偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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リラックスも大事だよってことで初投稿です。

前回投稿から一日経った時はいつもみたいにお気に入り登録者が減りましたが、翌日には元に戻りました。どゆこと? どうしても毎回お気に入り登録者数とか気にしちゃう性分であるけどさ……


ぐっすり眠れるいい機会なので、今日一日だけ白龍様に体を貸してあげることにしました

 Nice to meet you or good morning or hello or good evening.

 

 ……あっ、今のは『はじめまして。おはようございます。こんにちは。こんばんは』って意味で言ってます。なんで英語で挨拶したのか自分でもわかんねーよ。ってか誰に挨拶してんだよ。

 

 ん? 『ブラウザバックしまーす』? ちょっ、待て待て待て待て‼︎ 何ネットでつまらないサイト・イラストまたは小説見つけた後みたいな反応してるのさ⁉︎ 虚しいからそんな事言わないで‼︎ お願いだから‼︎

 

 まあともかくどうも、白哉です。突然ですが、今俺は近くのスーパーにて食べ物(特に菓子類)を買って帰って来たところです。とはいっても、飯作る時の食料が足りなくなったからとかじゃないんだ。だってそれにしては菓子類をたくさん買って来たんだぜ? 菓子類ばっかり食って三食済ますなんて身体に悪いったらありゃしない。それに食料ならちゃんと確保してあるしよ。

 

 じゃあなんで買い物に行ったのかって? なんで菓子類ばっか買ったのかって? 何故なのかというと……

 

 

『なんだこれは……どういう風の吹き回しだ……』

 

「賄賂……じゃなかった。お供え物です」

 

「桃、お前今賄賂と言いかけただろ」

 

 

 このように、俺・優子・桃の三人でリリスさんにお供えするためです。別にお供えの量は一定ので構わないとリリスさんは言っていたけど、この日はどうしても気になることがあったからたくさんお供えしようということで、リリスさんをお供え物で埋め尽くしてるってわけです。

 

 つまり、この大量の菓子類はリリスさんに聞きたい事を洗いざらい聞くための情報料となるわけだ。いやこれは俺の発案じゃないぞ? 原作通り桃が発案したんだ、唐突にな。

 

 あ、ちなみに菓子類以外もお供えしてるけど、中にはガチャポンでダブった物までお供えされてるよ。ダブり物をお供えって……それお供えじゃないよな? ただの押し付けだよな?

 

 

「今日はリリスさんに聞きたいことがあるんです。シャミ子のお母さんの話から考えて……過去、あなたはヨシュアさんに持ち運ばれていたようです。その時に私の姉──千代田桜を見た記憶はありますか」

 

『フフフ、聞いて驚け……さっぱりわからぬ』

 

 

 うん、分からないんすね。知 っ て た 。

 

 

【ヘッドロックのお供えしてもいいかー?】

 

「ヒビが出ない程度にお願いシャーッス白龍様」

 

『ちょ、待て待て待て待て待て待て待て待て⁉︎ それお供えじゃないよな⁉︎ 技を掛けるだけだよな⁉︎ 像である余にヘッドロックってどうやるというのだ⁉︎ 待て‼︎ ホント待て‼︎ 何故知らないのかはちゃんとした理由があるから‼︎ だからやめてくれ頼む‼︎』

 

 

 そもそも五十センチ──二頭身サイズの奴が行うヘッドロックって、なんかやる方も辛そうに感じるんだけど。体格的に。お腹がグエッて感じになったりとかしないのか? 想像してたら怖くなったんだけど……

 

 あっ、リリスさんが桜さんに関する情報が皆無だという理由を話し始めた。しっかりと聞かないと。

 

 リリスさんは太古の昔に封印されて以来弱体化の一途を辿っていたらしい。特に封印された二千年もの間は魔力が弱まっており、封印空間の外を観測できずにいたらしく、意識がはっきりして外の世界が見えるようになったのも十年前……つまりは封印されてから約千九百九十年間もの間の記憶は曖昧だったとのことだ。調子がいい時も、縁の近い者の夢に干渉することぐらいだそうだ。

 

 ………………なんだろう。実際に本人の口から聞いて改めて知ると、リリスさんは割と悲惨な運命に遭っていたんだな。二千年間も一人で封印空間に閉じ込められて、外の世界に干渉することも出来ず、出来るのは封印空間の中で只一人何かしらの暇を潰すだけ……

