偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
ずっと『ばんだ荘』を『ぱんだ荘』と勘違いして書いていました……今回からは『ぱんだ荘』を『ばんだ荘』と書いてお送りいたします。ややこしいなオイ。
なんか原作にいない魔法少女に出会ったんだけど、結構優しい方だったので仲良くなった ♦
───よぉ、昼寝中失礼するぜ。アンタとこうやって話すのは一週間ぶりか? 今回はインターバルが短かったな。
───今回は何の用だ、だって? 別に、大した事じゃないぞ。ただ話し合いたかっただけ。他意はない。いやマジで。最初に話し合うことになった時もそんな感じだったから文句言うな。
───とにかく、言いたいこと言わせてもらうぜ。一週間前のアンタの行動を黙って見ていたんだけど、まあ中々良い行動だったぞ。千代田桃の不安要素を一つ丸々減らしたのは良かった。
───で、突然シャミ子に対する桃の悩みをほっぽりだそうとしたことには怒りを覚えたんだが、あれはシャミ子自身の口から自分がどうしたいのかを言ってほしかったんだな。それに関しては勘違いして悪かった。
───ん? 別に気にしてない? 寧ろ勘違いさせてしまったのならこちらにも責任がある? お前……中々寛大なんだな。正直『俺が良かれと思ってやったことを否定されると傷つく』とか言うと思ってた。
───えっ? 『それこそムカつく』? 『なんかさっきまで自分の事を心のない何かだと思われてる気がする』? あぁ、それは悪かった。そんな風に思わせてしまったのなら、俺の方こそ人の心がなかったりしてな、ハハハ。
───まあ何はともあれ、アンタが起こした千代田桃の些細な心境の変化が、シャミ子の彼女を救いたいという想いをより心に響かせたんだ。改めてアンタを評価させてもらう……アンタはカッコいいヒーローだよ。
───んで、後はアンタが腹を括ってシャミ子にアレを伝えればさらに高評価できるだけどな。ん? アレってなんだ、だって? そりゃアンタこn ───
『ゲッ、また途切れた⁉︎ あぁもう! おしゃべりできる時間が分かるタイマー代わりなものがないから、どこまで喋りかけていいのか分からんのだよねーこれがー‼︎』
♢
「んあっ……? ふわぁ……またあの夢か。なんだったんだあの声は?」
あっ。どうもみなさんこんにちは、先程まで自宅でお昼寝してた白哉です。よく寝ました。
桃の俺の父さんに関する罪悪感を消させてあげて、優子が彼女の姉・桜さんを探す為に桃と協力関係になった日から一週間が経ちました。
今日で一学期が無事に終わりました。そして夏休みの始まりだぜぇ‼︎ イェーイ‼︎ ハッピーサマーバケーショーン‼︎
で、同日にて優子が桃を眷属にするため彼女に果たし状を送り決闘を申し込んだので、そこに入る隙間がないなと感じた俺は、自宅で優子に決闘した結果の報告が来るまで待機することになってるって感じです。
あっ、そうそう。それを聞いた時の会話はこんな感じとなります。一旦区切りますね……って何をだよ。
♢
『白哉さん! 私今日十五時から河川敷にて桃と勝負を挑むことになりました‼︎ 後で結果を報告しますね‼︎』
『おぉ、そうか。頑張って成果を上げてこいよ‼︎ ……ん? ちょっと待って。これ俺ナチュラルに同行NGなヤツ? なんで?』
『あっ。え、えっと……それはその、白哉さんには申し訳ないのですが、貴方がいることで卑怯な手を使って勝つ気なのかなと思われる可能性を減らすためでして……それと桃の事なので、白哉さんと一緒にいることでまた二人して何か揶揄われると思ったので……』
『俺の為を思っての事でもあるってわけか……確かにあいつのおちょくりには色々と気を狂わされたからな、正直助かる』
