偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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ダンジョンのボスって色々いるよねってことで初投稿です。

ちなみに今プレイしてるミートピアにも色々なダンジョンがありますよ。


ダンジョンに潜むラスボス集団……ん? なんか知り合いっぽいのが襲ってきたんだけどどういうこと?

 

 白哉達が夢の世界のダンジョンに挑戦している中、観戦席にて。

 

 

「う、うぅむ……これはちょっと、まずいだろうな……」

 

「まずいって、何が?」

 

 

 ダンジョンの各エリアの監視カメラから、ダンジョンの参加メンバーの様子を見ていたリリスが、とあるエリアの映像を見て唸り出した。その反応をする理由を、同じく観戦していた良子に問いかけられたためそれを明かす。

 

 

「いやなに、シャミ子をダンジョンに関して無茶苦茶詳しいフリーレンと一緒に行動させてやれば、早くゴール地点に到着したりとかして、桃に勝てたというところを一つでも作れればと思ったのだが……」

 

「うわぁごせんぞ様ズル賢いね〜」

 

 

 小倉の指摘を無視しながら、リリスは先程まで見ていた映像を指差し、良子や同じく観戦していた小倉と白澤にもその方向へと向くよう合図を送る。

 

 その映像に映し出されているのは、牙の生えた宝箱に体を突っ込み、噛みつかれているかのように、下半身だけ出て足をバタバタさせること以外の身動きが取れない状態となっているフリーレンの姿だった。

 

 

「そのフリーレンが、ミミックというトラップの中で一番単純で容易く引っ掛かりそうにないものに、まんまと引っ掛かってこの有様だ。だから一番乗り自体も怪しく感じていてな……」

 

「うわぁ……これは確かに不安になりますね……」

 

 

 白澤がリリスの不安に同情するのも無理もない。

 

 リーダーはメンバーを上手く先導してナンボというもの。そのリーダーが見え見えな罠にあっさりと引っ掛かり、集団の足を引っ張ってしまうのは言語道断というものだ。なのにフリーレンはその例を行ってしまっている。不安にならない方がおかしいのだ。

 

 そんなリーダーと同行しているシャミ子に不安を感じているリリスに対し、良子は渋い表情になりながら呟く。

 

 

「……多分、お姉は桃さんより早くゴールできたとしても、それで桃さんに勝ったとは言わないと思う」

 

「へっ? そ、それは何故だ?」

 

「お姉、桃さんと闘う時はいつもお姉一人の力で頑張ろうとしている時が多いの。なのに今のダンジョン攻略といった、仲間達と協力して勝ちを目指すものとなると……達成感とか色々な事には繋がるしお姉も楽しくやれるとは思うけど、自分一人の力で桃さんに勝ったという実感すら湧かないと思う」

 

 

 シャミ子本人の気持ち。現状による正論。それらの意見が重なったことにより、リリスは反論の言葉も出ずに戸惑ってしまった。

 

 

「えっ………………そ、そっか。よく考えてみればそうなるな……」

 

「うん。だからこの勝負、お姉は楽しくやってはくれるけどノーカンになっちゃう」

 

「……シャミ子よ、なんか色々とすまなかった……」

 

 

 己の理想の甘さを知り恥じたリリスは、ミミックからフリーレンを解放させたシャミ子を見ながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、ダンジョン内のとあるエリアにて。リリス達が観戦席で何か話し合っていることを察したのか、シャミ子は天井を見上げながら首を傾げた。

 

 

「………………?」

 

「どうしたんだ優子?」

 

「い、いえ。今何か、謝られることしたわけじゃないのに、どっかで謝罪されたような感じがしたもので……」

 

「はぁ?」

 

 

 お前は何言ってんだ、と言っているかのような反応として呆れたかのような表情を見せる白哉。だが、実際シャミ子も自身が何故そのような発言をしたのかと疑問に感じているため、正しい反応と言ったら正しいだろう。

 

 

「ガジガジガジッ」

 

 

 そんな二人を他所に、ミミックからフリーレンを解放・救出したサケブシッポは、淡い光を纏ったミミックに齧りつき、その光の力によってミミックを消滅させた。

 

