偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
───よぉ、久しぶり。アンタとこうやって意思疎通で話し合えるのはこれで二回目、そして二週間ぶりだな。
───ん? 寝ているわけじゃないのにどうやって話しかけてきてるんだ、だって? ……そっか、やっぱりアンタは覚えてないっつーか、あまりのショックとかで記憶が飛んでたんだな。
───アンタは魔法少女……千代田桃に掛ける言葉が見つからないまま彼女を見送った後、二人に『気持ちの整理をしたい』とかいってその場で眠り始めてたんだよ。んで、千代田桃に対して何もできなかった自分にショックを受けて記憶が飛んでたらしいってわけだ。
───あっ、ちなみに今の二人はシャミ子の父……ヨシュアさんの事で話し合っているところだぜ? んで、身長までもが父親に遺伝されていたことを知ったシャミ子が動揺中だ。その時のアイツの顔スゲー面白かったなー。
───コホンッ……で、アンタはどうする?
───何が、だって? 千代田桃が自分の姉にアンタの父親やヨシュアさんとの関わりがあることを知って、姉のせいで父親をバケモノから救うためにヨシュアさんが封印されてしまったことで悩みだしたんだろ? そんな彼女に声を掛けるのかどうかって話だよ。
───ヨシュアさんが封印された真相が原作通り謎のままだったら、原作通りにシャミ子一人に任せるだけで即時解決だけど、この世界ではアンタの父親を助けるという目的もあってヨシュアさんが桜さんによって封印された……つまりアンタやアンタの父親に対する罪悪感まで生まれ、奴の悩みが二倍にかさ増しされているんだ。
───そんな状況下の中、アンタは一体どうする? 原作通りのシャミ子任せに賭けるか? それともどうにかしてアンタも関わって、なんとか千代田桃が余計に抱えている悩みの解決を試みるか?
───不安か? 本来家族すらも原作に関わるはずがないのにいつの間にか介入されただけでも不安だってのに、どうやってそれによって生ませてしまった余計な悩みを消せばいいのか分からなくてさらに不安が募ってきたのか?
───……ハァ、仕方ない。俺、本当はずっと傍観者のままでアンタの行く末を見届けたいんだけど、そこまで悩んでいるのなればちょっとだけアドバイスしないといけねぇなァ……
───アンタ、これまでずっとシャミ子が自分の歪んだ性格に悩まされていた時、いつも見切り発車な感じになんとかしようとしていたんだろ? あの頃を思い出しながらどういう風に話せばいいのだろうかって考えれば、自然と千代田桃へ掛ける言葉が思い浮かぶはずだ。
───分かってるさ、シャミ子の時と条件が色々違うことぐらい。桃が悩んでいるのは自分の事でもアンタに対することでもない、姉とアンタの父親の事で、だ。それに千代田桃はアンタやシャミ子の幼馴染ではない、前までずっと他人の関係だっただろ?
───けどよ、条件が違うからって彼女の為にしてやれることはないと言い切れるか? 掛ける言葉が思い浮かばないから放置するしかないのか? 違うだろ? アンタはシャミ子がヤンデレみたいな感じになりそうな自分に悩んでいた時だって、どんなに難しい条件下だろうと必死にフォローしてただろ?
───そんなこれまでの自分の努力を否定するな。これまで上手くいってたことが別の機会では無理だった……そうなった時に初めて一度否定してみて、別の手段で最善の結果を残せ。それが今アンタにできる仕事だ。
───どうだ? 少しは決心がついたか? ……そっか。なら、アンタがすべきことはもう決まってるな。行ってこい。
『……ハァ。これ以上促すのはやめとくか、とか言いながら結局促してんじゃん俺。ま、何も思いつかないまま悩ませてしまうよりはマシか』
♢
「んあっ……? ここは……」
「あっ、白哉さん‼︎ 目を覚ましたんですね‼︎」
ここは……優子の家……? あぁそうか、俺は確か桃がここを出て行くのを何も出来ずに見届けてしまった後、こっちも気持ちの整理をしたいとか言ってその場で寝ていたんだっけ。で、なんか小学生ぐらいの男の子っぽい声が夢の中で一方的に聞こえてた気がする。それも、まるで俺にアドバイスを送るかのように……
いやちょっと待てよ。なんで俺は優子の家で寝ていたんだ? そして単に優子の家から出て行こうとしただけの桃に何かをしようとしていたんだ? それ以前の記憶が何故か飛んでしまっているんだが……
「白哉くん、大丈夫ですか? もしや黒瀬さんの事で相当なショックを……」
「えっ? あの、清子さん? どうして父さんの名前が出て………………あっ」
そうか、そうだったのか……全部思い出した。俺は、桃に対して何もしてやれなかったショックからその場で眠りに、というか気絶してしまって、それが原因で記憶が飛んでしまったんだな。
……今頃、桃はあの事で思い悩んでいるのだろうな。
俺が介入したことで、父さんが桃の姉・桜さんや優子の父・ヨシュアさんと関わることになって、原作でもずっと謎になっていたヨシュアさんが封印された理由が父さんを助ける為になった。そのせいで桃は優子だけじゃなく俺の敵でもあったと思い込んで、俺達から距離を置いていってしまった。