『あ、あの……どさくさかつナチュラルに頭撫でないでください。恥ずかしいですから……フヘヘッ』
『満更でもない危なっかしそうな顔しながら言われましてもねぇ……』
『まぁでも、もちろん不安はあります』
『力の差のことか? けど別にそれを考えずに挑んでも意味はない気がするけどな。桃の事もあるし』
『……力の問題じゃなくて、果たし状の件です。果たし状が果たしてません。ただの女友達同士の遊びに誘う手紙と化してる気がします……』
『あぁ、決闘は法律でアウトだからな。どうにかして砕いた文で伝えないといけないから難しいよな、うん』
『ですが‼︎ 私がどうしたいのかという気持ちは伝わったのだと思います‼︎ だから桃も私が勝負を挑んできたのだと分かってくれるはずです‼︎』
『確かに文章だけでも伝わる想いってあるからな』
『クックック……今日が奴の闇堕ち記念日となるだろう。必ず魔法少女を私の眷属にしてくれよう……』
『その台詞が立派な魔族っぽいな……なんだろう、桃よりも先に俺を一人目の眷属にしそうだなと思ったのは俺の勘違い?』
『えっ……』
『……ん? えっ、ちょっ、どうした顔真っ赤にして? ひょっとして俺、また変なこと言ったりしてたりした?』
『あ、い、いえ‼︎ 全然そんななかったですよ⁉︎ あぁ、にしても今日も暑いですねー……』
『お、おう。そう、だな……(絶対なんかあって顔真っ赤にしちまってるだろ……)』
『無自覚かつ小声で勘違いさせるようなこと言わないでくださいよ……まあ、できるなら白哉さんも眷属、というかお婿さんにしたいですけど……って、またヤバいこと言っちゃってるじゃないですか私⁉︎』
♢
以上、長々と台本形式の過去回想をお送りしました……自分で語っといてなんだけど、なんか言ったり聞いたりしてない台詞まであったのは気のせいですかね?
まあ簡潔にまとめれば、俺は桃による誤解や揶揄の回避をするために同行することなく留守番。優子は果たし状を法律上などの問題で可愛いお手紙に変身させざるを得なくなったって感じかな。まあそんな感じ。
けどまあ……優子には悪いけど、桃との決闘することは無理だな。少なくともこの日は闘うことはないだろうな、うん。原作知識を持ってる我にはわかるぞ、うむ……ってこの喋り何様よ。
何故決闘することはないと言い切れるのか、だって? そりゃお前、あのただの遊びに誘う手紙と化した果たし状の事なんだ。桃はそれを果たし状ではなく『修行を休んで遊びに行こう』と勘違いしてしまうわけでして。
けどまあ……本当に決闘はできないだろうけど、多分大丈夫だろう。その内原作でも互いの誤解は解けて、桜さんの手掛かりが意外なところで見つかるかもしれないとのことで、優子が偶には一緒に町に出掛けようとか言うかもな。そうに決まってる。
ん? 俺が介入したこの世界ではそういった展開にはならない可能性もあるのでは、だって? 俺と無関係なイベントなら大丈夫だろ(小並感)。喧嘩みたいなこととか起きない。絶対起きない(謎の信頼感)。たとえヤンデレ成分ができてしまったとしても、少しは原作キャラ……いや、仲の良い幼馴染を信じろって話だ。
ってなわけで……先程まで昼寝するまでしかやることのない俺はこの後どうしようか。ところで今何時だ? うーん、十六時半か……よし、スーパーの半額セールに行くか。清子さんもこの前特売に行って来たばかりだと言うし、鉢合わせの件は大丈夫だろ。
♢
というわけで、ショッピングセンターマルマにあるスーパーに来ましたー。うわっ広いっ(小並感)。ん? スーパーの名前は何、だって? 別にいいだろ原作でもアニメでも建物の名前が明かされてないところもあるし。多分。念のため言っておくが、清子さんがいつも行ってるところじゃないからな?
