偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
そういえばシャミ子・桃・ミカンのネグリジェグッズが販売されるそうですね。ふむ、シャミ子のネグリジェ……江露い。
白哉「なんて?」
夢魔の世界にてリリス・小倉・良子の発案の混ざり合いによって生まれたダンジョン。そこで三チームに分かれ、どのチームが先に攻略しゴールするか競争するかのゲームが行われていた。
そして現在。神話の時代の魔物・
そのエリアには、ゴールエリアの扉を死守せんと立ちはだかる、フリーレンの複製体が。そして───
「なんで……お姉ちゃんと誰何の複製体まで、こんなところに立っているの……⁉︎」
桃の義姉で、多摩町を魔族と魔法少女の共存する町にした魔法少女・千代田桜。歪んだ平和の理想郷のために、狂った活動で多摩町の魔族達を危機に陥れた魔法少女・那由多誰何。
二人の強大な魔法少女が今、フリーレンと共に複製体として桃達の目の前で待ち構えていた。
桜は桃の義姉で、誰何は桃と町の魔族の命運を掛けた闘いをした因縁の敵。二人とも桃の記憶に強く刻まれた印象の強い存在である。
そんな二人が肩を並べるように、そしてフリーレンと共に敵を待ち構えている。その事実をにわかに信じ難いと思っているためか、桃の身体は震えており、冷や汗も大量に掻いている様子だ。
「ちょ、ちょっと桃⁉︎ 急にそんなに怯えてどうしたのよ⁉︎ 気をしっかり持ちなさい‼︎ あの二人を見て何を思ったのかは知らないけど、あの二人は偽者よ‼︎ よく見て‼︎」
桃の様子が突然変になったと感じたマリンが、必死に彼女の事を呼びかける。正気に戻れ、あの二人は複製体なのだと。
「あ、あぁあああ……‼︎」
だが、桃にとって二人の姿が恐ろしい程に記憶に刻まれていたからのか、彼女の耳にはマリンの呼びかけが届いていなかった。
そんな彼女の心境など関係ないとでも言っているかのように、ここでフリーレンの複製体が動き出す。自身の目の前に複数もの魔法陣を作り出し、そこから
それに続くかのように、桜の複製体も桜の花の形をした光を複数生み出し、誰何の複製体も自身の影から真っ黒な槍を作り出して構える。三人とも、ナディアチームを滅ぼそうと迎撃態勢を整え始めたのだ。
「これは、まずいかな……桃さんの心が乱れてる今、このまま戦いに入っても負けは明らか。一旦引くよ‼︎」
状況の圧倒的不利を確認したナディア。メンバー全員に撤退の指示を出しながら、斧剣を地面に向けて大いに振り翳す。
「地盤斬‼︎」
斧剣に当たった地面に亀裂が横に広がるように入り、そこから地盤が巨大な土壁になるように湧き出る。ただそれだけであって、その土壁がこれから放たれる攻撃に耐え切れるわけがない。だが、それだけでも彼女達にとっては充分だ。
「今だ‼︎ 全員入り口前まで退避‼︎」
「……桃‼︎」
「えっあっ……んんっ⁉︎」
ナディアの合図と共に、全員がその場から回れ右で移動する。ある者は脅威の脚力で、ある者は空を飛ぶ能力を用いて。桜と誰何を見て愕然としていた桃は、我に返った途端に柘榴にお姫様抱っこで抱えられながら。朱紅玉は動く前にミトに背負われながら。
全員が動き始めた途端、土壁は青の混じったのと桜色の混じった純白の光に当たり爆散する。その瞬間に土煙が巻き起こったのだが、黒色の残像を出しながら振るわれた槍がそれを吹き飛ばす。
砂塵が解除された時には、ナディアチームは既に先程のエリアの入り口付近にまで退避しており、即座にその扉を閉じていた。
複製体が扉を破壊してこちらに来ないかと警戒する一同だが、扉の僅かな隙間から覗いても、どの複製体も先程の攻撃から追撃してくる気配は一切なかった。
三人の複製体が攻撃を仕掛けてくるのは、あくまでこのエリアを訪れた者達のみ。各々が管理しているエリアから離れては良からぬ事態を招かねん、そう判断しての佇立なのだろう。
