偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
最近ミートピアやりました。今更すぎるwww
リリスの提案・そしてフリーレンの協力の元で、夢の世界にて開催されることになった『第一回フリーレンが体験したダンジョンをオマージュしたヤツ攻略会』。何やらフリーレンを満足できるかどうかの賭け事勝負になってしまっているが。
そんなこんながありながらも、早速指定された通りのチームを組んでゲームスタート……といくつもりだったようだが。
「どっちのチームがどっちに入るのかって決まってますか? 入り口は三つあるんでしたよね?」
「「「あっ」」」
各チームのリーダーであるフリーレン一行、シャミ子の『スタートする方法云々はどうするのか』疑問をぶつけられたため、それに気づいたのか不手際をやらかしたかのような呆然とした表情を浮かべる。
「そういえば話し合ってなかったね。これまでパーティーメンバー全員で攻略していたから、今回は競争であることを忘れてたよ」
「でも、もう安全そうなルートは分かっちゃったんだよねぇ……」
「いかがなさいますか、フリーレン様?」
「そうだね……」
フリーレンがこれまで旅の仲間達と共に行動していた方で、まさかのほんのちょっとした弊害が起きてしまったようだ。それほど大したことではないようだが、今回のダンジョン攻略としてはどのチームがどのルートに行くのかは重要となっていたらしい。
どのチームがどのルートにするかどうか、フリーレンは「うーむ」と軽く悩み始める。そして白哉達の方に視線を向けた。
「桃達はどうしたい? やっぱり安全なルートに行きたい?」
「私達に言われても……どこか安全かどうかなんて分からないので、なんとも言えないと言いますか……」
「そもそもみんな初見なんで、どっちのルートでも危険である可能性があると思うんですよね……」
「だよね……」
自分達ではどういう成り行きで行動すればいいのか分からないと語る白哉達の意見を聞き、フリーレンは顎に手を当てながら考える仕草を見せ、再び口を開いた。
「もうめんどくさいからあみだくじで決めよう。今回の場合はどれを選んでも死ぬことがないのは確かなんだし」
『えっ』
まさかの雑な手段でのルート決め。しかもジャンケンではなく線を足して結果が出るまでの間をややこしくさせるヤツ。それでどのチームがどのルートを辿るのかを決めて良いものなのだろうか。
「すんません、じゃあさっきの考えているかのような仕草は何だったんですか」
「ただの演技」
「えぇ……」
「……ま、まぁこのまま何も決まらないというのはよくないからな。それでさっさと決めるのだ」
しかも元から深く考えるつもりはなかったという。悩みアピールも形だけ。大丈夫なのか気が抜け過ぎて無いのかこのエルフ。
だが、夢の世界にいられる時間は有限である。ここでルート決めの討論を長引けば、ダンジョン攻略をクリアする前に何人かが現実世界へと目覚めてしまう。というわけで直ちにあみだくじを始めることに(ジャンケンで決めた方がもっと早くなるが、その事を言うとさらに討論が長引くのは秘密である)。
リリスに促される形で、あみだくじでルート決めをすることになったその結果、安全だと思われるルートに行くことになったチームは……
「………………真ん中。よし、私のチームが安全なルートに行けることになったね。むふー」
フリーレンチーム。白哉とシャミ子が入っているチームである。
「ッ……決まったものは仕方ないですが、ダンジョン初挑戦の僕達がそっちに行けないとは……」
「なんか、ここだけ見るとフリーレン様が大人気なく感じるね」
「えっ。運で決まったことなのにひどくない?」
どうやらナディアもガタルフもそのルートを狙っていたらしく、ダンジョン攻略初心者としてフリーレンが行くことになったルートを辿らずにはいられなかったようだ。