その時の俺は優子同様に何の掛ける言葉も見当たらず、その場を去っていく桃の重たい背中を見据えるしかできなかった。原作とは違い俺の家族が関わったことで、他人事なりのフォローぐらいはできるのではないかという甘い考えすらも出なくなり、自分の無力さを感じてしまった。
……でも、今は違う。夢の中で白龍様ではない誰かに掛けられた言葉を覚えている今だからこそ、俺が今すべき答えは、もう自然と出ている。
もう、先程まで声すら掛けられなかった、無力な自分とは違う……‼︎
「……すみません清子さん、今全部思い出しました。ありがとうございます、もう大丈夫です」
俺はそう言ってゆっくりと立ち上がり、ズボンについて汚れを静かに払った。
「そうですか……今まで隠していてごめんなさい。優子に夫の事を隠していたこともそうでしたが、貴方にもお父さん……黒瀬さんの事を隠してしまって。貴方達に色々負わせると、歪な頑張り方をしてもたないと思って───」
「それならもう大丈夫ですよ。個人的解釈もありますけど」
「えっ?」
清子さんが父さんの事で俺に謝ろうとしていたから、俺は咄嗟に『心配しなくていい』と伝えた。反射的にそう答えてしまったってのもあるが、実際俺と優子はもう既に、様々な方向の様々な事実を知ってしまって精神が強くなった(というか強くさせられた)のだから、別に嘘はついていないはずだ。
「正直、父さんまでヨシュアさんが桜さんに封印された事に関与してるだなんて予想してませんでした。本来なら俺達平地家も、吉田家や千代田家に関わることがないんじゃないかって、ずっと思ってましたから……」
けど、だからといって……
「だからといって、その事実から逃げるつもりはありません。逃げたら逃げたでそれこそ色々と後悔し、余計に周りを傷つけかねないから。それを……優子と一緒にいたことで、自然と気付かされました」
「……えっ? ……えっ⁉︎ 私、知らないところで白哉さんに対して何かやらかしてました⁉︎」
「いやマイナスな方向では言ってねーから。どうしてそうなる」
えーコホンッ。ちょっと話がズレかけそうだったんだけど、気を取り直しまして……
「清子さん……優子は心身共に強くなりましたよ。魔族になる前だって、支障が出ない程度に体を鍛えたりテスト勉強に必死に励んだりしてましたし。まあそこは俺が関わってたからってのもありますが。魔族になってからだって、桃に一族に関する一部分を教えてもらったり、俺と一緒に鍛えてもらったり、町の事を明かしてもらったりと、色々な事を経験してしましたから」
まあ、そのせいでロクな目には遭ってないんだけどね、俺達……
というか俺達、現代世界ではあり得ない事を体験しすぎて、絶対どこかで感覚麻痺してるよね? 絶対。……アレ? 心配しないでいいだなんてこと、言わなきゃよかった? 俺今、手のひら返ししてね?
ま、まあそれはそれとして……
「だから俺も、少しずつでもいいから優子みたいに成長したいです。自分でも気づいていない本心に気づいたりとか、そういった精神的な方面で。とりあえずまずは桃を元気づけることからやって、その後に父さんにヨシュアさんや桜さんの事について聞いてみたいと思ってます。父さんが今まで何を思っているのかは分かりませんが、もし落ち込んでいたりとかしてたらこう言ってやりますよ」
───色んな人達の想いをみんなで背負って、前を向いて生きてやろうよって。
「………………貴方達は、私の知らないところでたくさん成長していたんですね。嘘をついていた私や黒瀬さんを許そうとして、優子もこんな私のために何かしたいと言ってくれて……私は二人のことを信じ切れていなかったみたいですね」
「子の心親知らずってヤツですよ。……アレ? なんか違うような……」
なんか勝手に新しいことわざを作ってね? みたいな事を考えてた中、優子が俺の隣に、そして清子さんが自分を真っ直ぐ見れるように立った。
「おかーさん……私、おとーさんの事で正直死ぬほど驚いていますが、私ももう大丈夫です‼︎」
そう言う優子の目は、いつになく真剣で真っ直ぐとしていた。まるでこれまで体験してきた事全てを、一欠片も逃さず見据えているかの如く。彼女がこれほど真っ直ぐな目をしているのは、桃による魔力の特訓以来……いや、その時よりもさらに彼女の想いが強く出ていた。
「実は私、魔族になる前からもヤバい想いを抱えていました。それも自分でもドン引きしてしまいそうな感情で……」
えっ、それヤンデレってた時の事を指してる? それ実の親の前で暴露して大丈夫なの? そんな不安が過ってきた俺を他所に、優子は言葉を繋げていく。
「けど、それも白哉さんに支えてもらったおかげで大変な事態を犯さないでこれました。こんな私の事を知っても見捨てようとしなかった人がいた……そのおかげで、私は何が起きても前に進んでいこうって思えるようになったんです」
「優子……」
「角が生えてからなんか色々なことがあったけど、どんどん前に進んでいけるようになって……最近私、サプライズに慣れてきた……どんとこーい」
「いやちょっと待て。俺のおかげで非常識を必要以上に求めるようになった……とかはないよな⁉︎」
