偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
今回はオリジナル兼原作キャラの先行登場回となります。そしていつもよりも文字数は少しだけ少なめです。けどちょっとやってみたかったことがあったので書いて載せときました。
平均評価
2022年12月10日(前回投稿前):7.91
↓
2022年12月10日(前回投稿後):8.08
ヤッター♪───O(≧∇≦)O────♪
↓
2022年年12月11日:6.71
???????????????
なんで僅か1日でここまで評価が下がるの……?
ちなみに2022年年12月15日には6.32に下がりました。もっとこの自己満小説でもみんなから良い評価を得られるように努力したい……
………………
あっ……。どうも皆さんこんにちは、平地白哉です。今日は日曜日、優子が杏里に頼まれて、ショッピングセンターのゆるキャラの着ぐるみの『中の人』役のバイトをすることになった日です……
俺が先週着たワイト……ヒーローショーの悪役のとは違う種類の着ぐるみだけど、優子は着てちゃんと役割を果たせるか? 原作で読んでるから展開的に大丈夫だろうけど、不安だな……
ちなみに俺は今、何もやることないので、気晴らしも兼ねて、多摩町をただただ、ぶらりと散歩しています……
えっ……? 今日はいつもよりもローテンションだな、だって……? いや、その、だな……
……実はだな、一昨日桃に優子と一緒に連行されて、筋肉強化の特訓を受ける羽目になった時の話なんだけどな? その時は無理矢理縛られたロープと繋がっている鉱山車両のタイヤを引っ張れと言われたり(しかも俺は二個も同時に)、桃だけでなく杏里に俺と優子のイチャラブが見たいと言ってるような意見を聞かされたり、特訓を辺りが暗くなるまでやらされたり、といった事があってな……
まあ、これら前者二つの件は他にも似たような場面に遭遇したり巻き込まれたりしてるから、別に気にすることではないんだけどな。本題はもう一つの方にある。
桃に聞かれたんだ……俺は優子の事をどう思っているんだってな……
優子は俺の事が好きだ。その好きという感情が強くなっていきすぎて、他の女の子に嫉妬してしまったりいき過ぎた妄想をしてしまったりといった事……つまりは皆も知ってる通り、自覚するくらいのヤンデレになってしまった程だ。その事を『好き』の対象に取っている本人である俺に、仮の告白と一緒にカミングアウトする程に、彼女は俺に惚れていたんだ。……自分で言っておいて恥ずかしいな。
けど、その一方で俺が優子の事をどう思っているのか……自分でも分からずじまいでいる。前にも優子の告白の件で、俺は告白の返事に答えるべきどうかで悩んでいた事はあったけど、今度のは優子の事が好きなのか、好きだとしてどっちの方面でなのかという話だった。それに俺はどう答えればいいのか、分からないでいた。
優子のためならば出来る限りの事はしてきたはずだ。だけど、彼女が俺に対してヤンデレになってしまったというのを知ってしまったのに、何故俺は見放しもせずに彼女に寄り添っていったのか。そもそも何故ヤンデレになる前の彼女にも積極的に仲良くなろうとしていたのか。自分自身のこれまでの行動に疑問を抱くようになってしまった。
……ダメだ、いけないなこれは。深く考えると俺と優子の身に何が起きてしまうのか分からないから、しばらく保留にしておこう……とか決めておきながら、また深く考え始めてしまった。
