偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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多重クロスさせすぎて最近迷走しすぎてる気がするってことで初投稿です。

まぁね、昔の俺も小説書く時いろんなキャラを多重クロスさせてたからね……


なんかポケ○ンのそっくりさんが出たんだが……って本物よりも体も声もデカいんだけど⁉︎

 

「………………で、この子は一体誰なんですか? どっかで見たことあると思うんスが」

 

「わかんない。でも、いくらなんでもほったらかしにするのもなんか癪だったし……まぁ、数百年前の私なら拾おうとは思わなかったと思うけど」

 

「ぷりゃあ?」

 

 

 まん丸とした巨大な一頭身の謎の生物。ガタルフとナディアに拾われた後、多摩町のとある芝生のある公園にて、どう対応すべきかと頭を悩ませたフリーレンが白哉達に相談することにした。

 

 フリーレンの連絡を受け集まった者達を見て、何事かと思っているかのように首を……というよりは身体全体を傾げる謎の生物。ぱちくりとした瞳で彼等を見ているだけで何もしない様子からして、現状では凶暴性はないということは断定されている。

 

 

「え、えっと……最初はダンボール箱の中に入ってましたよね? ということは、この子は誰かに捨てられたんじゃ……」

 

「でも、愛護動物を虐待したり捨てることは犯罪で、動物愛護管理法違反で罰せられると聞いたわよ? 多分、この子は野生だと思うわ……」

 

「いや、いくら魔族だらけの多摩町でもこんな希少種が徘徊してるとは思えねェよ……」

 

 

 この生物が何者なのか。何処から来た存在なのか。そもそもこれは生き物なのか……様々な疑問が飛び交う中……

 

 

「小倉さん? 何勝手にその生き物に近づいているッスか?」

 

「別に大したことするつもりはないよぉ。ただちょびっと、ほーんのちょびっとだけ毛をもらおうと思ってね」

 

 

 異常な程の研究バカ・小倉が、謎の生物から体毛を拝借しようとしていた。とはいっても、キラキラとした眼差しで『グヘヘヘヘッ』という言葉を漏らしているため、体毛を取るだけでは済まなさそうだ。

 

 

「いや、ホント無闇に近づかない方がいいッスよ? 牙も見えてたから噛み千切られる可能性もあるッス……」

 

「大丈夫大丈夫‼︎ 刺激を与えないように接すればモーマンダイなんだから‼︎」

 

 

 全蔵が止めようとするも、小倉の研究心がそれを許さんとする。瞳もよく見ればぐるぐる目となっており、まるで薬物を受けたかのようになっている。体毛を毟り取る気満々である。

 

 己の欲望まっしぐら。そろりそろりと謎の生物へとゆっくり近づいていく。

 

 

「さぁて……まん丸ピンクのかわい子ちゃん、ちょーっとごめんねェ。君の毛、ちょっとだけ借りておくね───」

 

 

 

「ぷりぃぃぁあ‼︎」

 

 

 

「ヒィッ⁉︎」

 

 

 小倉の行動に危険性を感じたのか、はたまた近づいて来た者を敵であると認識したのか、謎の生物は突然叫び出し、その大声とキラリと見える牙を用いて小倉を威嚇した。

 

 無論この威嚇に小倉が臆することがないわけがなく、小倉は思わずすぐさま後退し、全蔵の後ろへと回り込む。そしてひょこっと彼の後ろから顔を出すと、謎の生物はプルプルと体を震わせ、頬を大きく膨らませながら小倉を睨みつけていた。

 

 

「ぷりぃぃぃ……‼︎」

 

「あーあ、すごく怒ってる……小倉さんよかったッスね、下手したら少なくとも大怪我もんを喰らってたッスよ」

 

「うぅ……ご、ごめん……」

 

 

 少しでも誤った行動をしていれば、好奇心が身を滅ぼす典型例として小倉の身に危険が及んだことだろう。謎の生物が威嚇以上に危険な抵抗手段を取らなかったのが不幸中の幸いだろう。

 

 

「ぷぅぅぅ……‼︎ ぷりゃあ?」

 

 

 謎の生物が苛立ちを抱えたまま小倉を威嚇する中、突然ウガルルがその子の頭を撫でてきた。唐突な出来事だったものの、その撫で方が優しかったからなのか、謎の生物は小倉の時とは違い威嚇すらせず呆然とするだけだった。

