偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
前回のを投稿してから今回の話に至るまでで、お気に入り登録者数が増えないどころか寧ろ一人減りましたー‼︎………………泣いていい?
イェーイ‼︎ もうすぐ夏休みだぜー‼︎ 桃に半ば無理矢理修行させられた分リフレッシュしてやるぜー‼︎ って気分な白哉です。
いきなりこのテンションになってごめんな? けど前世でも学生時代はこんな感じに夏休みを楽しみにしていたから許してくれ。
あっ。最近ウチの両親が家宅訪問してきました。なんでも一人暮らししてる俺の事が心配だったからだとかどうとかで、直接会って話がしたかったらしくて……
それと、その前に清子さんに挨拶に行った時に、俺が召喚術を使えることを知り見たくなったとのこと。俺は最初呼ぶのを躊躇ったのだけど、隠し事はしなくて良いと言われて折れちゃったよ。
で、召喚師覚醒フォームをお披露目してから白龍様をデフォルメサイズで召喚。そこからは白龍様とウチの両親のトークタイムが行われました。とりあえず三人だけの空間にしたかったので、俺はわざと蚊帳の外になってトークタイムが終わるのを待機しました。大人達の野暮に無闇に突っ込んではいけない、ここメモしてね。
白龍様が俺がここに一人暮らししてから何があったのかを両親に話してあげた後、満足したのか両親はまた連絡してねと言って帰っていった。まるで台風……というか嵐の夫婦だったなマジで。
で、ちょっと心身が疲れたので精神世界に帰ろうとしていた白龍様を帰そうとしたところに鳴るスマホ。電話に出たらミカンにいきなり『暇なら桃の家に来て』と必死にお願いされました。なんだよ人が両親とのドキドキハラハラとした会話を終えたこのタイミングで、って思ったなこの時は。
でも白龍様がまたメタ子に会いたいとか言ってきたので、仕方なく俺は元のサイズに戻った白龍様に乗っていざ桃宅へ。到着した時には優子達だけでなく、巻き込まれる形で同行していた拓海までもが昼飯の鍋を囲んでいた。
ってかもうすぐ夏なのに何故鍋? しかも昼に鍋って時間帯的にも早いよ? 昼に鍋食べるのはちゃんこ鍋を食べる力士ぐらいしかいねーよ。
ちなみにこの時桃の目は死んでました。ハイライトも消灯モードでした。ミカンが呪いを制御するためにホラー映画の鑑賞でビックリなどに慣れようとして、優子にも同行を頼んだら、鑑賞後にたまさくらちゃんのサンバイザーをゲットするためにゆるキャラ映画を観に来ていた桃とばったり遭遇してこうなったってわけ。
ミカンがちゃんと説明しても桃は『別に怒ってるわけでも嫉妬してるわけでもない』だの『サンバイザーが欲しかった』だの『修行ばかりじゃなくて偶にはリフレッシュも大事なのはわかってる』だの……これらばっかだ。
あの過保護な拓海の言葉巧みでも桃の目は死んだままとなっているため、なんとかするように頼まれた俺も一度諦めました。まだ大したことは何もやってないのに。
とりあえずなんとかしようかと考えていたら、桃の目が死んだ理由を察し、あの時こうした方がよかったのではないかとミカンに問いかけてみた。そしたら彼女も全てを把握したか罰が悪いような顔して改めて謝罪した。別に俺説教してるわけじゃないけどね。
で、いつの間にか桃の目も色を取り戻した……のだけど。俺はこの時ふと思ったんだ。俺の完全に理解してくれるかどうか分からない言葉巧みだけで、目の色が完全かつスピーディーに戻れるのだろうか、と。
その事を桃に指摘してみたら、どうやら彼女は優子達を揶揄いたいがためにわざと目が死んでいる演出を見せていたらしい。それを知った時の俺は『ブラックジョークじゃ済まされなかったぞ』的な感じになったけど、優子達はそれほど怒っていなかったため揉め事にならずに済みました。お前ら人が良すぎない? 俺も俺だけど。
