偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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フリーレン、多摩市ぶらり旅の配信をするよってことで初投稿です。

チャットコメントって小説ではどんな感じに書けばえぇの? 分からん……


【フリーレンののんびり旅+αチャンネル】多摩市いいとこたまにはおいで【お知らせあり】

 

 魔族と魔法少女が共存している町──多魔市せいいき桜ヶ丘は、今日もぽかぽか日和であった。

 

 その町にある、照らす太陽と寒風が相応し涼しい風がそよぐ河川敷にて、一人の女性が伸ばし棒を付けたスマホを使い、何やら撮影を行い始めていた。

 

 

「はい、始まりましたー『フリーレンののんびり旅+αチャンネル』。今回巡る町はここ、東京都多魔市せいいき桜ヶ丘でーす」

 

 

『きたァァァァァァッ‼︎』

『待ってました‼︎』

『新作ktkr』

『うぽつ』

『ども』

『ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので』

『おいフライングしたグルメサラリーマンいるぞw』

 

 

 希薄な感情ながらも、自分の撮影──生配信を観ている者を楽しませようとする構えを見せながらそう口にし、画面に向けて微笑みを浮かべるフリーレン。

 

 歓迎会にてフリーレンが白哉達にも語ったことではあるが、実はフリーレンはこの世界のYo○tubeであるWeTube(ウィーチューブ)や、この世界のニ○ニコ動画であるノコノコ動画に、自分の旅を動画にしたり配信したりしているのだ。ノコノコノコノココシワァッワァッ

 

 今もこのように、フリーレンは自分が訪れている町で何をしているのかを配信したり、それらの切り抜き動画を作って投稿したりしていき、そうして得た多大なお金を生活費に当てている。

 

 だが、今回のぶらり旅はいつものとは異なる部分がある。それはというと……

 

 

「おっ、いきなりこの町の事に関するコメントが来た。えっとなになに……『めちゃくちゃヘンテコな町じゃんこれ』? 『あぁ、見た目が化け物なだけで優しい人がいるって噂の町か(笑)』? 『見た目だけ化け物とか草』? 『市民もそれを結構スルーするから変www』? 『常識外れってことかwwwwww』? いや言い方に悪意あるよ」

 

 

『ひでぇwww』

『悪意ってwww』

『みんな言い過ぎ言い過ぎwww』

『噂でそういうの聞いたことあるけどこれは……(笑)』

『ってかその悪意のあるコメント全部読まれてるやん』

『あーあ、ご愁傷様』

 

 

 フリーレンがいるこの町・多摩町の事を噂程度などで知っている視聴者から、多摩町やこの町に住む住民の事をよく思っていないかのようなチャットコメントをしていることだ。

 

 これまでのフリーレンの旅動画の配信にて、彼女が訪れている町の事を誹謗中傷しているかのようなコメントを、疑惑判定となるものすらしてこないのが普通だった。だが今回は、魔族が多くいた時期があったためか、噂だけで最低でも疑惑のコメントが出てしまっているのだ。

 

 

「あのね……噂だけでこの町やそこに住む人達の事を、そしてその人を見た目だけでよく思っていないような発言はやめた方がいいよ。その些細なことだけで人間は心に傷をついてしまうからね」

 

 

『あ、キレてるぞこの人』

『やっぱフリーレンちゃんは見逃せないかー』

『あ ほ く さ 俺は帰らせてもらうぜ‼︎(フラグ)』

 

 

 無論、フリーレンは動画を視聴・投稿する際のガイドラインを読んでいたからでもあるのか、それらのチャットコメントを無視できる程の冷遇さはなかった。眉を細めながら寄せ、不満そうな顔で睨みを効かせながら言葉を続ける。

 

 

「言っておくけど、私の耳もみんなと違って尖っている。二十年も動画投稿を続けているのにみんな私の事を『初期からずっと若いままとは美魔女か?』と言っている。だけど、この動画を嬉々として観ているみんなはそんな私を受け入れてくれている。なら、見た目が明らかに普通の人間ではあり得ないと思えてしまう人を見かけたとしても、その人の事をどうこう言う太刀ではないはずだよ? 個性は人それぞれ、とも言うしね。次またこの町の事を否定するようなら、さすがにブロックしかねないから」

