偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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原作二巻の物語も終わりに近づいてきたってことで初投稿です。

ついにあのシリアス回に突入……果たして白哉はどのように関わっていくのか?


ついに明かされる吉田家の、そして本来関わることのない平地家の真実……って、えっ?

 

 まるでチェス盤のような白黒の市松模様の床が広がり、壁も天井も無いように見える薄暗い空間。ベッド、タンス、本棚などといった最低限の家具が備わっている、部屋のデザインを除けば一般家庭の自室と変わりない部屋だ。

 

 だが一般家庭の部屋とは異なる部分が、デザインの他にもう一つある。それは、家具の大きさだ。ベッドの横幅は七メートルもあり、タンスも縦幅が同じ七メートル。本棚に至っては少し長い八メートルもあり、そこに収納されている本も二メートルはある。テレビに至っては縦幅五メートルで横幅は七メートル、正に映画館にいるかのようだ。どれだけ長くて文章も挿絵も多そうな本なのだろうか。

 

 ………………いやちょっと待て。なんで俺こんなところにいるんだ? 俺、さっきまでずっと自分の部屋でぐっすりと寝ていたよね? 昨日の良子ちゃんから優子の伴侶だという誤解を受けていた心労を癒すために早めに寝てたよね? なのになんでこんなこのす○感の漂うところに……

 

 ん? いや落ち着け平地白哉。よく考えたらここ、前にも来たというか連れて来られたことあったぞ。そう、あれは確か……えっと、いつだったっけ?

 

 

【約一ヶ月前。お前がシャミ子達とショッピングセンターのフードコートで飯食ってた日の夜だ】

 

「……この声は」

 

 

 どこかだらけきってはいるものの、威厳さを感じ取れる響きの良い男性の声。その声が聞こえてきたためすぐさま起き上がり、そしてその声がする方向に振り向いた。

 

 振り向いた先にいたのは、銀色の鱗が輝く白龍様だった。だがしかし、その姿はいつも現実世界で見せていた人形サイズのデフォルメ姿ではなく、全長六メートルのゲームやアニメなどでよく見る超カッコいい方の姿をしていた。爪とか翼とかデカいし、目つきが怖いけどそこもカッコいい。

 

 

【この世界とこの姿で、お前と話せるのも随分と久しぶりだな】

 

「……えぇそうですね、白龍様」

 

 

 この世界だと白龍様はスケッチブックではなく、ちゃんと白龍様自身の口から声を出して話せるようになるんだったな。いつものスケッチブックでの会話が身に染みてきたのか、実際に口から声を出してくると、なんか違和感が……

 

 ん? ちょい待ち。

 

 

「というか、貴方とこの世界できちんと話し合いができるのは、遅くても二・三週間も間を空ける必要があると仰いましたよね?」

 

【おう、言ったわ】

 

「で、またこうやって話し合いができる機会が作れたのは約一ヶ月後と」

 

【意外と間が長かったな】

 

「……いや空けすぎでは? 白龍様だって自分の口から会話したいのでは?」

 

【インターバルが終わった時はお前の期末テストがあったからな。それが終わるまで待ってたら素で忘れて今に至るってわけだ】

 

「……そうですか」

 

 

 そういえば……あの会話が終わってから二週間経った時はテスト勉強があって、翌週には期末テストの真っ最中だったな。白龍様はそれらが終わるのを待っていたんだけど、待ち過ぎて忘れてしまい、今日までに至ったってわけか。

 

 まあテストが終わった後も桃による強化トレーニングに優子共々付き合わされてたりもしたから、俺自身も精神世界で白龍様と直接話す機会を逃してたわ。どっちもどっちってことか。

 

 ……ん? ちょっと待てよ? 白龍様は最悪デフォルメの姿で現界できるんだったよな? ならこの世界でなくても話し合える機会はたくさんあるよな? 多分。

 

 

【話し合いしたいのなら現実世界でやればいいだろって思うだろうけど、そこで話し合いしようにしても、俺の場合はまだ時間制限があるんだよ】

 

「えっ? どういうことですか?」

 