まぁそんな感じでプチ修羅場は終わり、翌日以降は放課後にいつも通り俺と優子が桃の修行に付き合わされ、拓海とミカンがそれに付き添うといういつも通りの日常に戻りました。いやこれ日常、か……?(混乱)
♢
で、それから数日後。
「あっ平地くん久しぶり〜。この前いつか召喚獣のみんなのデータ取らせてって約束したの覚えてる? 覚えてるよね? ちょうどシャミ子ちゃんに強大な力をあげようと部室に案内してるところだから、平地くんも一緒について来てくれる? 大丈夫? 大丈夫だよね? よし、それじゃあついて来て‼︎」
「落ち着け‼︎ そして喋る権利与えろ‼︎ まだオッケーとか言ってねェんだよこっちは‼︎」
桜ヶ丘高校のマッドサイエンティスト・小倉さんに強制的に連行されることになりました。しかも既に原作通りに優子も連行され、桃も優子が心配だからと同行することになってた。なんでも優子にとてつもない能力を渡したいとかどうとからしい。
ん? 何者なんだこいつは、だって? 小倉さんは悪魔とか魔術とかに興味津々の変わり者で、いつも学校の部屋や機材を勝手に借りて怪しい研究をしているらしい。いやそれで今後の授業に影響を与えたらどう責任取るというんだよあの馬鹿は。桃以上の天然かつマッドサイエンティストって、俺の苦手な人間の類やなマジで。
まあそんな奇行が多い彼女なんだけど、成績が滅茶苦茶いいため先生も黙認してるらしく、期末テストでも白龍様だけに飽き足らずリリスさんをも差し置いて学年トップ。しかも倫理以外はまさかの全教科百点満点だという。
うーん、なんだろう……低いってわけじゃないだろうけど、倫理がテストの中で一番人は中々信用できないというか、なんというか……
そんな不安要素のデカい彼女に連れ去られている(感じな)俺達なワケなのですが、正直彼女の頭脳の良さには色々と期待している。優子が彼女が作った薬を飲まされたことで危機管理フォームに変身できるようになったのだから、俺……というか召喚獣達の強化も取り返しのつく範囲内でしてくれるのではないかとも期待してしまう。
「私、シャミ子ちゃんや平地くんとずっと仲良くなりたかったの。シャミ子ちゃんはまぞくだし、白哉くんも色んな動物を呼べるでしょ? 二人とも私の研究テーマと相性がいいと思うんだ。二人と親しいお友達になって、もっと気軽に色んな実験がしたいなぁぁ……」
こんなヤベーイ性分してるけども。
「私の知ってる友達関係と違う……。白哉さん、これいざという時は逃げた方がいいのでしょうか……?」
「……出来ていたらもうとっくに逃げてるよ。けどこいつの研究したいという欲を考えると逃げられないかもしれないから、害を与えない程度にしてもらうように頼むしかねぇぞ……」
「し、死んでる……白哉さんの目がこれまで以上に死んでる……」
やめて、見ないで。俺の目というか顔を見ないで。今色々と諦めてる顔してるから。本当は巻き込まれたくないと思ってるから嫌な顔してるの。だからせめてそこに気づかないで。俺の今の心情を知った小倉さんが何をしてくるのか分からないから。
と、そんな事を考えていたら小倉さんの部室……じゃなくて
とりあえず桃が『いざとなったら技術だけ頂いて小倉さんの記憶を封印して逃げよう』と言ってたので、改めて気を引き締めることに……
いやちょっと待て。桃、お前今魔法少女がしてはいけない手段の案を出してるじゃねェか。それが世界を救った者の取る正義の仕方か? 何リアリストな意見出してんの? 今後『ワールドワイドホラ吹き恋愛お節介ネキ』と呼ばれてーのかテメーはよぉ。
「そんなわけで……私のラボ──黒魔術研究部へようこそ‼︎」
う わ お カ オ ス 。
小倉さんが襟の立っている伯爵っぽいマントを羽織るのはまだいい。ただ部室があまりにもヤバさMAXの領域展開やぞ。壁には何か紫色の血が流れてるような貼り紙があるし……。屏風の絵の仮面っぽいヤツは何? 中から長い黒髪みたいなのが出てる箱も何? なんでアリス人形みたいなのが入ってる箱に『封』の札が貼られてるの?