クソッ……こんな状態じゃ、いつか優子じゃなくて俺の方が壊れてしまう。今度こそ保留にするんだ保留……
「ん? あっ、白哉君じゃないか‼︎ こんなところで会うなんて奇遇じゃないか‼︎」
「ん?」
なんか聞き覚えのある爽やかな声が右側から聞こえてきたんだけど、一体誰……あっ。あの青い髪がめっちゃ長くて俺よりも身長が高い奴は……
「……拓海か。こんにちは」
「こんにちは! ハハハ! 一人で町を静かに歩くローンウルフとはカッコいいじゃないか‼︎」
「お世辞どうも……言っとくけど俺はひとりぼっちじゃねェからな? その証拠にコミュ障じゃないしギター持ってないし陽キャラ相手に変なテンションにならないし」
「……何の話だい? まあ面白いからいいけど」
過保護時々揶揄をよく見せる陰陽師クラスメイト・仙寿拓海との遭遇です。チクショー、せめて出会うのは学校にいる時にしてほしかったぜ……。こいつが過保護モードになると面倒臭いしウザったらしいったらありゃしない……‼︎
いや、逆に休日にこいつに会うのは結構珍しいな。拓海は陰陽師の仕事があって忙しいのかもしれないってのに、この貴重な休日に俺を見かけては話しかけてきたものだから、こんな珍しい機会を面倒臭いからと言って押し除けるわけにはいかん。ちょっとばかし話すとするか。
「お前、今日は陰陽師の仕事はないのか?」
「あぁ‼︎ 大抵は親父かお袋の手伝いをすることが多いけど、今日は完ッ全ッにオフだ‼︎ ウチにというか、そもそも陰陽師に依頼をする人や幽霊なんてそんなにはいないからね。こういう日は町をぶらりとするのが丁度いい」
「そっか……もしかして、お前も特にやることなくて暇ってこと?」
「……そこは引っ掛からなくていい」
別にいつも忙しいってわけじゃなかった。そんなに依頼とか来ないんかい。生活費とかどうしてんの? つーかその台詞、どっかで聞いたようなある気がするのだけど……
で、いきなりこんな休日に話しかけて一体何の用なんだよ?
「白哉君、今日はまだ昼を済ませてないのかい? 昼食代は持っているか? それとも弁当でも作って来ていたのかい? あ、それか……」
「お前の話長くなりそうだからストップ‼︎ ……昼飯ならまだ食べてないし、弁当も持ってきてないぞ。けど昼はどっかの店で食べる予定ではある」
「そ、そっか……」
よーし、これで一時は過保護ペラペラモードは起きずに済んだ……。こいつが過保護になるとペラペラと喋って中々歯止めが効かないから、早めにやめるように言っておいて正解だったぜ……
「なら俺に奢らせてくれないかい? 行きつけの店を紹介しようと思うんだ」
えっ、何故急に?
「白哉君には二週間前、陰陽師の仕事の手伝いをしてもらったことがあるだろう? リアル格ゲーがやりたいと言っていた幽霊の除霊。あの時は白哉君、お礼はいらないとか言っていたけど、下校後の貴重な時間を割いてしまった上に疲労させてしまったんだ。そう考えるとやっぱり何かしらは……って思ってたんだけど、ダメかい?」
あぁ、あの時の……。いやあの時は別に俺は疲れを感じなかったし、どっちかというと頑張ってたのは牙狼の方だから……
でもよく考えたら、素人に除霊の手伝いを任せるのはたしかにアレだったな。下手な真似したら俺の身に何が起きてしまうのか分からない場面だったから、さすがにこの過保護さは納得がいくかもしれん。つーかここも遠慮してしまうと、後々さらに面倒臭いことになりそうだな……
うーん……なんだろう、優子の時々見せるヤンデレとは違うヤバさが彼には感じ取れる……。言っとくが俺、同性愛はNGだぞ?