なんか安堵していた自分が馬鹿に思えてきたんだけど⁉︎ 優子を原作以上に苦しませて、原作以上の鋼メンタルを持たせて、原作以上に非常識に慣れるようになるって……それ色々な意味でヤバい奴になりかけてね⁉︎ 色々と感覚ズレて変な路線とか行くなよ頼むから⁉︎
「それに……おとーさんは死んじゃったわけじゃない。そして私は白哉さんの力だけじゃなく、色んな人の力もあって、今元気に動けて、心身共に強くなれて………………私……私自身の戦う理由をやっと見つけられた気がします。私、桃を追いかけます」
この時、俺は改めて優子の強さを実感した。どんなに自分の知らぬ内に生まれた感情に苦しみながらも、そんな中でどんな非常識な出来事に見舞われても、彼女は挫けずに前を向いて生きているのだと。ずっと隣で見てきた俺でも予想できない程に、誰よりも強くなっているのだと。
「……桃はいつも私や白哉さんを揶揄っていました。けどそれは私や白哉さんの為を思ってしてきた事なのだと今知りました。そんな遠回しもあったからこそ、私は改めて自分の想いと向き合おうとしているのだと思います」
そっか、優子は理解したんだな。桃がこれまでしてきた俺達二人へのお節介は、優子の本心に気づいたからこその最善の行為だったんだな。優子はそれに気づいて、桃を助けようとする意志が強くなって……
いやよく考えたら、あいつのお節介は度を超えてないか? いくら優子の恋心に気づいたからって段階を越えようとさせてなかったか? やっぱりあのお節介は私欲も含まれていたんじゃ……
「なのに彼女は……桃は自分自身の事になると誰かに助けを求めず一人で無理をしている。そして今も一人で悩んでいる。他人の為に積極的な癖に自分自身に対しては何もしようとせず、無理そうだったらすぐに諦めるだなんて……そんなの、私が許しません。桃は初めて会った時から私の宿敵です。私が勝つその日まで地の果てまで追いかけてやる」
優子、宿敵相手にそんな友情に近い感情を……原作読んだから知ってるからとはいえ、ここまで成長してる彼女を見ると、とても逞しく思えて───
「私にうっかり体力をつけちまったこと、そして私の乙女心を弄んだことを後悔するがいい‼︎ タイヤとか促し告白を白哉さんの目の前でさせたこととかの恨み、今こそ晴らしてくれるわー‼︎」
「………………ちょっと待て今お前自身がバラされたくない事を母親の目の前でバラしてないか⁉︎」
「えっ? ………………あっ」
おい、何とんでもないカミングアウトしてんだよお前は。せっかくのカッコ良さが台無しだろうが。自爆してめっちゃ恥ずかしがって蹲ってるじゃん。
「……あの、清子さん。今の優子が言ったことは聞かなかった事にしてもらった方が彼女の為かと───」
「フフッ、大丈夫ですよ。優子が白哉くんに恋してる事を知ってますし、貴方もきちんと気づいてますよね?」
「ウッ‼︎ …………そ、それはまあ、そうなんすけど……」
実質的に俺まで恥ずかしい想いを持つようになってしまったよコンチクショーが……優子、さすがに今回はお前の事を呪いそうだぞ……
ってか知ってたの⁉︎ 優子が俺の事好きなの知ってたの⁉︎ 親の勘って鋭いものなのだな……
「と、とにかく‼︎ 私は桃を探しに行きます‼︎ おかーさん、後でおとーさんの話いっぱい聞かせてください。いってきます‼︎」
優子はそう言って、羞恥心と真っ赤になってる自分の顔を隠そうとするかのようにそそくさと桃を探しに出て行った。うん、これ以上羞恥を晒してしまった自分の顔を見られたくないよね。仕方ないよね。無理もない。
優子も桃の側に寄り添える存在になろうとしてるんだ。俺だって……
「それじゃあ清子さん、俺も桃を探しに行きますね」
「……白哉くんもですか」
「ええ。桃の奴、父さんの事でも一人で抱え込んでしまっているし、そんなあいつの辛そうな顔見てたらほっとけないし」
そして何より……
「何より、無理矢理優子共々修行させられた借りとかもありますからね。その分の鬱憤も晴らしたいんで」
「……後半私怨が入ってませんか?」
「……そこは引っ掛からなくていいです」
こちとら色々と事情とかってもんがあるんです。指摘とかしないでくださいお願いします。しかし清子さんは何かを察してくれたのか、安堵しているかのように息を一つ吐き、俺にこう伝えた。
「何はともあれ頑張ってくださいね、白哉くん。それともう一つ、お伝えしなければならないことが……」
「ん? なんですか?」
伝えないといけないこと? 父さんがヨシュアさんや桜さんと関わってたこと以外に、まだ何か俺の家族の事で秘密があったりしてる……とかじゃないだろうな?
「いざという時は、優子の事をよろしくお願いしますね」
「………………それ、どういう意味で言ってるんですか。念のため言っておきますけど、嫁の貰い手としてという意味でなら自信ないですよ。まだ優子の事をどう見てるのかの答えも出てませんし……」
「フフッ、冗談がお上手ですね。良き理解者として支えてほしいって意味で言ってるので、他意はないですよ。それにその答えならとっくに出てると思いますよ?」
いやこれ冗談じゃないっす。優子のあの想いを知っていた貴方だからこそ他意があるではないかと思ってしまうんすよ、全くもう……
というか、なんか小声で何か呟いていたような気がしたけど、気のせいか……?
