偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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嘘つきは泥棒の始まりってことで初投稿です。

だんだん原作二巻の物語が終盤に近づきそうだが、下書きのストックが追いつかん……

どこかで一週間よりも遅い時期での投稿になりそうな気がする……


小さい子の夢とか希望とかを壊したくないので、彼女の誤解を肯定してしまいました……恥ずい

 

【曙……君マスターになんてことをしてくれたんだメェ〜‼︎ もしも君の毒でマスターが死んだら僕達も消えてしまうかもしれないメェ〜よ⁉︎ 万が一の時のことも考えろメェ〜‼︎ 次またマスターの承諾なく勝手に毒刺したりでもしたら、すぐに白龍様や神様を通して君にそれ相応の罰を与えてやるからメェ〜な‼︎】

 

【えぇ〜? マスター無事だったんだから別にい──】

 

【地獄とかに放り込むメェ〜よ? そして無限地獄を体験させてもらえるように頼み込むメェ〜からね?】

 

【……はい、すみません】

 

 

 うわぁ、メェール君の顔が言葉でも表現しちゃダメな程の怖い感じになってる。大抵の人なら誰でも恐怖で泣き崩れるぐらいに怖い顔だよマジで。

 

 あ、どうも。自分の召喚獣に痺れ毒の尻尾を刺された白哉です。

 

 俺は今、その尻尾を刺しやがった本人である蠍・曙がメェール君に説教されているのを眺めています。正直主人である俺に毒を刺してきたことに対しては結構怒りを覚えてはいたけど、メェール君に説教されて項垂れている彼を見てそんな怒りも冷めたって感じですかね。

 

 にしても、ドSが純粋な可愛い子(♂)に説教されるとかなんかシュールだな……。いや変な例えはしてへんよ? 『真○の○の○夢っぽくね?』とか言わないで? 頼むから。

 

 ん? なんで召使いポジの一匹に命を取られそうな感じになったのか、だって? まぁ特に他意はないって感じですかね。なんで俺が襲われなきゃならんのかという理由も分からんっつーか、曙自身も俺を恨んでいたりとかしてねーらしくって……

 

 つまりはアレやで。悪意のない悪意という、理由のない理由(?)で俺に痺れ毒を盛りやがったってわけや。あいつドSな性格してるから、誰彼構わず苦しんでいる顔を見たかったからああしたと思うんやけどな……

 

 おっと、思わず関西弁のまま喋ってしまった。変に口調変えないように気をつけないと。

 

 とにかく、今はその……アレだ。今はまだ曙が説教されている場面を見てるだけで、それ以外やることなくて、暇ヒマしてます。さすがにこのまま退屈な思いするわけにはいかないし、どうすっかなぁ……

 

 ……そういえば、最近優子と一緒に出掛けたりする機会が全然取れていなかったな。優子が先祖返りしてからずっとそんな感じだった気がする。まあ中には優子が一日バイトをすることになった日とかもあったし、そういった日は魔族として云々で大事イベントだから、そこはそこで仕方ないけどさ。

 

 よし、決めた。今日は久しぶりに優子と一緒にどっか近くのところまで出掛けるとしよう、そうしよう。幸いこの日は休日だからそういった機会を作れそうだし、何より優子が喜びそうな顔が目に浮かぶしね。それも危なっかしくない方の。

 

 

「ちょっと俺出掛けてくる。帰る時間になったら連絡するからな」

 

【あっ、いってらっしゃいメェ〜。……このお出掛けを機にシャミ子ちゃんといい雰囲気になるメェ〜よ

 

「オイそれはどういう意味だコラ」

 

【アレ? 小声で言ったのに聞こえてたのかメェ〜?】

 

「なんつーかとうとう『隠しきらなくてもよくね?』みたいな感じなのを出してたし、マイペースなクラックやドSな曙といった色んな奴の性格とかもあるからな……なんか諦めたわ」

 

【いや何をだメェ〜】

 

 

 そこは察しないでくれお願いします。心の中でそう念じながらも俺は軽く財布の入ったカバンを背負い、ついでに市街戦と熱中症防止のために帽子を被ってから外に出ることに。

 

 ん? 『防止』と『帽子』、ギャグで言ってるのかだって? そんなわけないですいい加減なこと言わないで。

 

 

「それじゃあ行ってくる」

 

【イッてらっしゃいメェ〜】

 

「今『いってらっしゃい』を変な感じに言わなかったか?」

 

【………………】

 

 