が、結果は案の定。これには二人とも負け惜しみとして嫌味を吐いてフリーレンをしょぼしょぼ顔にさせる他なかった。いや何故。
「えぇい、決まったものは仕方ないだろう‼︎ 早く各チームそのルート……というか入り口から行け‼︎ 夢の世界の滞在時間はマジで有能だからな‼︎ あと、『マッピングする魔法』と言えば電子的なマップが目の前で開かれるから、行き詰まって辿るルートを変えようと思った時とかに確認して見るといい‼︎ ほら、早く準備しろ‼︎」
リリス、中々スタートしようとしない白哉達に痺れを切らしたのか怒鳴り出した。そして徐々に怒りを収めながら補足点を話す。マッピングできるんだって。迷子にならずに済みそうだよ。みんな良かったね。
だが、それはそれ、これはこれだ。これ以上余計な時間を作ってリリスの機嫌を損ねてはいけない。フリーレンが白哉達に促す。
「えっと……リリスもカンカンみたいだし、早くスタートしておこうか。みんな、
『あっはい……』
こうして、長く見えて短い準備云々が終わり、いよいよ……というよりはようやくほぼリリス発案のダンジョン攻略が始まったのだった。
あーあ、やっと始まった。ナレーションであるこちらもまだかまだかと苛立ってたんだよ。手間ァ取らせやがって……
♢
安全ルートを見事に引き当てたフリーレン一考。リーダーかついくつものダンジョンを攻略してきたフリーレンを先頭にし、“マッピングする魔法”を使用しルートを確認しながら最深部へと目指していく。
しばらくまっすぐ。三つ目先の分かれ道で右。次の分かれ道で左。またしばらくまっすぐと。トラップが何処から仕掛けられるのか警戒しながら順調に進んでいく。
するとふと、全蔵が歩を進めていく内に。
「あっ。なんかそこ爆薬臭そうやから気ぃつけてな?」
「そこ。踏むとデカい爆発するから気をつけて」
彼はその歩を止めた。踏もうとした床の一部が浮き出ていることを、フリーレン
「あ、すいません。助かったッス……ん?」
「「ん?」」
「ぷりぃあ?」
ふと、三人が違和感を覚えたのか疑問に思っているかのような呆けた声を出す。全蔵とフリーレンは何故リコが爆発するトラップに気づいたのか、リコは自分が何か変な事を言ったのかとぼけている感じに。
あとついでにサケブシッポが首というか身体を傾げる仕草を見せた。可愛い。
「……ねぇリコ。なんでこの床に爆発するトラップがあるって気づいたの?」
「何って……爆薬の臭いがしたからやけど? あと、ここまで来た時にもちょいちょい地面に微妙な違いがあったのが見えたからやなぁ。今見た浮き出とるヤツとか、ちょいと凹みがおるのとか。それと色が違うにしては錆びとるとは思えんくらいの微妙なのもあったんよ?」
リコは当たり前かのように供述しているが、それでもフリーレンの疑念は消えなかった。
まるで実際にダンジョンを体験したかのよう。それがあった時代を生きてきたかのよう。フリーレンはリコの言葉からそう捉えることしか出来ずにいた。
恐る恐る、だがその感情を表に出さず、リコに問いかける。
「リコ……もしかして、実際にダンジョンに入ったことあるの?」
「んな昔の時代から生きとるわけないんよ?」
首を振って数百年生きている事を否定するリコ。それでもダンジョンの知識に詳しいという点の解決には全くならない。
「じゃあどうして……」
「ほら、ウチには妖術があるやろ? それを本格的に幻術寄りに使う時があってな。それでダンジョンみたいなヤツの幻を頑張って短時間で作っといて、敵をしばらく閉じ込めてた時あったんや。そん時からどういったところにトラップがあるんか察せるようになってな」
「「えっ」」