「それじゃ、あいつの父さんとの間に作った溝、父さんには内緒で勝手に埋めておきます。いってきます」
「いってらっしゃい」
清子さんに見送られながら、俺は吉田家を後にし、すぐさま桃を探すことにした。
彼女の場所が分からないのにどうやって探すんだって? ご心配なく。俺には原作知識があるし、何より多摩町移住歴も長い。地図もよく見ている。だから桃を探すのは楽勝なんですよ。どれも欠けてたら素早く見つけるのは困難だけども。
まずは……原作知識によれば、優子が例の提案を桃にするんだけど、その前に桃のイレギュラーな悩み……父さんがヨシュアさんと桜さんに関与したことの悩みを解決しないと。あれのせいで優子の提案に支障を出すわけにもいかないからな。
そうと決まれば、優子よりも先に桃を見つけて励まさないとな‼︎
あっ、そうだ。あいつを探してる間に……
♢
「───見つけた。白龍様、降ろしてください」
【あいよ、料金はゼロ円です】
「タクシーですか。というか金は取らんのかい」
桃を探し始めてたったの五分後。俺が召喚師覚醒フォームになったことで元の姿に戻れた白龍様に乗せてもらいながら、街を一望できる桜の木の下──桃と桜さんの思い出の場所で、桃がいるのを発見した。
よし、原作通りここで落ち込みながら町を眺めてるな。さっさと降りて余計な悩みを吹っ飛ばさせてもらうぜ。
はいシュタッと到着………………って、よく考えたら数十・数百メートルもある位置から降りてよく骨折しなかったな俺。召喚師覚醒フォームになった時の自分のタフさが怖い……というか考えなしに降下するなって話だけども。ってかなんで飛び降りたんだろ、俺……
「……白哉くん、よくここが分かったね」
「ただ無我夢中に空を飛び回っただけだよ(嘘)。……それよりも、お前に言いたいことがある」
俺はそう言うと立ち上がって真っ直ぐ桃を見つめ、大きく息を吸い込み、そして叫んだ。
「俺の父さんは心の狭い人間じゃねェ‼︎」
「⁉︎」
……フゥッー、まだ解決してないのにスッとしたぜー。突然の叫びに桃はキョトンとした表情を浮かべているけど、そんなことはどうでもいいさ。続けさせてもらうぜ。
「分からなくもないよ⁉︎ 本来なら殺伐とした環境に無関係だったはずの父さんを、桜さんが巻き込ませてしまったことに対する罪悪感を持ってしまうことを‼︎ そう思い込んでしまうのも無理はない。父さんはあの事件の完全なる被害者だったから……だからといって‼︎ 父さんが桜さんやヨシュアさんを恨んでると勝手に決めつけるんじゃねェ‼︎ あんなのは事故なんだよ事故‼︎ たとえワールドワイドなお前の姉が優秀すぎるとしても、そんな彼女だって様々な事件をいっぺんに解決できるとは限らねえだろうが‼︎ それに父さんだってなぁ、二人が好きで自分を巻き込みたくなかったんだってことぐらい分かってくれてんだよ‼︎ 一人で色々と、他人が巻き込まれた事件の事を結論づけんな‼︎ 自己完結なんてしてんじゃねェ‼︎」
ゼェ……ゼェ……た、たくさん言いたい事喋りすぎたのか、逆になんて言ったのかを一瞬で忘れてしまったぜ……。あ、頭に熱が上がると喋ってた時の記憶も曖昧になるんだな……マジ疲れる。
「………………びゃ、白哉くん……結構思ったことをバンバン喋ることもできたんだね……」
「おい、もしかしてめっちゃ喋ってる俺を見て話聞いてないってのか? ふざけんな俺がここまで頑張って喋った時間返せ」
「ご、ごめん……でも、本当なの? お父さん──黒瀬さんが、お姉ちゃんやヨシュアさんを恨んでないのを……」
「証拠になり得そうなものならちゃんとあるぜ」
そう言って俺はスマホを取り出し、ポチポチと画面を動かしてから、とある画面を桃に見せつけた。そしてそのスマホから流れてきたのは……
『もしもし、父さん?』
『おお我が子よ、父さんに電話を掛けてくれるのは随分と久しぶりだな。一体どうしたんだ?』
『いきなりで悪いけど、単刀直入に聞かせてくれ………………十年前、父さんが桜さんやヨシュアさんに助けてもらったっていう件についてなんだけど』
『なっ……⁉︎』
俺が父さんと電話していた時の会話だった。スマホの最新通信アプリによる録音機能で俺と父さんの話し合いを録音してたんだよなぁこれが。
いつ録音したんだって? 白龍様に乗せてもらいながら電話してたんだよなぁこれが。ん? 通信環境? 高気圧な場所を飛びながら電話は無理? 白龍様が魔力を使ってどうにかしてくれたんだよなぁこれが。
『何故それを……』
『ちょっと色々と訳があってね、清子さんに教えてもらったんだ。それで父さんを怨霊らしきものから浄化して助ける為に、苦渋の決断としてヨシュアさんが怨霊の動きを封じ、そこに桜さんがダンボールにヨシュアさん共々封印したって。そしてヨシュアさんの方はダンボールから封印が解かれることなくそのまま……』
『……そうか……』
『父さんはさ、正直あの時どう思ったのさ? あの時ヨシュアさんの為に封印をしてもらうのを止めればよかったと思ってるの? それとも……自分を巻き込ませた桜さんとヨシュアさんを恨んでる?』
その後に流れる沈黙。その間桃がスマホの画面から目を逸らそうとするが、それを俺が首を横に振るだけで思いとどまらせた。そして……
『恨んでもないし、止めようとしてもヨシュアさんは言うこと聞かなかったと思うさ』
父さんが、本心を告白した。桃は父さんの声を聞いたことないから、今言ったことが本当なのかは信じ難いのだろうけど、これが真実だ。
