は模倣する相手の動きだけじゃなくて、力の入れ方までをもコピーしようと無理強いしている感が出ているね。そのせいで無駄なところにまで変な力を入れてしまって、攻撃する時の安定さやコントロールに欠けてしまってる」

 

 

 どうやらナディアは、リーニエの模倣する魔法(エアファーゼン)に欠点があることを見抜いていた。そして相殺する位置やタイミングさえ見極めれば、たとえ強力な技でも対抗できると判断したようだ。

 

 

「そして何より」

 

 

 そして気づいた時には、ナディアは瞬時にリーニエとの間合いを詰め寄り……

 

 

『えっ───』

 

「それによる反動が起きたせいで、このように、咄嗟の行動への対処が出来てない。私が思ってたよりも頭を固くして使いすぎてたみたいだね」

 

 

 反撃の余地など与えず、彼女の身体を中心から真っ二つに斬り下ろしていた。そしてナディアの言葉の通り、彼女の動きを感知しても即座に対応することが出来ず、技を発動するための誤った力の入れ方による反動により、攻撃を防ぐのが間に合わなかったようだ。

 

 

『(また、力に負けてしまった……それも、頭をも使って───)』

 

 

 嘆こうにも嘆ききることが出来ず、リーニエは濃い血の色をした炭のようなものへと変化していきながら、風に吹かれて散り散りとなってその場から消えていった。

 

 一度目の消滅と同じように、夜空に昇る満月に手を伸ばしながら。

 

 

「私が勝った‼︎ ブイッ‼︎」

 

 

 一方、勝利を確信したナディアは後ろを振り向いてはにかみ顔でピースサインをした。そこには誰一人、こちらを監視しているどころか立ってすらいないことにもお構いなく。

 

 

 

 

 

 

 そして、場面は本台へと移される。

 

 

血を操る魔法(バルテーリエ)

 

小型の渦を生み出す魔法(ミリアラムホール)

 

 

 リュグナーは幾多もの数の矢を生成した血液を、フリーレンが背後の頭上に生み出した黒い渦の引力でそちらへと引き寄せ、全ての矢の血液の威力を押し殺し元の液状に戻してしまった。

 

 渦が収まり消えたのと同時に、新たな形状への変化をさせることが出来なくなったその血液を引っ張り戻し、リュグナーは新たな血を操る魔法(バルテーリエ)を発動させる。

 

 

『やはり遠距離ではすぐに対処されやすいか……ならば対処されにくいだろう闘い方へと持ち込んでみるとしよう』

 

 

 そう言ってリュグナーは、血液を一つの武器へと変化させた。それは、リュグナー本人の全身よりも一回り超える大きさを誇る巨大な鉄槌──ハンマーであった。よく見れば持ち手の先には頑丈そうな紐状の何かが巻かれているのが見える。

 

 その鉄槌を軽々しく手に取り、リュグナーはフリーレンとの間合いを詰め横薙ぎに振るう。危機を察知したフリーレンは防御魔法を周囲に展開し、その剛力によって押し飛ばされることすらも防ぐ。

 

 

「接近戦による力のゴリ押しか。厄介なことをしてくるね。防御魔法を連続で使用する隙を作らせない気なのかな?」

 

 

 力の押し合いに負けて最悪の事態が起きるのは避けるべきだ。フリーレンはそれを危惧し、再びリュグナーとの距離を置き態勢を立て直そうとする。

 

 

『だから一度再び距離を置いて様子見する、という一つの答えを出したのか』

 

 

 リュグナーはフリーレンを睨む。こちらが接近戦に持ち込むことに決めたというのに再び自分から引き離すつもりか、そんな小さな怒りを向けているのか。

 

 

『……それでいい。そうしてくるとは想定内だ』

 

 

 否、それはただの演技だった。

 

 紐状の何かが巻きつかれているところに手を掛け、鉄槌をその場で振り回す。刹那。紐状の何かは本物の紐のように長く伸び、鉄槌はカウボーイのロープのように投げ飛ばされ尋常では無い飛距離でフリーレンに迫り来る。