「一応、今のところは安全そうだね。後はアレをどう突破すればいいのやらだけど……」
無論、このまま先程のエリアに入らずに様子見し続けたとしても、膠着状態となってゴールし終いになるだけである。この状況をどう打破すべきか、ナディアは絞りに絞った解決策を立て始める。
そんな中、落ち着きを取り戻した桃がメンバー全員に頭を下げ謝罪する。
「ごめんみんな。あまりにも目の前で、私にとって信じられないものを見てしまったから……と、というか柘榴にお、お姫様抱っこって……」
謝罪の途中で、その謝罪で下げている顔を真っ赤にしながら小声で柘榴にお姫様抱っこされたことの面映いさを呟く桃。そんな彼女の頭を、柘榴は優しく撫でる。
「……動揺するのも無理もない。桜さんだけじゃなく、君にとっての町の宿敵であるあの魔法少女も、偽者としてあそこにいたんだ。冷静でいろと言われても、すぐには無理だよね」
「う、うん……」
柘榴のナデナデによって、桃の罪悪感も暗く淀んでいた気分も晴れるようになった。羞恥心を犠牲にしながらもだが、それでも彼女の心の重荷が外れたことに変わりはなかった。
「……どう? 少しは彼女と闘う勇気が湧いた?」
「………………勝てるかどうかはかなり微妙だけど」
「……それはまぁ、知ってた」
別の問題が解決できないことにも、変わりはなかったのだが。
♢
それから僅か三分。たったの三分でガタルフチームがこの場に到着する。先程の多数の魔法による轟音が聞こえたからなのか、皆が皆慌てた様子で駆けつけてきたことが分かる。
「姉さん‼︎ さっきここら辺ですごい爆発音が聞こえたんだけど、何があったんだ⁉︎」
「ガタルフ‼︎ ちょっとね……ゴールしようとしたらとおせんぼを喰らっちゃって……アレらがいて入れないんだよね」
そう言ってナディアは扉の隙間に指差す。ガタルフがそこを覗けば、桜・誰何・そしてフリーレンの三人の複製体がゴールの扉の前で佇んでいるのが見えた。
「アレも複製体……フリーレン様がいたのはなんとなく分かってはいたんだけど、あの二人は一体……?」
ガタルフは既にフリーレンの複製体も作られていることを想定していたようだが、当然ダンジョンに参加してない者の複製体が作られるとは想定していなかった様子。その上、その二人と出会った経歴が皆無であるためか、どのように対処すべきかと頭を悩ませる。
ふと、その二人の複製体の姿を捉えたミカン・ブラム・奈々の三人が思わず目を見開いた。
「ッ⁉︎ ちょ、ちょっと私にも見せなさい‼︎」
「我の目にもしっかりと見させよ‼︎ 見逃してはならぬ存在が目の前にいる‼︎」
「わ、私にも‼︎」
「えっみなさん急にどうしたんですか……怖っ……」
三人が自分達にも凝視させろと急かすのを見て、ガタルフはその唐突な切り替わりに引き気味となった。だが三人が乱されてしまうのも無理もない。複製体の内の一人の姿が、三人にとって印象深い存在であるからだ。
「あの人……やっぱり、桜さんだ……‼︎」
千代田桜。ミカンの体内に取り憑いていた呪いだった頃のウガルルを沈静化させ、ブラムと奈々に新たな住居を与えた、数知れずの恩を作った存在なのだ。
そんな彼女が今、複製体としてながらもミカン達を追い払おうと待ち構えている。フリーレンや誰何の複製体と並び立つように。
何故彼女の複製体がこの場にいるのか。何故町の敵とも言える誰何の複製体と同行しているのか……にわかに信じ難い光景を目にしたからなのか、ミカン達三人は動揺を隠せずにいた。
「あの桜さんが……複製体とはいえ、桃が言う多摩町を狙ってたという誰何の複製体と組んでいるなんて……あまりにも信じ難い光景ね……」
「えっと……フリーレン様や桃さん以外にも、その桜さんって人からの恩恵を受けてたとか? そんなにすごい人だったんですかその人は……」
無論、実際に桜と会ったことのない者の一人であるガタルフも動揺している。別の意味で。実際に会ってないが故に、その者がどのような存在であるのかという実感が湧いていないようだ。