『桜さんは魔法少女としてはかなり優秀だと聞いたが、そんな彼女でも完璧ではないのかもしれないとはきちんと理解しているからな。それにあの災厄だって、魔族でもなんでもない俺達家族が巻き込まれないとは限らないことぐらい百も承知で、それが終わるのを待っていた。事故からいつ目覚めるかも分からない息子と二度と会えないという恐怖に怯えながらも、な』
『……今となっちゃ、縁起が悪すぎるだろ』
『それはすまん。それに、仮に巻き込まれたとして助けを求めるわけにはいかなかった。二人に余計に魔力を消耗させたくなかったからな』
そしてまた流れる沈黙。けど、今度はさっきよりも短かった。
『けど、ヨシュアさんはどうにかして俺を助けようとした。あの人は魔族にしてはかなり真面目でどんな人にも優しい人だと聞いたからな。だからなのか、俺を怨霊から助ける為に自らが封印されることも厭わなかった。最終的に桜さんが渋々と彼の手段を受け入れることになって、あの時の俺は酷く罪悪感に溺れた。その時、ヨシュアさんはこう言ってくれたんだ』
───どんなに苦しいことがあっても、前を向いて生きてくださいってな。
『………………それ、俺がその件の事で苦しんでるかもしれない父さんに掛けようとした言葉と少し似てるんだけど』
『む? そうか? ハハハッ、という事はお前は俺ではなくヨシュアさん譲りなのかもな』
『血の繋がってない人の遺伝が親の遺伝より強いって、なんか嫌なんだけど……』
『まあ何はともあれ、ヨシュアさんの言葉のおかげで俺は前を向いて生きていけてる。お前をここまで成長させている。ヨシュアさんには感謝しかないよ。その感謝を伝えたくて、ヨシュアさんが封印された際に飛び散っていた魔力の残りカスや桜さんの協力の元、母さんと一緒に勝手に彼の眷属にもなったのだ』
『債務者の許可なく勝手に眷属になるなよ……』
『その件はヨシュアさんが解放された時に即座に謝るさ』
『……まあいいか。とりあえず、父さんは桜さんやヨシュアさんを恨んでいない。寧ろ助けてくれたことに感謝している。そう捉えていいんだな?』
『ああ、分かってくれると助かる』
『………………父さんが寛大な人でよかったよ。電話に出てくれてありがとう。それじゃ』
『ああ……ん? ちょっと待てそれはどうい───』
父さんが何故『寛大』という言葉が出てくるのだと指摘しようとしたところで通話録音が切れる。
まあこんなところかな。これで少しは父さんが桜さんやヨシュアさんの事をどう思っているのか分かるはずだ。さて、ここまでの通訳を聞いた桃の反応は……おっ? 自責の念を表してるかの如く酷く落ち込んでいた顔の影が、少しばかりか薄れている。効果はそれなりにあったようだな。
「なっ? どうだ? これで父さんが桜さんを恨んでないってのが分かったか? 寧ろ頼んだわけでもないのに助けてもらったことに感謝してるぐらいらしいぜ?」
「………………そっか、そうだったんだね。黒瀬さんに会ったことすらないのに、私は勝手にその人がどう思ってるのかを決めつけていたんだね……」
「そういうこと。だから心情を知りたい人とかいたら、決めつけとかしないでその人の知り合いにでも聞いてみなよ。そうすりゃ気まずいことが起きても、父さんみたいに許してくれるかもしれないし、蟠りも消えるかもしれないぜ?」
「うん、そうだね……」
おっ、一瞬だけど桃が微笑みを取り戻したぞ。ということは父さんの件はこれで解決したかもな。仮に謝りたいとか言ってきても、時をかけて偶々会った時にしても寛大な父さんなら許してくれるさって言えば問題無さそうだしな。
「………………でも、シャミ子の場合はそうはならないかもしれない」
「は?」
「シャミ子のお父さんは私のお姉ちゃんによって封印された。そして十年間、その事実をシャミ子と良ちゃんは二人のお母さんに隠されていた。そしてその原因を作ったのは、紛れもなくお姉ちゃんだった。だからもう、仮に許してもらったとしても、私はシャミ子と仲良くなる資格なんて……」
おっといけない、まだ本題が残っているんだった。まあここら辺は原作通り優子に任せておけば解決できるだろうけど、まだ優子はここに来てないし……仕方ない、もう少しだけまた喝を入れてやるか。
「お前、優子の事を甘く見過ぎだ」
「えっ……?」
「優子がお前と仲良くなることなんてない? ふざけてんのか。優子もな、そんなに心が狭い人間……みみっちいまぞくじゃねェんだぞ。もし仮にそうだったとしたら、優子はヨシュアさんの事を知る前から既にどこかでお前との距離を置いてるはずだぜ? 過激派か否かに関係なく、いつ封印されるのだろうってガタガタ怯えていたのかもしれないさ。本人には失礼だけど」
「あっ……そ、そうかも……」
「けど、実際不服ながらもお前の修行について行っている。お前と同盟を組むことにも最終的に協力的になっている。そして何より……お前の事を大切な宿敵だと想っているさ」
おっ? 『つまりはどういう事?』みたいな顔を浮かべてるな? ちょうど頃合いみたいだし、そろそろ……
「ま、後は本人から自分はどうしたいのかを聞くことだな」
そう言って俺は桃に背を向けて歩き出した。何故桃の説得をほっぽり出す真似をするのかだって? 何故かって?
「優子、悪いけど桃の説得を頼……ハビュエッ」
「はい、任せてくださ……って、あ、あの……無理に胸揉みそうになったり、鼻血なったりしそうになったのを、無理に隠さなくていいですよ……」
シャドウミストレス優子が来た‼︎ しかも危機管理フォームの姿で‼︎ ……別に何かしらの覚悟を持ってなったわけではなく、桃に桜さんの事を隠されて動揺したミカンから出た呪いのシャワーを受け、服がびしょ濡れになったため仕方なく……だそうだ。
ん? なんでさっき変な声出したんだ、だって?