後、なんかドラ○ンボー○の四○球みたいなのまであるし。くしゃみしたら大魔王というか魔人が出てきそうな壺も見えてるし。そしてドラク○みたいな箱には何が入ってるの? 危なっかしいものは中に入ってないよね? ミミッ○じゃないよね? ねぇ?
オカルト部よりも数段ヤバいってレベルじゃねェぞこれは……
ってコラコラ物理魔法少女、そのハートフルモーフィンステッキをしまいなさい。いくらなんでも決断するにはまだ早すぎる。
「私は二人に実験してデータを取りたい。シャミ子ちゃんはまぞくとして強くなりたい。平地くんは承諾を得た子なら今度データを取らせてあげるという約束をした。これって利害の一致だよね‼︎ 素晴らしいよね‼︎ 一緒に深淵覗こっ‼︎」
「俺の場合はただ普通の約束事をしただけで、素晴らしいと思われますかね?」
つーか漆黒のオーラ出しながら花を咲かせないでくれます? 無闇に色々な方面に突っ込もうとするのやめてくれます? やっぱこいつヤバヤバのヤバな人やんけ。割と有能とはいえ倫理観の欠けてる人と協力するのはやっぱり……
「小倉さん……さっきからグイグイ進めてるけど一旦落ち着いて。二人とも怖がってるから」
おっと、ここで助け舟が出てきた。いつもは俺と優子を揶揄う桃が今回はグイグイ攻めよる小倉さんを止めに入った。とりま助かった……
「シャミ子は今私と共闘中で、白哉くんにはシャミ子の護衛を任しているんだ。変なことされて二人に悪影響があると困る」
「桃……」
「お前、なんだかんだ言ってやっぱり優し───」
「二人とも今私がプロデュース中だから。二人をいじりたいなら一旦私に企画を通して。あっ、でもカップルとしてくっつけたいのなら本格的に検討してあげる。二人ともお互いの好意をバラしてるくせに全然してないから、結ばれてくれないと私も尊いを一つ失って色々と困る」
「「俺/私達はテメー/貴様にラブコメドラマを見せるための演者ではない」」
前言撤回、やっぱりちょっかい掛ける程度ならなんでも良い感じじゃねーか。しかも本人達の前でなんてことをカミングアウトしてんだふざけんな。
「え? 二人とも所々で周りにお構いなくラブコメシーンを見せてるんじゃないの? 『いい加減付き合えよ』と思わせる程に。二人ともお互いの好意を知ってるんだし、いい加減付き合いなよ」
「「もう黙れ。こちらの事情や気持ちを考えろ」」
なんで俺らがKYリア充だと思われなきゃならねぇんだ。優子はヤンデレとはいえちゃんと恥ずかしいという感情を表に出してるし、俺だって周りそっちのけな事はしねぇと思うぞコラ。
「………………というか私達、気づかない内に周りから空気読まない感じの奴らだと思われてるのですか? 大体二人きりの時でもそんな注目されるようなことしてませんよね……?」
「へ? ま、まあ別にリアルが充実してるってわけでもないし、な……?」
……アレ? 俺達って本当は周りなんて気にせず無自覚にイチャイチャするタイプだっけ? いや俺ら付き合ってないぞ? まだ優子が逆告白みたいな事を言っただけだぞ? だからカップルに思われるようなことは……
「もちろんシャミ子ちゃんと平地くんが結ばれるような企画だって考えてあるよ‼︎ 例えば戦闘ロボットの集団に囲まれたシャミ子ちゃんを平地くんが助け──」
「なんかいろんな意味でダメ」
ちょぅと、なんか小倉さんがラブコメ展開に興味示して変な企画出し始めてるんですけど。
「『この闘いが終わったら結婚しよう』みたいなイベントの擬似体験とか──」
「死亡フラグが高いから却下」
「じゃあ媚薬──」
「違法かつ論外。というか全部倫理的にアウト。スリーアウトだからこの話はやめにしようか」
「話題持ち出した本人が何言ってんだ。恋愛関連の企画なら喜んで聞いてやるとも言ったのはどこの誰だったのか、忘れたとは言わせんぞコラ……おい目ェ逸らすなや」
お前だって杏里に俺を恋愛方面でも強くした方がいい(?)と言われた時なんて、俺と優子をラブホテルに泊めようかと考察しようとしてたよな? 俺ァその時のことを忘れてなんかいないからなマジで。
この後小倉さんは本題として俺と優子を強くさせるための案を出してきたわけなのだけど……それらの方が倫理的にダメだったわ。
電流を流して魔力の質のデータを取るって何? 採血とかも怖えし。最終的にはコウモリの羽を移植するとか言い出したし……俺らの事を吸血鬼にでも変える気ですかねアンタは?