ここで今度は白哉とシャミ子が呆けた声を上げる。それも豆鉄砲を喰らったかのような表情として。リコが妖術でダンジョンらしき幻の中に敵を閉じ込めるという、かなり高度な戦術を使ったのだ。仰天するのも無理もない。
特にシャミ子は顔に影を落としていた。リコの異様に凄まじい能力に唖然としたからだ。
「リコさん……ダンジョンって市町村範囲に広いはずですよね……? そんな大スケールなもの使えたんですか……? 怖っ……」
「けどアレ使った後、結構魔力使った反動なんか、滅茶苦茶ダルくなってまうんよね。アレで襲撃してきた魔法少女達も疲れさせといて撤退させられたんやけど、もう使いたくないんよな」
無論、広範囲の技を使用する事に対するデメリットが弱いわけではない。代償が己の身を削るというものであり、使用した後にも戦闘があるタイプの闘いとなればかなり不利となるらしい。これぞ一長一短、とでも言うべきだろうか。
「んで、料理できん時の暇つぶしとして、小規模エリアでどんなトラップがえぇのかとかって弄っとった時期もあったもんや。だからさっきの臭いで勘づいたのも、床の一部一部が違うのも……って感じや」
「なるほど……それならダンジョンに詳しい感じなのも納得がいくね」
リコの能力と実際のダンジョンのトラップに関する知識力で全てを理解したのか、フリーレンは納得した様子を見せる。そして同時に思ったのだ。彼女こそガタルフのチームかナディアのチームに入れるべきはなかったのか、と。それに気づくのか遅かったのではないか、と。
一つ溜息をつき、フリーレンは自分のチームメンバーに顔を向けながら再び口を開く。
「ま、頼りになるメンバーがもう一人いたってことにして、先に進もうか。意外と他のチームが早く到着するかもしれないしね」
「「「は、はい(ッス)‼︎」」」「はぁ〜い」「ぷりゃあ」
これはあくまでチームでの最速攻略戦。他のチームの進捗を危惧しながら再び歩を進めるのだった。
♢
一方その頃、ナディアチームはというと。
「みんな、真ん中の床下は踏まないでね。あそこら辺の床は凹みが出来ていて、多分踏んだらとんでもないことになるかも。最悪現実世界で踏むと死ぬトラップだから」
『えっ?』
ナディアが注意すべきだと語るトラップについて耳にしたメンバーが戦慄した。いくら夢の世界の中とはいえ、人が死ぬかもしれないトラップが施されているのだ。命の危険を悟るのも無理はない。
「リ、リリスさんはどうして本気で殺意の高いものを……夢の中とはいえ、もう少し命にマイルドなものを───」
「いや、寧ろこれが妥当だと思うよ、リリスさんが仕掛けたトラップは」
「えっ?」「へっ?」「はぁ?」
何故リリスが下手すれば死人が多く発生するぐらいの恐ろしいトラップを用意したのだろうか……桃がそんな危惧した事を呟けば、ナディアがその意見を指摘し、寧ろリリスの考案を賛同する。
リリスの考えを全肯定しているかのような反応をするナディア。そんな彼女の反応を予想していなかったためか、桃だけではなく朱紅玉もマリンも呆気に取られたような反応を見せる。二人もリリスの殺意の高いトラップを危惧していたからだろう。
無論ナディアのこの反応に疑問を持たないはずがなく、朱紅玉が即座に彼女に問いかける。
「これが妥当って、どういう意味なんや?」
「ダンジョンがあった時代の者から見れば、そのまんまって意味だよ。ダンジョンは人間が作ったものではなく、魔物や魔族がお宝目当てに来た人間を消すために作られたものか、どういう原理によるものなのかも不明な感じで自然に作られたものなんだよね。それらはこのコンプライアンスを考慮した時代からすれば考えられない程、トラップは殺意の高いものばかり……」
魔法使いのいた時代のダンジョンがどのようなものなのかを淡々と話すナディア。何故ダンジョンのトラップの殺意が高いのかを、フリーレンから聞いた話を基に説明している内に……