 

 そんな性別も不明なその生物が戸惑う中、ウガルルは口を開く。

 

 

「大丈夫カ? お前、体震えてタゾ。何をされるのかわからなくテ怖くなっタんダナ? 右左が分からなくなっタリ知らない人と関わるとなるとそうなるよナ。ヨシヨシ」

 

「ぷ、ぷりぃあ……」

 

 

 謎の生物は内心戸惑っていた。自分が他人の仲間に対して敵意のようなものを向けてしまったのにも関わらず、自分の事を心配しているかのように声掛けをしてくるウガルルの優しさに対し、どのような反応をすればいいのかと判断出来ずにいたのだ。

 

 

「ウ、ウガルルさんが、怒り心頭に発してたよく分からない生き物の子を落ち着かせた……‼︎」

 

「そ、そうだよな……中々に良い対応の仕方とすごい精神だよな……未判明の種族に対して警戒心を見せずに心配させるなんて……俺達でもそう簡単にはできないことなのに」

 

 

 そして、ウガルルのその行動によって、意外だったという反応を見せたのは謎の生物だけではない。その生物を恐れていたシャミ子が愕然とした様子を見せ、白哉もウガルルの行動を予測できなかったのか驚きの表情を隠せずにいた。

 

 

「ぷりぃあああ……」

 

 

 その間に、謎の生物は小倉の元に寄り身体を地面につきそうな程に傾けた……否、頭を下げて謝罪の意思を示しているかのような仕草を見せてきた。

 

 

「えっ……? えっと、ごめんなさいって言っている……のかな?」

 

「ぷりゃあ」

 

 

 恐る恐る、小倉が話しかけるようにぽつりと呟くと、その言葉に反応したのか謎の生物は身体を縦に動かし肯定の意思を見せる。この反応からして、人間の言葉はある程度理解してると判断して良いだろう。

 

 

「そ、そうなんだね……こっちこそごめんね? 好奇心が止まらなかったものだから、怖がらせちゃったみたい……」

 

「ぷりぃ!!」

 

 

 小倉、考えるよりも先に謝罪の言葉が口から出る。謎の生物の心境に何か効くものがあったのか、はたまた無意識の内によるものなのか、真相は定かではない。

 

 だがそれでも、小倉が宥恕したことは確かである。それ知った謎の生物は歓喜した声を上げ、その気持ちが昂ったのかその場から周囲をピョンピョンと飛び跳ねる。

 

 

「ぷりりゃあ‼︎」

 

「んがっ⁉︎」

 

 

 その感情のまま、謎の生物はウガルルに飛びかかる……というよりは抱きついてきた。丸い巨体に勢いよく抱きつかれて立ったままの状態を維持できるわけもなく、ウガルルはその場で芝生の上に倒れ込んでしまう。

 

 

「急にどうしタんダ……あぁ、もしかして許してもらえタかラ褒めてほしいのカ? ヨシヨシ」

 

「ぷりゃりぃぁあ♪」

 

 

 抱きついてきたことに対する察しがついたウガルルが頭を撫でれば、謎の生物は満面の笑みを浮かべた。

 

 

「ぷりゃりゃあ♪ ぷりぷりぃ♪」

 

 

 そしてウガルルの元から離れて再び周囲を飛び跳ね回っていった。愉快に鼻歌を歌うかのように元気のある鳴き声を出しながら。

 

 

『(か、可愛い……)』

 

 

 無論、この無邪気さに初見の者達が愛々しさを思わないわけがなく、満場一致でそのような意見を内心呟いていた。あ、数百年前のフリーレンならそう思わないかも。

 

 飛び跳ねながら横にゆっくりと回転する謎の生物を見ながら、フリーレンは呟く。

 

 

「とりあえず……ここまでで分かったことは、この生き物は不用意に刺激を与えると凶暴になること。人の言葉は理解すること。話せば行動を弁えたりすることができること……この三つかな。接し方に注意すればこいつから被害を与えることはないだろうね」

 

「正しく狂犬注意‼︎ ……ってヤツでしょうか?」

 

「狂犬にしては可愛らしい見た目だけどな」

 

 

 現状では野生の動物らしい危険性が少ないことを把握した一同。だが謎の生物とは出会ったばかりであり、生態が未だに不明であることも確か。いずれにせよ注視し続けなければならないのも確かとなるのだ。油断ならない。