 

 リリスさん本人はそれほど大したことない感じでいる上に、優子が自分の声に気づくようになって退屈しなくなったとはいえ、一般の人ならば絶対精神が病んでいるところだな、絶対。二千年間もそんな環境下だったらそうなるに違いないよ。それでも平然としていられるリリスさんの精神にあっぱれとしか言いようがないな……

 

 

『……なんだその顔は! 若造の同情なぞ要らぬ! 無言でお供えは怖いからやめよ‼︎ 白哉と白龍は撫でるな‼︎ シャミ子は泣くな‼︎』

 

「いやそうも言ってらんないです。リリスさん達古代の魔族にとって二千年間が短いかもしれなくとも、俺達人間としては長いどころか百年先まで生きてられるのか分からないものなので。そう考えると二千年間も封印空間で生き続けてきたリリスさんがどうも心配で心配で……」

 

『いや実際人間と魔族の寿命はそんなものだろうが……だからといって、急に慈愛をかけられてもこっちが困惑するだけだぞ⁉︎ 一旦それやめよ‼︎ 頼むから‼︎』

 

 

 だが断る(キリッ)。この平地白哉が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ……

 

 いや違うからね。ネタとして言ってみただけだからね。本気で俺よりも強い相手に『NO』と言ってやれるのかわかんないからね。

 

 うーん、それにしてもリリスさんの記憶とかからして桜さんの事は聞けなかったのは残念だったな……まあわかりきっていたことだから仕方ないけど。

 

 

『にしても危なかった……昨夜のシャミ子の事に対する拷問かと思ったぞ……』

 

「ん? ごせんぞ、今何か言いましたか?」

 

『……いや、なんでもない』

 

 

 

 

 

 

 あの会話の後どうなったのかと言うと……優子の提案で明日一日中彼女の身体をリリスさんに貸すことになり、リリスさんが優子に乗り移る機能を封印したエポキシ接着剤を桃が物理的にひっぺがしました。魔法でならより繊細に取れるのでは? って思ったけどもしもの事を考えて敢えて言わないでおいたけどね。

 

 んで、その手術(?)が終わり、リリスさんはただ今気絶中です。その……ご愁傷様です。

 

 で、俺は今何をしているのかというと……

 

 

「あ、あああああ、あの、びゃ、びゃびゃびゃ、白哉さん……‼︎」

 

「は、はい……何でございましょう……?」

 

「そ、その……えっと……何というか……」

 

 

 優子が何やら続けて言おうとしてるので待機をしております。どうやら彼女にとっては緊張する事なので許してあげてね。というか優子の奴、桃が帰ってった時に何を言おうとしてるんだ? なんかこっちまで緊張しちゃうんだけど……

 

 あっ、なんとかの杖を取り出した。そして変形させた。どれ、一体何に変形させたんだ? というか、何かを伝えるのになんとかの杖を使うって、一体どんな状況下なんだと……

 

 

《白哉さんの『つぶやいたー』のエロを教えてください》

 

 

 ………………………………

 

 

「嗚呼、俺の力不足だったか……お前を暴走させんと頑張ってきたのに、遠回しな下心をぶつけてくるぐらい手遅れになるなんて……というか『つぶやいたー』のエロって何……?」

 

「ちっ……違います‼︎ これはエッ、エロじゃなくてIDって書いてあるんです‼︎ し、下心があってそう見えるように書いたとかではなく‼︎」

 

「わ、悪い。ちょっと意地悪してみただけなんだよ。ホント悪かったって」

 

「むぅ……」

 

 

 あの、『こっちはおとーさんの力を借りてまで言いづらいことを伝えて真剣にお願いしているのにふざけないで』と言ってるような膨れっ面で怒らないでいただけますかね? 冗談だから。冗談でやってるだけだから。ホントごめんて。可愛い。

 

 というか、そっか……ついに優子もこの世界のTwi○○er、『つぶやいたー』にアカウント登録したんだな。

 

 そういえば原作イベントのインターネット回でも優子が桃のIDを獲得し、自分の知らない桃の秘密情報を手に入れようという算段をしてた感じだっけ。その時に登録した上に桃にダイレクトメッセージでフォローさせてもらったんだっけか。

 