「んん? ……あっ‼︎ そっか‼︎ シャミ子のご先祖様が殺す気マンマンなトラップを設置したのは……」
マリンがここで気づく。リリスが何故かつてダンジョンのあった時代のと同じトラップを用意したのかを。
「これは
「そう‼︎ つまりリリスさんは、私達にもダンジョンのあった時代のフリーレン様と同行した時のようなイベントを体験してもらいたかったんだと思う‼︎ その時のダンジョンのトラップにはどのようなものがあるのかとか、広さは主にどれくらいのがあるのかとか、それを知ってもらいたくてわざわざトラップもヤバいのにしたんだよ。きっとね」
勘づいたのを察したかのように合わせて、ナディアは己が思う結論を推奨した。リリスはこのダンジョン攻略を機に、少しでもその時のフリーレンになってみるべきだというメッセージを送ったのだと。
その狙いにマリンは勘づいた。確定となり得ることを呟きながら。その事実にバトラーは「おぉ……」と口を漏らし、マリンを改めて尊敬の眼差しで見つめる。
「それをシャミ子さんのご先祖様は考えて、このようなダンジョンを作ったと……やりましたねお嬢様、あの者の考えていることが読めるとは」
「い、いや、実際に当たったかどうかは分からないわよ? 何か他にも理由があるだろうし、そこまで深く考えてないかもしれないし……」
「それもあり得るかも。リリスさんだし」
「アンタは少しはあの人の味方になるような事言いなさいよ⁉︎ アタシより長く関わってきたでしょ⁉︎」
「長く関わってきたからこそだよ」
「どゆ意味⁉︎」
逆にリリスはそこまで細かくは考えてないのではと視野に入れている発言をすれば、桃がそれに対して肯定するかのような言葉を出す。それに対してマリンが思わずツッコミを入れるも、桃は平常運転な態度を変えることはなかった。リリスェ……
「アハハハ‼︎ 二人とも面白い会話するね‼︎ 人それぞれの捉え方が違ってみんな良いよ‼︎」
「……リリスさんに対するアンチ系の言葉が入ってるけど」
アハハハッと何気ない団欒を見て笑うナディアに、桃とマリンの会話の内容によって素直にその気になれない柘榴。現在二人の考えていることは多少異なるものの、桃とマリンが仲良く会話している実感は湧いており、そういう点では気が合っている様子だ。
と、ここで。
「みなさん、とりあえず先に進みましょう。なんか止まってお話していると他のチームの方々がゴールしそうな気がしますわ」
「あ、そうだったね。ここのエリアのトラップは凹みのヤツ以外無いみたいだし、そろそろレッツラゴー‼︎」
ミトにそろそろ再出発しないかと促されたため、ナディアチームは漸く止めていた足を再び動かすことに。
ここだけの話、少なくともフリーレンチームに先を越される可能性は高くないとは思うが……
「んなっ⁉︎ なんかたまたま触れた壁の一部が動いたような気がするんやけど……まさかこれもトラップかいな……⁉︎」
「あっ。そこはただの飛び出てた壁ブロックの一部だね。押されて元に戻ったっぽい」
「いや紛らわしいねんッ‼︎」
♢
その頃、ガタルフチームは二チーム同様、様々なトラップを事前に回避していき、とあるエリアの扉前まで来ていた。
「あっ。こんなところに扉が───」
「待ってください」
奈々がその扉を開くために動こうとしたところを、ガタルフに目の前で杖を突き出される形でその歩を止められてしまう。
「えっ? なんで急に止めるの?」
「その扉の前にある、二つの銅像を見てください」
そう言うガタルフが指差す方向には、二体の座り込んでいる翼の生えた悪魔の銅像が相対するように建てられていた。否、これは銅像ではなく……
「アレはガーゴイルです。普段はあのように銅像となっていますが、扉を開けようとすると動き出し襲い掛かってきます」
「そ、そうなの⁉︎ あ、危なかった……ごめんねガタルフ君、迂闊だった……」