まあとにかく、今日ここのスーパーの半額セールで狙ってるヤツを教えるぜ。発酵食品であるドライソーセージと生ハム、鮪の刺身、そしてバナナだ‼︎
何故これらを選ぶのか、だって? 俺や召喚獣達の好物に当てはまるものばかりだし、何より買ったその日に食べるものと言ったらこれらが良いと思ったからだ。後、それ以外だとうっかり『明日食べても大丈夫だろ』と思い込んでしまいやすいから。
あ、それと卵もあれば買っておくか。加熱するのであれば賞味期限を大幅に過ぎていても問題ないし。明日はオムライスでも作ろうかなー。卵が半額ならの話だけど。
……なんか俺、さっきから主婦みたいな思考回路を持ってね? 前世では特に栄養とかは気にしてなかった気がするんだけど。
『申し上げます‼︎ 本日のトト○マスーパーの半額セール、第一陣である魚コーナーの半額セールががスタートいたしましたァ‼︎』
ダニィ⁉︎ もう始まってるのか⁉︎ こうしちゃおれん、早速魚売り場にて半額になった刺身を調達しに出掛ける‼︎ 後に続け……いや誰も後に続く奴なんていないけどな。
って、うおっ⁉︎ もう既に魚コーナーに人が集って来とる⁉︎
「アレは俺のもんだー‼︎」
「商品を手に入れるのはこのフ○○○様だ‼︎」
「さぁ、始めようか!!」
「お前達が半額商品を取る意思を見せなければ、俺は全部買いつくすだけだぁ!!」
「ぶるあぁあぁあぁあぁあぁあッ!!」
「取っちゃお♪ 取っちゃお♪」
「商品の前に割引あり」
「仕事(買取)の時間だ」
「愚かな素人よ……ベテランに逆らうか……」
「うぉあぁあぁあぁあぁあぁあ!!」
「やらないか」
「アッー♂」
あ ら や だ な に こ の カ オ ス 。
セール商品の奪い合いという名の戦争の舞台にて、参加者が発している台詞がどいつもこいつもカオスなものばかりでした。ほとんどが鳥○先生もビックリするのかもしれない、ド○ゴン○ールに出てきそうな台詞のラッシュ。
しかも最後の二人に至っては……いやマジで何してんの気持ち悪っ。と、とりあえずあのせめて人のいないところでやれよなホモ組は無視しときましょうか。
それよりもセール対象の刺身の確保だ確保‼︎ これ以上放置すると先に戦場に来ていた猛者っぽい人達に刺身パックを全部取られちまう‼︎ 一個だけ……一個だけでいいんだ……俺に刺身パックを寄越せェェェェェェッ‼︎
「邪魔するなァァァァァァッ‼︎」
「グホッ⁉︎」
「後ろ‼︎」
「ベフッ⁉︎」
「死ねェェェェェェッ‼︎」
「ちょっ待っ……ウボワァァァッ⁉︎」
い や い く ら な ん で も ひ ど く な い ?
……その、あのさ……この人達半額セールとなるとどんだけ戦闘狂になるの? 対象商品取ろうとしただけで、ここまで他の参加者をボコボコにしてきますかね? めっちゃ痛いんですけど。後『死ね』って言った奴口悪すぎだろ。
つーかこの世界が死亡フラグの多いバトルストーリーの世界だったら、参加者の皆さんの変貌した性格次第ではこの星が物理的に崩壊しかねないぞ? いやいくらなんでも考えすぎだけど……
それよりもどうしよう。このままだと刺身パックが手に入らないんすが……。それどころか他のセール商品すらも手に入るかどうか……
「みんな落ち着いて‼︎」
刹那、バナナのような甘い香りがする突風が戦場に吹き荒れ始めた。
えっ? は? 何事? 建物の中なのになんで外にでもいるかの如く風が吹いてるの? そしてなんでバナナの香り? 色々とおかしすぎて、戦争の参加者の皆様もその場で立ち尽くし始めたんだけど。
風が吹き止んでいくのと同時に、自分の持っている買い物カゴが重たくなったのを感じた。ふと買い物カゴに視線を落として見れば、そのカゴには俺が狙っていた、半額セール対象のシールが貼られている鮪の刺身のパックが一つ丸々入っていた。おぉ、超ラッキー。
……って、えっ? なんで? ただいま戦争に惨敗中なのに? 対象商品に手が届いてすらいないのに?