 

 

「‼︎ まずい……!!」

 

 

 咄嗟に前方を中心に防御魔法を再び展開するフリーレン。しかしその障壁は一瞬にして全面に響く程の亀裂を生み出し、威力を殺し切れずフリーレンごと大木へと押し飛ばしてしまう。

 

 このような事態を想定していなかったのか、その圧力に押し負けたフリーレンは思わず口内に溜められた濁った息を溢した。その場で膝をついてしまうも、すぐに態勢を立て直し杖を構え直す。前を向き直せば、リュグナーは既に鉄槌を引っ張り戻し次の攻撃の姿勢を整えていた。

 

 

「物体を投げ飛ばすことによる力の解決か……これはこちらが油断していたとしか言えないね」

 

 

 迂闊だった。と、フリーレンは一瞬だけとはいえ気が抜けていた自分に対して、そう悪態をついた。

 

 人間を欺くという生まれつきの習性を持つ魔族相手に対し、油断や隙を見せるというのは命取りになりかねない。だが、フリーレンはこの闘いで一瞬だけ、『無理矢理感のある闘い方はしないだろう』という油断をしてしまったのだ。

 

 

「(前に弟子が倒したからって理由で、あの子から彼の魔法を知った私なら絶対勝てると見込んでたせいなのかな。自分の弟子の戦果で思い上がりをしていたようだ。あと、久しぶりの戦闘だったから平和ボケ感が抜けてなかったみたいだね。我ながら情けない)」

 

 

 一つ溜息をつく。思い上がりで戦闘を行うとはらしくないなと思いながら。

 

 

「(さて……相手がアレ程の物量攻撃を仕掛けてくるとなると、こちらの反撃の余地が出るかどうか……デカい武器作れるだけあって攻撃範囲が大きいし、かといって防御魔法を展開するにしても力業で無理矢理押し潰されるだろうし……)」

 

 

 フリーレンはリュグナーの次の攻撃の対処法を考察し始める。上手く回避することに賭けるべきか、それとも攻撃魔法で何かしらの奇跡が起きることを狙うべきか……脳内で試行錯誤を繰り返していると。

 

 

「(ん? いや待てよ? そういえばあの魔法があるんだった。でもアレは民間魔法だし、ガタルフみたいにそれを戦闘に上手く使えるかどうかも怪しい。そもそも適用できたとて、奴にそれが通じるかどうかも微妙だけど……)」

 

 

 ふと、とある対抗手段を思いついた模様。だがそれは戦闘向きではない民間魔法を使用しての作戦。成功するイメージが思い浮かばずにいた。

 

 しかし。だからといって、一つの事から全てを諦めるフリーレンではなかった。確実に勝利を得られる可能性があるとするならば、それに賭けても無意味なものはない。

 

 

「(……ま、とりあえず試してみる価値はあるか。ダンジョン攻略みたいに、いくつかの選択肢からぶっつけで決めるのを、闘いの中で導き出すっていうのも悪くない)」

 

 

 かつて魔王退治の時のパーティー達の事を思い出したのか、実行に移すことを決めたフリーレンはクスリと微笑みを浮かべた。特に自己愛の主張をよくするも心優しい、彼女の記憶の中で一番印象の残っている人物をより良く思い返しながら。

 

 

地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)

 

 

 そしてすぐさま攻撃魔法を発動させるフリーレン。杖から放出させた爆炎で、()()()リュグナーにそれを回避させる。さらに彼との間合いを離すことによって、何かしらの作戦を考案したのだろう。

 

 それをすぐさま不可思議に感じたのか、リュグナーは新たに放たれた爆炎を今度は鉄槌を盾代わりにして防ぐ。架空の物語とは違い、血液は火によって燃えることはない上に強い。血液を魔法として使う者としての、その性質を理解した上での判断であった。

 

 横薙ぎに振るって爆炎を払う中、リュグナーはさらにフリーレンに対して疑念を抱く。

 