 ……ん? まだフォローさせてもらってない感じなのかな? ちょっと遠回しに聞いてみるか。

 

 

「優子、お前『つぶやいたー』始めてたんだな。ちっとも気づかなかった」

 

「あっ、はい。桃から借りたパソコンを使って、昨日登録したんです。まだ桃以外誰にも教えていませんし、桃に言われた通り鍵も掛けておいてます」

 

 

 あっ、登録したの昨日なんだ。ってことはまだミカンにもアカウントを教えてない感じか。

 

 ん? ってことは……ここで俺が優子にアカウントを教えてフォローしてあげたりしてもらったりすれば、実質俺が二人目の優子のアカウントフォロー者&フォロワー者になれるってことか……?

 

 ヤベッ、なんかめっちゃ嬉しいんですけど。

 

 

「あ、あの、白哉さん……? なんか変な顔になってますけど大丈夫ですか……?」

 

「えっ? 俺そんな顔してたか? そ、それは悪かった……」

 

 

 俺、もしかしてニヤけてたのか? もしそうだとしたらめっちゃ恥ずかしいんだけど。女の子の前でよくそんな顔が出来たな俺。もうちょい隠す努力しろよ俺。我ながら見損なった気がする。

 

 

「えっと……ところで、念のため聞くけどなんで俺のIDを知りたがるんだ? 俺としてはフォローしてくれるってんなら嬉しいけどさ」

 

「う、嬉しい……ハッ⁉︎ あっ。い、いえ……じ、実は昨日、桃にもIDを教えてもらったので……せ、せっかくなので、一応私のサポートをする役割を持っている白哉さんにも、桃が私以外の変なまぞくにつけ込まれないよう、桃を監視してもらいたいなと……」

 

 

 あぁ、そういうことね。一人でも桃をツイート越しに様子見できる人を増やしたいとかそういう感じね(どういう感じだよ)。……ふむ。俺も桃がどんなツイートしてるのか気になってきたし、ここはやはり相互フォローして損はないな。というか得しか作れないかもだけども。

 

 

「分かった、教えるぜ」

 

「で、ですよね。い、いきなり頼まれて即OKなんてしてくれませんよね。すみませんでし──って、えぇっ⁉︎ い、いいんですか⁉︎」

 

「幼馴染かつ異性の貴重な口実によるフォローリクエストなんだ。承諾して別に損はないだろ」

 

 

 いや我ながら何だよ『幼馴染かつ異性の貴重な口実によるフォローリクエスト』って。幼馴染からのフォロー申請に嬉しく思ったのか異性からのフォロー申請に嬉しく思ったのかどっちなんだよ。

 

 あっ、優子の顔が赤くなってる。やっぱり今の言葉に違和感とかあったんだな。そして羞恥心を感じたんだな。まあ女性は男性に対して交流することによる口実をするのに勇気がいる人が多いしな、多分だが。

 

 あっ、そうだ(唐突)。

 

 

「え、えっと……あ、ありがとう、ございます……」

 

「けど、その代わり頼みたい事があるんだ」

 

「えっ? た、頼みたい事……?」

 

 

 

「俺もゆっくり休みたいから、身体を貸してあげてやってもいいか?」

 

 

 

 

 

 

「───で、白哉くんの身体も違う人に貸してあげてるってこと?」

 

「ま、まさか余の他にも身体の入れ替えができる能力を持っていた奴がいたとは……」

 

 

 リリスをシャミ子の身体を貸すことで一日自由にしてあげるデー当日(メェール君命名)。

 

 上記の通りリリスがシャミ子の身体の所有権を借り、外見だけでも威厳を保つ為にと通販で買ったゴスロリ系ファッションで桃の前に颯爽と登場した中……彼女は現在、続けて集合場所に来た白哉を見て、桃同様に呆気に取られていた。

 

 何故なら白哉は今、先程の二人の会話の通りまさかのリリス同様に他人に身体の所有権を渡しているのだ。ちなみに、その白哉の身体の所有権を受け取っているのが誰なのかというと……

 

 

 

「今日は白哉に代わってこの俺、白龍がお前達と一緒に同行していくことになったからな。よろしこー」

 

 

 

 白哉の相棒枠でデフォルメサイズの龍の姿で定着されている感のある龍・白龍である。白哉の武器となった槍を掘り起こす為に身体を借りて僅か二日、再び白哉の身体を使う権利を得たのだ。