 

 と、そんな事を考えていれば。

 

 

 グゥウウウ……

 

『あっ』

 

「ぷりぃぁあ……」

 

「どうやらお腹が空いたみたいだね」

 

 

 謎の生物の、腹部が何処にあるのか不明な身体から鳴ってきた音。その音からして、謎の生物が空腹状態になったことが明らかである。

 

 と、ここで白哉達に新たな不安が過ぎる。

 

 

「この子って、何を主に食べるんだ……?」

 

『あっ』

 

 

 そう……好物や食べてはいけないものが何なのかのかといった、謎の生物の食事管理についてだ。この生物の身体に悪影響を及ぼす食べ物を与えてはならない。だが生態が不明である以上、どのようなものを与えれば良いのかという不安も過ってしまうものである。

 

 どうすれば良いのかと頭を悩まし始めていると、フリーレンが何か思いついたかのような様子を見せる。

 

 

「そうだ、丁度良いものがあるんだった」

 

 

 そう言いながらフリーレンが手提げ用のキャリーバックの中を漁り始めた。何やら物を探しているようだが……

 

 

「魔法使いが多い時代では、僧侶が使える女神様の魔法もあってね。それが書かれている聖典さえあれば、その魔法を僧侶じゃなくても使用することができるんだ。確かそれに、対象とした人の身体に悪影響を及ぼす食べ物が何なのか……食物アレルギーがあるかどうかを調べることができる魔法のある聖典もあったはず……」

 

 

 どうやら魔法の中にも魔法使い以外の者が覚える魔法があるらしく、それをその職を持つものでなくても、その魔法専用の本──聖典さえあれば使用できるようだ。矛盾している部分もあるが、とにかく発動する条件のある魔法もあるということは確かである。

 

 

「あったあった、これだよこれ」

 

 

 そんなこんなしている内に、見つけたであろう一冊のそこそこ分厚い本を取り出した。どうやらこれが聖典の一冊のようだ。

 

 

「これが聖典、ですか? ちなみにそれにはどんな魔法が……?」

 

「言ったでしょ? 食物アレルギーがあるかどうかを調べられる魔法だって。これであの生き物が食べてはいけないものが何なのかが分かるだろうね」

 

 

 シャミ子の問いかけに答えながら聖典を開き、探していたページを見つけたのかそのページを開きながら謎の生物へと近づき、右手を翳す。するとその右手が淡い黄緑色の光を発し、その生物の身体も光り出す。

 

 

「ぷりゃあ……?」

 

「あまり直接見ない方がいいよ。失明の恐れがある程の光じゃないけど、念のためにね」

 

 

 その光を不思議に思ったのか、謎の生物はその光を凝視しだした。その行動に気づいたフリーレンが目に影響を及ぼす恐れがあることを忠告し、凝視のしすぎを注意する。

 

 

「ふむふむ……あぁなるほど、そうなんだね」

 

「ぷりぃぁあ?」

 

 

 何がなるほどなのだと首を傾げる謎の生物を余所に、フリーレンは魔法で出した結果についてを明かす。

 

 

「どうやらこの子、食物アレルギーはないみたいだよ。苦手な食べ物があったとしても全部食べるっぽい。なんでも食べるタイプに近い」

 

「えっ!? そんなことまでわかるんですか⁉︎」

 

 

 どうやらこの魔法には対象者の好き嫌いの判別もできるようだ。心を一部覗くことができることはある意味魔法の言葉が違うようにも思えるが、料理で人をおもてなしするのに最適とも言えよう。

 

 ちなみにその魔法の効果にシャミ子が驚いていると、フリーレンが何故か自分の持つ魔法ではないのにドヤ顔する。そこにすぐさまガタルフが「フリーレン様が覚えている魔法ではないでしょう」と指摘するが、この威張りは『魔法はここまで進化しているものもあるのだ』という表れでもあるのだろうか。

 

 

「と、とりあえず……なんでも食べられるとするとでしたら、一応これでもなんとかなるかも……おやつタイムの杖ー!!」

 

「へぇ、お菓子も出せるんだ」

 

 

 シャミ子がなんとかの杖を変形させたかと思えば、撫子色の光を放ったのと同時にそこからクッキーやチョコレートなどの菓子類が降り注いできた。

 