も、もしやあの風か⁉︎ 突然吹いてきたけど俺に味方してくれたあのバナナの香りがする風のおかげか⁉︎ あれは俺のために吹いてくれた神風なのか⁉︎ どこからどう吹いてきたのかは知らんけどマジ嬉しい‼︎
……ん? 周りをよく見たら、俺と似た反応をしてる人達がちらほらといるな? しかも俺と同じくカゴに半額セールのシールが貼ってるものが一つずつ……
「ふぅ……これでよし。まずは一回目の鎮静完了っと。いや、これは鎮圧と言うべきかな……あっ君、大丈夫だった?」
「へっ? あぁすみません、大丈夫です。助かりました」
女性の声が聞こえ、バナナ模様が描かれた黄色い手袋を嵌めている手を差し伸べられたので、俺は反射的にその手を掴んで引っ張ってもらってしまった。ヤベェ、これは優子のヤンデレ暴走回避の為の説明案件の可能性大だな。だってその人の手の匂いが俺の手について、それを優子が嗅いでしまうのかもしれんから。
……ん? 手袋? 今夏だからそれ付けるには暑いんじゃ? もしや……
何かを察したのか不意に顔を上げてみた途端、俺は思わず言葉を失った。何故ならその女性は……
桃やミカンみたいに、明らかに魔法少女ですよと言ってるような格好をしていた。
頭頂部にアホ毛がありカチューシャを付けている金色……というよりは黄色い髪をしたツインテールで、服装は黄色一色。袖の長い上の服も黄色。胸元のリボンも黄色。丈が長く前脚が開いているスカートも黄色。とにかくマジで黄色一色。
……えっ? 魔法少女? もしやあの神風って、この人が起こしたとでもいうの?
というかマジか。原作にはいなかった(原作五巻までしか読んでないからその時点ではまだ未登場なのかもしれない)魔法少女と、こんな所で出会うだなんて、誰が予想したと言うねん……
「……あの、すみません。貴方もしや魔法少女ですか?」
「うん、そうだよ?」
思わず分かりきった質問しちまったんですが。即答されたんすが。彼女も思わずキョトンとした顔してるんだけど。『えっ、何を言ってるのこいつ?』みたいな事考えないでくださいお願いします。
「……っていけない‼︎ 次の半額商品が出そうだからすぐに鎮静準備をしないと‼︎ 特にバナナは私も欲しいから完全必須‼︎ あっ、なんか質問したそうみたいだから、後で話を聞く時間を設けてあげる‼︎」
「あ、ちょ待っ……」
どう説明したらいいのだろうかと考えていたら、その魔法少女は次の半額セール(という名の戦場)へと向かって走っていってしまった。
ってか、話し合いの時間を作るってことは、俺を拘束するおつもりですか。確かに質問したいことはあるけど、拘束はマジで勘弁してください。ヤンデレっ娘みたいじゃないですか。初対面ですよね?
うぅ……本当は逃げたい気分だけど、欲しい商品とかあるし、実はそれらを食べたがっていたメェール君達召喚獣に必ず手に入れてくると約束してしまったし、どっちみち拘束回避不可? つらたん。
結局この後は肉コーナーと果物コーナー、ついでに卵の半額セールにも参加することになり、どの場面でも他の参加者の皆さんによって吹っ飛ばされ、先程の魔法少女が起こしたとされる神風によって狙った物全てを獲得しました。ドライソーセージと生ハム、バナナに卵……後は別に狙ってない豚肉と納豆まで入ってました。
魔法少女の力を半額セールに、しかもセール参加者全員に一品はいくように配慮しながら使うとか、なんか違和感アリアリやな……
♢
目当ての商品があるセールを全部終え会計を済ませた俺は、ほぼ同じタイミングで会計を済ませた魔法少女の人と偶然合流し話し合いをすることになった。
本当は絡みたくないからそそくさと帰りたかったんだけど、もし彼女が過激派だったら、後々魔族じゃない俺に対しても何かしらヤバい仕打ちとかして来そうで怖い。可能性としてはあり得そうだから逃げるに逃げれないんだよな……
仕方なく話し合いを早く終わらせる為に、魔法少女の方からの質問にさっさと答えて、さっさと帰るようにしよう。そうしよう。
ってなわけで、早速魔法少女から『なんで今ボロボロなのか』と問いかけられたのでそうなった経緯について説明した。いや最初の戦場に居合わせたから知ってるはずなのでは? っていう疑問はなんか怖いのでぶつけられないけど。
「半額セールに参加した人達の勢いや迫力に負けて、結構ボロボロになったんだ……まぁ主婦だけに飽き足らず、何度もセールに参加した人達はもはや武人のような感じに進化するんだから、素人や初心者には不利になるのも無理はないよ。あ、コーヒー飲める?」