「姉は結構人がいいからね。良い方向だろうと悪い方向だろうと、困ってる人は助けちゃうんだよ。……雑な考えを持って」
「あっそうなんですか……」
悲報。桜、実は思考はガサツなところがあり大半その場の勢いでやってきたことを、妹の口からバラされる。既に似たようなことは白哉とシャミ子に知らされてはいるが。
「なんであの二人の複製体まで作られたのかは分からない。けどどちらにせよ、姉だけじゃなくて、私の身体に傷跡を付けさせる程の強敵や二千年以上も生き続けた大魔法使いがあそこにいるんだ。どのチームもゴールするのが困難であることに変わりない……」
「あっ。やっぱり私の複製体もいるんだ」
これからどうするべきかと語る桃に続くかのように、フリーレンの複製体がいることを呟きながらこの場に合流してきた者が。
フリーレン、自分のチームと共にこの場に到着。ウガルルと蓮子の複製体を撃破し、二チームより遅れてようやくゴール前のエリアに辿り着いたのだ。
「フリーレンさん、来たんですか」
「うん、どうやらビリッケツだったみたいだけどね。……で、今どういう状況? なんとなく察せられるけど」
「………………厄介なのが三人もゴールの扉を死守してます。しかも私の姉だけじゃなく、あの誰何の複製体まで何故かいて……」
説明しながら扉の隙間に目を配る桃。フリーレンチームがそこを覗けば、約数名がその複製体を見て愕然とする。白哉とシャミ子は桜と誰何の複製体を見て。サケブシッポはフリーレンの複製体を見て。
「えっ桜さん……⁉︎」
「それにあの誰何まで……⁉︎ 複製体とはいえ、なんであんなところにいるんだ……⁉︎」
「ぷりぃ……⁉︎」
動揺を隠せずにいる三人に対して、フリーレンは桜と誰何の複製体を見ても平然としていた。このダンジョンに潜む複製体が参加者だけとは限らないことを想定していたからだろう。
「ふむ、なるほどね……リリスの奴め、いくらここが夢の世界だからって
勝てないという可能性は考慮していないものの、ボスクラスの敵を一箇所に数人集めさせたリリスに嫌味を吐くフリーレン。
一度かつての弟子とタッグを組んで闘ってもかなり苦戦した自分の複製体だけでも厳しいというのに、さらに強敵二人の複製体も同時に相手せざるを得ない。この状況はファンタジー界のラスボス戦前にでもやるべきではないのかと、そう愚痴を零したくなる程のようだ。
『
「あぁ、他のチームは
「今回の
「えっ。記憶の中にいる他人まで作れるんですか……⁉︎」
記憶の持ち主だけでなく、その記憶の中の人物も複製されている可能性も視野に入れた発言に、シャミ子は思わず言葉に出す程に戦慄した。桜や誰何だけに飽き足らず、この場にいる者全員の印象に強く残っている強者も、このダンジョン内の何処かに潜んでいる……その可能性がある事を恐れ始めたのだ。
しかし、ここでフリーレンの表情は微笑みとなった。それも、期待を込めているかのように。
「………………でも、逆に燃えてきた」
『えっ?』
一同が疑問に浮かんでいるかのような呆けた声を上げたのを皮切りに、フリーレンは言葉を繋ぐ。
「ダンジョンは仕掛けが複雑だったり内部の敵が強かったりすると攻略が難しいもの。だけどその分、最深部にまで到達した時の達成感が強くなることの方が多いものでもある。そう考えると、このダンジョンはどうしても攻略してやるって思えてくるんだよね」
「もしかしてフリーレンさん、最深部に激レアなお宝があることを祈り始めてます?」
ダンジョンのレベルの高さに関する良さを前置きにし、ただ魔導書などの珍しい報酬をこの目で確かめたいだけではないのか? 白哉はツッコミを入れながら心の中でそう思ったそうな。だが魔導書の事まで口にすれば面倒な事になるのではないかと思い、その言葉までは口にしなかったようだ。ほとんど意味ないが。