【召喚獣達はお前の詠唱での合図なしに勝手に現界すると、魔力の何割かを精神世界に置いてきてしまうってのは、テスト回のおまけパートでも似た内容で話しただろう?】

 

「ああ、そういう話は聞いたような……って、ちょっと待ってください。おまけパートって何ですか」

 

【あっ、そこは気にしなくていいぞ。……実は自身の魔力が低ければ高いほど現界できる時間が高いけど、自由に精神世界と現実世界の行き来はできても現界できる時間に限りがあるってわけだ。だからお前と会話ができる時間が今まで上手に取ることができなかったんだ】

 

「そ、そうですか……」

 

 

 しょ、召喚獣達が現界するのにそんな制約があるんだな。というかそんな制約があるのなら、それを初対面の時に口述で教えるかか召喚術の事が書いてある紙に追加で記載するかとかしてくださいよ……

 

 

【伝えたり紙に記入するの忘れてたわ。後面倒だったってのもある】

 

「殴っていいですか?」

 

【マジですまん】

 

 

 何めんどくさがってたねん。それでも神様の指示で俺の援護とかをするために来てくれた方なの?

 

 

「……で、俺をまたここに呼び出したってことは、まだ説明していないところがあるとか、そういうヤツですか?」

 

【あぁ、そうだった。うっかり忘れるところだったぜ。実は……その……だな】

 

「何突然躊躇ってるんですか。早く教えてくださいよ」

 

 

 

【神様曰く、お前の心の中にもう一人の僕ポジションみたいな何かが生まれたのではないか、とのことだ】

 

 

 

「………………は?」

 

 

 何ですかそのにわかな言い方は……じゃなくて⁉︎ もう一人の僕ポジションって何⁉︎ なんかどっかのジャンプ漫画のカードゲームの主人公が連想されるんですが⁉︎ えっ⁉︎ 俺、いつの間に二重人格になってしまってたの⁉︎

 

 

【神様は転生者の奥底に秘めた力や変化の簡易的なものを探ることができてな、気軽にお前の様子を天界から探っていたら不意に見つけたらしい。まだ根本的なものは発見されてはいないらしいが、最近のお前の体に魂のようなものがもう一つ見つかったという事実は確かなようだぜ】

 

「それってつまり、場合によっては俺はその魂に乗っ取られるのかもしれないってことですか?」

 

【いや、その可能性はないだろうな。一つの体に魂が複数存在する人間は、ほとんどが精神の強いものが主導権を握れやすい体質となっている。無論その体の所有であるお前の魂は精神がとても強いから可能性はないとは言い難いが、高いというわけでもない。まあ今は心身ともに細心の注意を払うだけにした方が良さそうだぜ。あまり深く考えすぎると心の隙を見られて、体の主導権をあっさりと奪われてしまう可能性だってあるからな】

 

 

 うわ、メンタル精神が豆腐のように崩れやすい気弱な人にとっては厳しいヤツかもな。せっかく転生したのに、別の魂が入り込んでしまうか元あった魂が転生者の魂を掻き消す感じになってしまい、実質また死んでしまったような感じになってしまうのかもしれないからな。

 

 

「とにかく今は精神を鍛えて、どこの馬の骨なのかも分からない魂に体を乗っ取られないようにする……これが先決ですかね?」

 

【まあ今はそれが最適だな──あぼぉう⁉︎】

 

 

 何その変な悲鳴。……ん? なんかこのパターン、前にもあったような……

 

 あぁ、そういえば俺と白龍様が初めて会った時も、ああやって外からメェール君が白龍様をバシバシ叩いて時間であることを伝えてたな。ん? にしては今日は前よりもタイムリミットが短くなってないか? 日にち毎に精神世界で白龍様と話し合える時間が違ってくるのか?