あっ、よく考えたら電流を流すのは別に悪くないかもしれない。平成最初の仮○ライ○ーであるクウ○なんて由緒正しいパワーアップ法とされて……
いや彼は特殊すぎるだけだわ。やっぱり電流も論外だわ。
【コウモリの羽生やしたびゃくシャミ……見てみてぇなぁ。特にまぞくのシャミ子なら似合いそうだし】
『角と尻尾みたいに自由に出し入れできないのではないか? まぁ余もそんな二人が見てみたいのだがな……』
はいそこのお二人方、何こそこそと話し合っているんですか。気配消しているとはいえお二人方の隣にいる俺と優子には筒抜けなんですよアンタらの会話。
ってか白龍様、アンタまた勝手に出てきやがりましたね? しかもこのヤバいことに巻き込まれそうな場面で。召喚術のオート召喚みたいな機能をオフにする方法、夢の中で会った時にお願いしますよ?
後、何さらっとびゃくシャミという新しいワード作ってるんですか。それ見たり聞いたりしたこっちが恥ずかしいんですけど。
「‼︎ 噂のしゃべれるようになったご先祖様と、スケッチブックでお話できるドラゴンの白龍様‼︎」
あっ。
「千代田さん、これらを魔改造してもいい⁉︎」
「取り返しがつく範囲なら……」
『しまった! 見つからぬように空気に徹していたのに喋ってしまった‼︎』
【うわー出てしまったー。捕まったー。白哉助けてー】
その文字の汚さからして、アンタわざと見つけてもらうように立ち回ってたな? アホか。下手したら死ぬぞ? アンタ、人間様の技術の個人差を甘く見てたら死ぬってマジで。
で、優子がリリスさんと白龍様を弄らないようにと小倉さんに懇願したら、リリスさんは抵抗できず虐げられる今の状況を打破し、子孫の未来に繋げるために自ら被検体になると決意を見せた。可愛い子孫のためにその体を捧げようとするとは、なんて覚悟だ……
っておいこらマッドサイエンティスト。何が『取り返しのつかない実験はしないから大丈夫』じゃボケが。電動ドリル持ってきてる時点でもう色々と怪しいし危険度が高いし、何より万が一その像が壊れたりしたらどうなるのかわかんねーんだぞ。警戒心持てやガキィ。
「……で、白龍様は被検体にされたいのですか? されたくないのですか? どっちなんですか?」
【なんか面白そうだからなってみたーい】
「そんな軽い気持ちで被検体にさせるわけにはいきません。早く精神世界にお帰りください」
【辛辣ー】
うるせぇ。何が辛辣じゃコラ。危機感を感じない人を送ってもし死人が出てしまったとしたらもう何もかもがヤバいことになるわ。察して。
「大丈夫、白龍様にも取り返しのつかない実験はしないから!」
「いやその怪しい機械はなんだよ⁉︎」
「ああこれ? ひし形イナズマモーター君って言って、これを嵌めればものすごい電気の力を得られ──」
「おっかねぇ気がするからしまえ‼︎ 今すぐ‼︎ つーかロボットじゃない奴に付けても意味ないだろうが‼︎ 多分‼︎ とにかく白龍様の魔改造はダメ‼︎ 絶対‼︎」
♢
そんなこんなでリリスさんの魔改造の準備が進んでいく中、俺と白龍様は別室で待機することになりました。何故かって? 前に小倉さんと約束してしまった、召喚獣達のデータ分析をなるべく広い所でやりたいからとのことらしい。
うーん……別に学校のものに被害を与えない範囲でなら、外でやっても問題ないんじゃないかな? そっちの方が結構広いし、装置とか無くても俺の口述とか手書きレポートとかでデータを取れば良さそうだし。
いや、そんな細かいことは敢えて考えない方が身の為やな。とりま召喚獣達を呼び出すとしますか。もちろん事前にデータ採取されても大丈夫だよと言ってくれた子達だけな。