 

「ペッ。ぷりゃあ‼︎」

 

「フゥ、助かった……」

 

 

 フリーレンの無事を確認し、ざまぁみろと言っているかのようにミミックに唾を吐きながら威張るサケブシッポ。フリーレンが危険な目に遭うことを喜ばしく思っておらず、寧ろ怒りに満ちていたからこその態度なのだろう。にしても怖っ。

 

 

「ウチらと一緒に行動しといてよかったなぁ」

 

「あのまま口の中に入り続けてたら絶対溶かされてたッスよ……一人の時はどうしてたッスか?」

 

「内側から魔法をぶっ放して無理矢理吐き出させてたんだ。でも髪型が変わっちゃうからいやなんだよね……前にやった時も縦ロールになっちゃったし……」

 

 

 ソロでダンジョン攻略している時の、ミミックへの対処法はフリーレンにはあったらしい。だがこの後の事が好ましくないと思っているのか、本当はその手段を実行したくないようだ。

 

 それを聞いた白哉は、何かに気づいたのか「ん?」と首を傾げながら口を開く。

 

 

「ミミックって魔物なんですよね? 開ける前に突いて攻撃しておけば、ミミックならその攻撃に反応して動くか消滅するかのどちらかをやると思うんですけど」

 

 

 ピクリ。フリーレンの身体が少しばかり挙動を起こしていた。

 

 

「………………………………あっそっか、その手があったか」

 

「今すごい間が空いてました? もしかして今までその発想には至らなかったんですか?」

 

「いつも探求心と魔導書の欲しさが勝っちゃうから……」

 

 

 しょぼしょぼ顔でくっつけ合った人差し指をもじもじとさせ、自分の性格の悪さを呟くフリーレン。どうやらミミックにあっさりと引っ掛かる事は、白哉達の想像を遥かに超える程の回数あるらしいことが察せられるようだ。

 

 そんな彼女の反応を見て、白哉は徐に呟いた。

 

 

「……ナディアをリーダーにすべきだったかな……」

 

「いやそこは同じチームのウチを───」

 

「リコさんは色々と嫌な予感がするので却下。フリーレンさんの方がまだ安心できます」

 

「うーん、いけずー」

 

 

 そしてリコのチームリーダー願望を軽くあしらった。善意で行った悪意をしてきた彼女と比べて、フリーレンの方がまだよっぽどまとも……とでも思っていたのだろう。フリーレンがダンジョンを実際に何度も経験したから、という理由もあるだろうが。

 

 

「……フリーレンさん。次宝箱を見つけた時は、自力で調べるにしても軽く攻撃する程度にしてくださいよ。もう噛まれても助けない予定でいますからね、俺は」

 

「あっうん。わかった……」

 

 

 フリーレンのリーダー続投に不安を覚えながらも、消去法としてそれを行う羽目になった事実に頭を抱える白哉。そして悟ったのだ、人生とはやはり時と場合によっては残酷になるものなのだな、と。

 

 

「それじゃあ、気を取り直して攻略を進めようか」

 

「欲望に負けて引っ掛かっとった人が仕切るっておもろいなぁ」「シィ〜‼︎」

 

「それは悪かったから言わないで……」

 

「ぐうの音も出なかったか……」

 

 

 

 

 

 

 フリーレンをチームリーダーにしたまま、気を取り直してダンジョン攻略を再開したフリーレン一行。先程のミミックという初歩的で単純かつ丸わかりな罠に引っ掛かったとは思えない程に、フリーレンの指揮と先導により、順調にダンジョンの奥へと進んでいった。

 

 ある時はガーゴイルの銅像にて。

 

 

「向こうにいるのはガーゴイルだね。近づくと反応してくるから、動く前に倒すよ」

 

 

 ある時はとあるエリアの隠された宝箱のある扉にて。

 

 

「あ、今度は本当に魔導書みたいですね。けどなんでこんなマップにないところに……」

 