仕方ない。ここは彼の言葉に甘んじて、何か奢ってもらうとするか。
「わかった。その行きつけの店に案内してくれるか?」
「えっ、いいのかい⁉︎ 今回も遠慮するとか言われるかと思ったが、そう言ってくれると嬉しいよ‼︎ いいだろう、案内してあげよう‼︎」
遠慮されるかもしれないという自覚あったんかい。そして喜んでいる時がなんでナルシストみたいな感じになってんだよ。稀に見せる過保護とは別のウザさってか? そう考えると、一日に二度見れるのはラッキーかも。
キラキラエフェクトの幻覚が出てるのを感じ取りながら、行きつけの店へと案内してくれる拓海の後をついて行く俺。俺が彼と出会ったアクセサリー店からおよそ四分くらいで着いた、その店とは……
「着いたぞ。ここが俺の行きつけの店の……
喫茶店『あすら』だ‼︎」
あっ、色んな方面でやばたにえん。
♢
「ここでは従業員は二人だけしかいないけど、色んな意味で二人とも結構見た目のパンチが強くて、それでいて出される料理はどれもみんながハマってしまう程の人気なんだ」
喫茶店『あすら』。原作では夏休みにて優子が訳あって訪れる店だ。たまさくら商店街に存在する喫茶店で、白澤という人がオーナー、リコと呼ばれる人が料理人を勤めている。『腰掛ける場所のない人に居場所を提供したい』という白澤さんの思想で、今から十年前のクリスマスにオープンされたのだが……
簡潔に言えば、ここの純喫茶風の店の料理は、別の意味でヤバい。別にここの料理が『まずい』のではない。寧ろその逆、なんだけど……
「ん? どうしたんだい? こういうところに入るのは初めてなのかい?」
「あ、いや……入っていいのかどうかわからないというか、入ってはいけないのではないかというか、入ることは問題ないけどここで食べても本当に良いのだろうかみたいな……」
「何をそんなに警戒を……。もしもという時は病院に連れて行くし医療費も出す。けどここの料理は曰く付きだから、衛生面では問題ないよ」
最後の言い方は問題大アリだわ。俺がここの料理で通院してしまう可能性も考慮して何かしらの備えをしようとするんじゃねェ、不謹慎だ。
っつーかもし本当に俺がこの『あすら』での問題で病院送りにされたら、優子のここに対する評価がかなり不評になったり、最悪優子が無理矢理潰してしまう可能性だってあるんだぞ? ヤンデレ舐めんなよ。
……なんでこんなこと考えてんだろ俺。大体この先俺しか知らない
まあ充分な警戒や配慮をしておけば問題ないだろうし、つーかここまで来たら逃げられないし……
「……本当に奢るんだよな? というかそれなりの配慮もするんだよな?」
「俺をなんだと思っているんだい……? ま、まあとにかく入ろう、もちろん奢るからさ」
そう言って颯爽と店に入っていく拓海を見て、俺も後の不安に注意を促しながら入店することに。絶対に無事に生きて帰ろう、色んな意味で。
変な言い聞かせをしながら入っていけば、ワオ。結構席が埋まっているな。奇跡的に二つ席が空いているくらいの人気っぷりや。
「いらっしゃいませ〜……あっ、拓海はんやん。来てくれとったんやな」
「どうもリコ先輩、ご無沙汰してます」
客用のお冷を注ぎながら拓海に声を掛けてきたのは、銀髪を後ろに束ねた……『狐の耳と尻尾が生えている』女性。
彼女がリコさん。狐と人間のハーフ……ではなくて優子と同じ魔族である。種族は違うけど。
……ん? 今、拓海の奴リコさんのことを『先輩』と呼ばなかった? 気のせいだった? ねぇ?
「おおっ拓海君、来てくれてたのか‼︎ また会えて嬉しいよ」
料理やお冷の配膳を終えてから続けて声を掛けてきたのは……なんと眼鏡を掛けた
この喋れて二足歩行もできるバグがこの喫茶店のオーナー・白澤さん……らしい。人間の容姿が欠片一つも見つからない、純粋な動物の姿の魔族ってどういうことよ……
「マスターもお元気そうで何より……で、客が多いようですが接客とかは大丈夫ですか?」
「いや、正直難しい傾向だ……リコ君に頼もうにしても、ね……」
「あぁ、まだ空気読めないの治らないのですか……。料理以外にも積極的になってもらいたいものですね……」
ん? なんか拓海がこの店の経営状況について白澤さんと話し合っているんだけど。リコさんがどうのこうのってのも聞こえてきたんだけど。
ま、まさか……
「白哉君、先に席に座って注文して食べていてくれ。俺は急な用事を思い出して……」
「手伝うってか⁉︎ 一日の臨時バイトでこの店の手伝いをするってか⁉︎ お人好しっつーか過保護なのもいい加減にしろ‼︎ というかここの手伝いをするのは色んな意味で危ねぇ気がする‼︎」
こんなにも客がたくさんいる中での配膳したり注文聞いたりはまだ大丈夫な方なのかもしれないけど、リコさんがバイトの人に出してくれる賄い料理が……
「けどこの店は空前の人材不足で……」
「周り見たらそうだけどもッ‼︎ 先に従業員の人数聞いたから分かってるけどもッ‼︎ というかよく考えたら、お前俺達の知らない間に俺達の会ったことのない魔族二人と知り合いになってたの⁉︎ そんなの聞いてねぇよ⁉︎」
「えっ? あぁうん、言わなかったというかなんか言いづらかったんだ。この学校に魔法少女の千代田君がいるし、念のため」
「あぁ……分からなくもない。けどあいつは穏健派だから、二人を封印したりとかはしないぞ?」
「あ、そうなのか……」
「まぁ、なんだ。俺もそこは伝えなくて悪かった」
あのお人好しがすぎる拓海でさえも、知人を警戒してしまうことってあるんだな。しかも幽霊じゃない者の身も案じるとは……やっぱり他人に対して過保護が強すぎない?