というわけで早速召喚師覚醒フォームにフォルムチェンジ致しまして……やっぱりパクリの恰好はどうかと思うな。また夢の中で白龍様と直接会話できる機会があったらリテイクを頼もう。そうしよう。
「よし、それじゃあ早速……クラック、ハリー、襟奈、曙、召喚」
はい、今回召喚するのは召喚師にならずに召喚できる子二匹と、召喚師覚醒フォームにならないと召喚出来ないデカい魔力を持つ子二匹となります。
「それじゃあみんな、悪いけど今日は小倉さんの希望に答えてやってくれな」
【(コクリ)】
一匹目はパンダのクラック。俺が優子と桃に初めて召喚術を披露することになった時に呼ばせてもらった、実験好きのぬいぐるみサイズのパンダちゃんです。今回小倉さんのお願いに承諾してくれた理由は『同じ実験好きの者同士仲良くなりたいから(白龍様翻訳)』だそうだ。
【……奴を満足させてやる】
二匹目はハリネズミのハリー。全身を青色の針で覆っているハリネズミだ。その針とそこから潜む目つきによる威嚇で己の身を守ることが得意で、物静かな性格をしている。彼は暇だからという理由で協力してくれました。
【危なっかしいことだったら皆あたしが守ってやるからな‼︎ お安い御用さ‼︎】
三匹目はエリマキトカゲの襟奈。黄色い体躯と体よりも明るい黄色の襟巻きを持つ、身長三メートル・縦幅一メートルのエリマキトカゲだ。巨大な襟巻きを開くことで、一瞬だけとはいえ攻撃を完全に遮断することが可能らしいが……ダメージ百パーセントカットはさすがに信用できるかな……? 承諾理由はその防御面の良さを証明させるためだそうです。
【逆に彼女の実験する手段を利用するって手もあるしね……クククッ】
そして四匹目は蠍の曙。全身真っ黒という召喚獣の中でもシンプルすぎるデザインだが、全長は三メートルもある。シンプルでもデカすぎるのはさすがにめっちゃ怖っ。尻尾の針には回復させる毒や状態異常を起こす毒などといったものを、血液を循環させることで入れ替えることができる……らしい。ちなみに承諾理由は教えてくれなかった。何故?
「おまたせー」
おっと、そんなことを考えてたら小倉さんが部屋に入ってきた。
「小倉さん、リリスさんの魔改造はもういいのか?」
「丁度良い頃合いだったから後は二人に任せることにしたの。ご先祖様の新しい依代を作って動かすって実験で、やり方や注意事項は教えてあけたから、後は感想を聞くだけ」
「そっか」
まあリリスさんの依代作りなら、小倉さんの助力がなくとも優子と桃の二人だけでも問題はないかな。ホムンクルスの素材粘土に魔力を込めて手足やら体やらを作るだけだと思うから。
いやよく考えたらホムンクルスって何だよ。小倉さんは何の実験でなんつーものを作ろうとしてたんだよ。
おっといけない、さっさと小倉さんの召喚獣のデータ分析の手伝いを終わらせないと。今この部屋にいる人間は俺と小倉さんだけだから、優子にいらぬ誤解を与えてしまう可能性が生じてヤンデレモードが発動してしまう恐れだってあるからな。
「それじゃあちゃちゃっとデータ分析を終わらせておくぞ。こっちはちょっと待たされてたしな」
「うん、そうだね。ここに人である私達二人が長く居たらシャミ子ちゃんにあらぬ誤解を生ませそうだし」
「なんで俺と考えてることが似てるの?」
「意気投合できそうだね、私達」
「俺はアンタと意気投合するのが怖くて仕方がねぇよ」
っていうかそろそろ始めておかないとな。クラックがまだかまだかと目をキラキラと輝かせてこちらを見てるし、なんか怪しい赤色の液体が入っているフラスコと青色の液体の入っているビーカーを持ってるし。
クラックよ、君は一体何の実験をする気なのだ? どっちかと言うと君は実験台にされる側やぞ?