 

 

『ファッ⁉︎』

『ヤベェ、めちゃ怒ってるよこの子』

『そういやフリーレンちゃんはこういう子だった』

『もうダメだ……おしまいだぁ……』

『オイオイオイ』

『死ぬわアイツら』

『多摩町のみなさんごめんなさい‼︎』¥20000

『軽率でしたッ‼︎』¥15000

『すみません許してください。何でもしますから』¥27000

『ん? 今何でもするって言ったよね?』

『(何でもするとは言ってない)』

『ホモは帰って、どうぞ』

 

 

 フリーレンの怒りの交えた正論が視聴者に襲い掛かる。これを機に次々とフリーレンや多摩町の住民に対する謝罪の言葉などがチャットコメントとして飛び交っていく。中にはスーパーチャットでお金を送っている者もいる。どさくさに紛れて汚いネタのチャットコメントも出ていたが。

 

 これで多摩町を貶す者は少なくとも減った。それを確認したフリーレンはむふーっとドヤ顔をし、視聴者達に余計な警戒をしなくてもよいという意思表示を見せた。

 

 

「分かってくれたのならいいよ。それじゃあさっき君達が言っていた多摩町の批判を払拭するためにも、早速町巡りしていくよ」

 

 

『あ、これしばらく根に持ちそう』

『おまいらもう地雷踏むなよ』

『フフフフフ……セック(ry』

『パァンッ ヤメナイカ‼︎』

『わざわざ別の地雷踏もうとしてる奴おるで』

『フリーレンは気にせず旅開始しちゃってー』

『あー心がぴょんぴょんするんじゃ〜』

『まだはえーよ○セ』

 

 

「はい、よーいスタート」

 

 

 旅の開始の軽い合図と共に、改めてフリーレンの旅配信が始まった。果たして今回はどんな旅になるのやら。

 

 

 

 

 

 

 フリーレンが訪れたのは、たまさくら商店街。駅東口側に古くから存在している商店街で、駅西側噴水広場前に新しくできた大型ショッピングセンター・マルマと連携して町の活性化に一役買っているとのことだ。

 

 

「それじゃ、まずは知り合いオススメの店からいくね」

 

 

『ん? ヘアッ⁉︎』

『志村後ろ‼︎』

『なんか着ぐるみがダイナミックな動きしよる⁉︎』

『こりゃあとんでもねェバケモンが出ちまった……』

『アレが噂の中の一人か……?』

 

 

「後ろ? 着ぐるみ?」

 

 

 視聴者のチャットコメントの一部を見て気づいたのか、反射神経で後ろを振り向く。

 

 そこには三頭身の丸くて大きい白い猫のような着ぐるみが、主に子供がいる数多くのギャラリーの前でバク宙を見せていた。着ぐるみなのに運動神経と柔軟性がかなり良すぎるとはどういうことか。

 

 余談だが、今たまさくらちゃんはバク宙しながら何やらおでんを作っているかのような仕草を見せており、しかもその証拠か田楽を右手に持っていた。着ぐるみの上でもめっちゃ熱そう。

 

 

「あぁ、アレはたまさくらちゃん。たまさくら商店街のゆるキャラで、この町で結構人気あるんだよ。たまさくらちゃん好きの知り合いの話によれば、多魔市の大きな桜の古木から生まれた妖精だとか、ヌンチャクの扱いが上手いとか、特技は持っている茶碗から中毒性の高い飴を無限に溢れ出させたり、さっきみたいバク宙しながらおでんを作ったり、後なんか忍者刀を使った壁登りができたり……だってさ」

 

 

『いや設定盛りすぎwww』

『なんだその妖精www』

『ってか今おでん作ってたんかwww』

『それって中の人もすごい……ってコト⁉︎』

『……‼︎』

『中の人言うな』

『中には誰もいませんよ』

『ヤベッゆるキャラガチ勢いたわ』

『大体ハチワ○がそんな事言わないもんね』

『っつーか飴の無限増殖て……』

『飴で子供の洗脳でもするんか?』

『忍者刀って確か短いんじゃなかったっけ?』

『それで壁登りとかスゲェな……』

『ヌンチャクを使うだけでも普通にスゴイけどね……』

『誰だよ属性過多にした奴はwww』

『元から備わってたりして』

『つまり実際にいる生き物が元ネタ……ってコト⁉︎』

『……‼︎』

『それが本当ならそのネコやばたにえん』

『ヤバいの領域遥かに超えてるだろ』

 