つーか働くことに関する事がどうのこうのの話から、拓海の知り合いに魔族がいるのどうのこうのに変わっきちまったよ……。ヤベェ、話逸らしちまった。ここはまかないは遠慮した方がいいと言って……
あっ。どっちみちこいつは働かなくてもここで昼飯食うし、つーか俺もここで食うから、注意してもあんまり意味がない気がする……
「まぁ、うん……とりあえず、無茶はするなよ。特にリコさんの賄い料理を食べる時は。なんか嫌な予感がする」
「……? なんかよく分からないけど了解した。それじゃあ行ってくる」
うん、やっぱり俺の忠告が何を意味してるのか理解できてないみたいだな。分かってはいたけども。
まあそんなこんなで『あすら』の制服に着替えようと厨房の奥へと向かう拓海を尻目に、俺はメニューを確認することに。どれどれ、どんなものが出ているのやら……
・桃の闇色 浮かれフルーツポンチ
・国産和牛厚切りタン 十種のかんきつソース
・必要以上におしゃれなカフェめし
・桜のジェラート~思い出をそえて
ect.〜
……なぁにこれぇ?(AIBO風)
なんか独特なネーミングセンスのヤツまであるんだけど。しかもどれもこの先の原作イベントとの関わりがありそうな名前なんだけど。『あすら』って無自覚に未来予知することができる店だったっけ?
普通の名前のメニュー? もちろんちゃんとあったぞ? カレーとかオムライスとかスパゲッティとかメロンソーダとか。……けど、なんで四品だけ、独特なネーミングセンスのヤツがあるんだよ……?
というか『必要以上におしゃれなカフェめし』って何だよ? どんな材料を使ってんだよ? 調味料は何だよ? そもそもそれはご飯ものの単品? 定食みたいな感じ? どんなんだよ?