 

 そして声と性格・尻尾の形が変わっただけのシャミ子となったリリスとは違い、白哉の身体を得た白龍の姿は一目で分かるものとなっていた。

 

 銀髪の部分が白哉のよりも目に優しい程度により一層輝きを纏っており、瞳の色もエメラルドグリーンに変わっていた。そして傍観していた時の白哉本人は気づいていないが、首筋には白龍の翼のタトゥーが描かれていた。それも輪郭が濃いものとなっている。

 

 ちなみに服装もいつもの白哉が着ないものとなっている。袖を引き千切って無理矢理半袖にしたかのような灰色のジャケットに紺色のサルエルパンツ、首に巻かれたシルバー調の龍の羽のペンダントといった、何処ぞのライブを行うバンドマンだ、みたいな痛い衣装をしていた。

 

 今の彼を見て、桃とリリスは二人してこう思った……。普段通りの頃からは想像出来ない程の高校デビューを果たした元陰キャ男子か何かですか⁉︎ と。

 

 

「ちなみに白哉は今、入れ替わったことで俺の身体で精神世界に入ってぐっすり眠ってるぞ。ゆっくり寝る機会がなかったみたいだから、今日はリリス殿みたいに一日中同伴者の身体借りさせてもらってるぜ」

 

「そ、そうか……しかしいつもの白哉と比べると、気怠な癖に友好的な感じのする性格のお主が表に出ると違和感がすごいな……」

 

「アンタに言われたくない」

 

 

 リリスが白龍を警戒してしまうのも無理はない。

 

 普段の白哉は年相応の反応を見せる反面、どこか大人びた雰囲気を曝け出している。そんな彼が突然気怠になったり、いつもよりも友好的……というよりもおちょくりやすい性格になってしまっては、さすがの周囲も彼の行動に疑問を感じたり警戒したりするだろう。

 

 しかし、そんな彼の身体を借りている白龍にとってはそんな疑問などなんのそのといった様子だ。身体の持ち主である白哉にとって予期せぬ事をしない限り、問題事は起きない……はず。

 

 

「まあこうして、同伴者の身体を貸し借りできる者同士が交流し合える絶好の機会だ。お互いこの日は桃と三人で仲良くやろうぜ」

 

「一応これ、余がエスコートしてもらう日なのだが……ま、まあ貴様と直接交流するなんて滅多にないだろうしな。そこのところよろしく頼むぞ」

 

 

 白哉の身体で躊躇いなくシャミ子の身体を肩を組んできた白龍。そのマイペースさに引き気味なリリス。しかしお互い嫌悪感があるわけではなかったため、ギスギスとした雰囲気にはならずに済むだろう。

 

 しかし、別の問題事が発生するのも事実だ。

 

 

「……えっ、ちょっと待って。もしかして私、シャミ子や白哉くんの身体を借りた別人二人に挟まれてる? というか私、この二人に振り回されるんじゃ……」

 

 

 桃の不安要素が二つに増えたことだ。南無。

 

 この後桃は三人並んで歩く時、白龍とリリスのファッションセンスが痛々しく感じたのか終始二人から目を逸らすことになったとか。彼女のファッションセンスも絶望的ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 リリスの話によれば、シャミ子の魔力的に体を借りられるのは二・三時間が限界とのこと。そのため二人にローカル路線バスで別府温泉に急ごうと誘導させようとするが、バスを待機している間に時間切れになるとのことで却下されてしまう。

 

 下呂温泉や登別も提案するが、どれも地方から外れているため却下。それでも温泉好きのリリスは温泉に行くことを拒まなかったとのことで、桃は仕方なく『たま健康ランド』で妥協することにした。

 

 

「ここ~この前も来た~。二回目~〜。桃~ここ二回目~っ。いいけど~っ」

 

「おいおいリリスさんよォ、温泉というものは二回も三回も来ていいものなんだぜ? 来る毎に楽しみ方を変えれば飽きずに済むし、何度も来れば常連客にだってなれるぞ?」

 

「常連かぁ〜。どうせなら別府か下呂での常連がいいな〜〜っ。ここの常連もさぁ〜いいけど〜っ」

 

「まあそれなぁ〜。わかる〜っ」

 

「(うわ、いきなりなんか意気投合してるよこの二人。シャミ子と白哉くんの身体なのにウザく感じてしまうのが否めない……帰りたい……)」

 