 

 フリーレンがたまさくらちゃんの事を説明すれば、その設定の多さと濃さでチャットコメントがかなりの反応を見せだしてきた。かなり設定が目立っていたからなのか、どうやら今後視聴者の中でたまさくらちゃんのファンが増えることだろう。知らんけど。

 

 

「ま、たまさくらちゃんの詳しいことについてはまた別の機会で話すよってことで、気を取り直して最初の店に行くよ」

 

 

『えっもう終わり?w』

『待って待ってめっちゃ気になってんだけどたまさくらちゃんwww』

『気になりすぎて町紹介が頭に入りそうにねェwww』

『さすがスルー力の高いフリーレン様www』

 

 

 動画の本題はたまさくらちゃんについてではなく、多摩町を気ままにぶらりと回ることである。その建前をしっかりとしているフリーレンがたまさくらちゃんの話題を切り上げようとしたところで、その事をまだ引き摺ろうとするチャットコメントが次々と流れ込んできた。

 

 また別の機会で話すからともう一度伝えようとしたものの、最後に流れたチャットコメントを見て再び睨み顔を効かせる。

 

 

「スルーとか失礼な。話題の切り替えと言ってほしいな」

 

 

『オイまた怒らす気かおまいら』

『オイ‼︎ 言葉を慎めよ‼︎』

『サーセンwww』

『申し訳ございません(^u^)』

 

 

 ある程度のアンチコメントへの指摘が出たチャットコメントを確認したフリーレン、ここで一軒の建物の目の前に止まる。そこは明治時代にありそうな西洋風の朱色の本屋であった。

 

 

「ここは本屋『本の祭典 スカーレット』。三千種類以上をも誇る本を販売している、世界一本の種類が多い店として噂されてるよ」

 

 

『3000種類以上もねェ……ファッ⁉︎ 3000種類以上⁉︎』

『本多すぎだろ⁉︎』

『古本屋でもそんな多いはずないだろ⁉︎』

『ブック○フ顔負けやん』

 

 

 販売している本の種類が尋常じゃない多さだと知った視聴者、動揺のチャットコメントを次々と上げていく。本屋は本来出す本の種類は数百種類なのだが、『本の祭典 スカーレット』はその域を超えている。そのため視聴者が反応せざるを得なくなったのだ。

 

 

「とりあえずまずは撮影交渉してくるね」

 

 

『出た‼︎ フリーレンさんのアポなし突撃&ガチ撮影交渉‼︎』

『いつも交渉やるとか律儀だなー。当たり前だけど』

『行き先が事前に決まったヤツは事前にアポ取ればいいのに……』

『オイこの中に空気を読まない鬼畜ロボットがいるぞ』

『直接即日取材交渉はぶらり旅ならではだルォッ⁉︎』

『うわ急に真っ暗になったぞ⁉︎ ここ停電してんのか⁉︎』

『バカヤロー撮影OKが出るまで引っ込ませてんだよ』

 

 

 早速店の中を撮影してもいいのかという交渉を持ちかけに行くフリーレン。店のコンプライアンスを守るため、スマホを誤って配信終了のボタンを押さないように慎重にポケットの中に入れながら。

 

 そして僅か二分後。フリーレンはしまったスマホを伸ばし棒に付け直し、カメラを自身に向けてから笑顔で口を開く。

 

 

「あっさりとOKしてくれたよ。知り合いの友達だと答えたら即あっさりとね」

 

 

『えっもう⁉︎www』

『早っwww』

『はえーよホ○』

『店長さん、優しいのか単純なだけか……』

 

 

 撮影の許可をあっさりと承諾させた店長に対する反応を見せるチャットコメントを出す視聴者を余所に、フリーレンがカメラ機能を自撮りモードに変更させ、その店長であるだろう頭頂部ら辺が長く逆立っている濃い赤色の髪の男性を映した。

 

 

「彼がこの『本の祭典 スカーレット』の店長で、吸血鬼の魔族のブラム・スカーレットさんだよ」

 