 なんとかの杖。所有者が映像とかを観た知識を記憶して鍛えた武器観を活用・応用して変形・能力の発揮することが可能となる、ある意味最強の武器の一種。シャミ子の発想力さえ良ければ事件の解決も可能となるのだ。

 

 

「さぁ、お好きなものを好きなだけ食べてってください‼︎」

 

「ぷりぃ? ムグムグ……ッ⁉︎ ぷりゃあ‼︎」

 

 

 シャミ子に促されるかのように、彼女から手渡された皿に乗っているクッキーを口に運んだ謎の生物。するとどうだろうか。初めて食べたかのような衝撃を受けた表情になり、歓喜の声を上げると次々と菓子類を手に取っては口に運んでいった。それほどまでに美味だったようだ。

 

 

「おぉ……‼︎ 気に入ってくれました‼︎」

 

「やっぱりその杖は本物だったんだね。お菓子を出すだけで美味しくないのかそもそも食べられないのかと思ったよ」

 

「そこまでひどくはないで……って何しれっとこんぺいとう取って食べているんですか⁉︎ この子にあげるつもりだったのに‼︎」

 

「あげても大丈夫なのかの味見」

 

 

 フリーレン、シャミ子のなんとかの杖の性能を賞賛しながらどさくさに紛れてこんぺいとうを頬張っていた。何してんねん。しかし謎の生物はそれが自分のものであるとは気にせず次々と他の菓子類を嬉々として食べている。呑気かい。

 

 

「なんでも食べるタイプってことは……レモンをかけても大丈夫かしら?」

 

「苦手なものもあるらしいから余計なことは「ぷりゃむっ」って、あぁっ⁉︎」

 

 

 謎の生物がなんでも食べるタイプであることを見込んで、ミカンが菓子類の一つにレモンをかけようとしたため制止しようとした桃。だがミカンがその行動をする前に、そして桃が伝え終わる前に、謎の生物がレモンの果肉を丸々飲み込んでしまった。

 

 丸々一個ではなく切り分けたサイズとはいえ、それでも果肉を丸ごと口に入れてしまえば中々に高い酸っぱさが身体中に襲いかかってしまう。つまり謎の生物が酸っぱいものが苦手であれば、機嫌を悪くして何をするのか分からない。暴れ回る可能性があるだろう。

 

 が、しかし。

 

 

「ぷりぃぁあ‼︎♪ ぷりぷりゃあ‼︎♪ ぷりりぃ‼︎♪」

 

「えっ? めっちゃ笑顔になった……」

 

 

 暴れ回るかのような素振りを見せず、寧ろ菓子類を食べた時よりも喜びの感情を表に出していた。これが何を意味しているのか、それはもう大抵の者達なら察しがつくことだろう。

 

 

「も、もしかしてこの子……酸っぱいのが大好物なのだろうか?」

 

「で、何お前はレモンをお菓子にかけまくってんだ。ミカンじゃねェからやめとけって」

 

「それどういう意味なのよ⁉︎」

 

 

 拓海、謎の生物の意外な生態らしきことに驚きつつ、何処からか取り出してきたレモンの果汁を菓子類に一つかけていく。気に入ったものを同時に食べてもらいたいという欲が出たのではないだろうか。

 

 

「ムシャムシャ……ぷりゃ⁉︎ ぷりぷりぃぁあ‼︎♪♪♪」

 

「おぉ、やっぱり上手くいった……‼︎」

 

 

 レモン汁のかかった菓子類を口に運んだ謎の生物。すると目をキラキラと輝かせた上に声質も上がっており、レモンの果肉を食べた時よりもさらに喜びの感情を引き出していった。今日以上の歓喜の感情である。

 

 

「ぷりゃあ……♪」

 

 

 菓子類を全て食べ終わって満足したのか、謎の生物は満面の笑みを浮かべながらその場にペタンッと座り込んだ。少しウトウトとしながら鼻歌を歌っていた。

 

 

「……満足してくれたみたい」

 

「後は寝かしつけてあげれば問題ない……「ぷりぃ」ん? アレ、急に眠気覚めたのか?」

 

 

 しばらくは安心だと感じたのか白哉達も緊張の糸を解こうとしたところで、謎の生物が再びぱちくりとした目を開ける。突然眠気が覚めてしまうような出来事が起きるはずはないのだが、何があったとでもいうのだろうか。

 

 