……危機管理フォームが相変わらず刺激強すぎて鼻の血流を必死に押さえていたからなのと、バトンタッチの合図としてハイタッチの準備しようとしたら手の位置が優子の胸に当たりそうになったからなんです。
それを察してしまった優子の顔を真っ赤にしてしまいました。これ以上変態疑惑をかけられるような真似はしたくない……
「それじゃ、俺は桜の木に隠れて黙って見ているから、後は頑張ってくれ……お前なら桃を救えるって、信じてるからな」
「はい、ありがとうございます………………ただ、嘘でも私の事をみみっちいまぞくと呼ぶのはやめてください。ちょっと傷つきます……」
「あっ、それはマジでごめん……」
少なくとも、俺が桃に説得するところから聞いていたのね……それとも女の子の地獄耳ってヤツ? だとしたら怖っ。
まあとにかく、俺は宣言通り桜の木の陰から二人の様子を見守るとしましょうか。桃の俺の父さんに関する悩みが消えた後は、多分原作通りの消化試合となるからね。
………………頑張れ優子。一人で無理をしている桃に、手を差し伸べてやるんだ。
「桃……魔法少女やめちゃいませんか? 私と契約して、私の眷属になってください」
♢
優子が桃の為にと考えた計画『魔法少女・千代田桃ドキドキ闇堕ちプロジェクト』……おい、誰だ今優子のこのプランネームをクソダサいと思ったヤツは。きらら漫画なんだし大目に見てやれ。俺は中々面白そうなネーミングだなって思っとるんやぞ。
コホンッ……話を戻す。優子が言うにはこうだ。
魔法少女は桜さんを探そうにも、彼女達を阻む結界により行動が制限されているのが現状。しかし魔族と契約する事で魔力を光から闇へと変換し、魔法少女から闇の眷属へと変化することが可能らしい。まあ簡潔に言えば、桃が眷属になれば優子が心置きなく側に寄り添ってあげられるってわけだ。
……なんか、自分達が生きる為に、願いと代償に少女を騙して永遠に魔女と闘わせる魔法少女にさせる外道地球外生物とは逆な感じになってない? わけがわからないよ。
そんな素敵な案を出してくれても、桃は桜さんが家族を引き裂いてしまったことに対して罪悪感を感じていて、取引を躊躇っていた。それでも引かないのが優子だ。
封印の解除もする。ヨシュアさんを解放する。桃と一緒にこの町にいる。この町の魔族も見つける。それを手掛かりに恩人である桜さんを探す。もっと強くなる。全部ほしいものを取り戻すだけ取り戻す。───魔族らしく、欲張りに生きる。
次々と紡がれる、優子が戦う目的。それを果たす為にも、同じ目的を持つ桃にも一緒に戦ってほしいとのこと。……この光景を見ていると、優子の熱い想いがこちらにもジワジワと伝わってきてる……
本当にヤンデレ成分まで入ってしまった原作キャラか? 愛したい人以外の奴にここまで手を差し伸べられるか普通?
………………
「ああもう‼︎ こんな心にグッとくることを聞いて、黙ってられずにいられるかー‼︎」
「わひゃあ⁉︎ ちょっ、白哉さん……?」
悪い優子! さっき黙って見ているとか言ってたけど我慢ならねぇ‼︎ 俺も色々言わせてもらうぜ‼︎
「どうだ魔法少女・千代田桃‼︎ これまで一人で戦ってきたお前が、ほんの偶然で出会った魔族にここまで寄り添ってもらっているんだぞ‼︎ これほど優しくも熱い勧誘されていては、もう一人で解決しようだなんて思えなくなるだろう‼︎ 彼女・シャドウミストレス優子は、自分自身がどんなに辛く苦しい想いを持ったとしても、それをバネにして周りを救う救世主になる‼︎ そんな彼女の救いの手を、遠慮せず取れ‼︎ そして自分の弱さを明かしてやれ‼︎ シャドウミストレス優子は、どんな事があろうともきっと力になってくれるだろう‼︎」
なんか思ったよりも結構ぺちゃくちゃ喋っちゃって、二人ともポカンとしてるな……けど、どうしても優子の真似をしたくなってしまったんだ。これくらいの我儘は許してやってくれ。
おっと、そろそろ締めの言葉を言わないとな。これ以上熱く語ってドン引きなんていう本末転倒はごめんだからな。
さて、なんて言えばいいのだろうか……優子の想いは間違いではないってのを簡潔に伝えるにはどうすれば……
あっ‼︎ なんだ簡単じゃん‼︎ こう言えば桃も優子の良さを改めて理解してくれるはず‼︎
『彼女の幼馴染である俺が言うんだ‼︎ 間違いない‼︎』……よし、これだ‼︎ せーの……
「彼女の『伴侶』である俺が言うんだ‼︎ 間違いない‼︎」
………………あ、あれ? なんか、思いついたのと違う、ような……?
あ、あれ……? なんで優子、顔から湯気出しながら林檎みたいに顔真っ赤にしてんの……? 本日で三回目だよねそれ……? 俺、お前を恥ずかしらせるような事を今したの……?
「びゃ、白哉さん……今、『伴侶』って……? えっ……?」
「白哉くん、まだ良ちゃんに言ってた嘘を引き摺って……?」
……えっ? 俺、『幼馴染』のところを『伴侶』って言ってたの……? なんで……? えっ……?