「武人って何すか。いや、俺もセールを戦場と例えてましたけど……あ、コーヒーミルクなら飲めます」
「じゃそれを買ってあげるね。これも何かの縁だし」
ワオ、初対面の人にコーヒー奢るとか優しくね? セールの時に参加者全員にセール対象商品が必ず一個渡るように、そのために魔法少女の力を躊躇いなく使う時点でも優しいけど。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます……うわっ、この苦みと甘みがブレンドされたのやっぱり好きだわ」
「それはよかった。あ、そうだ………………遠慮しなくていいんだよ?」
その言葉を聞いて俺は思わず首を傾げた。遠慮しなくていいって、何の話? まさかいやらしいことに関してじゃないよね? それが思い浮かぶ俺もどうかしてるぞ。大体そんなことしたら俺も貴方も優子に殺されますよ、マジで。
「あ、今のはどんな質問ても投げかけていいよって意味だけど……変な意味で捉えてた? それとも警戒してた?」
あ、そういう意味でしたのね。変なこと考えてすいませんでした。
「あぁ、いやまぁ……すいません、正直警戒はしてました。最近の魔法少女は穏健派よりも過激派が多いと噂で聞きましたので……」
「ふーん……ま、そう思われるのも無理ないか。この町とその周辺に住んでいる魔法少女が優しいだけであって、みんながそうとは限らないからね。中には極悪非道な魔族に家族を殺されたっていう重い過去を持った子もいるらしいし。まぁその魔族は既に封印されたけど」
「あ、さいですか……」
極悪非道な魔族……そんなのが数年前にはいたんだな。その魔族に身内を殺された魔法少女は過激派になったと……その魔族と優子とリコさん、同じ魔族を比較すると極悪非道の方は全く想像が出来ねえ。優子とリコさんは優しいから……
「えっと……ちなみに貴方はどっち派なので───」
「馬場 奈々」
「へっ?」
「私のフルネーム。奈々って呼んで。教えるの忘れててごめんね」
あ、名前を教えてくれてたんですか。すみませんわざわざ……。馬場 奈々さん、か……さては名字も使ってバナナを名前の由来にしてるな? 桃やミカンは名前だけで果物をモチーフにしてるのに、奈々さんのは変わってるな。
「で、私が過激派か穏健派かどっちなのかって質問をしてるんだよね? もちろん答えは『穏健派』だよ。そうじゃないとこの町に住むどころか訪れることなんてできないし、私も話し合いで解決しない争いが大嫌いなんだし」
「そ、そうですか……」
まぁ穏健派にしろそうでないにしろ、魔法少女の力を半額セールで参加者全員にも対象商品を一つでも獲得できるように上手く使うことなんてしないと思いますがね。けどその行動が争いを嫌う証言となってるけどね。
「で、質問はそれで終わり? それだったら大事な時間取ってごめんね?」
「えっ? あぁ、はい。一応それだけですが、何か……?」
「そっか……じゃあ最後に、私の方から一つだけ質問させてくれる?」
「……一つだけでしたら」
奈々さんが穏健派で安心したせいか、一つだけ答えるとはいえ自分から拘束される時間を延長させちまったよ……というか、彼女の方から質問って一体?
「どうして魔法少女が穏健派と過激派に分かれてる事を知ってるの? 君、別に魔族でも何でもないよね?」
あっ。
ヤベェ、うっかりしていた。桃やミカンと何事もなく仲良くしていたからか、知り合いでもない魔法少女の前で魔法少女の事を喋ってしまった。慣れが別のところでポロリと出るのは怖いものなのだな……
……仕方ない。ここはもうバラしておくか、俺が魔法少女や魔族との関わりがあることを。穏健派だという奈々さんなら優子を退治したりしないはずだしな、多分。
「……実は、ウチのクラスメイトとその友人の中に魔法少女がそれぞれおりまして。その二人に魔法少女や魔族、魔力について教えてもらったんです。しかも二人とも穏健派で、俺の幼馴染である魔族の事を何かと気にかけてくれていて……」
「えっ⁉︎ 幼馴染に魔族が⁉︎ しかも二人の魔法少女に優しくされてる⁉︎ へぇ、その魔族の子って良い子なんだね。恵まれてる」
『恵まれてる』? それは一体どういう……
「あっ、もうこんな時間。早く帰って兄さんにご飯作ってあげないと。貴重な時間を作ってくれてありがとね‼︎ それじゃ‼︎」
「あっちょっ……」
引っかかる言葉があったのでそれについて問いかけようとしたものの、奈々さんは『もう帰る』と言ってその場から嵐のように走り去っていった。ま、まあ優子……というか魔族に対して敵意を見せてくれなかっただけよかった……のか?