一方のフリーレンは、白哉が何を言いかけたのかなど気にする様子はなかった。三人の複製体を見据えながら、この場にいる一同に伝えるように再び口を開く。
「それじゃあ今から、アイツ等を倒す方法でも考えようか。みんな一丸となって、ね」
『………………………………はい?』
敵味方全員で手を組み、三人の複製体を倒そうと画策を促す発言をするフリーレン。その発想は予想していなかったのか、この場にいる者全員がまたもや呆気に取られたかのような声を出した。
「いやなんで驚くのさ」
「えっと……一応、これはあくまで競争となっているので、俺達のチームだけでどうやってアイツ等を倒すのかって話になるのかと思ってたので……」
白哉が全員の心境を代弁するように語ると、それに納得いかなかったのか、フリーレンは「はぁ?」と言っているかのような不満気な表情になる。
「あの三人を数が一番少ない私達のチームだけで勝つって? 魔力の質や戦闘経験にどれほど長けているのかも考えれば、さすがに私達のチームだけだと分が悪すぎるでしょ」
フリーレンがそう説明するのも無理もない。相手は魔法の扱いにかなり長けている自分自身の複製体に、町一つを一人で守れる程の実力者である魔法少女、そしてその町の魔族を密かに次々と殺害していっていた千年以上生きる魔法少女。
これらの強敵が揃っていて、その倍の数しかいない精鋭で闘いに挑むなど無謀と言った方がいいにも程があるものだ。
「で、でも……みんなが戦ってる間に、どっかのチームの一人がゴールするって可能性も───」
「それはないね、絶対。何せ私の複製体がいるから」
シャミ子が誰かが抜け駆けする可能性があることを危惧している発言をするも、フリーレンはそれはないと断言するように否定する。そんな彼女が複製体の背後にある扉の方に目を見やれば、その扉には巨大な鎖錠が掛けられているのが見える。
「私には“命懸けで宝物庫の扉を閉じる魔法”を持っているんだ。アレがゴールエリアにいる
魔力切れとか関係無く留まる魔法なんてものがあるのか、一同は目を見開いて唖然としたり興味を示したりと様々な反応を見せる。
「それと……もしもあの複製体達が本当に私の記憶の中の
「どういうことですか?」
「
姑息な殲滅手段とも言える習性を持つ上に、隙を狙うかのように遅いタイミングでの再生。それらを兼ね備えた複製体を長時間相手にしなければいけないのか……一同は今一番に戦慄してしまう。
しかし、そんな複製体達に対するある程度の対象法すら持たないフリーレンではない。
「でも、弱点がないわけでもない。複製体は心の動きを精密に模倣している……つまり行動パターンによる弱点は本人と同じ。そこを上手く突ければ、どんなに強い複製体でも倒せるはず」
「つまり、その弱点を共有し合えば勝てる可能性は高い……ってことですか」
「そういうことだよ」
一度
それを共有させる発言をした途端、突然ガタルフが口を開いた。
「ちなみにフリーレン様の弱点は何ですか?」
「………………………………」
フリーレン、しょぼしょぼ顔で固まる。お互いに各々の弱点を克服すべきだと提案した張本人が、自身の弱点を教えようとするのを躊躇っている様子だ。だが言い出しっぺが教えないのは筋が合わないと思ったのか、渋々としながらも明かすことにした。
「……魔力探知」
「はい? なんと?」
躊躇によってかなり小声だったため、ガタルフに聞き返される羽目になった。ウケる。
「………………魔力探知」
「魔力探知とは?」
「相手の魔力を測ったり、その魔力の根源がどこにあるのかを探るものだよ……魔法を使う時そっちの方に集中しちゃって、その魔力探知が一瞬だけ途切れちゃうから、上手く隠れている相手を見つけ出せないんだよね……」
魔力を持たない者はともかく、魔法を使う一瞬だけ魔力のある場所を捉えることができないのが、フリーレンの唯一の弱点となっているようだ。
「ちなみにこれ、昔から苦手なんだよね……」