「ゲームで攻略本とかを見ないとわからない報酬やアイテムの位置とかあるでしょ? それと同じものだよ。……うん、これはシャミ子が読んだ方がいいよ。君にとって結構役に立つ魔法だから」

 

「えっいいんですか? あ、ありがとうございます……」

 

 

 ある時は針がたくさん張られて押し寄ってくる壁のトラップが出るエリアにて。

 

 

「ここは行ったらヤバいから引き返すよ」

 

「「「「えっなんで?」」」」

 

 

 そんなこんなで、フリーレン一行は様々な仕掛けを攻略していき、順調にゴール地点まで近づいていった。

 

 

「思ったよりも順調ですね。すごい進み具合ですよフリーレンさん‼︎ リアルなダンジョンをたくさん攻略しただけはあります‼︎」

 

 

 最初のミミック以外のトラップに引っ掛かることもなく、難なくダンジョンを進めていっている現状に喜ばしく感じている言葉を出すシャミ子。

 

 

「さすがの私でも、未踏破かつ初挑戦でここまで順調に進めるとは思ってなかったけどね。リリスが非常識好きとかいう小倉やロマン好きな良子と話し合って作ったにしては、こうなる程の温い仕掛けを用意していたとは思えない……」

 

 

 その一方で、フリーレンは今の順調すぎるこの状況に違和感を覚えていた。いくら自分が体験してきた仕掛けの再現とはいえ、初見の者達がいても容易に進めることができる程に優しいレベルだとは想定していなかったようだ。

 

 いくら自分達のチームが安全そうなルートを辿っているとはいえ、明らかにおかしい……フリーレンはそう違和感を感じ、逆に警戒せざる得ない様子でいた。

 

 

「フリーレンさん、俺達は今どこら辺にいますか?」

 

「ちょっと待っててね、今マッピングするから」

 

 

 ふと白哉に問いかけられたため、フリーレンは我に返り“マッピングする魔法"を展開。現在地とそこからゴールまでの距離を確認することに。

 

 

「この位置からすると……うん、ゴールまであともう少しだね」

 

「えっ。もう到着するんですか? なんか思ったよりもあっさり───」

 

「やっぱり、明らかにおかしい。この辿り着くまでの時間的にも」

 

「へっ?」

 

 

 もうじきゴールまで辿り着くことに驚くシャミ子の言葉を遮り、疑問に感じている言葉をそのまま呟くフリーレン。やはりこのダンジョンには何か他に罠があるのではないのだろうか、そんな不穏な考えが頭の中に過っていく。

 

 

「いくら私がこれまで体験したトラップばかりとはいえ、ここまですんなりと進めることができるとは思えない。ましてや初めて出来たとはいえ、リリスさんの発想と共に夢の世界で作られたダンジョンによるものだ。もしかすると、この後終盤でかなりヤバめのトラップが仕掛けられているのだろうね」

 

「「「………………‼︎」」」

 

 

 フリーレンのこの考察に同感したのか、白哉・シャミ子・全蔵の三人は驚いたかのように目を見開いた。フリーレンのおかげとはいえ、自分達がここまで難なくトラップを乗り越えながらゴールに近づけたことに違和感を覚えたようだ。

 

 それと同時に、三人は戦慄したのだ。ゴールまであともう少しとなったところで、そこでこれまでの以上に命の危険を感じさせるトラップが行手を阻むのではないか……と。

 

 その現実をどうにか逃避しようと思い込んだのか、シャミ子が自身の憶測を語りだす。

 

 

「で……でもですよ⁉︎ それがありそうな仕掛けにさえ引っ掛からなければ、そのトラップも発動しないのでは……」

 

「トラップ全てがギミック機能ってわけじゃないよ。ほら、ガーゴイルみたいな魔物も出てたでしょ。だから単純に、かなり強そうな魔物がゲームのボスみたいに待ち構えている可能性だってあり得る」

 

「ウッ……そ、それは……そうかもしれないですけど……」

 

 

 どのみち危険と隣り合わせになることに変わりなく、それを回避できる可能性も高くない。フリーレンの説明からはそのような緊張感の走るような言葉が出てきた。

 