……まあ、いいや。とりあえず何か頼んで、注意しながら食って、ささっとこの店から出よう。俺まで人手不足の臨時バイトを頼まれる前に。出来れば拓海も連れて帰ろう。あいつがもしものことが遭ったらいけない。何故なら……
「カレー……カレー……あすらのカレー……かれぇうまっ……」
「パフェパフェパフェパフェ……」
拓海もこのリコさんから出された賄い料理で、他の客みたいにヤバいリアクションでおかしくなる可能性があるからだッ‼︎
原作知識を持つ俺は、この店の客がおかしくなっている理由を知っている。リコさんの作る料理は『ある種の中毒性さえある』程に美味であり、そのためこのように店は繁盛しているのだ。
さらには彼女の気持ちも込められているため正に『心を癒す料理』であり、日々の疲れとプレッシャーをひと時忘れさせる効果がある……のだが、適量の十倍食べるとハイになり、一日だけ健忘の症状が出るらしい。
お分かりいただけただろうか? つまりは拓海もリコさんの賄い料理を食べ過ぎると、一日だけとはいえめっちゃヤバいことになり得るのだ。「ヤバいわよ‼︎」「ヤバいですね☆」
……拓海の奴、まさか賄い料理をおかわりしすぎたり持ち帰ったりしてないだろうな? 賄い料理は食べ放題だと原作知識で知ったし、拓海もそれを食べ過ぎている可能性は充分にある。
ここでタイミング良く白澤さんがお冷とおしぼりを渡して来てくれたから、ちょっと聞いてみるか。
「白さ……マスター」
「あっ。君はさっき拓海君といた……。何だい?」
ヤッベ、危うく白澤さんの名前を言ってしまうところだった。俺まだ白澤さんの名前を実際に本人や他人の口から聞いてないから、もし言ってしまったら怪しまれ……
あっ。店に入る前に拓海が白澤さんの名前を口にしてたんだった。だったら名前を言っても問題はな……いやでも、白澤さん本人の口からは聞いてないから、敢えてマスター呼びでいこう。
「ウチのクラスメイト……拓海はいつからここで臨時のバイトを? それもどのくらいの頻度で、ここにバイトをしているのですか? それとリコさんの賄い料理とかってどのくらい食べたり持ち帰ったりしてます?」
「ん? リコ君の作る料理に興味があるのかね? 確かに彼女の料理には一種の中毒性はあるが……」
「あぁ……すみませんが、まずは拓海がここに手伝いに来ている理由とかを」
「あ、うん……。そうだね、拓海君がここに働き始めたのは、今年の五月のGW終わりからだ。彼がウチの料理を食べたいという幽霊の依頼に答えていたところに出会ってね、そこでここが人手不足であることを知って、『食べに来る時にしか出来ないけど手伝わせてほしい』と彼の口から頼んできたんだ。それからは最低でも二週間に一回ぐらいは顔を出して、よく店の手伝いをしてくれているよ」
なるほど、幽霊の成仏をする依頼の最中に出会い、一ヶ月に二回ぐらい手伝いに行っている、と……
ってかやっぱり自主的に『働きたい』と言ってたんかい。やっぱり過保護にも程があるだろあのナルシストにはなれてない陰陽師が。陰陽師の仕事を優先しろ陰陽師の仕事を。
ってそんな事考えてる場合じゃない。一番の問題は賄いの方だ。拓海の奴、お人好しが災いしてたくさん食って変な様子になったりしないだろうな?
「リコ君の賄い料理は……そうだね、たまに一回はおかわりする程度かな。一盛りだけでも結構な量があるからね」
「あ、なんだ。それならちょっと安心しました」
「えっ、安心? なんで?」
「……こっちの話です」
よかったー……。拓海の奴、お人好しが出て食べ過ぎてしまっているわけではないみたいだな。まあ長くても二週間のインターバルがあるし、仮にお持ち帰りしてもその量次第では食べておかしな事にならずに済むな。ホントに安心する。
さて、疑問が解決したところで早速注文するとするか。ちなみに俺が頼んだのは、シンプルにカレーライスだ。初めて来るところは最初はこういうシンプルなのを頼むのに限る。個人的に。
「お待たせしました、カレーライスです。ごゆっくりどうぞ」
「めっちゃウェイトレスモードに入ってるやんお前。お前本当に本職は陰陽師なの?」
しばらく待っていたら、『あすら』のウェイトレスの制服を着た拓海が、過保護モードや陰陽師らしい雰囲気とは別の感じで俺のところまで来て、右手で支えているトレイに乗せてたカレーを運んでくれた。
思ったよりも結構『理想のウェイトレス像』を曝け出していたことにツッコミながらも、俺は恐る恐るカレーを一口運んだ……って、美味っ⁉ 辛過ぎぎず、甘過ぎず、具材も丁度良く煮込まれてやがる……!!