「ぷり……ぷりゃあ‼︎」

 

「あっ、ちょっおい⁉︎」

 

 

 と、即刻その場の勢いで白哉達の元から走り去っていった。それも巨体とは思えない程の、短距離走アスリート並の速さで。まるで何かを追いかけているかのように、必死な表情で。

 

 

「ちょっと、そっち住宅街……‼︎」

 

「さすがの非常識の受け入れスピードの早い多摩町市民でも、あんなのが町に初見で現れたら驚かれるだろ……‼︎」

 

「と、とにかく止めに行きま……アレ? フリーレンさんは?」

 

 

 白哉達が謎の生物を止めるべく動こうとしたところ、シャミ子がフリーレンが突然いなくなったことに気づく。この突然の緊急事態に一体何処に行ったというのか。そしてどのタイミングでいなくなったというのか。別のトラブルが周囲を戸惑わせる。

 

 そのいなくなった張本人であるフリーレンは、既に飛行魔法で住宅街の上へと飛んでおり、そこから謎の生物が何処にいるのかと目で辿って探していた。判断が早いものの、白哉達に一言声を掛ける必要があったのだが……

 

 ふと、フリーレンの視線が一点に止まる。謎の生物の居場所を特定したのか、視線の向いたその位置へとゆっくりと降下していく。

 

 

「……なるほど。これが目的だったんだね」

 

 

 そう呟くフリーレンの表情はどこか安堵しているかのように微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 時は僅か数秒前に遡る。謎の生物が満腹によって睡眠を取ろうとした、その直後だった。

 

 

「ZZZZ……」

 

 

「ぷりぃ?」

 

 

 謎の生物は見たのだ。公園の外を通過しているトラック運転手が、居眠り運転していたところを。

 

 

「ぷり……ぷりゃあ‼︎」

 

 

 その状態の危険性を既に把握していたのか、そのトラックを止めるために走っていったのだ。

 

 全速力でトラックに追いつこうと疾走していき、運転手がアクセルを全開にして踏んでいなかったのが吉と出たのか、やがて後部側に額が付きそうなところにまで追いついた。それと同時に……

 

 

「待って‼︎ 危ない‼︎」

 

「うわぁああああああっ‼︎」

 

「‼︎」

 

 

 曲がり角から飛び出してきた、自転車に乗っている子供の姿が見て取れた。女性の呼び止める声が聞こえた点からして、母親と一緒に出掛けているところだと思われる。

 

 だが今は現状の整理をしている場合ではない。このまま居眠り運転のトラックを放置すれば、子供は轢かれて最悪の場合死に至ることだろう。

 

 しかし、それを謎の生物は許さなかった。

 

 

 

「ぷりぃぁあ‼︎」

 

 

 

 回り込むように素早くトラックの前に立ち、なんと光の縦長な長方形となっている障壁を展開。その障壁は衝突したトラックを、ヒビ一つも付けずに一瞬にして停止させたのだ。

 

 

「フガッ⁉︎ な、なんだなんだァッ⁉︎」

 

 

 障壁との衝突による振動が大きく伝わったのか、その衝撃で居眠りしていたトラック運転手は強制的に目が覚める。そしてその衝撃の正体が何なのかとその場をキョロキョロと見回していると。

 

 

「ぷりゃあ‼︎ ぷりぃ‼︎」

 

「うわっなんだこの化けも……えっ?」

 

 

 突然大きな鳴き声で謎の生物に吠えられ、その容姿にトラック運転手は恐怖の声を上げる……が、その生物が指差した方向をふと見て、その恐怖や焦りは気が抜けたかのように飛んでいった。

 

 謎の生物の背後には、その子に庇われたことで気が抜け、思わず自転車と共に倒れ尻餅をついて呆然としている男の子。そしてその子の怪我がないかどうかを確認しに駆け寄った母親の姿。

 

 この光景から、トラック運転手は謎の生物が自分のトラックから男の子を守ろうとしていたことを察せられたのだ。

 

 

「えっと……も、もしかして俺……取り返しのつかないことをしそうだったのか……? って、あぁっ⁉︎」

 

 

 状況を完全に理解した上で、何故今のような状況となっていたのかの原因に気づいたのか、トラック運転手は青褪めた表情となって叫んだ。そしてすぐさまエンジンを切ってから運転席を降り、親子の元へ近づき勢いよく頭を下げた。