 彼女の意見も正しい……否、彼女の意見の方が真っ当だ。シャミ子はそう捉え聞こえたかのように言い淀んでしまった。自分の意見よりもダンジョン経験のあるフリーレンの方が説得力がある、そう実感・確信しているかのように。

 

 

 

 ふと、気がつけばフリーレンは瞬時にサケブシッポと背中合わせになるように回り込んだ。まるでこの子を庇うかのように。

 

 

 

「ぷりゃあ⁉︎」

 

「えっ⁉︎ ちょっ……フ、フリーレンさん一体何を⁉︎」

 

 

 突然の行動にサケブシッポが思わず仰天の叫び声を上げ、白哉もその感情を表すかのように少々荒げた驚きの声を出す。

 

 刹那。何処からともなく飛び掛かるように現れた爪の斬撃が、フリーレンとサケブシッポに向かって襲い掛かってきた。それをフリーレンは展開した防御魔法で防ぎ、土煙が巻き上がる程度で済まされた。

 

 

「……ハァ。やれやれ、誰のリクエストかは知らないけど、いくら私が体験したのを採用したからって、こんなのまで再現しないでほしかったな。色々な方向的にめんどくさいんだよね」

 

 

 そう悪態をつくかのように愚痴を零しながら、斬撃が飛んできた方向に真っ直ぐ見つめるフリーレン。白哉達もその方向へと振り向けば、そこには二人の人物が立っていた。

 

 が、その出会いは残酷とでもいうのか。その二人は獣の耳や尻尾がついており、片方はさらに獣の爪まで施されていた。そして、その姿は白哉達がいつも見かける、見知った者と似た……否、完全に一致していた。

 

 

「はっ……⁉︎ こ、こいつ、ウガルルか……⁉︎ し、しかも隣には蓮子まで……⁉︎」

 

「な、なんで二人がサケブシッポさんを……⁉︎ と、というか二人はミカンさん達と同行したはずなのでは……⁉︎」

 

「よく見なよ、二人とも身体の色が全然違う」

 

「「えっあっ……」」

 

 

 白哉とシャミ子が、何故ウガルルと蓮子が自分達に襲い掛かってくるのかと動揺する中、フリーレンがその二人の体色を見るようにと促す。凝視するように見れば、二人ともまるで石像のように……全身が灰色の体色をしていた。おまけに無表情な顔と瞳がこちらを見据えている。

 

 いつものウガルルと蓮子とは全く異なる点を理解し、白哉とシャミ子は安堵しながらも目を丸くする。そんな二人を余所に、フリーレンはウガルルと蓮子の紛い物とも言える者が何者かを説明する。

 

 

「アレは神話の時代の魔物・水鏡の悪魔(シュビーゲル)が生み出した複製体。本体は戦闘能力を持たない脆弱な奴だけど、管理しているダンジョンに挑戦している者達の力云々を完璧に再現した複製体を作れる魔物だよ。複製した者の心の方は模倣するぐらいだけど」

 

「心以外を完全再現……それもこのダンジョンにいる奴全員……それはかなり厄介やなぁ」

 

 

 たった今フリーレンの口から明かされた衝撃の真実。なんとこのダンジョンには、挑戦者のほぼ全てを完全再現した複製体を生成できる魔物が存在していたのだ。

 

 それもフリーレンチームのメンバーだけでなく、他のチームのメンバーの複製体をも作り上げたとのことだ。ウガルルと蓮子がその例となっている。

 

 もしも本当に全員の複製体が作られたとなると……桃の複製体を連想したシャミ子は鳥肌が立ったのか一瞬恐怖で震え上がっていた。

 

 そんな彼女を余所に、フリーレンは悪態を吐くように言葉を漏らす。

 

 

「……となると、やっぱり私の複製体もいるのかなぁ……もう私自身と闘うのは勘弁してほしいんだよね、いろんな意味で」

 

 

 フリーレンは過去にも水鏡の悪魔(シュビーゲル)によって生み出された複製体と闘った経歴があるらしく、自身の複製体相手にかなりの苦戦を強いられていたようだ。

 