 

 

【いってぇなぁ……おいメェール君、今俺は夢の中で白哉と話してるんだから起こさないでやって──ん? えっ? マジで?】

 

「白龍様、いかがなさいました?」

 

 

 

【何やら玄関前でシャミ子が危機管理フォームになって、桃と何やら一触即発してるらしい。それが心配で召喚獣の何匹かが勝手に出てドア越しに様子を見てるらしいが……原作に二人がいがみ合う場面なんてあったか?】

 

 

 

 ……あぁ、ついにあの回か。優子と桃……魔族と魔法少女の運命を決める、この時期にとっては最重要となる回だ。このイベントで何かしらのズレが生じれば、二人を中心に大きな悪影響を及ぼしかねない。本来部外者というかモブである俺が二人と関わっているのなら尚更その可能性は高くなっていることだろう。

 

 ……そう考えると、優子の事が心配になってきた。様子見ぐらいはしなければ。そしてもしもとんでもない改変でもあれば無理矢理にでも会話に介入し、そのズレを修正しないと。

 

 

「───白龍様。申し訳ありませんが」

 

【おう、分かってる。心配なんだろ? シャミ子の事が。こうやってのおしゃべりができる機会ならまたいつでも作れるから、早く行ってこい】

 

「ありがとうございます──って眩しっ⁉︎」

 

 

 うわなっつ。全身から辺り一面包み込める程に発光する白龍様とかなっつ。こんなに全身光らせて、よく俺を失明させたりとかしな───

 

 

 

 

 

 

「───ハッ⁉︎」

 

 

 気がつけば俺は布団の中で目を覚ましていた。やっぱり今回も夢の中で白龍様と話し合っていたんだな……。でも、会話時間は短いのに起きた時はもう朝になるって、夢の世界と現実世界の並行時間のスピードってどうなってんの?

 

 って、そんなこと言ってる場合じゃねェ。とりあえず玄関のドアにまで行って、今二人がどういった状況に至っているのか確認しなければ。さて、今頃二人はどんな会話しているのやら……

 

 

「念のため、召喚師覚醒フォームになるか」

 

 

 そう言って俺はいつものお手軽詠唱で召喚師覚醒フォームへと変身。もうその時の自分の恰好がパクリではないかとかはツッコまないからな。もう慣れた……

 

 あっ、夢の中でこのフォームのリテイク依頼するの忘れてた。タイミングの問題もあるとはいえ、何やってんだよ俺は。やらかした……

 

 いやそんなこと考えてる場合じゃねェな。早く向かわないと───

 

 

【メェール達よォ‼︎ 今シャミ子と桃はどんな状況なのだー⁉︎ このポーフも駆けつけ───】ナァァァァァァカァァァァァァァァァァァァ〜♪

 

「へぶぅ⁉︎」ドーン♪

 

【えっ?】

 

 

 何かに思いっきりぶつかり右方向へと飛ばされてしまった俺。そのままドアのある方向で何やらめっちゃ硬いものにもぶつかった途端、俺はその場で倒れ込み周りは何故か砂煙で埋め尽くされた。どうしてこうなった。 ラッキーデウメツクシテ〜♪

 

 

「いててて……くっそお、一体何がどうなって───」

 

 

 

 ムニッ

 

「んあんっ⁉︎」

 

 

 

「………………はへ?」

 

 

 えっ? ちょっ、何? どこか体の支えになるものがないかどうか探ってただけなのに、なんか聞き覚えのある音しなかった? なんかどっかで感じたことのある感触が手の中で伝わってきてない? というか聞き覚えのある声まで………………

 

 あっ、デジャヴ(察し)

 

 そのデジャヴを察した途端に煙が晴れ、俺はその煙で隠れてた自分の伸ばしてた右腕に目を向ける。その腕の先にあったのは───

 

 

 

 危機管理フォームの恰好をし、顔が林檎のように真っ赤になっている優子と、彼女の左側のデカいアレを掴んでいる自分の右手だった。しかも優子の後ろには今の光景を見たのか唖然とした顔で突っ立っている桃の姿が。

 

 

 

「えっ……えっと……あの、びゃ、白哉さん……」

 

「………………あの、すみません。今回のも不慮な事故なんです。狙ってたのではないのかとか思わないでくださいお願いします。いやマジで」

 

 