 

 唐突に意気投合して、今時のチャラい高校生カップルっぽい何かのようになっている白龍とリリス。そんな二人を見て苛立ちを感じさせる桃だったが、今の二人が白哉とシャミ子の身体の所有権を持っていると思い返した途端に複雑な感情を持ち始める。彼女の胃が悪くならないか不安だ。

 

 何はともあれ、券売機にて入館料を払うことに。白龍は事前に白哉から自由に使ってもいいようにと持ち金を渡されたため問題ないが、一方のリリスは……

 

 

「リリスさん、入館料千二百円」

 

「余の慰労会ではなかったのか⁉︎」

 

「親睦会です。若造に奢られて悔しくないんですか?」

 

「……余の財布にはお金が入ってないのだ」

 

「シャ・ミ・子・の財布です‼︎」

 

 

 ただいま全財産十一円まぞく中である。とはいってもシャミ子の所持金ではあるが。自分のではなく子孫の所持金を使う先祖は格好がつかないものである。

 

 すると突然、白龍が何かを企んだのかニヒルな笑みを浮かべ、近くに設置されてある卓球台のラケットに手を取り、それをリリスに向けて指した。

 

 

「だったら俺と卓球で勝負しないか?」

 

「………………? どうしたのだ突然?」

 

「俺と卓球で勝負して、ラリーしたり点を入れたりする毎につき入館料代を増やせるというシステムだ。払える金がないのなら身体で払えってことだ。ちなみにこれは健全的意味でだぞ?」

 

 

 健全的意味でも言葉の時点で健全的に捉えられないでしょ。そもそも何を勝手にルール決めてるの。桃は頭の中で白龍に向けてそうツッコミを入れているが、口にするのも癪だと思ったのか頭の中で言うだけに留めた。

 

 

「いや、しかしな……余の目的は温泉であって、併設されたものには微塵の興味も───」

 

「えっ何? 怖いのか? 戦える力がない状態でも自由に動くことはできるちっちゃい動物に負けるのが怖いのか? 古代の魔族が聞いて呆れるなー。ざーこざーこ☆ 喋ることしか出来ずぶん投げられるだけの弱小魔族☆」

 

「むっ……‼︎」

 

 

 メスガキならぬオスガキのような煽りをしてくる白龍。リリスはそんな彼の態度に苛立ちを覚えたのか、すぐさま卓球台の向かい側にあるラケットとピンポン玉を手に取り、サービスショットをする構えをとった。

 

 

「怖くなどないわァ‼︎ 自力では喋る事が出来ない貴様など赤子を捻るように圧倒できんこともない‼︎ 代金分……いや、一ゲーム分だけでも貴様との差をはっきりさせてやるァ‼︎」

 

 

 乗った。闇を司る魔女は、転生者の介入によってポッと出した龍の挑発に乗ったのだ。この状況に白龍は再びニヒルな笑みを浮かべ、してやったりとした表情となった。

 

 

「そう来なくっちゃな。おい桃、審判よろしく」

 

「えっ。ちょっ、何を勝手に───」

 

「では行くぞ‼︎ ぬうおりゃあ‼︎」

 

「ッサーッ‼︎」

 

 

 桃の静止を無視し、即座に試合を開始させた白龍とリリス。開始早々に白熱なラリーを展開させ、桃の静止の入る余裕は与えられることはなかった。

 

 

「(は、始めちゃった……まあ対等であるためにお金がもらえるシステムを投入したのはいいことだから、いいか)」

 

 

 この後桃はこの試合が終わるまで、考えるのをやめた。

 

 ちなみにゲームの結果は十一対〇、リリスの惨敗という形で終わったのだった。南無三。

 

 

 

 

 

 

 卓球の試合が終わり、シャミ子の魔力が残り少ないことを悟ったリリス。これ以上現界できる時間を割くわけにはいかないとのことで、桃と白龍に浴場に急ぐことを促した。

 

 

「いや俺は男だから女湯には入れないぞ。ってかヤダ」

 

「そういう意味で言っとらんわ‼︎ お主も余と桃が女湯入ってる間に男湯に入れば………………いや、この場合は性別が違うものが時間差で入っても問題ない、のか?」

 

「急に謎の不安感持つのやめて?」

 

 