 

『(何故またわざわざ距離を離そうとする? こちらには奴に対処可能な手段があり、それを実際に行ってみせたというのに……何かを狙っているのか?)』

 

 

 如何なる魔法だろうと、一度見れば二度目にて完全に対処できるとは限らない。何せ圧倒的な質量攻撃は広範囲なものが多く、防御するにも耐え切れるかどうかも怪しい。そのため、主な対抗手段はなんとか回避するというものが連想されてしまうのだ。

 

 その圧倒的な質量攻撃を、リュグナーは遠近どちらからでも行うことができる。間合いを詰めれば振り下ろして押し潰せ、距離を置かれれば投げ飛ばして吹き飛ばす。相手がどちらに転じようと、彼にはどの位置からでも物量を持ってしての攻撃を可能としている。

 

 しかし、フリーレンはそれに対して何かしらの対処法を取ろうとしている。敢えてリュグナーから距離を引き離すということは、遠距離でなら何かしらの対策を取れると確信しているのだろうか。

 

 どちらにせよ、リュグナーはそれを逃す程甘い魔族ではなかった。

 

 

『(ならばこちらから距離を置くような真似はしない方がいいな……接近戦重視で奴を追い詰めるとしよう)』

 

 

 鉄槌の取っ手を握る力を強め、リュグナーはまたもや瞬く間にフリーレンとの距離を詰めては鉄槌を天に掲げながら振り下ろす。それに対してフリーレンは再び前面重視に防御魔法を全面展開する。投げ飛ばされたそれの衝撃が効いていたせいなのか、吹き飛ばされはしなかったもののまたもやバリアに大きなヒビ割れを起こしてしまう。

 

 

 

 が、それはフリーレンがそうなるようにと誘導したものだった。

 

 

 

「さっきの言葉をお返しするよ──そうしてくると思った」

 

『ッ⁉』

 

 

 衝撃の威力を殺した途端、フリーレンは鉄槌に手を翳す。

 

 するとどうだろうか。その鉄槌を生成するために結合された血液のドロドロ感粘度の高さが徐々に下がっていき、全てがサラサラとした液状となって形状を保てなくなり、一瞬にして破裂するように地面に飛び散ってしまったではないか。

 

 

『貴様……一体何の魔法を掛けたッ⁉︎』

 

「“血液をサラサラにする魔法”。血糖値を減らしたりするために生み出された民間魔法だよ」

 

 

 後退しながら飛び散った血液を回収するリュグナー。再び血を操る魔法(バルテーリエ)を発動させ、新たな武器を生成しようとするが……現像された途端、それらは屋根から流れる雨水の如くポタポタと地面へと落ちていった。

 

 

『バ、バカなっ……私の身体中の血液にも、こんなのが反映されてしまっているだとっ……⁉︎』

 

 

 己の今あるこの状況に、冷静沈着な自分を見失い愕然とするリュグナー。自身の血液の粘性が弱くなるということは、血を操る魔法(バルテーリエ)を正常に発動させることができない──弱体化したのと同義である。

 

 そんな慌てふためくリュグナーを見ながら、フリーレンは語る。

 

 

「人間ってすごいよね。民間魔法でも場合によっては特別な魔法に化けるものを作ってしまうんだから。魔法が使えない人間でも、そして今の世界でも同じ。私達の想像のつかない知識力や実力で困難を突破しちゃう人が多いし……今の世の中だって、魔法を必要とせずとも皆が平等になるように生きていける社会を、人間の手で魔法無しに作り上げちゃうんだから」

 

 

 そう語るフリーレンの表情は、何処となく緩んでいた。これまで旅に同行した仲間達のこと、道中にて出会った者達の特技云々のこと、人間が開発したものを見た時のこと……様々な懐かしい思い出が、フリーレンの脳内に巡り渡ってきているのだ。

 

 気持ちを切り替え表情を元に戻すフリーレン。杖をリュグナーに向け、一筋の魔法の光を煌めかせる。

 

 