「はじめましての者ははじめましてだな‼︎ 我こそがこの『本の祭典 スカーレット』の主任であり、誇り高き吸血鬼の魔族である、ブラム・スカーレットである‼︎ この名を覚えて帰る……ではなかったな、覚えてから最後までフリーレンとやらの配信を観ると良いぞ‼︎」

 

 

 フリーレンが紹介してきたのを皮切りに、ブラムは羽織っていたマントを腕で豪快に靡かせながらポーズを取った。

 

 しかも吸血鬼らしい鋭く長い歯を見せつけ、シルエットっぽく全身が赤色となっている蝙蝠が数十匹ほど寄せつけ、さらなる見せしめとして背中から赤く巨大な翼を広げて見せた。

 

 

『ファッ⁉︎ ビックリした⁉︎』

『蝙蝠いっぱい出てきおった⁉︎』

『シルエットっぽい蝙蝠なんて実際に見たことねーな……』

『ってか翼って……』

『うわっリアルにバサバサ動いとる』

『すごく……(翼が)大きいです……』

『CGなのかこれ?』

『配信っつーか生放送でCGが作れるわけないだろいい加減にしろ』

『えっ⁉︎ ということは、マジで吸血鬼なのか⁉︎』

『マジでいたのか……』

『さすが化けも……じゃなくて。ファンタジーな奴がいるって本当だったのか』

『というか魔族って?』

『あぁ‼︎ それってハネ○リボー?』

『おい、質問に答えろよ』

『吸血鬼と魔族って一緒なんじゃねェの?』

『なんですか? じゃあ魔族と妖怪も一緒だと言うのですか?』

『ゲッ、正論だこれ』

『とにかく多摩町ってスゲー‼︎』

 

 

 ブラムが人間ではないことが証明されたことで、次々と驚愕のチャットコメントが飛び交っていく。そのコメントを見つけたブラムが『おぉ……‼︎』と歓喜した声を上げ、そして高笑いした。

 

 

「フハハハハハ‼︎ 我が魔族である証拠を見せただけで、こんなにもチャットコメントが稼がれるとはな‼︎ フリーレン殿よ、これは貴殿も喜べるものかね?」

 

「うん、どっちかと言うとって感じだけどね。この町に魔族がいるって噂が本当なのを証明できたし、お互いにWin-Winでしょ?」

 

 

 多摩町の噂を証明することができ、それによるフリーレンのチャンネルのチャットコメント稼ぎもできた。正に一石二鳥と言うべきか。

 

 

「あっそうそう……」

 

 

 ここでフリーレン、画面に向かって三度睨み顔を見せながら語り出す。まるで悪しき者に対する怒りの矛先を向けているかのように。

 

 

「魔族の敵である君達に告げるよ。ここは魔族が共存して暮らすことのできる町なんだ。魔族がいるからと言って、襲うとかそういう邪な真似しないでね。最悪、この町の一番偉い人に捕まったりこの町を出禁になったりなどの厳しい罰があるから」

 

 

『えっ何? 魔族って狙われてんの?』

『狙われん方がおかしいだろ』

『翼の動きからしてコスプレじゃないしね……』

『見た目が人間じゃないからな』

『もうちょいオブラートに包めよ』

 

 

「後、みんなも魔族を見たからって通報とかやめなよ? 彼等がいる事は法律上問題ないことなんだ。かなりの悪い事をしなければ、だけどね」

 

 

『差別のようなことはアカンってことね』

『魔族も人間と同じく心を持った生物、はっきりわかんだね』

『ハイ‼︎ ワカリマシタ‼︎』

 

 

 さらに釘を打つかのように、フリーレンはまぞく差別をしそうな者へのダメ出しをする。魔族は普通の人間とは多少……否、全く異なる容姿や人間が持たない体の一部を持っている。そのため、『人間じゃないから』と差別や決めつけをするのをよろしくないという指摘を入れているのだ。

 

 

「(にしても、魔族も人間と同じく心を持った生物、か……そうとも限らない種類の奴も大昔にはいたけど、ややこしくなるからその事は言わないでおこう)」

 

 