「いえ。とにかく今は動き出す前にヤツを倒しましょう。ミカンさん、手伝いをお願いします」
「えぇ、分かったわ。任せて」
悪い事態を回避したのを機に、同タイミングでガタルフの
「フゥ……これで扉が開くかしら」
「それはそうですけど……」
ガーゴイルを討伐したものの、何故か扉まで歩を進めようとしないガタルフ。それどころか後ろに振り返りながら杖を構える。
「まずいですね、敵が追って来た。みなさん構えておいてください」
「えっ?」
ミカンがそう呆けた声を出したのを皮切りに、皆が反射的にガタルフと同じ方向に振り向く。そこにはカシャンッカシャンッと、合成樹脂の物が愉快そうに床に当たる音が聞こえるのと同時に、彼等の元へと近づいて来た者達が。
それは一言で言えば、正に骸骨そのものだった。それも七体。さらには動物の形をした人体模型のようなものまで器用に動いている。
「スケルトン。自律する骸骨の魔物です。ちなみに右の二体で剣と盾を持ってるのがウォリアー、真ん中の三体で杖を持ってるのがウィザード、左の二体で弓を持ってるのがアーチャーです。あとついでに下を這ってるのはリザード、デカいトカゲのスケルトンです」
ガタルフがこの骸骨の異形──魔物の一種であるスケルトンの事を簡潔に分かりやすく説明していると、ブラムが目を輝かせているかのように興味を示す。ファンタジーな敵との遭遇に歓喜したのだろう。
「ふむ、まさかモンスターまで蔓延っていたとはな……これもダンジョンの弊害でもあり一興とも言うべきか。中々に楽しませてくれるものだ‼︎」
「正確に言えばモンスターではなく魔物ですけどね。まぁ、彼等の存在そのものもトラップと言いますが ズババァッ ………………えっ?」
ブラムのスケルトンへの賞賛に対する補足がされる中で、そのスケルトン達は突然一斉に爪のような何かによって、身体を上下綺麗に分かれて切り裂かれた。無論、魔物であるスケルトンはそのまま灰のように消えていった。
爪による攻撃ができるのは、このガタルフパーティーに一人しか存在しない。ウガルルだ。彼女が瞬時にスケルトンの集団の身体を切り裂いたのだ。
「えっちょっ、ウガルル……? こ、これ、貴方が全員一発でやったの……?」
「んがっ‼︎ 攻撃して何かしてくるヤツじゃなイかと思ってやったのだけド、間違いだったカ?」
「えっ。あ、いや、倒して何もなかったからいいけど……一応、特殊な手段で反撃してくる敵もいるから、無闇にいきなり攻撃しない方がいいかなとは思うんだよね……ま、まぁ結果論がそれだから別にいいけど」
ガタルフはウガルルに行動の軽率さを指摘するも、スケルトンの集団をあっさりと片付けたウガルルの強さに戦慄した。もしも彼女の強さが本物だとすれば、魔法使いがいた時代で注目・警戒されやすい上位魔族になるのではないか……そんな危機感も感じていた。
「一応、僕が後ろから霊術で彼女を守れるようにスタンバイしてはいましたけどね」
「あっそうなんだ……いやそれも正しいけど」
蓮子だけに飽き足らず、ウガルルが守備担当の者と共に行動したらさらに……ガタルフの妄想がさらに広がり出していく。もしも過ぎた時代に存在していたら、という過去の事を考えても無意味な類の妄想であるというのに。
そんな彼の妄想を遮るかのように、突然拓海がガタルフの頭を撫でる。当然、ガタルフは急な愛着行動に少々戸惑いを覚えた。
「それにしても、ガタルフも結構すごいんじゃないかい?」
「何がですか? 僕はまだ動いてないガーゴイルに
「いやそういうことじゃなくて、このダンジョンに色々と詳しすぎるなってことさ。ダンジョン攻略はこれが初めてなんでしょ? それを入れ知恵だけで対策をしたり冷静に対抗手段を考えたりと、君なりの考えで俺達と一緒に攻略しようとしてくれている……これは褒めざるを得ないよ。というか褒めないと気が済まない」