「私が何を言いたいのか、教えてあげようか?」

 

『ま、待て───』

 

 

 ───魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 

 不完全な血を操る魔法(バルテーリエ)では強固な壁を作る余裕すら作れず、光が収まった時には、リュグナーの身体は足だけとなり、それも徐々に灰となって散り散りに消えていった。

 

 

「人間の成長と発想を舐めてた時点で、お前達の負けは確定したんだよ、リュグナー」

 

 

 跡形も無く風に吹かれていったリュグナーだったものを見据えながら、フリーレンはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「勝った……のか? 三人とも、一騎打ちで……?」

 

「どうやらそうみたいだね。私やシャミ子達だと苦戦していた相手にあまり苦戦しなかったしね」

 

「い、一体何なのあの人は……?」

 

 

 フリーレン達の闘いを、彼女達から少々離れた位置から、未だに眠りについたままのシャミ子を抱擁しながら見ていた白哉達。三人の闘いぶりと自分達が勝つのに苦戦していた敵をほとんど難なく撃破したしたという事実に、驚きを隠せていなかった。

 

 ガタルフの姑息ながらも巧みな魔法の使い方で利点を効かせた戦法。ナディアの力任せが多くも一番に判断力を活かせた接近戦法。そして、フリーレンのド派手な魔法と冷静な戦況分析を行った熟練された者によるともいえる戦法……

 

 自分達ではそう簡単に行うことができないのだろう闘い方をしたフリーレン達を見て、白哉達は動揺を隠せずにいたものの、三人の闘い方に魅力を感じてもいたようだ。

 

 ただ一人、桃は何故か動揺をしていなかったようだが。

 

 

「はい、終わったよ。ちゃんと全員あの闘いに参加せず休んでたね。私達が来るまでよく頑張った」

 

 

 気がつけばフリーレン達三人は白哉達のところに来ていた。そして自分達が来る前に、リュグナー達魔族の悪霊相手に苦戦しながらも闘ってきたことを賞賛し、白哉とシャミ子の頭を撫で始めた。

 

 ガタルフも自分の事を静かに見ている蓮子に気付いてか反射的に優しく、ナディアもミカンや拓海を介抱していたウガルルを見て大袈裟ながらも愛嬌を持ってして顎ごとワシャワシャと撫でていた。

 

 蓮子、照れる。ウガルル、引き気味。ナデナデされているこの者達の反応の差よ。

 

 

「あ、それと……今なら落ち着いて話せるかな」

 

 

 フリーレンがふとそう呟くと、突如桃の方を見ながら再び口を開く。

 

 

 

「久しぶりだね、桃。会うのは十年ぶりかな」

 

「あっはい、そうですね。あの時は姉がお世話になりました」

 

 

 

『………………えっ!?』

 

 

 ここで明かされた衝撃の真実。桃とフリーレンは以前にも出会った経緯があったらしく、その事実を知った白哉達一同は思わず仰天とした様子を見せる。

 

 ガタルフとナディアも自分達のリーダーの顔見知りである人が間近に、それでいて自分達みたいに戦闘が可能な人物であるという事実に驚きを隠せなかった模様。

 

 ちなみにこのタイミングでシャミ子が目を覚まし、彼等と同じように桃とフリーレンの関係に仰天していた。それもこの場にいる者達の中で一番のリアクションで。

 

 

「って優子、お前起きたのか……」

 

「えっあっはい。そ、それよりも桃……その人とは、お知り合いなのですか……?」

 

「うん。以前は色々と手伝ってもらったというか、ね」

 

 

 異種族が存在し、魔法を使う者も多々いた時代から生きており、魔族と敵対していたはずのエルフ──フリーレン。

 

 古参の魔法使いが、どのような経緯で、現在の多摩町を守っている桃と邂逅したのか。この後全て明かされることだろう……

 

 




ん? 最後がオチってない? 気のせいじゃね(すっとぼけ)

次回は桃とフリーレンの馴れ初めをお送りします。お楽しみに。
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