 そのためか、フリーレンは自分自身の複製体との闘いを避けようと……寧ろその複製体が生成されないことを祈っていた。

 

 そんな事を考えていながらも、フリーレンは杖を構えながら二体の複製体を見据える。闘いに余計な考えを持ってはいけない、そういうメッセージがあっての合図だろう。

 

 

「まぁでも、今は目の前の敵に集中しないとね。みんな、顔見知りだからって手加減しちゃダメだよ。相手は遠慮なんてのを一切考えてない感じだからね」

 

「は、はい。わかりました……」

 

「……なんか、複雑な気分だな。複製体──偽者とはいえ、見知りあった人達と殺し合いみたいな感じに闘うなんてな……」

 

 

 フリーレンの指示に了承しながらも、白哉とシャミ子は釈然としない様子だった。二人とも相手が知り合いを相手にすることに対して躊躇いを感じたからなのだろう。

 

 

「とりあえず、この場に拓海がいなかっただけよかった……とだけ思えばいいか」

 

 

 ふと白哉は拓海の事が頭の中に過り、いつもの冷静さを取り戻しながらそう零すのだった。拓海がウガルルと蓮子の複製体を見れば発狂しかねない、そう感じたからだろう。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ガタルフチームはというと。

 

 

「ヘックシッ‼︎ ……クソッ、なんでこんな時にくしゃみなんか……」

 

 

 白哉の呟きが風の噂となったのか、拓海はくしゃみを一つした。

 

 現在、チームと共にとある者との戦闘をしている最中だというのに……そんな苦言を頭の中で過らせながら。拓海が前を向くと、その方向には、同じチームメンバー達が一人の人物と闘っている様子が見られていた。

 

 その一人の人物は、フリーレンチームが現在闘っている複製体と同じ表情と体色をしていた。しかし姿形は全く異なり、脇腹部分にリボンの付いた脇と膝の出ているドレスを着込み、薔薇の装飾をした髪飾りを付けているツインテールの少女が、薙刀を持って構えていた。

 

 

「あの石像みたいな奴……紅さんが見たら、仰天したりとかして大変そうだ」

 

 

 そう、彼女は朱紅玉……魔法少女時代の頃の彼女の姿を再現した複製体なのだ。この頃の姿をしているからこそ、拓海は朱紅玉に彼女の複製体である今の彼女を見せられない……そう感じたのだろう。

 

 が、しかし。この場にフリーレンがいたら疑念を抱いていたことだろう。

 

 水鏡の悪魔(シュビーゲル)が生み出す複製体は、管理するダンジョンに潜む挑戦者の完全再現……つまり再現可能なのはその時の者の姿や能力云々であって、全盛期の時のを記憶して再現するというものではない。

 

 では、何故朱紅玉の複製体は魔法少女の頃の力が使えるのか。水鏡の悪魔(シュビーゲル)には複製する者の記憶をも読み込むことが可能となるのだろうか。謎は深まるばかりだ。

 

 だが、水鏡の悪魔(シュビーゲル)の事を知らないガタルフチームにとってはそんな事は関係のないこと。そもそも闘いに関係ないであろう考察を、その闘いの中でする余裕すらない。複製体を倒すべく動くしかないのだ。

 

 

「なるほど……魔法少女だった頃の朱紅玉殿は、優雅に薙刀を振るえるようだな。だが、もう攻撃は読めた上に、もう動かせんぞ」

 

 

 ブラムが複製体の動くを予測できたかのような言葉を呟いた途端、彼女の動きが止まる。

 

 

『『『『『『『キキャーッ‼︎ キキッキィッ‼︎』』』』』』』

 

『‼︎』

 

「よくやってくれた使い魔達よ‼︎ すぐ終わらせるので暫し耐えよ‼︎」

 

 

 息を殺して瓦礫や物陰などに紛れ込んでいた、ブラムの七匹の使い魔達が一斉に飛び掛かり、噛みついたり足で掴んだりすることで複製体の身動きを封じたのだ。

 