「自覚があるのでしたら、何故伝えるのを躊躇ったのですか? 見習い魔法使いがよくするミスだと教えてくださったからですか?」
共有を躊躇う理由を問い詰められたため、本心を軽く押し殺すかのように人差し指と人差し指をくっつけ合ってもじもじとしていた。
「それもあるけど、やっぱり恥ずかしくて……」
「そんなこと言ってる場合ですか。フリーレン様、リリスさんに対して自分の子孫に勝たせる気ないのかとか言っておいて、貴方も自身含め全員に勝たせる気ないのでは?」
「そ、そんな大迷惑なことは一切考えてないんだけど……」
ガタルフ、フリーレンが自身の弱点を隠そうとしていることに対する失望で冷え切った目つきとなる。そして思ってもいないことを企んでいるのではないかと決めつけられているかのような発言をされ、罪悪感に押されたかのように青冷める。
「けど他の技量が滅茶苦茶すごいから、それらが結構カバーしているせいで弱点がないように思えてくるんだよなぁ……」
「あ、そうだった。複製体対策……」
フリーレンへの問い詰めをしている場合ではないと伝えようとしているかのように、白哉が自然と本題に入れるように促そうとする。その結果、ガタルフの思考はフリーレンへの問い詰めから複製体を倒す手段の考察をする方へと戻った。
「それじゃあ、気を取り直してアイツ等を倒す方法を考えようか。ありがとう白哉、助かったよ……」「いえ、なんか可哀想で惨めだったので」「本人の前でそんな事言わないでくれる……?」
ガタルフが自分の事から複製体をどうするかの話についてに戻ったのを機に、フリーレンもその話題について話し合うように全体に促した後、小声で白哉に礼を言った。よかったねフリーレン、あれ以上の羞恥は晒されなくて済むよ。
♢
それから白哉達は、ゴールエリア前にいる三人や周囲を徘徊している複製体への対処法をどうするのか話し合った。
そんな中、シャミ子はふとフリーレンの顔を見て、あることに気づいた。彼女が終始笑っているということに。
「フリーレンさん、なんかいっぱい笑顔を浮かべていますね」
「うん。つい笑っちゃうんだよね、久しぶりにダンジョン攻略のことで話し合えるんだって考えてたら、いつの間にか笑ってしまってたみたい」
「そ、そうですか……」
現代で実際にダンジョン攻略ができないことは確か。しかしダンジョンの中は決して安全ではない。危険な場面の多いそれを経験しておいて、その危険性のあるものに対して楽しく思う事は良いことなのだろうか……シャミ子は一抹の不安を抱えた。
「もしかしてですけどフリーレンさん……この後の戦いも楽しもうとしてます?」
「もちろん。寧ろダンジョンは楽しまないと損だよ」
「えぇ……」
予想的中。複製体との闘いもダンジョン攻略と同様の感覚でいるつもりだ。その度量の大きさにシャミ子は唖然とするしかなかった。
「でも当然油断はしてはいけないからね、そこら辺のメリハリもつけながらやるつもりだよ」
「あ、はぁ……」
そこは当たり前なことでは? とツッコミを入れようとしたが、実際にやると後が大変そうだと感じたのか言い淀んでしまったシャミ子。フリーレンって意外と繊細なところあるもんね、仕方ないね♂
「次、優子が自身の弱点を明かす番だぞ。……みんな知ってるし、お前自身も教えたくないだろうけど、ここは我慢するんだぞ」
「えっあっはい。………………私、激しい運動が苦手でして……」
「えっ? なんとかの杖を自由に変形できる能力があるのに?」
「そ、それは……なんとかの杖が特殊と言いますか、その……」
♢
「それじゃあ、作戦がまとまったから確認するね」
作戦会議が終わったことを確認したフリーレンは、どのような内容でこのダンジョンを攻略するかの確認に入った。
「私・桃・白哉・シャミ子の四人が、三体の複製体及び
どうやらゴールエリアの敵はフリーレン含め僅か四人で行うこととなったようだ。