 

 

「す、すみません‼︎ 気づいたら寝ながら運転していました‼︎ ホントすみません‼︎」

 

「えっあっ。い、いえ、この子が無事なら……怪我もなかったみたいですし……」

 

 

 どうやらこのまま放っておいても問題無さそうだ。謎の生物はそう判断したのか、白哉達の元へと戻るべくとてとてとその場を去ろうとした。

 

 

「ね、ねェ‼︎」

 

「ぷりぃ?」

 

 

 ふと、男の子に呼ばれたことに気づきその場で振り返る。

 

 

「ありがとう‼︎」

 

「……‼︎」

 

 

 ありがとう。それは謎の生物にとっては初めて掛けられた言葉。感謝の意思の込もったその言葉が自分に宛てられるとは思っていなかったのか、謎の生物は思わず目を見開き愕然とした表情となった。

 

 それと同時に、嬉々とした感情も引き上げられていた。『感謝された』ということを理解し、それを実感したのだろう。すぐさま表情を変えて笑顔になり、手を振る男の子に対して手を振り返した。

 

 

「ぷりゃあ‼︎」

 

 

 男の子が笑顔になる。それを確認した謎の生物は今度こそ走り去っていった。先程浮かべていたよりも嬉々とした笑顔で。

 

 

「お疲れ様。さっきの決死の対応、見ていたよ」

 

「ぷり……りゅぁっ」

 

 

 衝突事故になり掛けた状況の収集をしている三人が豆粒のように遠く見える位置にまで走っていったところで、フリーレンが浮遊魔法を解除して謎の生物の元へと降り立った。

 

 それに気づいた謎の生物は、自分が勝手に白哉達に何も言わずに走り去っていったことを思い出し、勝手な行動をしたことに対して謝罪したのか頭を下げた。

 

 しかし、フリーレンは叱りなどせず、寧ろその頭を優しく撫でた。

 

 

「気に病まなくていいよ。空からお前を……いや、君の事を探して見ていたから。あのトラックから子供を守った……というよりも先に居眠り運転手を止めようとしていたんでしょ。ぶつかりそうになる前から追いかけてたように見えたから。よく頑張って体を張ってたね。よしよし」

 

「ぷりっ……ぷりぃぁあ……‼︎」

 

 

 謎の生物、フリーレンに褒められて歓喜の声を上げる。一日に何度も褒められることなんてないと感じていたからなのか、いつもよりもその喜びに満ちていたようだ。

 

 

「あ、いた‼︎ フリーレンさんだ‼︎」

 

「それにあの生き物まで‼︎ おーい‼︎」

 

 

 と、そこに二人(というよりは一人と一匹)を探していた白哉達が二人(というよりは一人と一匹)の元へと駆け寄ってきた。そしてその内の一人・ガタルフが眉に皺を寄せた表情でフリーレンに詰め寄った。

 

 

「フリーレン様、何も言わずに急にいなくならないでください。まさか僕達の見えないところでそこの子を討伐する気なのかと思いましたよ」

 

 

 どうやらガタルフはフリーレンが独断行動したことに怒りを覚え、その行動から取り返しのつかないことをしているのかと危惧していたようだ。後者はまだしも、前者に関して何か苦い思い出でもあったのだろうか。

 

 何処か自分の……師匠の事を信じてないのかこいつ。という不信な察しがついたのか、フリーレンは不貞腐れたかのように目を細めた。

 

 

「……私がそんな昔の……魔族と戦ってきた時みたいに見える? あ、でもその時の事はガタルフもナディアも知らないか」

 

「確かにその時の事は全然知りませんが……人間の言葉を話さない魔物の可能性がありましたし、何よりその子は小倉さんに威嚇して襲いそうな勢いでしたので、もしかすると……と思いまして」

 

「昔ならそうしてたと思うけど、少なくとも今この町で何も考えずに決めつけで討伐したりなんかしないよ。まぁ、警戒したりはするけど」

 

 

 ここでガタルフ、ポイ捨てされた多くのゴミを見降ろしているかのようにフリーレンを睨みつけた。

 

 

「そうですか? ですが昔が昔ですし、魔族に関してはまだ割り切れてない可能性も捨てがたいのですが」

 

 

 これにはフリーレン、ガタルフの表情と先程の意見に呆然としたのか目をぱちくちとした。

 