 無論、この機をガタルフチームは逃さなかった。ガタルフの魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)、ミカンと奈々の魔力の光を実体化した攻撃、拓海の霊術による光の弾丸、そしてブラムの紅い光の矢が一斉に放たれ、使い魔達がその場から離れると同時に複製体の身体を貫通させた。

 

 腹部や左腕などを激しく損傷するも、周囲の敵を殲滅せんとまだ動こうとする複製体。そこにウガルルの爪と蓮子の光の刃に変えた陰陽札による斬撃が入り、複製体は砂のように完全に崩れ落ちていったのだ。

 

 そのまま消滅していく朱紅玉の複製体を見ながら、ガタルフは語る。

 

 

「おそらくこれはこのダンジョンのボス……魔物が魔法などで作り上げた複製体でしょうね。それもこのダンジョンの参加者の記憶を探り、そこからその時の能力を備えさせられる力もあると見た」

 

 

 憶測するように語る中、ミカンは足元に転がっている複製体が使ったであろう薙刀を見て呟く。

 

 

「私達、紅さんと闘ったことないけど……確かに魔法少女だった頃のあの人と闘ったという感覚はあったわ。何処となく紅さんと似ている感じはあったから……なんだか釈然としないわ」

 

「どちらにせよ、確かに知り合いを倒すってなんだかあまりいい気分がしないよ……」

 

 

 彼女の不服な感情に同意しているかのように、奈々も実際に朱紅玉本人と闘っている感覚がしたためなのか、何処か悲しげな表情をしていた。

 

 そんな彼女に同情しているかのような表情になりながらも、拓海が先程の複製体について己の意見を語る。

 

 

「少なくとも……今のところ分かっているのは、見た目からして同士討ちの危険性はないってことだな。体色や終始無口であるからして、本物の区別がしやすく、本人と闘う事を想像したのと比較すれば思ったよりも闘いやすいだろうね」

 

「んがっ。確かニ、これならミカンや拓海のニセモノが出たとしてモ、ホンモノかどうか分かると思うかラ、俺としてはミカンや拓海のマネしてるナって感じで闘いやすいと思うゾ‼︎」

 

「俺としては、偽者でもウガルルちゃんや他のみんなと闘うのはちょっと……ね」

 

 

 拓海の憶測を聞き、ウガルルは改めて複製体相手に全力を尽くすことを宣言する。憶測を語った本人は乗り気ではなかったが。

 

 

「……とりあえず、チームを組ませてもらったリリスさんには感謝しないといけませんね。おかげで連携しながらの対処できる手段が増えるので」

 

「うむ、それもそうであるな」

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ナディアチームはというと……

 

 

「あ、危なかったわぁ……こいつ、全蔵とかいうあの忍者マニアの偽者やったんやな……貰った魔法を反射的に発動させとかなかったら、アタシ殺されとった……」

 

 

 既に全蔵の複製体と出会ったようだが、彼との闘いはあっさり終わっていた。

 

 何故なら、自分の複製体が倒されたことを知らない朱紅玉が、闇討ちで狙ってきた複製体に襲われそうになった時に、事前にフリーレンから貰った魔導書で伝授した見た者を拘束する魔法(ソルガニール)で彼の動きを止めたからだ。

 

 複製体が動きを封じられたのと同時に、彼の存在と本物の全蔵との相違に気づいたナディア達が一斉に複製体に攻撃を仕掛け、その複製体は現在のように即座に満身創痍の状態で消滅していった状況だ。

 

 

「多分、このダンジョンのボスが参加者をコピーして、私達に襲い掛かるようにと命令したんだろうね。さっきの動きが忍者のようにしなやかだったから、再現度はかなり高いと見た方がよさそう。色は付けられてないのが不幸中の幸いだね」

 

 

 複製体の事を一通り見たためか、彼がどのような者だったのかの考察を語るナディア。戦闘スタイルの再現度の高さに注意すべきであることと、同士討ちになる事態は起きにくいという結論を出し、チームメンバー全員に今後来るだろう複製体への警戒を促す。

 

 その警告に了承するかのように、桃がどう対処すべきかを呟く。

 