 リリスの謎の自信の無さに白龍がツッコミを入れる中、桃は何やら気まずそうな表情を浮かべていた。

 

 

「…… 私、外で待っているのでリリスさんと白龍さんだけで行ってもらえます?」

 

「何故だ⁉︎ 一通りのぼせて正気度が下がれば、汗と共に互いのわだかまりも流れよう‼︎」

 

 

 何故かリリスとの入浴……というよりも入浴自体を拒む桃。そこを強く指摘するリリス。そんな二人をよそに、白龍は何故か三度ニヒルな笑みを浮かべ出した。

 

 

「じゃあ俺は二人が上がるまで待って、一通り卓球の件で煽ってから入るとしようかな」

 

「どういう思考に至るのだ貴様は⁉︎ 腹黒か⁉︎ さては今腹黒系になってるな‼︎」

 

「いや元からだから安心しろ」

 

「元から腹黒だと言う時点で何を安心すれば良いというのだ⁉︎ というか自分で『自分は腹黒だ』と言う奴なんて滅多にいな───」

 

 

 刹那。リリスのツッコミを遮るかの如く悪天候による雷のため館内のブレーカーが切れ、停電が発生した。しかし幸いにも停電であることを伝える館内放送が流れる程度のダメージであったためか、それほどまでの損傷はないようだ。

 

 

「なんだ停電か……。ちょうどいいので、一旦ロビーに出て待ちましょう」

 

「ほへぇ〜、何かしらのドッキリ企画でもやってるのかと思ったぜ。ちょっとビックリしたな〜リリス殿……リリス殿?」

 

 

 桃と白龍は館内が停電している中でも冷静でいられている中で……リリスはただ一人、恐怖によるものなのか体を震わせており、顔も絶望的状況に陥っているかのような表情となっていた。そして……

 

 

「もっ……………… ももももも~‼︎ これは何だ⁉︎ この世の終わりか⁉︎」

 

「なんだこの威厳破壊卓球ボロ負けクソ弱ポンコツ古代魔族は」

 

 

 盛大なる泣き虫っ面で桃に抱きつくリリスを見て躊躇のない悪口を繋げて完成されし即興のあだ名。これは色んな意味で酷すぎる。

 

 

「言いたいこと言い過ぎだし呼称があまりにも酷すぎる……それよりもリリスさん、どうしました?」

 

「余は……余は……完全なる暗闇はダメなのだー‼︎ 全力で余を担いで逃げよ‼︎ 余は暗闇が怖いのだー‼︎」

 

「「……永劫の闇を司る魔女なのに?」」

 

 

 ごもっともである。

 

 闇の力の中には暗闇に関する能力というものも多大に存在する。そんな所有するのにピッタリな能力の要素の一つに対する恐怖心を持つなんてそうそういないであろう。そもそも魔族自体に出会うこと自体難しいとは思うが。

 

 すると白龍は突然、何処から持ってきたのか不明な、赤ちゃんをあやす為に使う振って音を出すおもちゃ──ガラガラを取り出し、それをリリスに振って見せた。

 

 

「ホラホラー、リリスちゃん落ち着いて―。パパがいるから安心でちゅよー」

 

「う、うわぁ……それリリスさんみたいなポジションにいる魔族に対する熱い風評被害になるんじゃ……」

 

 

 白龍の予想外かつあまりの対応に完全に引き気味となる桃。だが煽られているリリスの方はというと、赤子扱いしてくる白龍に対して怒りを露わにしないどころか……

 

 

「うぅ、パパァ……」

 

「恐怖に震えているせいか幼児退行し始めた⁉ リリスさんしっかり!! 貴方は永劫の闇を司る魔女でしょ⁉」

 

 

 その煽りによるあやかしをまともに受けてしまった。そうなってしまう程に真っ暗闇が怖いとでもいうのかこの魔族は。

 

 桃が宥めた事により冷静さを取り戻したリリスは、何故自分が完全な暗闇にトラウマを感じているのかを二人に明かした。彼女は封印された頃は魔力が多少未熟となっており、魔力をコントロールできるようになるまで封印空間は真っ暗で、外の世界も見られなかったとのこと。

 

 

「それが何年も続いてたら、そりゃトラウマにもなるわな」

 

「うむ……さすがの余もこの自分の愚かさを否定することは出来ん……威厳破壊卓球ボロ負けクソ弱ポンコツ古代魔族と呼ばれてしまっても無理もないな……ハハッ……」

 