「おお! このパンダちゃん、白衣着てるしフラスコとビーカーを持ってる‼︎ 私と気が合うのかも‼︎」
「さいですか……」
うーん……気が合うのか? さすがのクラックでも小倉さんみたいに呪術とか悪魔とかの研究をしないと思うから、ドン引きする部分とかあるでしょ絶対。
「じゃあ早速データを取らせてもらうね‼︎ あ、データと言っても各々の得意なこととかどんな能力を持ってるのかとか見せてもらってレポートに書くだけだから、解析不可能な数式が出るのかもしれない点は考えなくていいからね」
「あっ、ラジャー……クラックもそれでいいか?」
あらま、頷いてくれた。改めて承諾してくれたって感じか。
そしたらクラックはビーカーの中の液体をフラスコの中に移し始めた。一体何をする気……
あっ。ポンッとフラスコ口からブドウが飛び出てきた……いやなんでだよ。なんで液体を混ぜ合わせるだけでブドウが出てくるんだよ。赤色と青色が混ざったら紫色になるのは確かなんだけどよぉ……
今度はどんな原理なのか、いつの間にかビーカーには黄色い液体が、フラスコには緑色の液体が入っていた。えっ、何? 念を込めればビーカーやフラスコに液体を自動で投入できるの?
で、ブドウを生成した時と同じ事をしたら今度はブドウじゃなくてメロンが出来た。いやなんでまた果物ができるんだよ。黄色と緑色を混ぜたら黄緑色になる、メロンも黄緑色、なんだけどね……
ちなみになんか人数分に分けて渡してくれたので恐る恐る食べてみたら……本物のブドウとメロンの味がしました。実物そのものを完全再現できるとは、クラックの生成実験恐るべし……
「すごい‼︎ クラックちゃんって子はいつでも理科の実験みたいに物を作ることができるんだね‼︎ 未来の科学力によるものなのか魔法の力なのかは分からないけど、一匹目から実に興味深いデータが取れたよ‼︎」
「あ、そう……ええっと、クラックお疲れ様……」
いやちょっと? いきなりドヤ顔見せてこないで? 可愛いけど。
と、そんなことを考えていると次はハリーが前に出て丸まった状態となってその場に留まりだした。次俺のデータ取れってか?
しかもいつの間にか周りにはカボチャとかレンガとかが置かれてるけど、もしや投げてきたものを全て自慢の針で防ぐってか? 用意周到いいなオイ。
【次、俺。なんか投げてみろ。自慢の針で防いでやる】
「どんなものでも? 投げつけられたものをどんなものだろうと針で刺して止めれるってこと?」
【そう。中身が飛び出るものダメ。実戦でないとNG。例えばシュークリームとか爆薬とか】
「食べ物を粗末にしたり爆発物を使われたりはさせねーよ、俺が」
なんつーものを使って自慢の針の硬度を証明しようとしてんだお前は。
と思ったその時、小倉さんが突然どこからか持ってきたボウリングに使うボールをハリー目掛けて思いっきり放り投げてきた。それをハリーは丸まって剥き出しにしてた針で見事に貫通・制止させることに成功した。
えっ? ボウリングのボールって主に硬質ラバーを素材にしていて、しかも重さも四ポンドもあるんだよね? それを易々とブッ刺して止めるとか……ハリーの針一本一本の硬度と貫通力、マジヤバくね?