 

「となると……みんなで周囲を警戒しながら先に進まないといけないね。いつまた、別の私達の偽者が現れるか分からないから」

 

「……うん、そうだね。またさっきみたいに、朱紅玉さんにやろうとしたみたいに、また誰かが、こっそり不意打ちしてくる可能性もあるだろうし」

 

「ヒッ……‼︎」

 

 

 桃の意見に同意するように柘榴がそう呟けば……突然朱紅玉がブルッと身体を震え上がらせる。当然、武者振るいではなく恐怖で。

 

 

「そ、それ言わんといて……めっちゃ怖かったし、ホンマに死ぬかと思ったんやから……」

 

「えらくトラウマになったようね……」

 

 

 襲撃されそうになったのが恐怖として記憶されたのか、朱紅玉はその場で蹲り怯えてしまった。これには彼女の隣にいたマリンも同情せざるを得ず、その場で朱紅玉の頭を優しく撫でることに。

 

 そんな朱紅玉の姿を見てられなかったのか、ミトが彼女の前に出る。

 

 

「ご主人様、気をしっかりなさいまし‼︎ またあのような殺意剥き出しの危険な輩が来ても対処できるよう、わたくしがいつもよりもご主人様の隣で行動いたしますわ‼︎」

 

 

 ミトの激しい激励。それによる信頼を求めようとする圧。それに押されたからなのか、朱紅玉の恐怖は無理矢理弾き飛ばされたかのように吹き飛び、代わりに苦笑を浮かべる。

 

 

「お、おう……ありがとうなミト、頼りにしとる」

 

「‼︎ はいですわ‼︎」

 

 

 ミト、改めて主人である朱紅玉に期待されたのか歓喜の表情を露にする。耳もパタパタと動かし、尻尾もブンブンと振り回しており、喜びの感情を表に出しすぎて丸分かりな様子だ。

 

 そんな二人尻目に見ながら、バトラーも口を開く。

 

 

「しかし……色で判別できるとはいえ、我々の偽者と闘うというのは心身共に骨が折れますね。それにお嬢様の偽者──仲の良い知り合いの真似事をしている者もいると考えると……認めたくありませんが、何処ぞかのタイミングでそうなる可能性があるというのが恐ろしいものです」

 

 

 いつか自分が仕える上司の複製体とも相手をせざるを得ないというのだろうか。バトラーはそんな悲しい現実を受け入れられずにいたのか、完全に砂となり天に昇りながら消滅していく全蔵の複製体に目を背けた。

 

 

「なーに甘いこと抜かしてんのよ‼︎」

 

 

 悲しく魂が抜けかけたかのような、虚な表情を浮かべるバトラーを見て、マリンが苛ついたのか喝を入れ始める。

 

 

「あぁいう他人の見た目や記憶・能力を使って悪事を働く奴なんて、昔はわんさかいたんでしょ⁉︎ もしもそういう奴らがこの時代にもいたらってのを想像してみなさい。やりづらいとか四の五の言っている場合じゃないんだってことぐらい、アンタだって分かるでしょ‼︎ もしも私の偽者が襲って来たのなら……本物である私が許可するわ。思いっきりボコしちゃいなさい‼︎」

 

「お、お嬢様……」

 

 

 マリンは許せなかったのだ。相手が知り合いと同じ姿をしているからと言って、状況が悪化する可能性もあるというのに、その者と闘うことを躊躇うバトラーの弱音を吐く姿を。

 

 彼女自身も身内で仲の良い者を模倣した敵と闘うことに何も思わないわけがない。だが、その躊躇な思いにかまけて他人に迷惑をかけることの方が、自分自身にとっても屈辱的である……そのような思いも持っていた。

 

 だからこそなのか、マリンはバトラーに喝を入れたのだ。偽者相手に躊躇も遠慮もするな。今後のためにその力を振るえ、と。

 

 その言葉によって自分の迷いが吹き飛ばされたのか、ハッと何かに気付かされたかのような表情になったバトラー。吹っ切れたのか悲しげな表情をしなくなり、晴れた表情となってマリンの目の前で執事らしい一礼した。