「アレ一文字も忘れずに覚えてたのか……本気では言ってないから忘れて? 俺気まずいから」

 

 

 トラウマによる鬱なテンションにより自己嫌悪に陥っているリリスを宥める白龍。軽い気持ちで呼称をつけたとはいえ冗談では済まされない発言であったことを後悔しているようだ。

 

 そんな二人を見て気まずさを感じていた桃は、この澱んでいる空気を変えようとスマホを取り出して電源を入れ、照明代わりにして暗闇を紛らわせた。

 

 

「と、とりあえず復旧するまでは………………これなら怖くないですか?」

 

「スマホというやつか⁉︎ う、うむ! これなら生きていけるぞ!」

 

「あっ、それなら気分を良くしそうな動画があるの知ってるぞ。ちょいと貸して」

 

「あれ? 白龍さんには白哉くんのスマホがあるんじゃ……あっ、パスワードを白哉くんに教えてもらえなかったんですね。どうぞ」

 

 

 何故白龍が白哉のスマホを使用せず桃のスマホを借りようとしたのかを察し、彼にスマホを渡した桃。それ受け取った白龍がとある動画サイトを開いた途端、それは突然流れ出した。

 

 

『○京○成大学‼︎ 帝○平○大学を知ってるか⁉︎ 帝○○成大学のここがスゴイ(帝○魂)‼︎ ○京平○大学‼︎ 健康・医療・スポーツ・経営学など 幅広い学問を学べるんだぞ(○京魂)‼︎』

 

 

 意味不明な音楽……というよりは笑いを取りにきた音MADそのものである。しかも何処ぞのトナカイ船医の声で歌われていた。

 

 

「………………えっ、何これ」

 

「何って、ノリノリ帝京平成大学っていう音MADだけど?」

 

「そ、そっかぁ。世の中にはこんな音楽もあるのだなー……いやホントになんだこれ」

 

 

 この動画は桃とリリスにとっては理解し難いものであったようだ。しかし他に視聴するものがなかったためか、復旧して温泉に入るまでは白龍が流している音MADとそれの類似動画を観るしかなかった……

 

 とはいったものの、類似動画を観ていく内に二人とも笑いを必死に堪える時が多々あったようだが。

 

 

 

 

 

 

 烏の美しい鳴き声が響きながら美しく町を夕陽が照らす夕方。この俺、平地白哉は白龍様に身体の所有権を返していただきました。

 

 白龍様が『銭湯から出たらリリスさんが優子に身体を返したからこっちもそろそろ返すな』って言ってきたからそうなった。『片方が身体を持ち主に返したのに自分はまだ返さないのは不公平な気がする』とのことらしいけど、悪ささえしなければばんだ荘に帰るまでの間は貸してあげるのにな。

 

 ってか、何今の俺の格好。

 

 

「なんか、何処ぞの満足同盟の服そっくりなのを着させられたんだけど。どうなってんだよ白龍様のファッションセンス」

 

 

 ファッションは全体的にバンドマンっぽくてカッコ良いけどさ、外出でこれはなんか召喚師覚醒フォームのとは違う意味で恥ずかしいんだけど。しかもこのジャケット、袖を無理矢理引き千切った? なんか世紀末な世界線で荒くれ者とかが着てそうなヤツみたいで、なんか……

 

 

「あはは……お互いごせんぞや白龍様の趣味に合ったものを着させられましたね……白哉さんの方はその、独特さがあると言いますか……」

 

「……優子の方が余程マシだと思うぞ。変なアレンジはされてないし、危機管理フォームよりも露出度が低いから外出するのに悪くはないし、闇の一族っぽさもあるし………………いつもよりもスタイル良く見えるし」

 

「ふぇふぃっ⁉︎ あっ。そ、そうですか……あはは、大袈裟に驚いちゃいました。すみません……ふにゃあ……

 

 

 こっちもすまん。最後に思った事を口にしてしまった。あぁクソ、さらっと発言は意識したら恥ずかしくなっちまうわやっぱり。優子の顔ぎ真っ赤になってるし、こっちも顔が熱くなってる気がするし……

 

 

「……で、白龍様はどうでしたか? 桃やリリスさんと直接話し合って仲良くなれましたか?」

 