 目ェ逸らすなコラァ。まあこれ以上追求するのもよくないし、さっさと出るか。さっきの『いってらっしゃい』だって別に何かを思って可笑しな音程で言ってるわけじゃなさそうだし、深く追求するのもメェール君に色々と悪いし、何より『なんでこんなくだらないことを深く追求する必要があるんだよ』って話だし。

 

 そんな事を思いながらも外に出たその直後……ほぼ同じタイミングで隣の玄関から出てきた優子とバッタリ出会いました。しかもパソコンが入ってる鞄を大事そうに抱えており、その後ろには良子ちゃんがいた。

 

 これは……例のあの原作イベントだな。この時期の中で一番重要なイベントへと繋がる前置き(?)みたいなものの、な。

 

 

「えっ。びゃ、白哉さん……?」

 

「あっ、白兄」

 

「……こんにちは。優子、良子ちゃん」

 

「お、おでかけですか? で、出掛ける時間が被るなんて奇遇ですね……」

 

 

 必然的であってたまるかって話だよ。もし優子が暴走したらそうなる可能性はあるけども……っていやいや、何彼女のヤンデレモードのレベルを勝手に上げてるの俺。被害妄想も腹立たしいよなこれ。

 

 

「まあ出掛けると言っても特に何の予定もないけどな。まあ久しぶりに優子も誘って一緒に何処かしら回ろうか誘おうとは思ってるけど……そっちはなんか予定とかあるのか?」

 

い、一緒に……えっ? あ、はい。良が桃から借りたパソコンの調子が悪いと言うので、桃に謝ってそれを診てもらおうってことに……」

 

「……尻尾、異常なまでにブルブル震えてるぞ。桃に対するきょ──いや、なんでもない」

 

「あの、別に今言いたいこと隠さなくていいですよ? もうこの尻尾の動きで大抵良にバレてるので……」

 

「あ、そう……」

 

 

 はい、今日はパソコン修復と重大イベントに繋がるメインサブイベント回となります。というからしいです。

 

 ……いやちょっと待て。メインサブイベント回って何だよ、我ながら変なワード作っちまったよ。白龍様が『びゃくシャミ』とか言うふざけた恥ずかしいワード作ってたことに指摘した癖に人の事言えてないじゃん俺も。

 

 

「だったら俺も一緒についてこうか?」

 

「え ゙っ ゙?」

 

「いやそんなに驚くほどか? 何の予定もないからってのもあるけど、もしパソコンが本当に壊れてたとしたらって時のために、桃の宥め役にもなる必要があると思ってだな……」

 

 

 呆気に取られた顔をするのはわかるけど、一瞬女の子が出してはいけない変な声が出なかったか? なんかどっかのきらら漫画の特殊なバンドアニメでも聞いたことあるような、ないような……そのアニメの記憶は曖昧だけど。

 

 

「良はいいけど……白兄は本当にいいの? 貴重な休日に良やお姉の付き添いをして……」

 

「いいんだよ、どうせやることないんだから。で、優子の方はどうなんだ?」

 

「あっ。え、えっと……よ、よろしくお願いします……」

 

 

 ん? あれ? なんか今の優子、例のアニメの陰キャぼっちギタリストになってね? 顔に影落としながら俯いてね? 一時的にコミュ障になってね? 俺、また勘違いさせるようなこと言った……?

 

 

 

 

 

 

 お、思わずドキドキしてしまいました。しかもこんな大したことのないことで、心臓の鼓動がうるさくなっちゃいました。

 

 ただ私が良が借りたパソコンを持ち主である桃に壊れてないか見てもらう、それだけのことをしようとしてる私達のために、白哉さんが同行すると言ってくれただけのことなのに。今でも心臓があちこちローリングスピンしていきそうです。

 

 うわぁ……今日の私なんかチョロすぎ……? いつもならこんな些細なことでドキドキしてもせいぜいトクントクンッといった音が体中に響く程度で、それも一分で治まるのに、なんでこんなにもドキドキが止まらないの……?

 

 あっ、これは多分アレですね。最近白哉さんとお出掛けするケースがなく、私の方に一日バイトがあったりテスト週間があったりで、休日らしい休日なんてあまりしてない気がする。試験休みに初めての映画には行ったけど、あの時はミカンさんの呪い制御の付き添いの上に白哉さんが一緒じゃなかったし……

 

 つまりアレだ。白哉さんと一緒にゆっくりできる機会がなかった寂しさが募ってきて、それが一部暴発して今のドキドキに繋がっていると……

 

 ああ、私は今改めて感じました。私の白哉さんへの愛の重さが、募る寂しさによって些細なことで爆発して、下手すれば普通程度のことで暴走する恐れがあるんだなって。またヤバい状況になっているんだなって。

 