 

 

「フゥ……お見苦しいところをお見せしました、お嬢様。私はお嬢様のその言葉に従い、今後の未来のためにもその志を持って働きます」

 

「その意気や良し‼︎」

 

 

 バトラー、自分の上司や知り合いの危機を回避しやすくする方を優先すべく、偽者相手に余計な事を考えず倒すことを誓う。それを確認したマリンは彼の肩を叩き激励する。

 

 もうバトラーの事を心配する必要がないと判断したのか、それを確認した桃がナディアに指摘を入れる。

 

 

「これでみんな大丈夫そうだし、早く先に進もう。他のチームが偽者を何体か倒してゴールに近づいていると思うし」

 

「えっあっうん、そうだね。それじゃあみんな、急いでゴールしに行こうか‼︎」

 

 

 他のチームのゴール=この競争での敗北。ナディアはそれを危惧し避けるべく桃の意見に了承し、メンバー全員に歩を進め直すようにと指示する。

 

 

「もう偽者と闘うことがないことを祈ろー‼︎」

 

 

 複製体との闘いが若干のトラウマ気味だったのか、そんな事を呟きながら。それがフラグになることを知らずに……

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、ようやくゴール目前の扉のあるエリアにまで辿り着いたナディアチーム。

 

 周囲を見渡せば、そこには自分達以外のチームはこのエリアに存在しておらず、既にゴールしたのかその逆なのか……この二択のどちらかと言えよう。

 

 だが結果がどちらにせよ、今この場にいないのが他のチームメンバーだけであって、それ以外の者がこのエリアにいないというわけではない。

 

 

「あ、あぁ……うん、だよね。そうだよね。やっぱりあの人の偽者も出るだろうなとは思ってた。アハハハハ……どうしよう」

 

 

 ふと天井を見上げれば、そこには魔法使いの杖を携えている長いツインテールの女性が。フリーレン。彼女の複製体も当然いるものだと言っているかの如く浮遊しながら佇んでいた。

 

 

「まぁ、さすがに対処できないわけじゃないよ。ナディアはフリーレンさんの師匠だから、彼女の事を知ってるんでしょ? 彼女の使ってる魔法とかも何個か……は………………えっ……?」

 

 

 桃がふと、フリーレンの複製体から扉の方へと見下ろした途端、言葉を失ったのか愕然とした表情を露にしだした。

 

 

「へっ? も、桃さん? そんな目を見開いてどうしたの……?」

 

 

 仰天している桃の表情に戸惑ったのか、ナディアが恐る恐る問いかける。だが桃の表情は変わらず、寧ろ恐怖で怯え冷や汗も垂れ流している。

 

 

「う、嘘……な、なんで……なんでこの二人が……⁉︎」

 

 

 桃が見据えているのは、扉の前に立っている二人の人物──複製体。

 

 一人は耳を尖らせ、三つ編みの上に帽子を被った、ドレス姿の女性。もう一人はノースリーブっぽい服の上に白衣、右肩に掛けているマント、そしてフリフリスカートといった、正に正統派な魔法少女の衣装の女性だった。

 

 その二人の姿は、桃が見覚えのある……寧ろ記憶に強く刻まれていた。それ故に、何故この場にいるのだと錯乱してしまう程だ、

 

 

「なんで……お姉ちゃんと誰何の複製体まで、こんなところに立っているの……⁉︎」

 

 

 桃の義姉で、多摩町を魔族と魔法少女の共存する町にした魔法少女・千代田桜。歪んだ平和の理想郷のために、狂った活動で多摩町の魔族達を危機に陥れた魔法少女・那由多誰何。

 

 二人の強大な魔法少女が今、フリーレンと共に複製体として桃達の目の前で待ち構えていたのだった───

 

 




はい、まさかのダンジョンのボスがラスボス系のコピー三体というね。無理ゲーじゃね?(オイ)

そういえば今日からだぶるあにばーさり展が始まりましたね。俺は地域の問題などで行けませんチクショー‼︎(血涙)
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