というかお兄さんがいらっしゃいましたのね。その人も魔法少女みたいに戦えたりすることができるの? 気になる。
♢
半額セールという名の戦場から帰ってきたところ、ばんだ荘にて偶然にも桃との決闘(?)から帰って来た優子と遭遇。せっかくだし夕飯作る前に話でもしようかってことで、彼女を家に招き入れました。いつも風呂を貸してあげるためによく家に入れてるけどね、それとこれとは別というか。
で、優子に桃との決闘はどうなったかと聞いたら……案の定だった。あの手紙を見た桃は『遊びに行く』のだと勘違いしており、勘違いとはいえ優子も桃のその気持ちを台無しにしていたことを申し訳なく思っていたそうで。
で、仕切り直しってことで二人はショッピングセンターで遊ぶことに。さらには偶に一緒に町に出掛けることを約束。優子はお詫びと約束の印として桃に黒紫色の髪留めをプレゼントしたらしい。正に女友達の付き合いってヤツだな。微笑ましい。
ズキッ
………………えっ? あれ? なんか、俺の体の中で変な音が聞こえてきたような……気のせいか? ちょっとだけ心臓が痛く感じたんだけど、戦場でボコボコにされた影響が遅れて出た、のか?
「あの、白哉さん? どっか痛みますか?」
「えっ? あぁいや、大丈夫。気のせいだったみたいだからな」
「そうですか……あっ。そういえば白哉さんは初めて行くスーパーの半額セールに行ったらしいですよね? なんかすごい収穫とかありましたか?」
「あったあった。ボカスカされたけど目当ての物は全部手に入れたから、メェール君達も喜ぶことだろうよ。……それと、何故か奈々さんという魔法少女の人にも会った。それも桃やミカンよりも年上な感じで、穏健派」
「………………へっ?」
うん、だよね。 そりゃあ驚くよね。偶々行ったスーパーで、偶々魔法少女に遭遇したんだもん。優子もビックリだよね。でもちゃんと穏健派だったって言ったから警戒とかはしないでね? お願いだから。
「あ、あぁ……桃やミカンさんよりも年上ですか。しかも穏健派……きっと普通の女性の方でしょうね‼︎」
「どう考えたらそう思える。……確かにあの人は普通の女性っぽい優しい性格してるけどさ。というか優しすぎる、みたいな? 魔法少女の力をセール商品を平等に分けるために使ってたし」
「平和主義者、ですかね?」
「ま、あの人が何を考えているのかはまだ分からずじまいってヤツだな。いくら話し合いの時間をわざわざ作ってくれる程の優しさも兼ね備えているとはいえ、初対面だし」
つーか、それよりも……
「それよりも、もっと平和な買い物をしたかったって思えた気がする……なんでスーパーの戦場に行ったんだろう……奈々さんのおかげで目当ての物を全部買えたとはいえ、興味本位で戦場に行った自分が情けない……今日の優子達が羨ましく感じる」
「えっ」
だってそうじゃん? 優子と桃が女友達同士による楽しくワイワイと遊んでいるのに対して、俺は天下分け目の関ヶ原の戦いに歩兵として初めての合戦に参加してめちゃくちゃ酷い目に遭ったって感じだよ。
軽い気持ちで主婦中心の修羅場になんて参加すべきではなかったよ……不幸というよりは、迂闊だった……
「………………あ、あの……それ、でしたら」
「……ん? 何?」
「それでしたら、こ、今度三人で行くか、ひ、久しぶりに二人でどこか行きませんか? ほ、ほら、三人なら桃に揶揄われやすい代わりに二人で行くよりも楽しく感じられますし。わ、私と白哉さんだけでなら久しぶりに公園を歩いたり出来ますし……」
突然の優子からのお出掛けの勧誘。それを聞いた瞬間、顔が不思議と熱くなってきたのと同時に『嬉しい』という感情が込み上がってきたのを感じた。いや嬉しいと思えるのは当たり前……
あ、あれ……おかしいな。普通ならただ遊びに誘っているなと思うだけで済むはずなのに、何故かこの誘いだけで心臓がバクバクしている自分がいる。な、なんか今日の俺、変だな……? へ、変な表情とかが表面に出てないよな? 大丈夫、だよな?