 なんか最近白哉さんへの重たい愛を向けてない気がするなと思ったら、そんな機会を作る余裕なんて作れなくなっていて(作れたら作れたでどうかと思いますが)、その分寂しいという想いを無自覚に抱え込んでいたんですね私。

 

 うぅ……何はともあれ、ドキドキして黙り込んでしまった程度で済んでよかったのかもしれませんね。だってすぐ後ろに良がいるから、醜い自分の背中を見せて良の中の理想の姉を壊してしまうだなんて嫌ですもん。改めて自分の心の緩さとかには気をつけておかないと……

 

 

「……お姉、無理に白兄への想いを隠さなくても大丈夫だと思うのだけど、やっぱり本心を出すの難しいのかな……?」

 

 

 ん? 良、なんか小声で呟いていたけど、何を言っていたんですかね……? 気のせい、なのかな? なんか私に向けて言ってたような気がする……

 

 

 

 

 

 

 そんなこんながありながらも、桃の家に着いた私達三人。良はこの家を見て城塞だと思い込みました。私は初見で公民館に住んでるのではないかとは感じてましたけど、良の発想はそれよりも大きく出てビックリです……

 

 まあいいかな。一旦良には門前で待ってもらい、二人で桃の家にお邪魔することに。相変わらずオートロックの暗唱番号は56562(ごろごろにゃーん)のままですね……

 

 宿敵に暗唱番号教えてしまったのだから、勝手に入り込まれないように変更した方が良いのでは? いやインターホン押し忘れて勝手にロックを解除した私達も私達ですが。

 

 とりあえずお邪魔します。あ、桃いた。ちゃんといた……って、ポテチ食べてる⁉︎ 貴様またジャンクなお昼を過ごしてるな⁉︎ 油断も隙もない‼︎ お昼だからって適当なもの食べていいわけないだろうが‼︎ しかもポテチだけって‼︎

 

 

「桃……お前いつもジャンクものばっかり食べてる癖に、よくハードなトレーニングで体壊さず上手く鍛え上げられてるな……お前の体作りホントどうなってんの?」

 

「あっ。確かにそこは疑問点ですね……」

 

「まぁそこそこなところは魔力で補いながらトレーニングし体作りしてるから、食生活は大抵気にしなくても問題ないよ。でもシャミ子や白哉くんが何か作ってくれるなら食べる」

 

「私達は飯炊き係ではなーい‼︎ 何系が食べたいですか‼︎」

 

 

 あっ、思わず承諾しちゃいました……いや、このまま放置してると私が桃に初勝利する前に栄養失調で倒れそうだから、しょうがないと言ったらしょうがないと思った方がいいの、かな?

 

 

「いや承諾するんかい」

 

 

 いやツッコまないで白哉さん。自分でも甘かったなって思ってますから……

 

 

「……ってか桃、お前なんで俺が作ったものまで食いたいとか言うんだ?」

 

 

 えっ、そこ聞き逃してたんですが。

 

 何故? 何故桃は白哉さんの作る料理まで食べたがるんですか? ……まさか、桃も白哉さんの事を……?

 

 あっ、ズキッという音が私の心の中で聞こえた気がする。この感じも久しぶりだ。嘘、ですよね? 桃まで白哉さんの事を好きになったりとか、しませんよね? もしそうなったとしたら、一か八か……

 

 ハッ⁉︎ いやダメダメダメダメ‼︎ そんな事考えちゃダメだし、行動に移すのもダメ‼︎ そんなことしたら桃を、彼女の事を心配していた自分自身までも否定してしまいます‼︎ 今は冷静に、冷静に──

 

 

「昨日小倉さんの実験に付き合わされた後、白龍さんが何故か『白哉くんは料理が上手いんだ』って教えてくれたから気になって。あっ、別に深い意味とかはないから。白哉くんにはシャミ子がいるし

 

「びゅえ ゙ぇっっっ⁉︎」

 

「は、はぁ⁉︎ おま、今最後に何言ってんだ⁉︎ ってか白龍様も何故俺の事を桃に伝えたし……」

 

 

 へっ……は……えっ……? も、桃、今、なんて言ってました……? びゃ、白哉さんには、私がいる……? って貴様、また私達を揶揄ってるってことか⁉︎ ホントふざけるのも大概にしろー‼︎

 

 でも、なんだろう……『白哉さんには私がいる』と考えると、まるで周りもそう捉えているかのように思えてしまって、つい認めてしまいそうで……。こういったこと、前にあったような気がしますけど。

 

 白哉さんには私がいる……つまりは白哉さんは私がいないと何もできないってわけじゃないけど、私がいれば色々な事ができるのかもしれないと? そして私も白哉さんがいると色々な事ができると? それってつまり、け、結婚すると……