 顔が熱くなったのを感じながらも、すぐにアレを掴んでた手を離しながらそう説明する。大丈夫だよな? ちゃんと話聞いてくれてるよな? いや、反応からして難しいだろうけど。

 

 と、とにかく今は情報整理することが大事かもな。いやそれ自体もこの状況下で難しいだろうけどさ……

 

 

「え、えっと……なんで桃がここにいるんだ? そして何故か優子は危機管理フォームに? お前変身する度にいつも恥ずかしがってたよな?」

 

「も、揉まれた……ひ、久しぶりに揉まれた……」

 

「白哉くん、意外と結構大胆なこともできるんだね……」

 

「誰でもいいから質問に答えて。頼むから。そして先程の俺の失態は忘れてください。ホント申し訳なかったと思ってますので。マジでお願いします」

 

 

 とんでもないラッキースケベの光景の方に目がいってる二人に懇願し、話題を本題に変えてもらいました。しかも俺というイレギュラーによる突然の乱入によるものが要因となったのか、二人とも冷静な感じに説明してくれました。

 

 つーか優子の方はよく冷静に説明してくれたな。俺のせいで二度目の乳揉みラッキースケベを受けたってのに、そうなる前だって錯乱していたってのに。……とりあえず後で何か詫びよう。

 

 二人がぱんだ荘にて対峙することになった事の発端は、優子が桃の秘密を知るために彼女の夢の中に侵入したことからだ。その時の桃は自分が夢見ていることを自覚してるため、優子の刷り込みは失敗し桃の説教を受ける羽目に。

 

 話し合いをしているうちに、桃が優子の両親……特に母・清子さんの事で何かしら疑問に感じたのか、意識が現実世界に戻る寸前、優子に清子さんときっちり『たいじ』した方がいいと伝えたらしい。

 

 が! 夢の内容とは中々覚えられないもの‼︎ その夢の記憶がうろ覚えになってた優子は、桃が清子さんをやっつけると思い込んでいたようだ‼︎ つまり優子は勘違いを引き起こし、危機管理フォームになり、家族を守るために桃と闘う覚悟を決めていたのだ‼︎

 

 ……うん、原作通りの内容だな。とりあえず、まずは優子が勘違いを引き起こしてたから、誤解を解いてあげないと。

 

 

「……優子、お前は桃が言っていた『たいじ』の意味をなんだと思っていたんだ?」

 

「さ、さっきも言っていた通り『やっつける』って意味で……あ、あれ? 私意味を間違えてました?」

 

 

 ふむ、優子の方は『退治』と捉えていたな。

 

 

「別に間違ってはないけど、『たいじ』には漢字が違うだけで他にも意味があるんだよ……桃、お前が言っていた『たいじ』ってのはどういう意味で言っていた?」

 

「えっ? ふ、普通に『話し合う』って感じに……」

 

 

 で、桃は『対峙』の方だと。うむ、ここも予想通り。

 

 

「まあアレだ。桃は普通に『対峙』を『話し合い』と言い変えれば多分問題ないのに、うろ覚えな優子は話し合いの『対峙』をやっつける方の『退治』と勘違いするようになった。この二つのせいで勘違いを引き起こし、一触即発してしまいそうな状況下になってしまったってわけだ。ま、これはどっちもどっちだな」

 

「「ウッ……‼︎」」

 

 

 うわお、これ正論になってた? 優子と桃、二人とも図星を突かれたのかメンヘル漫画のショック顔になってるかの様に見えるで。

 

 

「わ、私の知識不足が、自らとんでもない引き金を引きかける羽目になろうとは……『たいじ』の意味の選択肢を間違えて焦ってた時の自分に言い聞かせたい気分です……」

 

「私ももうちょっと意味の分かりやすい言葉を選んだ方がよかったのか……シャミ子、勘違いさせてごめんね?」

 

「いえ、私の方こそ……」

 

 

 よし。何はともあれ、これでお互いの誤解は解けたようだな。

 