「あ、あの……白哉さん?」
「へっ⁉︎ あ、あぁいや、いいなそれ‼︎ さ、最近は優子が魔族になってからは二人きりどころか、大した目的なしでのお出掛けなんてしてなかったもんな‼︎ そ、そういった機会があればまた行きたいなー‼︎ ハッハッハ……」
お、思わず動揺してしまった……本当は別動揺する必要なんかないってのに、なんでこうも焦ってしまったんだよ俺……自分で自分の反応に疑問を抱いちまうよ、マジで……
「そ、そうですか……そう思っていただけると、私も嬉しいです」
「そ、そっかそっか‼︎ い、行きたい日とかあったら言ってくれよ‼︎ 予定空けとくからな‼︎ さ、さぁてと飯でも作るか‼︎ 今日もお裾分け用のヤツ作っとくから、よかったらここにある漫画読んだりとかして待っててくれ‼︎」
「えっ? は、はい……」
あぁもう‼︎ なんか今日は調子狂う‼︎ いつもとは違うスーパーでボロボロになるわ、そこで偶々原作キャラじゃない魔法少女に出会って擬似的な拉致されるわ、原作でもあると知っていた優子と桃のお出掛けイベントを聞いて何故か心臓が痛くなるわ、優子に遊びに誘われるだけで心臓バクバクするわで、俺の脳内がストライクショット状態だわ‼︎
もう今日は一度何もかも全部忘れよう‼︎ 飯作って忘れよう‼︎ 今日はメェール君に飯作りを休ませてあげよう‼︎ そうしよう‼︎ うん‼︎
「……白哉さん、顔を赤くしていたけど、もしかして私の事を………………ハッ⁉︎ い、いやいやいやいや‼︎ 流石に考えすぎです私‼︎ 期待しすぎると絶対また暴走しかける‼︎」
♢
多摩町の何処かに存在する、とある建物のとある一部屋。その部屋は広場レベルに近い程とてつもなく広く、無数に並ぶ本棚が並んでおり、その全てに本がギッシリ詰まっていた。所々に照明が設置されており、広々とし過ぎているこの部屋を照らしている。二階建てになっているようで、中央の広めの通路からは二階の様子が吹き抜けで見えている。
ここは正に、大魔法図書館。とはいえ、魔法書の代わりに普通の本や漫画が置かれている上、この部屋基建物にはきちんとした名前がある為、とある紫もやしな魔法使いは存在しない。多摩町の事だから存在してもおかしくはないが。
「ってなわけで、私と同じ穏健派魔法少女の知り合いで魔族の幼馴染である男子と仲良くなったの‼︎ 彼の方はどう思ってるのかは分からないけど……って、兄さん聞いてる?」
その部屋の受付カウンターらしきところで、回転式の椅子に座って背を向けている人物に話しかけている女性が一人。金髪に近い黄色い髪をしたアホ毛とカチューシャ付き魔法少女・馬場奈々である。どうやら彼女はこの部屋のある建物にて、『兄さん』と呼んでいるただいま椅子に乗ってる背中お見せ中の人物に、白哉に出会った事について話していたらしい。
「兄さーん? いつもならこういう非常識系な話に興味向けてくれるのに、今日は乗り気じゃないの? もしもーし?」
「……む? あぁすまん、小説を読んでいたものだから聞いていなかった。で、その魔法少女の知り合いで魔族の幼馴染だと言う少年はどんな感じであったか?」
「聞いてるじゃない……」
そこそこの反応で興味を示してはいるものの、話かられている男性は椅子を奈々と向かい合うように回さず、後ろを向いたまま会話に参加するだけ。
そのような反応を見せる男性に不服に感じたのか不貞腐れたかのように頬を膨らませる奈々。そして何かを思いついたのかニヤリと小悪魔並みの笑顔を浮かべ、再び口を開いた。
「で、どんな感じかって? うーん……見た目な中性的なイケメン美少年で高身長って感じ、
「
「彼は普通の人間のはずなのに、何故か魔法少女に引けを取らない程の強い魔力を感じるんだよね。それも数種類も持ってる感じ、みたいな?」