 

 っていやいやいや⁉︎ 何考えているの私⁉︎ つ、付き合ってすらいないのに何を踏み越えようとしているのですか⁉︎

 

 しかも『白哉さんは私がいなと何もできない』って何⁉︎ 『私も白哉さんがいると色々な事ができる』って何⁉︎ これじゃあ依存症の人じゃないですか‼︎ 頭のおかしい思考を持ったヤバい人じゃないですか‼︎ もう一度正気に戻れ私‼︎

 

 

「優子、急にどうしたんだ? 思いっきり顔を横にブンブンと振り回してるけど……」

 

「ハッ⁉︎ い、いえなんでもない……なんでもないですよ⁉︎ なんか急に暑くなってきたなーって思っただけです、はい‼︎」

 

「顔が余計に暑くならないか、それ……?」

 

 

 お、思わず思ってたことが表に出ていました……さ、察してないですよね? 二人とも私の考えていること、察してないですよね⁉︎ あんなヤバめな思考してたことに気づかないでー‼︎

 

 

「……いい加減素直になればいいのだけど、恋って難しいものなのかな?」

 

 

 

 

 

 

 俺には優子がいるって……桃の奴、それどういう意味で言ってんだよ? これまでの経緯とかを考えると勝手に俺達を恋人設定にしてるのだろうけど、違うからね? 俺達付き合ってはいないからね? 勝手な解釈とかしないでね?

 

 つーか仮に恋人にしようにしても勇気がねーんだよ‼︎ ヤンデレ気質を持って、しかもその自身の性格に悩まされている子を恋人にする勇気が‼︎ そんな情緒不安定な子に告白するかされるかで付き合うことになったら、その子が暴走してお互いの人生が終わっちまうわ‼︎ 色んな意味で‼︎

 

 それに……俺はまだ、優子に対する本心というものが分からずじまいなんだ。俺は優子の事をどう思っているのだろうか。今も変わらず仲の良い幼馴染としてか、彼女のヤンデレ気質のせいで毛嫌いしてるのか、それとも……未だ答えを見つけられずにいる。

 

 つーかよく考えてみたら、最近そのことをほぼ全くと言っていいほど考えていなかったわ⁉︎ 桃に優子の事どう思ってるのかと聞かれて以来、ずっと保留のままにしてたわ⁉︎ もしかして優子の性格が不安定なの、この俺の優柔不断な性格のせいでもあるってこと⁉︎

 

 ぬぅ……そう考えてみると、俺ってある意味男として色々と情けないってことなのか? いい加減優子の事をどう想っているのかを自覚しないとな……

 

 とにかく、情けないけどこの話題はまた保留にして桃の飯作りに専念しよう。今してることとは別の事を考えていると、その事を指摘されたり疑われたりして色々と面倒臭いことになりかねないからな。

 

 ってなわけで、とっとと昼飯作りでも始めますか。優子がすき焼きうどん(肉の代わりにツナ使用)を作っているから、俺はたこと夏野菜のマリネを作ることにした。いや我ながらお洒落なの作ろうとしてんなオイ。でも甘辛い味付けのすき焼きにはさっぱりとした副菜がより良い箸休めになるから、チョイスとしては良くね?

 

 

「桃。勝手なお願いなのですが……桃の正体が魔法少女であることは良に内緒にして欲しいんです」

 

 

 おっ? マリネ作ってる間に優子が桃に『正体隠して』頼んでいる会話が聞こえてきた。なんでも良子ちゃんには自分がカッコいいだと思われているため、良子ちゃんの理想の姉の背中を見せるべく弱みを握られていることを隠したいとのこと。

 

 それが思ったよりも効いたのか、桃氏は良子ちゃんが見つけたハートフルモーフィンステッキを調理用の棒だと言い訳した。流石に黒歴史となるものも隠しておきたいよね、わかる。

 

 いやちょっと待て⁉︎ ステッキ使用後のフライパンが破断してるってどういうことだよ⁉︎ 別に魔法とか使ってな……あっ、テフロン加工ってヤツか。一人暮らし始めた頃不意にフライパンの使い方を調べて時に覚えたんだよなぁこれが。

 

 

「シャミ子が私の正体を良ちゃんに隠してほしい理由はわかった。……ところで、もしかして白哉くんも良ちゃんに自分が召喚師になったことを隠してるの? なんとなく気になっていたんだけど」

 

「えっ、俺?」

 

 

 ってかここで俺に振るんじゃねぇよコラ。しかもなんで予想的中してんだよ。まあ答えるけど。

 