 けど、まだ根本的な課題は残っている。それは優子の……吉田家の謎だ。清子さんが優子にしている隠し事や、出稼ぎ中の優子の父親の行方……この二つの謎から真実を解き明かさないと、桃が今感じている疑問は晴れないだろうな。

 

 だから……

 

 

「優子の家族の事、清子さんに色々と聞いた方がいいな。優子も立ち会えばそれなりに答えてくれるだろうし。まずはそれからだ」

 

「家族の事を……はい‼︎そうですね‼︎ 私も白哉さんを、おかーさんを、良を、おとーさんが帰ってくるこの家を守るために、家族の事を色々と知りたいです‼︎」

 

 

 お、おお……? 今日の優子からはいつになくすごい気迫を感じる。これってあれか? うろ覚えの誤解による決意が影響して、誤解が解けた今でもそれが長引いているってことか?

 

 でも、そんな優子の顔を見てるとこっちも安心する。優子の身にもしもの事が起きても大丈夫、そんな不思議とした安心感が出るというか……

 

 

『しかし平地白哉よ、それは中々難しいのかもしれんぞ? 余がそれらの事でシャミ子に聞こうにしてもセイコにガードされていたし───』

 

「あっ……せいっ‼︎

 

「ごっせんぞぉぉぉぉぉぉ⁉︎」

 

 

 おぉっとぉー⁉︎ リリスさんが俺に何か言おうとした途端、恐怖を感じた表情をした桃によって天空に向けてスパーキング‼︎ 超・エキサイティング‼︎ ……なんか変なのが俺の脳内で二つ連想されて合体したんだけど。

 

 

「ハッ……⁉︎ 体がリリスさんを勝手に投げた……」

 

「……優子、お前夢の中で何をしてたんだ?」

 

「……夢の中でムキムキのメタ子から逃れるために、ニューごせん像を創造してました」

 

「ムキムキ⁉︎ どうなってるの私の夢の中のメタ子は⁉︎」

 

 

 うわっビックリした。桃、お前何ずっと信じてきたものに裏切られたって感じに驚いた顔で迫ってきてんだよ……って、そっか。今まで桃は現実の方で普通の猫の方のメタ子を見てきたから、夢の中で優子が見た方のメタ子にショックを受けたんだな。そう考えるとその反応は分かるな。

 

 まあその話は置いといて……そろそろ本題に移すか。

 

 

「───扉越しに聞いてますよね? 清子さん。吉田家の真実、俺達に教えてください」

 

「───バレていましたか」

 

 

 そう言いながら俺が視線を向けている吉田家のドアから、優子の母親・清子さんが顔を出してきた。右手に麦茶の入ったポットを持ってるってことは、優子に桃がここに来ることを知らされているんだな。しかも客だと思って。まあ実質そうなんだけどね。

 

 

「話は全部お聞きしました。皆さん、続きは家の中でしましょう」

 

「「は、はい」」

 

「ご協力感謝します、清子さん」

 

 

 そうして俺達は清子さんに流されるまま吉田家に入ることになった。そして出された氷多めの麦茶を飲み、改めて落ち着くことに。

 

 ん? 投げ飛ばされたリリスさんはどうするんだ、だって? リリスさん探索はウチの召喚獣の何匹かに任せてます。問題ありません。

 

 

「優子は私が思っているより強い子でした。ちゃんと話さないといけませんね。言いづらいこともたくさんあるけれど……まずは優子。……あの格好は、お外ではあまりしない方がよろしいかと」

 

「おお⁉︎ 清子さんも分かってくれてますか⁉︎ ですよね⁉︎ いくら戦闘フォームとはいえ、自分の娘があんな本人も望んでない露出度高めの恰好をするのは嫌ですよね⁉︎ 幼馴染である俺も恥ずかしくて結構目ェ逸らしてて───」

 

「冷えますよ」

 

「いやそっちかい」

 

「さっきまでペラペラと喋ってた時との落差が激しすぎません⁉︎ 後おかーさん、そのクレームはごせんぞにお願いします‼︎」

 

 

 なんで自分の娘のあの格好を見て、不審者に目をつけられないかどうかの心配をしないんだよ……親心はどうなってんだ親心は‼︎

 