「うめぇ……うめぇ……なんだこのカレー……めっちゃうめぇ……あすらのカレー、絶品………………ハッ⁉︎ お、俺は一体何を……⁉︎」
あまりにもバランスの取れた絶品の美味さに、他の客みたいに変な中毒性に架かりかけた……‼︎ しっかりしろ平地白哉‼︎ 注意を払え注意を‼︎ そして慎重に食え‼︎
♢
ふぅー、美味かった。結局デザートにいちごアイスも頼んじまったけど、なんとか変な状態にはならずに済んだ。程よい冷たさと甘さが各々の食材の味を引き立たせていた絶品アイスだったぜ。
さてと……拓海が『今日はしばらくこの店を手伝ってるから、また今度な‼︎』って言われたし、とっとと店を出るか。
本当は拓海の奴が賄いで変な気分になりそうなのに備えて待とうかなと思ったけど、白澤さんの話を聞いて問題無さそうだとわかったし、何よりもう食べ終わったのにここに居すぎると俺が強制臨時バイトさせられる可能性が出そうで怖い。
だから俺は逃げるッ‼︎ 逃げるぞッ‼︎
「ご馳走様でした、美味かったです」
「また来いや〜」
会計を済ませて出ようとしたところで、厨房からリコさんの声が聞こえてきた。また来て、か……。すいません、しばらく出る必要がある時まで来ません(キリッ)。
にしても今日はいつもよりも結構な心配事を抱え込んだ気がする。しかも俺が心配しているその相手が優子じゃないってね……
俺、色々とストレスを抱えているのかな……? 強化修行の時に桃に優子の事をどう思っているのかと聞かれてたし、きっとそう……
いやちょっと、それじゃあまるで優子の事でストレスを持つようになったと言ってるようなものやん。今まで彼女のヤンデレ疑惑を感じても苛立ちとかを感じなかったんだからそういうことにすんなやいい加減にしろ俺。
……うん、今日の外での気分転換はここまでにしよう。帰って召喚獣達のテレビゲームの対戦に付き合って寝よう。そうしよう。
……なんか、昨日の事で悩んでたことがあったような気がしたけど、何だったっけ? ……まあいいか、かーえろっ。
そう思いながら帰路を歩いている間に、視線の隅で優子が何か見るに堪えない服でオレンジ色の魔法少女から羽織るものを施されていたが、それに俺が気づくことはなかった。
けど何故か白龍様はその光景を見ていたって話を、家で家事してたはずのメェール君から聞いた。えっ、なんで? もしかして白龍様、今のリリスさんみたいに外の世界を覗けるの……? そしてその事を遠隔で召喚獣達に伝えられるの……? どういうことなの……
♢
白哉が店を出てから数時間後。『あすら』の閉店時間が迫っていることを機に、拓海も給料袋を白澤から受け取って店を後にしようとしていた。
「はい、これが今回の給料だよ拓海君。毎回助かってるよ」
「いえいえ、俺が望んで助っ人をやってるだけなので別にいいですよ。それに今日も陰陽師の仕事なくて暇でしたし」
「お世辞でもホンマ助かったわぁ〜。拓海はん、次もまたお願いな」
爽やかながらも何処か抜けているような笑顔を見せるリコに、拓海は何故か苦い顔でそちらの方を向いた。
「……すみませんが、リコ先輩は次俺が来るまでに空気読まないのなんとかしていただけますか?」
「えっ? それってどういう意味なんや? ウチ料理失敗してたとこあったん?」
「素で言われてる意味が分からないって……はぁ、この先の店の経営が不安だ……」
何故自分が忠告した意味を微塵も理解できないのだろうか。拓海はそう呆れるほどリコの性格に苦手意識を持っていた。
リコは結構な毒舌かつ、良くも悪くも自分の気持ちや欲望に素直。基本的に彼女の行動は『善意』に基づいた物であるが、空気の読めなさとマイペースでフリーダムな性格のせいで、人の神経を逆撫ですることもしばしばある。
その性格故、拓海はリコの事が気が気でなかった。当然下心とか恋心とかは関係なく、ただ純粋に人の良さとして。彼女の性格が災いして、いつか料理の美味さではフォローできないような状況に遭えば、白澤諸共どうなるのか……。臨時でバイトに来る度に必ずそう考えてしまっているらしい。