 

「俺はもちろん内緒にしてるぜ。俺にまで特別な力を宿されているのかと知って、目を輝かせる良子ちゃんの顔が気になるってのはある。けど同時に不安もあるんだ。『その力があるのならどうしてもっと早く使わないでお姉を色々と手助けしなかったんだ』と思ってしまうのだろうかってな。良子ちゃんは賢いからそう思うとは限らないけど、『前からその能力を持ってるのではないか』と勘違いされるわけではないとも限らないしな」

 

 

 変な指摘されて俺に対する疑心が生まれてしまえば、俺が介入したことによる悪影響が大きくなる可能性だってあるしな。まあ転生者である俺がそんなこと言ってしまえばさらなる疑心だって生まれるだろうけど。

 

 つまりはアレだ。良子ちゃんの純粋なビジョンを崩さないためと、今後の優子達の未来のためにも、今まで俺が召喚師になったことを隠していたってわけ。

 

 まぁ、でも……

 

 

「だからと言って、いつまでも黙っているつもりはないけどな」

 

「えっ? 何故なんですか?」

 

「正論であろうとなかろうと、仲の良い人達に隠し事をしてたらその人達の事を信頼してないのと同じことになるし、隠し事をされていたってことを知った人達もしてきた人に対する信用を失ってしまうからな。俺はそうやって信頼関係を壊してしまうのを恐れていたんだ、自分でも気づいていない部分も含めてな」

 

「信頼、関係……」

 

「だから俺はいつまでも隠し事をし続けないようにしようと決めた。いつ言おうかはまだ決めてないけど、いつかは必ず俺自身の事を全て話してみるさ。大切な人達との信頼関係を保つためにも、な」

 

 

 これは今不意に思いついた言葉ではない。数日前に家族に再会し話し合いしていた時に、両親に『偶には自分達を頼ってほしい』と言われて気付かされたことをそのまま言っただけだ。

 

 俺は今まで、自分は転生者だから自分の事をこの世界の人達に言っても何の意味もないと勝手に決めつけていた。けどそれは間違いだったことに気付かされた。

 

 どこに転生・転移されようと実質的に孤立になることはない、味方になってくれる人・隠し事などしなくても受け入れてくれる人は必ずどこかにいる、俺のこの世界の両親はそんな当たり前なことを思い出させてくれたんだ。

 

 誰にでも味方はいる。自分自身も誰かの味方になって側に寄り添える。それをいつかは優子にも分かってもらいたい。これは俺のほんの少しの切実な願いでもある。

 

 そして、お前も俺にいつかは言ってほしい。今まで溜まっていた悩みや鬱憤などを、全て。

 

 

「だから優子も良子ちゃんに本当の事を言えるように──」

 

「お姉。この猫ちゃん鳴き声が変だし、光ってる……後、何故かちっちゃなドラゴンさんまでいる……眩しい」

 

【悪い、こっそりしていたのがバレたわ】

 

「説明必須不可避となりました。頑張ってお伝えしましょう」

 

「急に手のひら返しされましても⁉︎」

 

 

 結局一部は原作通りに良子ちゃんに明かさないといけなくなったけどね……

 

 つーか白龍様、アンタ勝手に俺の合図なしに出てくるなと言ったでしょうがいつの間に出てきてんだ。

 

 

 

 

 

 

 良にメタ子と白龍様の事がバレてしまったため、結局桃が魔法少女であることを伝えることになりました。猫が喋る時点で主に桃が怪しまれることは明白だし、何より白哉さんの言う通り隠し事をし続けても後先後悔してしまう恐れがあるのだから。

 

 まあ真実を伝えることで良の私へのイメージが崩れてしまいますけど、そうも言ってられません。本当に大切なことを守るためにも、腹を括らないと……

 

 

「実は桃は魔法少女で、白哉さんは色んな動物達を呼べる力を持てるようになったんです。今まで黙っててごめんなさい。今は私と桃は共闘中で──」

 

「知ってた。桃さんの事も、白兄の事も」

 

「───えっ……」

 

 

 知ってた? えっ、何を? 桃が魔法少女であることを? 白哉さんが召喚師であることを? えっ? 二人とも良にその事をバラしていないはずですよね? 白哉さんは兎も角、桃はまだ良に一回しか会っていませんよね……?

 

 

「お姉が私に気を遣って嘘をついているのも分かってた。桃さんの身のこなしが完全に武将のそれだし、白兄の方はなんとなくだけど軍師みたいなオーラを感じるし……」

 

「えっ? 俺そう思われてるの? というか軍師みたいなオーラって何?」

 

 

 白哉さんのことをどう見てるのかは兎も角、私が嘘ついていたのバレバレでした? まさか私、無理していた事が表情に出て……あっ、尻尾の動きで大抵の気持ちが良にバレてしまっていたんだった。もしかして嘘をついている時にも尻尾は特有の動きをしていた、と……?