 

「それと白哉くんにも言うべき事ですが……たとえ互いの了承を得たとしても、エッチな行為も外ですべきでは───」

 

「「アレは‼︎ どう見ても‼︎ 不慮な事故です‼︎」」

 

 

 ってかあの光景まで目に焼き付けないでくれませんかねェ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 再び落ち着きを取り戻したところで、清子さんは語るべき事を話してくれた。

 

 今から十年前、せいいき桜ヶ丘は今よりも殺伐とした状況下に遭っていた。そんな中、桃の義理の姉・千代田桜が作った結界によって町は守られ、光の一族と闇の一族が共存できる町へと変わったのだ。

 

 ところが、突如として桜さんは失踪。その前に別の町で預けられた桃は桜さんの手がかりを探そうとするが、戻って来た時には関係者がほとんど見つからなくなっていたとのこと。

 

 ……いや、おかしくないか? 十年前まで活躍していたすごい人を知る人がいなくなるって……ワールドワイドな魔法少女の姉だぞ? 町の歴史に大きく刻まれるはずの存在と関わる人は、最低一人か二人はいるはず……

 

 だが、いくつかの疑問があろうがなかろうが、今は桜さんに関わる存在が桃の目の前にいることに変わりはない。それが優子とその家族だ。

 

 

「清子さん……過去に何があったか教えてください。シャミ子とそのご家族は、私の唯一の手がかりなんです」

 

「……私が知っていることを、順を追って説明します」

 

 

 清子さんの話によると、優子は強めに魔族の血を受け継いだ分の呪いが強く出てしまったのか、病弱な彼女を何とかするため清子さんの旦那さんであり、優子のお父さんでもある人──ヨシュアさん(漫画と違ってまだ名前を清子さんは出していない)が桜さんに相談した結果、ギリギリ生きていける程度に運命のリソースをいじりあの一か月4万円生活の呪いにした、とのことだ。

 

 なんで現代のレートに干渉しただけで優子が後に先祖返りで元気になれるんだ? もうちょっとこう……なんかあっただろ?

 

 ってかその後も入院続きだった彼女を、先祖返りしてない中学生時代の時に彼女の願望に答えてなるべく体力をつけさせてあげた俺もすごくね? ……いや自慢じゃねェから。自分でも彼女の魔族の呪いに微量ながら抗えてたなんて思わなかったから……

 

 しかし、古代の封印に抗ったその代償はあまりにも大きかった。いじる側の魔力も著しく消耗することらしく、そのせいで魔力の減った桜さんは町を守ることが難しくなってしまい、ヨシュアさんとの取り引きにより彼と共に町を守ることになった、とのことだ。

 

 もしかしてそれが、ヨシュアさんが帰れなくなった要因ではないかと、ここらで思うこの世界の観測者達もいるだろう。けど、俺は知っている。ヨシュアさんが帰れずにいる本当の理由を。

 

 

「あの……シャミ子のお父さんが出稼ぎに行っているというのは……」

 

「そうですね、優子には本当のことを伝える頃合いかもしれません。優子が生きていける目途が立った後……夫は桜さんに封印されました」

 

「それも優子の一族の呪いに干渉したのと関わりがあるのですか?」

 

「そこまではさすがに私でも分かりません。ですが、確信されていることはただ一つ………………お父さんは、このミカン箱に封印されています」

 

「「………………え」」

 

 

 聞き捨てならない言葉を聞いたためか、優子と桃が咄嗟にミカン箱の方に視線を落とす。まあ当然の反応だな。

 

 

「お父さんはこのミカン箱に封印されています」

 

「「………………」」

 

 

 

「お父さんはこのミカン箱に封印されています‼︎」

 

 

 

「「ええええええええええええ⁉︎」」

 

 

 うおっビックリした⁉︎ 予想はしてたけど二人ともめっちゃ驚いているじゃん。まあ無理もないけどな。特に優子は行方知らずの血縁者とも言える父親が、なんの変哲もないダンボール箱に、しかも今までずっとテーブル代わりに使っていたものに封印されていたって知ったのだから尚更な。