「そ、そうですか……」
拓海はフリーレンから受けた、ダンジョン攻略に対する入れ知恵によるものとはいえ、このダンジョンへの対処法を冷静に分析・判断しながらの行動をここまでやってきた。そしてそれらによって、チームメンバー全員も無事な状態のまま。
つまり、彼の正確な判断全てが順調にダンジョン攻略を進めるようになった。全てはガタルフのおかげであり、彼の采配で無ければここまで上手くいかなかったのだろう。そのため、拓海は素直にこの事を褒めたくなったようだ。
が。ガタルフはどうやら直接素直に褒められることが苦手であるらしいためか、眉に皺を寄せながらも頬を赤らめた顔を背けた。
「そ、そんな大したことないですよ僕は。ダンジョン攻略でつまづく人なんか、ミミックのような単純な罠に引っ掛かって足を引っ張るような馬鹿しかいませんので、僕の他にもダンジョン攻略で頼れる人はたくさんいますよ」
自分を低姿勢にしたような発言をしながらも、ガタルフは本当の感情を隠し切れずにいた。何故なら背けているその顔には、地味に小さな弧を描いているかのように吊り上がっている口元が、ミカン達に見えてしまったからだ。
「(照れてるわね)」
「(満更でも無さそうだ)」
「(これがあのツンデレってヤツカ)」
「(絶対内心喜んでる)」
「(愛い反応だ)」
「(カワイイ)」
バレたとしても、優しい性格ばかりの彼等はその事を口にすることはなかった。ガタルフの事を思って敢えて黙り込むことにしたようだ。
ここは話題を変えよう。そういう判断をすることにした奈々が口を開く。
「ところでだけど、もし本当にミミックのような単純なトラップに引っ掛かるような人がいたらどうしてたの?」
「……本当にいたら、ですか」
奈々の問いかけに対し、ガタルフは何やら重々しく呟く。単純な罠に掛かるような人に対して何か思うことでもあるのだろうかと、皆が首を傾げていると、ガタルフはこの問いの答えを出した。
「それがフリーレン様でしたら置いていきます」
『えっ』
まさかの師匠なら見捨てる宣言。その可能性は少ないのではないかと皆が感じたのだが、過去に桃と出会ったことのある話でミミックの魔族の口に突っ込んで貴重な宝がないかどうか探そうとした経歴があるとのことなので、その可能性も捨てがたいとも思ったようだ。
だが、それでもフリーレンはガタルフの師である。そんな彼女に対して何故辛辣な対応をしようとするのか……その疑問は皆して拭えずにいた。
「な、なんでフリーレンさんだとそんな冷たい……というか酷い反応するの?」
「長年ダンジョン攻略してきた人があんなのだと、さすがに素直に褒めたりとか出来ませんからね。功績者なら功績者らしくいてほしいものですよ、ホントに」
「そ、そうなんだ……」
何かしらの不満はあるものの、その分フリーレンには信頼性を持っている。そのためか謎の期待を持っていたようだ。結論、ガタルフはフリーレンの事が嫌いではないということだ。
ただ、ガタルフがフリーレンの事を幻滅する未来はいつかありそうで恐ろしい……皆が皆、思わずそう思ってしまったとかどうとか。
♢
その頃、ガタルフに謎の期待を背負われたフリーレンはというと。
「この魔力……魔導書かも。いや、リリスの事だから魔導書以外ってのもあり得るけど……でも、それと同等のはありそうだね」
とある一つの宝箱を調べており、それの中身が何なのかを考察していた。
「あ、あの……フリーレンさん? ちょっといいですか?」
「何?」
「私、その宝箱に物の判別ができる杖で調べたんですけど……それ、一応ミミックでしたが……」
そう……実はこの宝箱、シャミ子がなんとかの杖を物の判別ができるようになる形状へと変形させ、中身がミミックであることを判明させていた。