 

 でも、どうしよう。良に嘘ついていることも、桃の正体も、そして白哉さんの変化の事もバレた。良、私達に失望してしまったのでしょうか──

 

 

 

「やっぱり……やっぱり桃さんはお姉の軍勢の魔法少女で、白兄もお姉の軍師兼伴侶になっていたんだね‼︎」

 

 

 

「「「………………あれっ?」」」

 

 

 えっ? はっ……えっ? 良、今なんて言いました? 何やら盛大な勘違いしてるし、後半は聞いて恥ずかしい言葉が聞こえてきた気がするし……

 

 

「子供にはとても言えない手段で、桃さんを調略して篭絡し、白兄にはとっておきの秘術みたいなもので凄い力を譲渡しながら魅了させていっていたから、どれも説明しづらかっただよね⁉︎ 本で見た‼︎ 良、そういうの本でいっぱい見た‼︎」

 

「良ちゃん?」

 

「良子ちゃん……一体どんな本読んでたのさ? 少なくとも小学生が読んじゃまだダメな本読んでるよね絶対? どこで読んでたのさ?」

 

 

 しょ、小学生が覚えられるとは思えない言葉を連発してる……。良は一体図書館でどんな本を読んでたのですか……

 

 って⁉︎ よく考えたらさっき『魅了』って言葉まで出ませんでしたか⁉︎ しかも白哉さんの事を言ってる時に⁉︎ なんで⁉︎ 私が白哉さんに力を渡してるという誤解の方もそうですけど、なんで私が白哉さんを魅了させてると思っているのですか⁉︎ もしかして私の白哉さんへの想いもバレていた⁉︎

 

 そんなことを考えていたら、良はどんどんと誤解のというか美化の領域を自分から広げてきている……桃を私の配下だと思い込んでいるし、彼女のこの家を城だとも思い込んでいる上にここで作戦会議しているとも……

 

 

「………………うんそうだね。そのとおりです」

 

「桃⁉︎」

 

 

 押し負けた⁉︎ 桃が何も言い返せず、良の疑いのない純粋でキラキラとした眼差しに負けた⁉︎

 

 その上に私に寝込みを襲われたり冷蔵庫を作り置きまみれにされたりとか言って嘘を積み重ねているし、更なる誤解まで増やしてどうするんですか‼︎

 

 

「ああ……良子ちゃん? 桃が優子の軍勢に入ってるのかもしれないと思うのは分からなくもないんだけどさ……」

 

「分かろうとしないで⁉︎」

 

「俺の場合はなんで? 色んな奴を呼べる力を手に入れたのだから、俺も桃と同じく優子の軍勢に入ってるのではないかと思うのも分かる。けど一番の問題は俺が優子の伴侶になったってところだ。なんで伴侶になったって思ったんだ? というか伴侶の意味知ってる?」

 

「知ってる‼︎ その意味の一つが長い一生を共に生きるパートナーなんでしょ⁉︎」

 

「「なんでそっちの方を出すのかな⁉︎」」

 

 

 本当にどんな本を読んだら伴侶の意味も覚えちゃうのですか⁉︎ というか今までの私達をどう見たら白哉さんは私の伴侶なのだと思えるの⁉︎

 

 ま、 まぞくになる前から白哉さんの事は好きになってはいるけど、それを悟られぬようには配慮しているはずですよ⁉︎ なのになんで……まさかまた私の尻尾の動きとかで──

 

 

「お姉の白兄を見る目がいつもと違ってキラキラと輝いているところがあるし、喋っている時のトーンも正に乙女って感じが出ていた‼︎ それに白兄もお姉の事が好きなのかもしれないってところをよく見せていた‼︎」

 

「「………………えっ?」」

 

「白兄はお裾分けしに来てくれた時も真っ先にお姉と仲良く会話していたし、お姉との待ち合わせに来た時もよく微笑んでいたのを私は見逃さなかった‼︎ それに修行がある日と言っていた日はいつも一緒に付き合ってくれたってお姉が言っていたし、それを聞いた時の白兄は肯定しながらお姉のその時の良いところを嬉々として話していたのも覚えている‼︎ いつも率先してお姉の側に寄り添ったり、強くなろうと頑張っているお姉に付き合ったりしているってことは、白兄も脈ありってことだよね⁉︎」

 

「「えっ……えっと……」」

 

 