………………まあとりあえず、いますべき対処法はただ一つだ……
「イキってすいませんでしたァァァァァァッ‼︎」
無自覚に言葉を間違えたことに対する、誠意を込めたDO☆GE☆ZAだ‼︎
いやなんで俺言う言葉を間違えるのかな⁉︎ しかもよりによってなんで『伴侶』⁉︎ この場に良子ちゃんはいないんだからさぁ、偽って言う必要なくね⁉︎ ウソッ○ゥゥゥゥゥゥッ‼︎ 何やってんだ俺ェ‼︎
「………………フフッ」
おい‼︎ 何こんな時に笑ってんだ桃‼︎ これわざとじゃねェから‼︎ 隙を狙って優子に告白しようとか思ってねェから‼︎ 変な誤解とか想像すんな‼︎
「こういう状況を見ていると、もう仲良くなる必要なんてないと言った自分がバカバカしく思えてきたよ。こういった日常ができなくなるのは、やっぱり辛いや」
「えっ。あっ……も、桃がこれを見てそう思えるのでしたら、まあいいですけど……」
「優子と一緒に恥をかく羽目になった俺にとっては、良くないことだと思いますけどね……」
いや修行の時によくこういった感じに、桃に優子と一緒に恋愛方面で揶揄われるのって公開処刑みたいなもんだよ……
ん? ちょっと待てよ? この流れは……桃の奴、これまでと変わらず俺達と仲良く接してくれるってことになるのか? よっしゃ、これで原作通り(なのかはわからなくなってきたけど)ハッピーエンドや‼︎
「二人の目の前から立ち去るだなんてこと、やっぱり私にはできないよ……シャミ子も白哉くんも、急にいなくならない?」
「……はい」
「当たり前だろ。どんだけお前に振り回されたと思ってんだ」
「私がこれから何をしても、今まで何をしていても、変わらずにいてくれる?」
「おとーさんに誓って約束します‼︎」
「寧ろ悪い方に変わりそうになったら、お互い止める覚悟でいるぜ」
そう言って、俺は桃の肩に優しく手を置き、優子も桃の手を優しく握った。よし、これで俺達三人の蟠りは消えて……
「……いや待てよ? なんかおかしい。私にこんなハッピーが降りかかるはずが無い!」
いや唐突なルート変更やめてくれます? ここも原作通りだけどさぁ……
♢
はい、『魔法少女・千代田桃ドキドキ闇堕ちプロジェクト』の結果ですが……保留とされたようです。
えっ? なんで? と思う方々もいるでしょうが、これには訳があります。闇墜ちしたらエーテル体のリンク先が優子に移り変わるらしく、その場合は魔力の要素も優子主体な感じになって、桃が当面弱くなるそうです。それを見抜かれたリリスさん、天空に向けて二回目のスパーキングされました。敢えて言わせてもらいます……哀れ。
で、よく考えたら桃が闇墜ちせずとも、優子や俺が代理でこの町の魔族を探してくれればよくないかってことになってしまった。まぁ俺も優子の護衛みたいなものだから、巻き込まれるのも無理はないけどさ。
そもそも優子につられて桃も弱くなったら、何もかもがもう色々成立しなくなるのでは? ってなわけで、先程言ったように保留になったってわけ。まぁさすがに魔法少女の弱体化は色々とアレなとこもあるし、ね……
まぁ、分かりきっていたのは申し訳ないけど……ドンマイ優子。一人でやろうと考えるのとか逃げるのとかはやらないって桃も言ってるんだし、今はそれで結果オーライといこうや。
にしても、優子は自分がすべき事をまた見つけられたな……俺も自分自身への答えを見つけられるよう、頑張らなければ。
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そして桃と別れた帰り道。俺は一度変身を解除してシャツを優子に被せ、また変身してからリリスさんを回収。そして二人で一緒に帰宅することになった。
なんでそんな面倒くさい事までしてんだ、だって? ただでさえ優子の着てる服が濡れてる中で、彼女にあんな露出狂扱いされるような格好のまま歩かせるなんて、洒落にならない罰ゲームじゃねーか。桃はともかく俺はそんなの見てらんねーよ。
ん? わざわざ一度変身を解かなくてもそのまま服一枚だけ脱げばいいだろ、だって? まあ召喚師覚醒フォームはジャケット衣装なんだけど……実はその下は着てないらしくって、ジャケット脱いだら上半身裸になってしまって、危機管理フォーム以上に職質されやすくなってしまうんだよな……
な? これで俺が召喚師覚醒フォームのリテイクをいつか白龍様にしたいもう一つの理由もわかっただろ? 魔族でもないのに肌面識を減らす必要なんてありますかねぇ? ないよね?
まあどちらにしろ、好きで着てるわけじゃない恥ずかしい格好をした年頃の女の子に自分の服を被せるのは……その……結構こそばゆいな。優しい彼氏ヅラしてる感じがして、自分で自分にキモいって感じてしまう。後、お互い恥ずかしく思えてしまう。
「やっぱお互い戦闘フォームのリテイク希望は続けて申し込んでいかないとな……変身解除できない時にいろいろと危なっかしいったらありゃしない。俺の場合は特にこの時期は暑い」
「私の場合は一族の問題とかでもう無理そうですけどね……」
「リリスさんマジでギルティだな。何が肌を露出すればするほど強くなるだよ、痴女かよって思うわ。効果も思ったよりも薄いし、ホラ吹きまぞくか?」
『……平地白哉、何やらお主の余に対するヘイト感が強くなってないか……?』
あっ、これは失礼。別に本気で言っているわけではないので気にしないでいただけると……寧ろ指摘しないでお願いします。自分でも失礼だなって思っていますから。
まあ正直に言って、優子にはあまり町中で危機管理フォームになってほしくはないってのはある。職質の可能性もそうだけど、変態に目をつけられたらたまったもんじゃない。後、こっちが見るのに慣れたら慣れたでなんか虚しいというか……
「……で、優子は本当にこれで良かったのか?」
「へっ? な、何がですか?」