 種族が多摩町に住む者とは異なると言えど、魔族の事をかなりの警戒・毛嫌いしていた頃の彼女と同一人物とは思えない発言をしたことに対し、フリーレン本人は苦笑しながらこう思った。自分は変わりすぎたのかもしれないな、と。

 

 

「はい、魔族に関することはこれで終わり。これからブラムにオススメの本とか他に多摩町で有名そうなところなど、そういったことを聞くね」

 

「うむ‼︎ 我がフリーレン殿からの質問にジャンジャンと答えてゆくぞ‼︎」

 

 

 ある程度チャットコメントが落ち着いたのを確認したのか、フリーレンはブラムから様々な話を聞くことにした。

 

 この後、魔法使いと繋がりがあるとして『○リー・ポッ○ー』の本を薦められた時にかなりの興味を示したり、これまでの旅の事について聞かれたりすることになった。

 

 

 

 

 

 

 しばらく『本の祭典 スカーレット』を訪れた後、フリーレンはカメラ専門店である『ミドリカメラ』で様々なカメラを体験させてもらったり、『アニ○イト』の店前に貼られているたまさくらちゃんのアニメグッズのチラシを見て驚いたりと、たまさくら商店街を満喫していった。

 

 

「テーマパークに来たみたいだね。テンション上がるなー」

 

 

 そして次に訪れたのは、その商店街と連携しているショッピングセンターマルマ。百円ショップやフードコートなど、比較的新しい店舗が多く入っている。

 

 そんな中、フリーレンがとある店に目をつけた。そして興味を示したのか、再び伸ばし棒からスマホを外す準備を整え始めた。

 

 

「……よし。念のため撮影交渉してくる」

 

 

 これである。

 

 

『ショッピング内の店でも交渉するんかw』

『こまめで真面目だなwww』

『アレ? そもそもショッピングセンターの中を撮影する時点での交渉も必要なんじゃ……』

『細けェこたァえぇやろ‼︎』

『それ以上はいけない』

『気にするな‼︎(某魔王様風)』

『もしダメだったら店側が注意してくるからいいじゃん』

『いやでもこのチャンネルが消される可能性があるんじゃ……』

 

 

 フリーレンの真面目さ、そもそもショッピングセンター内の撮影交渉はいいのかという問いかけ、様々なチャットコメントが飛び交ってきた。それに反応したフリーレンがみんなの不安を解消すべく口を開く。

 

 

「ちなみにこのショッピングセンターの中の撮影交渉自体は既に済ませたから、そこのところは問題ないよ」

 

 

『はえーwww』

『マジはえーよホセ』

『おい仕事しろ伏せ字』

『事前交渉もしっかりとしてましたかw』

『ぶらり旅って行き先が事前に決めちゃいけないのでは……?』

『細かいこと言うなや』

『そこは「細けェこたァえぇやろ‼︎」だろ』

『トラブル減るから逆にいいことだって』

 

 

 賛否両論もあったチャットコメントで皆が納得したと感じたのか、フリーレンはスマホを懐にしまい、とある店の撮影交渉に入った。

 

 そして僅か二十秒後。スマホを取り出したフリーレンが微笑みながら視聴者に次の言葉を伝えた。

 

 

「OKもらった」

 

 

 まさかの『本の祭典 スカーレット』よりも早いあっさりとした撮影許可OKのサイン。それも三十秒もしない内に、だ。

 

 

『いやいやいやいやいやいやいやいやwww』

『スカーレットよりも早すぎだろwww』

『1分どころか30秒すら経ってなかったwww』

『人が良いってレベルじゃねェだろwww』

 

 

 あまりの撮影の許可を得る早さに、それに驚きを見せるチャットコメントが次々と飛び出してきた。本来ならアポイント無しの突然の撮影交渉など躊躇いを見せるものなのだが、多摩町にはそういうものがないのだろうか。

 

 そんな我々の疑問など無視し、フリーレンはカメラを店の方に向けた。その店の名は『マルマ精肉店』。名前の通り精肉店──肉屋──らしい。そこで現在、黒がかった茶髪の女子高生らしき女子がレジ前でトングを持っていた。

 

 

「許可を出してくれてありがとう。まさか二つ返事でOKを貰えるなんて思わなかったよ」

 