「……‼︎ ほう……」
ここで男性が白哉に多大な興味を示した反応を見せ、奈々の方に体ごと向けた。魔族でも魔法少女でもないのに魔力を兼ね備えている。しかも数種類もあるという可能性がある。何処ぞの一族の末裔でもない存在である白哉に興味を持ち始めたようだ。
男性が白哉に対する興味を持ち始めたのは、普通の人間ではないという事実を聞いたからだけではない。似たような理由ではあるのだが、そのもう一つの理由となるのが……
「一族の末裔でもなんでもない者が、非科学的な力を持っている。それも本来持つべき存在と同じ量の魔力の持ち主……それはとても興味深いぞ‼︎ 是非次の小説のテーマにせねば‼︎」
「だと思った。まったく、兄さんは非日常的な噂を聞くとすぐそれに合った小説を書きたがるんだから……」
これである。
分かりやすく言えば、男性は小説家である。それも一般のではなく、日常では体験できない出来事に遭遇したりその話を耳にしたりした事を小説の内容にするというものだ。一般人である白哉が魔力を持っているという話も、小説の参考にするつもりらしい。
「今作の小説が出来たら是非彼にも読ませたいものだ‼︎ で、その少年の名前は何というのだ?」
「えっ? ……あっ、聞くの忘れてた。でも、目は金色で髪は濃い紫色のメッシュが付いた銀髪だったよ。見かければ一瞬で分かるかも」
「ふむ、それだけでも有益な情報だ。感謝するぞ我が妹よ。ふふ……完成して彼に見せるのが楽しみになってきたものだ」
「その笑い方、悪役っぽいんだけど……」
今後の御楽が増えたことによる喜びを隠しきれないのか、ニヒルな笑みを浮かべた男性。その彼の口元には……
吸血鬼のような、長い牙がこっそりと見えていた。
おまけ:台本形式のほそく話その10
決闘ではなくお出掛けになったシャミ子と桃、アクセサリー店にて
桃「(シャミ子がわざわざ自腹で買った髪留めをもらっちゃった……)」
「(白哉くんにはちょっと申し訳ないけど、大事に使おうかな。シャミ子に何かを買ってもらうなんて滅多にないし)」
「(ん……?)」
シャミ子「むぅ……白哉さんにはどの髪留めを買ってあげるべきでしょうか? 男のカッコ良さ重視で雷マークも良いけど、髑髏マークも捨て難い……」
桃「……白哉くんならシャミ子から貰ったものならなんでも喜ぶと思うよ」
シャミ子「わひゃあ⁉︎ も、桃⁉︎ あっいえ、これはその……」
桃「あ、ごめん。私が口出すのは野暮だったかな? 気にせずプレゼント選び続けていいよ」
シャミ子「プ、プレッ……⁉︎ い、いやいやいやいや! と、特別な日でもないのに送るなんてそれは……‼︎」
「そ、それに今の私、もう一個買う持ち金なんてありませんし……」
桃「なら私が代わりに買ってあげるね。この髪留めをくれたお礼に」
シャミ子「か、借りを作ってチャラにされてたまるかー‼︎ と、とにかく今日はもう何も買う気ないですから‼︎ いえ本当に‼︎」
桃「……それはそれで白哉くんが可哀想だと思うけど?」
シャミ子「ウッ……‼︎ で、でも再来月は白哉さんの誕生日ですから、その日までには……」
桃「そっか、それは良い事聞いちゃった」
シャミ子「そ、それはどういう意味ですか‼︎ ハッ⁉︎ さては桃、白哉さんを狙って……」
桃「そんな事全然ないから」
シャミ子「……それはそれでなんか複雑です……」
桃「(白哉くんの事で焦るシャミ子、やっぱり可愛い)」
END
はい、今回はオリキャラ四人目かつ初の女性オリキャラの初登場回でした‼︎ 原作でも今のところバナナって名前の魔法少女は出てないみたいだし、ギリギリセーフ……かな? もしバナナ系統の魔法少女出たらどないしよう……
おまけ:今回登場した魔法少女・馬場 奈々の画像(魔法少女メーカー使用)
【挿絵表示】