それでもフリーレンが目視で中身を確認しようとしている。さらになんとかの杖は所持者の想像力が働くことで変形するものであるため、この判別がしっかりと判別したものであるかどうかは不明となっている。
それにより、シャミ子は不安に感じたのだ。自身が持つ武器はフリーレンにとって信用を得る程の力がないと思われているのではないかと、実力を発揮できたとしてもそれを紛れによるものだと思われているのではないかと。
「あぁ、私がそのなんとかの杖の力を信じてないのかと思ってる? それなら安心して、その杖での判別は結構正確だったよ。妄想から変形させたのにすごい再現力だね」
「じゃ、じゃあなんでわざわざ目視で……?」
だが、フリーレンは否定的な意見を出さなかった。寧ろなんとかの杖の性能の良さ、それを実現させるためのシャミ子の想像力をも認める程にだ。
ならば何故、フリーレンは目視で改めて宝箱の中身が何かを調べているのか? 白哉達のこの疑問は未だ解かれていない。その疑問に答えるかのように、フリーレンが語りだす。
「魔法使い達がいた時代にも、ミークハイトという宝箱を判別する魔法があったんだ。でもその精度は九十九パーセント……百パーセントには及んでいなかった」
「えっと……も、もしかして……そうやって目視してるのも、なんとかの杖での判別も百パーセントじゃないから念のために……ってことですか?」
確信的なものでないのなら信用しきれないのだろうか。シャミ子がそんな事を考えていると、フリーレンが「一応それもあるけど」と補足するかのように再び口を開く。
「探究心が燻られるんだよ。よーく想像してみてよ。もしも
「そんなもんですか……?」
「そんなもんだよ」
あ、この人ひどく執念深いタイプなんだな。自分の勘が正しいと思えば確率の低い方を選ぶ人なのか。白哉はそんなフリーレンに対してこう思ったのだ。この人よくこの時代まで生き延びられたな、と。
「うん、やっぱりそうだ。この中身は貴重な魔導書だよ。私の魔法使いとしての経験がそう告げている」
宝箱を触り、自分の勘が正しいのではないかと呟くフリーレン。そんな彼女を見て、リコが何を思ったのか閃いたような表情を浮かべ、言葉を零す。
「もしこの予想が外れとったら、リーダー交代しといた方がえぇんちゃう?」
「急にんな事言われましても」
「俺は向いてないんで辞退するッス」
「乗るな乗るな」
「わ、私もやりたいですけど、なんだか不安が……」
「やらなくていいから」
「ぷりぃぁあ」
「いやお前は……難しいんじゃないかな……」
まさかのチームリーダーを変えるかの会話をする一同に、次々とツッコミを入れて早くも心が疲弊する白哉。今後の事を思って胃薬飲めよ。
「フリーレンさん、こいつらに何か言ってやってくださいよ。俺含めてほぼ全員が実際のダンジョンの知識皆無なのに、皆が皆チームリーダーになろうとしてるんですけど………………フリーレンさん?」
白哉がフリーレンに指摘入れるようにと頼み込むものの、何故か先程から彼女が一言も喋らない事に疑問を感じ、彼女の方向へと振り向いた。そこで見えたのは……
「暗いよー‼︎ 怖いよー‼︎」
牙の生えた宝箱に体を突っ込んでおり、噛みつかれているかのように下半身だけ出て足をバタバタさせること以外の身動きが取れない状態となっているフリーレンの姿が見えた。
外したのだ、一パーセントの方が当たるという可能性を、思いっきり。
「フリーレンさァァァァァァんッ⁉︎」
「あぁぁぁ暗いよ‼︎ 怖いよ‼︎ 暗いよ‼︎ 怖いよ‼︎」
「……やっぱり外すんだな……」
この時、白哉は悟った。リーダー役はフリーレン一人だけにするのはよくなかったな、と。
この後フリーレンの身体を押し込み、ミミックに彼女を吐かせる形で救出に成功する一行であった。
フリーレンのダンジョンでお約束のネタで終わらせましたw 草w