「いいってお客さん‼︎ そっちはチャンネル登録者が増えやすくなって、こっちは店の人気が出やすくなったんだし、Win-WinだよWin-Win‼︎ だからそんな気にすることなんてないって‼︎」

 

 

 軽い。この女子高生らしい元気な女子、軽い。否、店長の方も軽いと言った方がいいだろう。撮影許可を取ってくれたのもそんな性格だと想像できるのだから。

 

 

『軽ッwww』

『軽すぎにも程があるwww』

『本日2回目のWin-Win(笑)』

『そういやスカーレットを訪れた時にフリーレンも言ってたわ』

『一回の配信でそんな言葉を2回も聞くとは……』

『ってかこのチャンネルの人気上昇にあやかってない?』

『姑息な手を……‼︎』

『ブックス‼︎』

『前コメの元ネタをバラすなよ』

 

 

 この時のチャットコメントはご覧の通り。店員のノリの軽さや使われた言葉、それに反応している時のネタ発言に関する指摘などと言ったコメントが次々と出てくる。だが後者は現状と全く関係ないことなので気にする必要はないだろう。

 

 

「……ん?」

 

 

 ふと、その女子がフリーレンの顔をまじまじと凝視し始める。本来ならば人は、自分の顔を直視されれば困惑したり恥ずかしく感じたりするものなのだが、感情に乏しいエルフであるフリーレンはそれで戸惑うことはなかった。

 

 

「……どうしたの? 私の顔をそんなマジマジと見て。私の顔に何かついてる?」

 

「あぁいや、ごめん。なんかどっかで見たことある顔だなーって思っててさ……」

 

 

『おおおおおおおおおっ‼︎ てぇてぇ』

『百合ですねありがとうございます』

『あ〜心がぴょんぴょんするんじゃ〜』

『これぞ我々では辿り着けぬ境地……』

『あ、俺が百合の間に挟まれて56される男やりまーす』

『自滅宣言ワロタ』

『そのまま4んでしまえ』

『は? NLしか勝たんが?』

『どうして同性に惚れる必要があるんですか?』

『男は女を、女は男を愛せ』

『同性愛はタイーホ』

『うわっNL過激派だ』

『思ったよりもたくさんいやがる』

『みんな捕まる前に逃げるぞ‼︎』

『人の好みをバカにすんじゃねェ‼︎』

『乗るなエー○‼︎ 戻れ‼︎』

『おまいらさぁ……ただただ見つめ合ってるだけの客と店員を百合だとか思ってんじゃねェぞ』

『アレだけで恋が始まるとは限らないし』

『そうそう』

『それもそだな』

『せやかて工藤』

『おい関西弁の探偵がいんぞ』

『ってか工藤って誰だよ』

『歩く死神』

『オイ言い方www』

『コ○ン君に謝れwww』

『同一人物』

『わーっとるわ』

 

 

 どうやら皆、フリーレンと店員が目線を合わせただけで過度な想像をしていたらしい。それに対して炎上しかねない反応をする者がいれば、状況的に可能性が薄いことを指摘する者もいた。一時的に賛否両論が激しいチャット欄になった出来事である。

 

 

「………………あぁ‼︎ 思い出した‼︎ 確かシャミ子達と最近仲良くなったという、フリーレンさん……だっけ?」

 

「えっ。私の事知ってるの?」

 

「そっちのチャンネルとかは知らないけど、この前シャミ子……あ、私の友達の事だけど、あの子が貴方と仲良くなれたって写真を送ってくれたんだ。それで貴方の事を知ってね」

 

「あぁ、あの子と……」

 

 

『マジかよ』

『奇遇だねェ』

『偶然的な出会いだこれ』

『知り合いが知り合いに自分の事を教えてたなんてな』

『人の繋がりというのは広くて多いものなのだな』

『こんなことってあるゥ?』

『バラエティ番組とかでありそうな展開や』

 

 

 どうやらフリーレンが最近知り合った友人が、店員の友人でもあることが分かり、店員はその友人であるシャミ子の話からフリーレンの事を知ったようだ。その店員とフリーレンが出会うというのは、奇跡的な出会いとでも言うべきだろうか。

 

 

「この奇跡的な出会いは滅多にないかも。せっかく来たんだし、オススメの商品とかあれば教えてくれないかな?」

 