 な、長い……白哉さんが私の事を好きなのかもしれないと思っている理由、私が白哉さんの事を好きなのかもしれない理由よりも長い……というかそんなに白哉さんの事まで観察していたんですか良は。なんか、嫉妬してしまいそうでも妹の観察力の凄さに驚きすぎて嫉妬できそうにない……

 

 にしても、白哉さんの行動をそこまで読んでいるってことは、もしかして良も白哉さんの事が……いやいや、もしそうだとしたら白哉さんを私の伴侶だと捉えることなんて……って⁉︎ べ、別に私は白哉さんの事を伴侶だと思っているわけでは……‼︎

 

 ……もし、良の言っていることが本当だとしたら、白哉さんも心の中のどこかでは私の事が……いや、ないないないない‼︎ 嘘をつきにくい小さな子の意見とはいえ、さすがに白哉さんが私のことを好きになるわけが……

 

 ……あれ? 何だろう……否定しようとした途端、何故か急に心が締め付けられる程に痛くなった気がする。今までこんな感情を持たなかったのに……あれ?

 

 

「みゃ、脈ありって言葉まで知って……いや、俺は別に優子の事が……」

 

 

 ハッ⁉︎ いけないいけない、この痛いモヤモヤの正体が何なのかを考えるのは後です‼︎ 今は良の誤解を解くのが先決で──

 

 って、また良の目が疑心なしのキラキラでピュアッピュアな感じになってる……。その目を見た白哉さんも桃みたいにかなり押され気味な感じになっている……

 

 あっ、なんか嫌な予感がしてきた……

 

 

「………………はい、そうです。脈ありかなしかと言ったら、ありです。はい」

 

「白哉さん⁉︎」

 

「他のクラスメイトともだけどショッピングセンターに連れてって一緒にご飯を食べたり、同級生の看病を一緒にしてあげたりしてました。はい……」

 

 

 やっぱり⁉︎ やっぱり白哉さんも押し負けてしまっている⁉︎ 桃とは違って本当の事を言ってはいるけど、それはそれで、その……つ、付き合ってると勘違いされてそうで、かなり恥ずかしくなってきた……

 

 も、もう良にそう認識されてしまっているし、いっそのこと白哉さんに告白してしまおうかな……

 

 っていやいやいやいや⁉︎ そんなことしてしまえば、それでこそ白哉さんへの愛が今までよりも重くなるし、取り返しのつかないことをしてしまう可能性だって高くなっちゃう‼︎ みんなの為にも抑えて私‼︎

 

 というか……

 

 

「どうしてくれるんですか二人とも‼︎ 誤解を解くどころか深まってきたじゃないですか‼︎」

 

「私もそんなつもりはなかったんだけど、壊しちゃいけない笑顔がそこにあったから……」

 

「その……俺の場合は大半本当の事を言っていたと思うから、別に良くね……? 子供の希望や夢を守ることも大事だし……」

 

「二人揃ってブレるなァァァァァァッ‼︎」

 

 

 何『守りたい、この笑顔』理論を唱えようとしているかのように諦めた顔してるんですか‼︎ せめてどちらか一人だけでもいいからこの誤解をなんとかする意志を続けろー‼︎

 

 

「……それに、俺が優子の事を──」

 

「ただいまー。アイス買ってきたわよ〜……あら? その子はどなた?」

 

「まずい、状況を知らない系女子が‼︎」

 

「……ヤッパリナンデモナイデス」

 

 

 ミ、ミカンさんが帰ってきた……しかも白哉さんが何かを言おうとした時にまさかの最悪のタイミングで……何を言おうとしたのかは気になるけど、この状況どうしよう……

 

 この後桃が呪いを受ける覚悟での無言の圧力でミカンさんにアイスを突っ込ませ(どこになのかは分かりませんが)、彼女も私の配下にさせることで無理矢理解決に繋げました。

 

 ミカンさん……後で謝ります‼︎

 

 

 

 

 

 

 ま、まさか俺が優子の……は、伴侶であると捉えられていたとは……しかもよく俺の事を観察していた……

 

 良子ちゃん、君本当は俺と同じ前世の記憶を持った転生者なのでは? 原作通り本で得た難しい知識もちゃんとあるとはいえ、観察力が強いとそう思ってしまうじゃねェか……

 

 いや、多分あり得ないだろうな。一つの世界に複数の転生者がいたら現実(ものがたり)が混乱するだろうし、何より今までほとんど原作通りに物語が進んできているんだ。他の転生者が介入されてたら絶対どこかで物語が崩壊してたはずだ。うん、絶対そう。

 

 しかし、どうしたらいいものか……ん? 何がだ、だって?