【投げる前に合図出せ。びっくりした。下手したら失敗した】
「あ、ごめんね? どうしてもその針の性能を見たかったし、何よりボールが重すぎて長く持てそうになかったから……」
あっ、そういえば小倉さんは運動神経が良くないんだったっけ。体力もそんなにないみたいだし、下手したら優子よりもめっちゃ弱いとか。
「とにかく、これだけでも充分な性能があることが分かったよ! ありがとうねハリーくん‼︎ もう大丈夫だよ‼︎」
【えっ、もう終わり?】
あまりにも実験する時間が短かったのか、ハリーは呆気に取られた顔を浮かべていた。本当はもっとやりたかったんだな。その……ドンマイ。
【次はあたしのデータを測るのだろう? あたしは襟を開いた瞬間ならどんなものでも痛みとかを完全に遮断できるぞ‼︎】
【俺の上位互換】
【多分違うと思うが……さぁ、どんとこい‼︎】
次に襟奈が前に立ち、ヘイカモンと言っているかのように仁王立ちしてきた。四足歩行の動物の仁王立ち……シュールやんけ。
「えっ、どんなものでも防げるの? だったら……」
そう言うと小倉さんは押し入れの奥から何かを取り出してきた。押して動かす系のヤツみたいだから、バレーボールの練習でよく使われるあの機械か……?
と思った瞬間が俺にはありました。小倉さんが出してきたのは、まさかの大砲。しかも言葉では表してはいけない卑猥な形状の、だ。
「ロケットランチャーサイズのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲、発射ァ‼︎」
「せめて伏せ字使ってェェェェェェッ‼︎ ってかそんなツッコミしてる場合じゃなかっ──」
触れてはいけない禁忌に触れた気がしながらのツッコミを入れてる間に、卑猥で名前の長い大砲から砲弾みたいなものが放たれ、襟奈に向かって電光石火する何かのように素早くぶつかり、爆発する。
爆発によってたちまち広がる煙。それが晴れた時には……
「おお‼︎ そこら中ノーダメージじゃん‼︎ 攻撃を完全遮断できるってのは本当だったんだね‼︎」
【襟を開く間だけにしか適用されないけどな。それよりももっと打ち込んでもらいたいものだな‼︎ もっと戦車三台分用意するとかさぁ‼︎】
「……マジでケロッとしてやがる……」
こいつの襟の硬度、どうなってるの……?
【最後は俺ね。はいブスリ】
「はぐあぁっ⁉︎」
な、何かに右腕を刺されて、し、痺れれれれれれ……‼︎
気がつけば俺はその場で横たわっており、しかも痙攣を起こしていた、し、死ぬぅ……マジで動けんのだけど……
【俺はこうやって相手を状態異常にする毒を、尻尾を対象物に刺すことで発揮させることができるんだ。さらには──】
「へぷほっ⁉︎」
ま、また刺しやがった‼︎ や、ヤベェ、マジで死ぬかも……
………………ん? アレ? 急に痺れも痛みも完全に引いてきた。しかも体を動かした時の感覚とかがあるから、死んでない……いやマジで死んでたまるかってんだよ。
【このように俺の身体の中の血液を循環させることで尻尾の中身を入れ替え、対象物の身体を治すことも可能なんだ】
「攻撃も治癒もできるんだね‼︎ すごいよ君の能力も‼︎」
【マスターが召喚師覚醒フォームになることで呼ばれる存在だからね、これくらい当然だよ】
そのマスターである俺に毒ブッ刺してくる奴があるかコラ。マジで死にそうだったぞコノヤローが。
【何ならこの力をもう一回披露して──】
「今度召喚獣のみんなに飯出す時、お前呼んであげねぇからな」
【ごめん、やっぱりやめておく】
まったく……何の前触れや理由もなく主人に攻撃するとかどんな性根を持ってるって言うんだよお前は。とりあえずやめないとお仕置きだぞ宣告したら素直に謝ってくれたから、今回ばかりは許してやるとするけどさ……
♢
この後はリリスさんの依代制作を終えた優子と桃と合流。俺のところで何があったろのかを説明したら、優子は俺を結果的に傷つけた曙に対して強い憎悪を覚えた感じになってたけど、暴走はしないでくれよ頼むから……
あっ、ちなみにリリスさんの依代となる人形の服、あれ実は呪われそうな人形から躊躇いなく服を剥ぎ取ったとか……けど剥ぎ取られた人形の方は全く動じなかったらしい。
後、桃の魔力によって彼女にコントロールされた依代リリスさんのダンス動画が俺のところに送られてきて、それを観たハリーと曙が大笑いしました。
いや体の自由権を奪われその光景を撮影された人を笑うとか、アンタらデリカシーってものがないんか?