「オッケー‼︎ じゃんじゃんオススメを教えてあげるよ‼︎ まずはね……」

 

 

 

 

 

 

 それからフリーレンは先程の店員──杏里にオススメされた鶏肉を五百グラム購入し、ショッピング内のホームセンターや洋服屋を訪れては撮影交渉・レポートしていった。

 

 この後も様々な多摩町の施設やスポットを訪れていき、気がつけば日が暮れ始める時間帯にまで進んでいた。そこでちょうど良い頃合いではないかと感じたフリーレン、とある住宅地にてカメラ機能を自分の方に向けた。

 

 

「そろそろ終盤に差し掛かってきたよ。みんな長い時間ここまでよく観てくれたね、お疲れ様」

 

 

『おつかれー』

『おつです』

『もうそんな時間か』

『あっちゅー間やった』

『ワイは途中視聴やったで』

『なんだって⁉︎ それは本当かい⁉︎』

『よく頑張ったがとうとう終わりの時が来たようだな』

『にゃメロン‼︎ ブ○リーネタなんて聞いてないYo☆』

『次の配信が待ち遠しいぜ……』

『泣くな‼︎ 切り抜き動画がある‼︎』

 

 

 フリーレンが今回の動画がそろそろ終わるかもしれないことを伝えると、チャット欄にて、時間を気にしていなかったことや次の配信までが恋しくなってきたことなどのコメントが、次々と飛び交ってきた。

 

 と、ここでフリーレンが歩を止める。

 

 

「さてと……最後にここを撮影して終わりにするね」

 

 

『おっ? そろそろか』

『やっぱり終わるんやな』

『待って、急に悲しくなってきた……』

『おいコラ、これが最終回なわけないだろ』

『でもこの配信は終わりが見えると……』

『おう なんか寂しくなるよな……』

『わ か る 』

 

 

 フリーレンがあと少しで配信を終了させるという発言をしたことで、チャット欄に彼女の配信が終わることへの悲しみを募らせるかのようなコメントが載せられていく。それほどまでに彼女の配信や動画が人気だったということだ。

 

 そんな配信を惜しむチャットコメントを余所に、フリーレンはカメラをとある建物に向けた。それは古風感の漂う……というか漂いすぎな二階建てのアパートであった。

 

 

「アレが最後に訪れる場所・『ばんだ荘』。もとい新しく引っ越した『喫茶店 あすら』。

 

 

 

 私が新しく引っ越す場所だよ」

 

 

 

『………………えっ?』

『なん……だと……⁉︎』

『今、フリーレンちゃんなんて言ってた?』

『WA☆KA☆RA☆N』

『引っ越す言うてたな?』

『オウ、言ってた』

『えっ嘘⁉︎ 何かのドッキリ⁉︎』

 

 

 チャット欄、荒れた───‼︎ それもそうだ。配信中に何事もなかったかのように、しれっとお引越し宣言したのだこのエルフは。突然の報告は皆を仰天させる、はっきりわかんだね。

 

 

「十年前、私の知り合いと賭け事をしていてね。十年もの間、町の外に漏れてしまう程の大事件が起きなかったら、私がしばらくこの町に住むことになるって賭け。そんなにデメリットがあるわけじゃないし、居住先も悪くないから乗ったよ。で、私が負けたってわけ」

 

 

『なんじゃその賭けはw』

『結果が分かるのが十年も先って……』

『ってか大事件って何よ』

『交通事故も含めてじゃない?』

『それはフリーレン側にえらい有利な条件……』

『で、負けたのか……』

『確かに最近、多摩町に関する事件のニュースはなかったな』

『っつーかフリーレンが勝ったらどうなるのかがないやん』

『賭けなのにねェ……』

『そんなん不公平やろ』

 

 

 一方にとって完全有利ではないか。なのに負けてしまったのか。その者が勝った時の事は考えなかったのか。この時も様々なチャットコメントが飛び出てきた。

 

 

「あっ。そういや私達、賭けの公平さとかを考えてやらなかったんだった。だから私が勝ったらどうするのかとかのコメントがくるのかぁ。そっかぁ」

 

 