 

 

「あら? 白哉くんはそんなに驚かないのですね」

 

 

 あ、ヤベッ。怪しまれとるやんけ。なんとか誤魔化さないと。

 

 

「これでも内心ではビックリしてますよ。様々な可能性は予想してましたが、優子のお父さんがずっとこのダンボールに封印されたってのは予想外でしたので(嘘)、無理に冷静になろうとしてたって感じっすね……」

 

「そ、そうですか……けど無理そうでしたら遠慮せず言ってくださいね? 私も言葉を選びますので」

 

「あ、お気遣いどうもです……」

 

 

 何故か気を遣わされてしまったよ……余計な心配をかけちゃったか?

 

 

「と、とりあえず白哉さんの反応が薄いのは分かりましたけど……問題はおとーさんの件です‼︎ なんで⁉︎ どうして⁉︎ どうやってダンボールに封印されたんですか⁉︎」

 

「私も病院に入っていたので、詳しく何があったかあまり分からないんです。落ち着いた優子と良子を連れてこの家に帰ってきたら、玄関にこの箱と書き置きがありました」

 

 

 うん、ここまでも原作通りだな。そしてその書き置きの送り主は桜さんしかいない、彼女しかいない、それしかない。

 

 そしてその書き置きには『町を守る際にヨシュアさんを封印してしまいました』としか書いてないはずだ。もしそこも原作通りならなんて説明不足な……

 

 

「ちなみにその書き置きにはこんなことが書いてありましたが、その前に……白哉くん」

 

「ん? はい?」

 

「ここからは白哉くんの家族も関わることなので、本当に無理そうなら言ってくださいね?」

 

「………………えっ? あ、は、はい……」

 

 

 あ、あれ? なんか原作と違くない? 俺が転生憑依したせいなのか、なんかヨシュアさんが封印されたことがウチの家族とも関係ある感じにされたんだけど。まさか……?

 

 

 

「書き置きにはこう書いてありました……『町を守る際、平地黒瀬さんを苦しめる怨霊を除霊するために、ヨシュアさんまで封印してしまいました』と」

 

 

 

「………………You What⁉︎」

 

「あまりの衝撃の真実に白哉さんが英語口調になった⁉︎」

 

 

 アイエエエエ⁉︎ トーサン!? トーサンナンデ!? ウチの父までなんで十年前の殺伐とした時代に巻き込まれてたの⁉︎ 父さんは魔族じゃないよね⁉︎ 魔族特有の人間が持たない体の一部とかないよね⁉︎ 光の一族なら多分尚更だよね⁉︎

 

 

「びゃ、白哉さん……大丈夫ですか……?」

 

「えっ。あっ、すまん優子、大丈夫だ。予想外の方向から衝撃の真実が出てきてめっちゃビックリしたけど、ただそれだけのことだから……すいません清子さん、続きお願いします」

 

「……わかりました」

 

 

 優子が不安そうに俺を見つめてきたので、俺自身は大丈夫だよと伝えたけど、問題は父さんの件だな。父さん、十年前に一体何があったんだ……?

 

 

「黒瀬さんから聞いた話によれば、十年前突然入ってきたライオンみたいな黒い何かにぶつかった瞬間に結構苦しめられていたらしく、それを夫が無理矢理取り押さえ、そこに桜さんが夫共々封印してから浄化させたらしいです」

 

 

 えっ……? 浄化……? ちょっと待てよ? まさか、ヨシュアさんまで一緒に浄化させたんじゃないよな……? もしそうなら原作崩壊する可能性が高くなるって……

 

 

「浄化の際、夫の魔力と黒い何かの魔力を見分けていた為、夫までもが浄化されることはありませんでした。そしてあの後、黒瀬さんは桜さんの協力の元、周囲に飛び散っていた夫の魔力を用いて朱音さんと二人で彼の眷属になり、いつか彼が解放される日をずっと待ち続けることにしたとのことです。あの人は若作りが得意で、私を含め眷属になった者の老けを止めれますから」