【おかげさまでな。けど現実世界で口から声出した時はなんか違和感を感じたな。『アレ? 喉って喋るために動かしたらこんな感じになるのか?』みたいな】

 

「あぁ……精神世界ではテレパシーみたいに言葉を伝えていましたからね」

 

 

 それがいつもは喉を使って直接口から声を発さないものの感想なのか? うーむ、それはさすがに理解に苦しむなマジで。俺達人間はいつも喉と口などを使って喋るから……

 

 

「ところで、白龍様はいいんですか?」

 

【ん? 何がだ?】

 

「桃とリリスさんの会話に参加しないのかって話です。何やら二人でコソコソと会話していますよ。しかも仲良くしてる感じに。なのに入らなくていいんですか?」

 

 

 そう言うの俺の視線の先では、桃がごせん像のリリスさんと何やら話し合っているのが見て取れている。

 

 ちなみにアレは桃が録画したリリスさんの真っ暗闇が怖いカミングアウトを本人の耳元で聞かせ、『この音源を穏便に処理してほしいなら諸々の問題が解決するまで仲良くしていこうね』という脅迫です。白龍様もあの場にいたはずだから、今の会話の輪に入っても問題ない……はず。

 

 

【いや、俺はいいよ。アレは二人だけの空間みたいなもんだから、そこに俺が入るだなんて野暮ってもんじゃん。それにめんどくさいし】

 

「そうですか……」

 

 

 これはまあ、白龍なりの配慮ってヤツだな。ならあの輪に入らせる必要はないか。無理矢理なのも三人に対する嫌味とかになるし、これはしゃあないかも。最後の理由は良くないけどね。

 

 

【まあとにかくだ。俺は現実世界の銭湯に行けて満足した。お前はぐっすり寝て少しはリフレッシュできた。お互いWin-Winしたってことで明日からも来るべき日に備えてゆるーく頑張っていこうぜ】

 

「緩くって……まあそうですね。今後も頑張っていきます」

 

 

 確かに今回の件でお互いリフレッシュすることは出来た。俺も久しぶりにゆっくり寝ることが出来た。これで次の原作イベントに気合いを入れて臨むことができるはずだ。

 

 よし、明日からも一日頑張るぞい‼︎

 

 

 

 

 

 後日、俺は下半身辺りの筋肉痛に遭いました。どうしてこうなった。

 

 

【ヤッベ、卓球に張り切りすぎたわ】

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その13

リリスさんとのお出掛け前日

白龍【俺が着る人間のファッションってさ、どんなのがいいと思うんだ?】
メェール【……? 急にどうしたんですメェ〜?】
白龍【実は昨日、白哉に一日だけ体を貸してあげるって言われたんだよ。なんでもシャミ子がリリス殿に体を貸してあげることになったのに合わせたいからなのと、白哉自身が少しでもゆっくりできる時間を増やしたいからだからなんだと】
【で、俺も白哉の体を借りることになったってわけだけどさ、俺なりのファッションってものを着て、その服を明日の俺が白哉じゃなくて白龍である証拠にしたいって思うようになって……】
メェール【なるほど。確かに白龍様がマスターの体を借りてる感を出した方がよろしいですメェ〜。白龍様が着そうで、マスターが着そうにない服……】
コウラン【それだったらなるべく派手な格好にしたらどうかな〜?】
白龍・メェール【派手?】
コウラン【白龍様の体はギンギラギンに輝いているから、それに伴う感じに派手なのを着れば白龍様らしさを出せると思うよ〜。それにマスターの服装はいつも普通って感じのものばっかりしか着ないから、より一層マスターらしくない感も出せれると思うな〜】
白龍【派手、か……よし、適当にそういったのをネットでググってみるか】
メェール【適当って、それは大丈夫メェ〜かな……】

数分後……

白龍【なんかインパクトはありそうなのは見つけたぞ】
メェール【どんな服ですかメェ〜?】
白龍【反○のルルー○ュの主人公が着るこのマントなんだが──】
メェール・コウラン【それ着て外出はやめてくださいメェ〜(ほしいなぁ〜)】
白龍【なんで?】

この後二匹が色々妥協もしてバンド系のファッションにしてあげた。

END



そういえば白龍様って面倒臭がりな設定にしてたんだよな……? そんなに面倒臭がってた……?(混乱)

 
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