……まぁ、ああなったのはリリスさんの自業自得によるものだけどね。
後、実はこんな会話もしてました。
「えっ⁉︎ 白哉さん、自分が出した召喚獣さんに毒を刺されたのですか⁉︎」
そう……正に今、曙にいきなりブッ刺された時の愚痴を二人に聞いてもらっているところです。
「おう。ただ体を痺れさせるだけだったからまだ良かったものの、とんだ災難だったぜ……まあすぐに回復させてくれたのだけど」
「主人を殺しちゃったら自分達も消えちゃうかもしれないって分かっているから、殺されずに済んだのかもしれないね。にしてもその曙って蠍、主人に悪意のない悪意で攻撃するとかタチ悪くない?」
「あいつドSな性格らしくてさ……だからなのか、主人である俺に躊躇いもなくブッ刺してきたのかもな……」
事が全て終わったからなのか、この時の俺は曙に対する怒りはとうに鎮まっていました。あいつも主人が死んだらとかを考えてきちんと手加減はしてくれたのだろうなって考えもあったから、なんというか、なぁ……って感じ。
ただ、その事をとてもよく思っていなかったらしい者が一人。
「………………」
「? シャミ子?」
「優子、どうしたんだ急に俯いて?」
「……なんで白哉さんを平気で傷つけれるんですか」
「「え?」」
偶に見せるヤンデレ気質持ちの優子です。でも、なんかいつもよりも濃い負のオーラが見えているような……?
「白哉さんは彼の主人ですよね? 自身を呼んでくれる存在ですよね? そんな存在の人である白哉さんを攻撃するとかどんな身分ですか? 力加減とか白哉さんの体質とかは考えていないのですか? もし白哉さんが死んだら自分達までどうなるのかとかも考えていないのですか? もしどうなるのかと解っているのなら、何故?」
「ゆ、優子? 優子さん? ちょっ、大丈──」
「許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない──」
「ちよっ、優子落ち着け‼︎ 一旦落ち着け‼︎」
「なんか出てる‼︎ 私でもビックリな程ヤバいオーラが出てるからしまって‼︎」
「──はっ⁉︎ わ、私ってば一体何を言って⁉︎」
自分がヤバいってことになってたのは、どうやら無自覚だったようだ。しかも俺と桃に呼ばれてハッと我に返ってくれたのだから、異常なまでに酷くはなってない……の、か?
なんだろう……久しぶりな気がする優子のヤンデレモードだったからなのか、これまでのヤンデレモードよりもかなり酷いものだったような……
俺が傷つくと、優子のヤンデレモードというか怒りが急上昇してしまうのか? めっちゃ怖っ。
………………そろそろ、俺の胃もかなりヤバいか?
「今の嫉妬による不思議なオーラ……もしアレがシャミ子ちゃんのパワーに変わる可能性があると考えれば……お楽しみがまた一つ増えちゃった‼︎」
ところで、優子に向けられているのであろう謎の視線は一体何なんだ……?
おまけ:台本形式のほそく話その6
小倉「クラックちゃんが作ったマスクメロン美味しかった〜……あっ、シャミ子ちゃんの分と千代田さんの分も作ってもらえるよう頼むの忘れてた」
「んー……仕方ない。また今度平地くんにデータ分析の手伝いしてもらう時に、クラックちゃんに頼んでまた作ってもらおうかな」
「そういえば平地くんは召喚獣を魔力の応用なしに呼び出したのだけど、もし魔力も活用するとなるとどうなるのかな? また今度聞いてみよっと」
END
白龍【いやいくらネタ切れだからって短すぎない?】