 

「な、なるほど……どおりで二人とも若いわけですね。というかよく欠片程度の魔力見つけて、それを応用して封印されてる魔族の眷属になれたな二人とも……マジすげぇ……」

 

 

 つーか父さん、いくらヨシュアさんに会いたいからって本人の許可なく眷属になるのはどうかと思うぞ……後、なんで母さんまで一緒に眷属になったというのさ……

 

 

「過程はどうあれ……うちの姉は、巻き込まれた白哉くんのお父さんを助けるために、この家のお父さんを十年も奪っていたんですね……。そして私は……それにずっと気付けなかった……」

 

 

 そう言う桃の表情は、自責の念に満ちたような悲しき感情を浮かべていた。自身は間接的に関わっていないとはいえ、身内によって他人の人生を奪ってしまい、自分は何も最善の事をしてやれなかった。その事実だけでも自己嫌悪してしまうのも、無理はない。

 

 

「いえ……桜さんは縁もない私達一家や平地家の皆さんのために協力してくれて───」

 

 

 フォローしようとした清子さんの言葉を遮るかのように、桃は静かに麦茶の入ったコップを置き、立ち上がった。

 

 

「ちょっと整理する時間をください……」

 

「桃、まさかお前……」

 

 

 

「私……ずっとシャミ子の、そして白哉くんの敵でもあったんだね」

 

 

 

「ッ……」

 

 

 掛ける言葉が見つからなかった。優子がこれまで背負っていた感情よりも重い自責の念に押され、俺は言い淀む自分に落胆してしまった。

 

 語られた真実が思ってたより重い上に、優子だけに飽き足らず俺の家族までも知らず知らずのうちに不幸にしたと思ってしまった桃のその背中は、酷く重く、どこか歪さを感じた。

 

 そして俺は、これまで俺に対する愛情に苦悩していた優子へしてきたようなことすらもしてやれず、ただただ外へ出ていく桃の背中を、見届けることしかできなくなった───

 

 

 

 

 

 ───やれやれ、ここに来て困難にぶち当たったか。さぁ、この後アンタはどうするんだ?

 

 ───このままこの世界の本来の流れに任せてみるか? それとも……

 

 ───いや、これ以上促すのはやめとくか。最終的に、この先の行方を決めるのはアンタ次第だからな。

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その8

白哉達が吉田家で話し合いをしている中、平地家の玄関前にて

ポーフ【なんということだ……あまりにも慌てていたものだから、うっかりマスターにぶつかってしまった……】
シバタ【しかも勢いよくぶっ飛んでいったね。ドアをも破壊してしまうほどに】
ポーフ【ああ、俺はなんということを……マスタァァァァァァッ‼︎】
メェール君【いやマスターを殺すなメェ〜。ちゃんとピンピンしてるメェ〜】
ポーフ【何⁉︎ 生きてるのか⁉︎ それは真か⁉︎】
メェール君【うん。そして奇遇にもシャミ子ちゃんのおっぱいをうっかり揉んでだメェ〜】
シバタ【gj】
メェール君【そして気づいた時はシャミ子ちゃんと桃ちゃんによる誤解は解かれ、そのまま三人で清子さんから吉田家の秘密を聞くことになってたメェ〜】
ポーフ【なるほど……つまりは、ラッキースケベはトラブルを解消するって事か‼︎】
シバタ【いや、どっちかというとトラブルを起こす側が多いよラッキースケベは】
ピッピ【君達、ドアは直さなくていいのか?】
三匹【あっ】

END



次回、原作二巻までの物語が完結します‼︎ 来週の水曜日か土曜日に投稿されるのでお楽しみに‼︎

ん? 本編での展開が原作となんだかおかしい? なんか中途半端な気がする?

あぁ、自分は漫画だけに飽き足らずアニメの知識もそれなりには入れているので、偶にアニメ沿いになる時があるんですよねー……実際にも他の回でもアニメ沿いの展開にしてるとこありますよ? 例えばリリスさんと白哉くん達の初邂逅の回とか……

 
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