『いやお互い考えてなかったんかいwww』

『気づけよwww特にフリーレンwww』

『二人とも天然なのかそうでもないのか……』

『だがそこがいい』

『だから気に入った』

 

 

 どうやらフリーレンも賭け事を申し込んできた知り合いも、その賭けの公平性を視野に入れていなかった模様。しかもフリーレンはその事に気づいても全く気にしてない様子だ。感情に乏しいからというのもあるが、それでもこの反応はいかがなものか。

 

 

「でも、引っ越しておいて本当によかったって思ってるよ。魔族もみんな優しいし、町の人達自体が優しい上に面白い人ばっかりだし……何より平和に暮らせるってのが利点だね。不満な点が一切無い。楽しく暮らせるよ」

 

 

『まぁここまで見ればね……』

『あのブラムって人も面白かったし』

『肉屋の子もノリが良かったで』

『結構変わってるけど結構平和な町……なんて響きがいいのか』

『変わってる言うな』

『みんな平和が一番‼︎』

 

 

 引越し先であるこの多摩町がとても良い町であることを改めて語り、チャット欄で共感のコメントを得るフリーレン。今回の配信でそれを証明させたため、ほぼ全員を驚愕させたといっても過言ではない。

 

 

「そうそう、引っ越したからって旅の配信はやめないよ。これからもいろんなところを回って配信はするけど、これからはそれ以外の動画で多摩町関連のシリーズみたいなのは出す予定でいるから。ほら、気まぐれで投稿したゲーム動画が人気だったこともあるし」

 

 

『なんだ、そうなのか』

『旅はやめないのか‼︎ よかった……‼︎』

『最終回じゃなくてよかったぁ……‼︎』

『これからも貴方様の配信を楽しみにできます‼︎』

『ってか新シリーズもやる予定なのか』

『ゲーム以外にもなんかやるんだな』

『旅関連そうだけどね』

 

 

 旅の配信を続ける上で、今後は新しい動画のシリーズを行う予定もあるらしい。旅以外ではゲームの動画や配信も出しているのだとか。フリーレンは様々な事に挑戦するタイプなのだろうか。

 

 

「それじゃあ、私はそろそろばんだ荘に行くね。『あすら』にも行きたいし、それに……」

 

 

 そう言いかけたところで、フリーレンがばんだ荘に向けて歩き出す。まるで誰かがそこにいることに気づき、そこへと向かっているかのように。

 

 

「ここで既に仲良くなった人達や、移住先を用意してくれた人もいるしね」

 

「ヤ、ヤバッ⁉︎ バレちゃったみたいですよ⁉︎」

「あーあ、バレちゃったのか」

「やっぱり乗らない方がよかったのかしらね……」

「お、俺が物音出しちゃっタせいカ……⁉︎」

「それはないけどな。やっぱせめて少人数にすべきだったな……」

「けど、フリーレンはんがどんな感じに配信してんのか気になるやん」

「そう思うのはわかるけどねェ……」

「というか、ゲームの配信とかもやっとるんやな……」

「どんなゲームやってるのか気になりますわね……」

 

 

 どうやらばんだ荘に住む者達のほとんどが、フリーレンがどのように配信をしているのか気になっていたらしく、実際にどんな感じなのかを間近で見るために隠れて見ていたようだ。

 

 で、その内の五人(というよりは見た目的に四人と一匹)は普通の人間には絶対にない体の一部が見えていたため(というか一匹は人間の体つきが全く見えてない)……

 

 

『ファッ⁉︎ ツノォッ⁉︎ 尻尾ォッ⁉︎』

『狐と悪魔と……犬と狼(?)まで人間の姿でいるやないか!?』

『ってかバクもいない⁉︎ しかも二足歩行じゃん⁉︎』

『二足歩行のバクとかwwwwww』

『ってことはこの四人と一匹も魔族!?』

『一回の配信で六人(?)の魔族に出会えるとは……恐れ入った』

『魔族のいる多摩町……一体どんな町どというんだ……』

『でもそいつらがいるのに平和なんだよな?』

『行ってみて―』

 

 

 この配信動画は、フリーレンさんの配信動画の中で一番の視聴率となったとかどうとか……

 

 




本家のフリーレンが現代まで生きてたらどうなってたんだろうね
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