本業である陰陽師の仕事もある。それでも『あすら』にはそこそこの繋がりがある。だからこそ、自分もこの店が崩壊しないようリコと白澤をバックアップ出来れば……
「……拓海はん? ウチをじっと見つめてどないしたん?」
「あぁいえ、なんでもないです。それじゃあ俺はここで。お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様」
この先の自分の本心を察しされるわけにはいかない。拓海はそんな一心でそそくさと店を出ていくことにした。その不穏な動きに二人が首を傾げていることになど気にせず、真っ直ぐ帰路を歩いて。
「なんか今の拓海はん、様子が変やな?」
「仕事している時は疲れてる様子や無理してる様子もなかったのだけど、なんだったんだろうね?」
先程の拓海の様子に疑問を抱きながらも、店の片付けを始めることにした二人。
するとふと、リコが徐に呟き始めた。
「そういえば、拓海はんの友人もちょっと気になってたなぁ」
「ん? あぁ、あの白哉君って子かい? その子がどうかしたのかな?」
「うぅ〜ん、ウチもよく分からんのやけど……その白哉はんって子の背後に、なんか白哉はんそっくりの幽霊みたいなのを感じたんやよなぁ……」
生き霊。リコの口から聞こえたその言葉に白澤は激しく動揺し、シンクに運んでいた食器を落としそうになった。いや落とさなかったんかい。
「ド、ドッペルゲンガーってこと⁉︎ な、なんてことを言い出すんだいリコ君⁉︎ ……それ、悪霊とかじゃないよね? 拓海君の力を借りる必要があるのかね?」
もしその白哉の背後に潜んでいるという背後霊がドッペルゲンガー──悪霊のような恐ろしいものだとすれば、それこそ拓海に陰陽師として除霊の仕事の方を頼むしかない。白澤はそんな最悪なケースを予想し、リコに生き霊がどのようなものなのかを恐る恐る問いかける。
その質問を聞いたリコは右手でテーブルを拭きながらもう片方の手を頰に当てながら考え込む。少し時間が経ったところで、彼女は再び口を開く。
「───分からんのよなぁ……悪霊って感じやないんやけど」
「……えっ? 悪霊じゃないけど分かんない? それはどういう……」
「何か
「……何それ。やはり拓海君に確かめてもらう必要があるかな……?」
白哉の事を見つめているらしいが、どういった感情を持ってなのかまでは把握出来なかったという。
その背後霊が何を思って白哉を見つめていたのか。はたまたその正体が何なのか。それは白哉本人ですら知らない……
オリジナル回のネタは思いつくまではいいが、いざ書くとなると文字数が足りなくなる時ってあるのね……
というか最後なんか恐ろしい感じなのを出して終わらせちゃったけど、これあくまでコメディ中心……だと思う。
おまけ:台本形式のほそく話その2
桃「(フフッ……今日もたまさくらちゃんのレアグッズを手に入れることができた)」
「(商店街でみんなにバク転を魅せるたまさくらちゃんのポスターに、たまさくらちゃんの焼肉屋店員コスプレのぬいぐるみ……他にも様々な限定商品があって全種類買っちゃった)」
「(けど、ポスターはどこに貼っておこうかな? 貼りすぎたからリビングの壁紙として貼るには流石に場所がないけど……)」
「(ん? 今、白哉くんが少しやつれてるような顔をして横を通った気がするんだけど……気のせいだったかな?)」
「(あっ、あそこにいるのは……ミカン? この町に来て──)」
ミカン「何がなんだかよく分からないけど……なんか……街中でごめん」
シャミ子「……しっ、しばかないんですか?」
ミカン「こんな弱そうな子しばかないわよ‼︎」
桃「(………………えっ? シャミ子まで一緒にいるのは分かったけど……なんで路地裏に? しかもシャミ子のあの格好は? ……ミカン、何かやらかした? まぞくに恥ずかしい格好を無理矢理させるタイプだっけ?)」
「(……一応通報する準備でもしておいた方がいいのかな? それと念のため白哉くんも呼ぶ? いや彼は今どこで何してるのか分からないし……とりあえず声掛けよ)」
そして原作のとある回へと繋がるのだった……
END