「桃に眷属になるのを保留にされた件だよ。魔力の弱体化が伴う可能性があるかもしれないとはいえ、本当は一日でも早く桃を桜さんに会わせたいんだろ? 保留にされたことで桃に魔法少女を阻む結界の回避をさせることができなくなって、手掛かりを見つける手間を省けてあげられなくて悔しいとかはないのか?」
せっかく優子が自分の意思を持って伝えた案を、桃は蔑ろにはしなかったとはいえ一旦不採用にしてしまったってのは、原作通りとはいえなんだか勿体ない気がするんだよな……十年も会えていない姉に会えるまでの時間が遠のいても良かったのかって思えるから……
「そこ正直悔しかったですよ。桃が眷属になったらどうなるんだろうなって想像していたこともありますから」
「私欲もあったんかい」
「でも……今の私の力では、桃を眷属にしても守れる自信がありません。だから強くなって、いつか桃との決闘に勝って、私は桃を眷属にしても問題ないんだってことを証明してやります。クククのク……そうなった時の桃がどんな顔をするのか見ものである」
なんかめっちゃ悪巧みしてる感がすごい表情してなかったか? しかも最後には口調が変になった気もするし。
でもまぁ……それこそ優子って感じかな。どんなに目標が遠くても諦めず、その目標が達成できる時が来るまでその足を止めない……そういった志を持った人なんて相当いない。
そんな彼女だから、俺は……
「好きになったのかもしれない……」
「………………へっ? えっ?」
……ん? アレ? ちょっと優子さん? 何急に顔真っ赤にしてんの? 俺なんか変なことしてた? なんか変なこと言ってた? 今特に何もしてないと思うんだけど……
「えっと……どうした優子? 大丈夫か?」
「はへっ⁉︎ な、なんでもない……なんでもないですよ⁉︎ ただ最近暑くなってきたかなーって感じただけですので……」
「そ、そっか……?」
うーん……。なんか誤魔化してる感が出てるけど、深追いするのは野暮だからやめておくか。やっぱり幼馴染の心境を理解できないってのは悔しい気がする。
♢
『魔法少女・千代田桃ドキドキ闇堕ちプロジェクト』を提供して保留にされた帰り道、私シャドウミストレス優子は、白哉さんの口から素直に受け止めていいのかわからない言質を取ってしまいました。
『私の事が好き』……それは小声で言っていたからなのか、無自覚で言っている可能性が高い。だとしても、その言葉がどうにも私の頭から離れなくなりました。うわ……やっぱり私チョロい……どうしても意識してしまう……
白哉さんはどんな想いを持って『好き』だと呟いたのかな……? ただの幼馴染として? 魔族として? それとも……恋愛感情を持ってして?
……だああああああ‼︎ 実際どう思ってるのかわからないというのに、どうしても白哉さんの『好き』を意識してしまうー‼︎ どうすれば桃を眷属にしても問題ない感じになるのかというのも考えないといけないというのに、白哉さんの事も考えると頭が上手く回らないー‼︎
ああもう‼︎ 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き‼︎ 大好き‼︎ 大好き‼︎ 愛してる‼︎ 白哉さんの無自覚かつ意図の読めない『好き』発言のせいで、また私はおかしくなり始めてるゥゥゥゥゥゥッ‼︎
まぞくらしく欲張りに生きるって桃に宣言しちゃったけど、白哉さんへのこの感情を強くしすぎたらどうしてもそっちを優先してしまいそうで、そんな自分が怖いィィィィィィッ‼︎ また暴走しかけてるゥゥゥゥゥゥッ‼︎ 無理無理無理無理ィ‼︎
白哉さんはやっぱりズルいです‼︎ 無自覚であんなこと言うなんてズルすぎます‼︎ 私の心をこんなにも無茶苦茶にして‼︎ もうさっきから『好き』という感情がたくさん出ちゃってるじゃないですか‼︎ どうしてくれるんですか‼︎ これで勝ったと思うなよー‼︎
『ああ……うん。平地白哉よ、いい加減腹を括った方がいいぞ……』
おまけ:台本形式のほそく話その9
ごせん像発見後
桃「リリスさんも見つかったところだし、お腹空いたから何か買ってこうか」
シャミ子「え ゙っ。わ、私、この格好なので町中を歩くことすらままならないのですが……」
白哉「俺も……」
桃「シャミ子はともかく白哉くんのフォームは『ただのコスプレ』として見られるだけだからまだマシじゃないかな?」
白哉「コスプレで堂々としていられるのはハロウィンイベントかコミケぐらいだろうが‼︎ 大体この格好、優子よりは肌面積多いけどそれなり肌露出してんだぞ‼︎ しかも充分痛々しいんだぞ‼︎ だから桃、お前がなんか買って───」
シャミ子「あれ? 白哉さん、私みたいに普段着びしょびしょになってたりしてたんですか?」
白哉「あっ………………ヤベェ、いつの間にか服の事で感覚麻痺し始めた。最近召喚師覚醒フォームになる事がよくあったから、つい……」
桃「……まぁいいか。今のシャミ子を一人にしたら色々危ないだろうから、白哉くんはここにいて。それじゃあ私、何か買ってくるね」
白哉「お、おう………………俺、文句言ってる割にこの格好を受け入れていってるのか……?」
シャミ子「あ、あの……私は、白哉さんのその格好、結構好きですよ? RPGに出てくるパーティー仲間が一人は着てそうな感じでカッコいいですし……そ、その……白哉さんも、元々……」
白哉「えっ?」
シャミ子「あっ、い、いえなんでも……‼︎ と、とにかく‼︎ その格好は私のよりは恥ずかしくないとは思いますので、もう少し自信を持ってください‼︎ はい‼︎」
白哉「……何に自信持てと?」
シャミ子「………………それ着ているとさらに格好よくなれるって事実にですよ。というかどうしましょう、私また暴走しかけてた……白哉さんに対する想いを語り尽くそうとしていた……」
白哉「(なんかぶつぶつと呟き始めたんだけど、なんて言ってるのか聞くのが怖え……)」
END
終わった‼︎ 原作二巻の物語編、完‼︎ このまま白哉はこの先の原作の物語を維持できるか⁉︎ 原作三巻編、乞うご期待‼︎