 

「………………えっ? 私、急に信頼度が落ちたの? なんで?」

 

「先程言った通りの考えもありますし、先程までの独断行動がそれを物語っているような気がしまして……」

 

 

 過去の出来事からの不信感。監視する者無しでの行動。それらが己の信頼度の低さを物語っていたのだと知ったフリーレンは、しょぼしょぼ顔になりながら両手の人差し指をくっつけてもじもじとする。

 

 

「い、いやでも、あっちの方の魔族がいなくなって数百年経ったんだし……」

 

「そうなる前の千数年は各地にそいつらがいたではないですか。しかも魔族撲滅を決めた時には一族を滅ぼされたと聞きましたし。それほどまで長く魔族と戦ってきたら、吹っ切れてこの町の魔族達を完全に受け入れられているとは限らないと思います」

 

「ウッ……」

 

 

 正論、図星、論破、三連決まってフルコンボだドン‼︎ そしてフリーレン、何も言い返せなくなったのかついに落胆によって項垂れる。

 

 

「………………長生きしたことでよくない事が起きることって、こういうところにもあったんだね。お義姉さん、悲しくなってきた……」

 

「(二千数年も生きた人はお義姉さんどころか叔母さんの域を超えてるよ……でもフリーレンを泣き喚かせたくないから黙っておこ)」

 

 

 桃、フリーレンが年齢的に釘を刺したくなる言葉を聞いたため、それを指摘したがるものの、今後のトラウマ再来を恐れ内心で留まることにした。女性に年齢に関することを聞くのはタブーだからね、仕方ないね♂ 特に滅茶苦茶長生きするエルフには。

 

 

「ぷりゃあ」

 

「ありがとう、君は優しいね……って、浮くことできるんだ」

 

 

 落ち込んでしまったフリーレンの頭を撫で宥める謎の生物。しれっと浮遊能力が備わっていることを無意識のうちに披露しているが、フリーレンは敢えてツッコむだけでそれ以上の指摘をしなかった。急に仲良くなったなこいつらは。

 

 

「あ、あの……ところで、フリーレンさんとその子は、私達からいなくなってからはどうしてたんですか?」

 

「あぁ、その事を話さないといけないね。特にこの子の……いや、サケブシッポの勇姿について」

 

『サケブシッポ?』

 

「? ぷりゃあ?」

 

 

 シャミ子のここまでの経緯について聞かれたため、フリーレンはその事を説明するを伝えた。謎の生物──サケブシッポに先程の名前をつけて。

 

 

「この子の名前。名前がないと呼ぶのが大変だからってことで、今思いついて付けた。結構叫ぶように鳴いてたし、尻尾みたいなパーツも目立って気になってたから……ね?」

 

「な、なるほど……って」

 

「ぷりぃぁあ……‼︎♪」

 

「す、すごく目をキラキラとさせせてる……そんなに気に入ったのかな……?」

 

 

 どうやら謎の生物──サケブシッポはフリーレンに付けられた自分の名前に愛着が沸いたのか、瞳を光沢のように輝かせながらフリーレンを凝視した。いやいくらなんでもこの短時間で懐かれすぎである。

 

 

「まぁ……フリーレンさんに少しは箔を押してもらえたのなら、俺達もとやかく言う必要はねェか……これからよろしくな、サケブシッポ」

 

「ぷりゃあ‼︎」

 

「むぅ、少しとはなんだ少しとは。曖昧な箔なんか押さないよ私は。ちゃんと安心できるって証拠をこれからさっきまで起きた出来事を話して証明するんだから」

 

 

 何はともあれ、こうして多摩町……そしてばんだ荘に、新たな魔族(?)仲間・サケブシッポが加わるのだった、

 

 ちなみにサケブシッポはウガルルと共に門番を務めることとなり、小さな丸い手で器用に箒を持って掃いたり道中の子供をあやしたりこれらの行動をウガルルに褒められ頭を撫でられ喜ぶ姿をよく見せることになるのだが、それはまた別の話……

 




また他作品から準レギュラーを増やしちゃったよ……でも、さすがにこれ以上他作品の準レギュラーは出ないと思う。多分。

おまけ:現時点でサケブシッポが覚えている技(SV仕様でランダムに変わるため、他にも覚える技あり)
サイコファング
ばくおんぱ
リフレクター
ひかりのかべ
 
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