 

 良子ちゃんに俺が優子の伴侶であることを肯定してしまった件についてだ‼︎

 

 だって俺ら付き合ってすらいないんだよ⁉︎ 告白もどきなのは受けたけど保留にしっぱなしなんだよ⁉︎ それなのに付き合ってるどころか結婚を前提にしてますみたいな感じなのを認めちゃったんだよ⁉︎

 

 俺だってね、嘘をついちゃダメなのはきちんと理解しているんだよ⁉︎ 小さい子の前で真実を伝えたかったんだよ⁉︎ それも傷つけないように‼︎ けど疑いのないピュアピュアとしたキラッキラな目を向けられたら、思わず否定する意志が引っ込んじまうんだよ‼︎ 壊したくない、あの笑顔‼︎

 

 ……まあでも、あの誤解のおかげで俺は少しでも自分の優子への想いに気付かされたのではないかなって思えたんだけどな。

 

 長い一生を共に生きるパートナー……控えめに言えば『一緒にいると落ち着く人』とも言えるのではないかなって思えてきたからだ。実際そうだったしな。優子と一緒にいるといつもの日常が楽しく感じるようになっていたから。彼女が自分はヤンデレである事を明かした後も、この感情は不思議と変わらなかったのだから。

 

 まあその事を本人に明かそうとしたタイミングでミカンが帰って来ちゃったから、思わず聞かなかったことにしてくれと頼んでしまったし……

 

 ハァ、本当に俺って優柔不断な性格なんだな……いや、これは奥手……とでも言うべき──って⁉︎ 何言ってんだ俺⁉︎ まだ自分の本心に気づいてすらいないのに何すっ飛んだ思考取ってんだよ俺ェ⁉︎

 

 ……最近疲れてるのかもしれない。優子のヤンデレに対応してる時が実はそれほど苦じゃないってか? 俺の感覚、おかしくなってるのかもな……

 

 うん、寝よう。今日は早めに寝よう。そうしよう。

 

 あ、ちなみに借り物のパソコンは熱暴走のため特に問題はなかったらしいです。うん、やっぱりここは原作通りだ。あ、桃が優子の配下扱いであることに飲み込めていない点も原作通りです。この二つはおまけみたいなもんなんで気にせんくてえぇ。

 

 さてと、勝手に精神世界から出てきた白龍様とはみっちりお話しないとな……

 

 

【な、なんか寒気がする……】

 

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その7

白哉「あー疲れた……にしてもどうしよう。根負けして優子の伴侶だよ宣言を、良子ちゃんや優子の前で言ってしまったんだけど……言質取らせちゃったんだけど……どうしようマジで……」
メェール【いや付き合っちゃえば即時解決だメェ〜。シャミ子ちゃんだって本当はそれを望んでいたの、本当は分かっているはずだメェ〜】
白哉「うるせーよ。そう割り切れてたらこんな苦労しねーよ。大体俺まだ自分の気持ちを理解できてないんだぞ?」
メェール【そう言っておきながら絶対どこかで気づいているはずなのに……マスターって鈍感なのかメェ〜?】
白哉「え? なんて?」
メェール【……なんでもないメェ〜………………ん? マスター、その右手に持ってる封筒はなんだメェ〜?】
白哉「ああこれ? 何故か桃が渡してきたんだけど、これ何が入ってるのか全然分かんないんだよな」
メェール【中身出して見たらどうメェ〜?】
白哉「それもそうだな。どれどれ、中身は………………」

封筒の中身:シャミ子が危機管理フォームの姿で、赤面しながら胸を強調させる前屈み腕組みポーズしている写真・手紙

白哉「───」
メェール【あっ、マスター刺激強過ぎたのか言葉を失ってるメェ〜。どれどれ、同封されてる手紙は……】

『白哉くんへ
 いつも頑張ってる白哉くんのために、シャミ子に協力してもらって元気の出そうな写真を送りました。
 落ち込んでいる時などにこれを見て元気になってください
 桃より』

メェール【……絶対シャミ子ちゃん無理矢理付き合わされてるメェ〜な。あ、マスター元気出たメェ〜? 特にs】
白哉・???「「おのれ魔法少女、戦じゃー‼︎」」
メェール【あ、このタイミングでシャミ子ちゃんの原作通りの叫びと一致した。やっぱりお似合いだメェ〜】

END



はい、白哉くんの未来の想像不可避ですね、はい(笑) まあその未来を作るこそがこの小説の目的ですからね、仕方ないね♂

批判でもなんでもいいので遠慮なく思ったことは感想欄に書いてってくださいね。

 
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