複製体の一人は敵対する種族同士の共存を成し遂げた凄腕魔法少女。一人は魔族の殺戮も記憶改竄を繰り返してきた魔法少女。一人は二千年以上生き続け魔法に長けているエルフの魔法使い……
これらの強敵を、たったの四人で倒すというのは、あまりにも分が悪すぎるのではないのだろうか。否、そう決定づけた理由がフリーレンにはある。
「あの三体は共に行動しているだけであって、連携して戦うことを意識してないように見える。だからシャミ子には身を潜めてもらって、私・桃・白哉の三人がそれぞれ一騎打ちしている間に隙を見て不意打ちを狙ってもらうよ。後はなんとかの杖に送るイメージが上手くいけば、その不意打ち次第で一発で倒せる可能性だってあるはず」
「せ、責任重大ではありますが……やってやります‼︎」
桃から桜や誰何の戦闘能力を聞いたフリーレンは、三体の複製体が連携を取る可能性が薄いことを視野し、敢えてそれが取りにくい状況を作るつもりらしい。そしてその状況からシャミ子に不意打ちで強烈な攻撃を仕掛けるという算段のようだ。
シャミ子の潜伏レベルと攻撃が、三体の複製体を倒すカギとなる。シャミ子はその責任感によるプレッシャーに押されながらも、必ず成功させ皆の力になるという一心で力強く了承した。
しかし、他の者達からすればまだ解決していない疑問もあるわけで。シャミ子が作戦の了承をしたのを機に、ガタルフがフリーレンに問いかける。
「本当にあの複製体達と戦うのはフリーレン様と桃さん達の四人だけで大丈夫なんですか?」
「少人数の方が相手の行動を予測しやすいからね。確かに全員で戦えばほぼ確実に勝てるだろうけど、私の複製体というか私はともかく、相手は全員少なくとも世界中の実力者を倒せる程の力を持ってるだろうから、大半が死ぬことになると思う。リリス曰く、ここで受けた怪我は現実世界に影響されないから実際に死ぬことはないだろうけど、何らかの形で脱落になったり現実で魘される可能性もあるから、そういうのは避けるべきだ」
相手の予想できる実力も考慮し、犠牲を増やさずに分担すべきだという結論に至ったことを語るフリーレン。夢の世界云々に関係なく、味方の犠牲は極力避けることにも全力を尽くすつもりのようだ。
「だから大人数で一つのエリアにいる敵の相手をするよりも、そこへと向かっている複製体の足止めをした方が、最悪の事態を招かず効率良く動ける……そういうことになるのね……」
「うん。挟み撃ちされるとこちらが全滅するし、特に私の複製体を守ることに集中してより強固で不利な状況を作ってくるかもしれないからね」
「分かりました、向こうの複製体は桃達に任せますね」
「ありがとうミカン、納得してくれて。他のみんなはどう?」
「ま、まぁ……僕は理由が納得いくものでしたので……皆さんは?」
ミカンがフリーレンの思考に納得・了承し、ガタルフも同意見であることを示す。それに続くように、フリーレンの作戦に納得した一同も頷いた。先程決定していた通り、作戦通りにいくようだ。
「みんながこの作戦に賛成したとなれば、俺達も責任重大だな。シャミ子の不意打ちが上手くいくよう、俺達も複製体が一騎打ちに集中できるように誘導してやらんと」
「そうだね。そう考えると、確かに重要な役割になるね」
白哉と桃も自分の役割に対して一抹の不安を抱えるも、みんなの力になりたいという想いはシャミ子と同じ。それぞれが己を奮い立たせ、この作戦に貢献することを誓う。戦える者だからこその覚悟なのだろう。
「念のため聞くけど、フリーレン様大丈夫? 本当にあの三人に勝てるの?」
「大丈夫。リリスが発案したヤツに飽き足らず攻略できないダンジョンなんか存在しない」
ナディアの身を案じる問いかけがきたため、フリーレンは微笑みながら答える。ここもかつてのダンジョン攻略の時と同じだなと、しみじみと懐かしく思いながら。
「私は歴史上で最も多くのダンジョンを攻略したパーティーの魔法使いだよ」
次回、複製体戦開始‼︎ デュエ○スタン○イ‼︎