偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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初めての幕間回なので初投稿です。

前回書かれなかった、吸血鬼の魔族・ブラムが魔法少女・馬場奈々の兄になるまでのお話です‼︎ 前回既読推奨です‼︎


幕間:吸血鬼の魔族、南国の果実香りし幼き魔法少女を匿い、念願の太陽の光を手にする

 我は誇り高き一族──吸血鬼の魔族の一人である。

 

 我が一族は常に孤独であった。人類に忌み嫌われており対立しているからだとか、光の一族や魔族などといった吸血鬼でない者達との関わりを持ちたくなかったとか、そういった人間性に関わる理由があるからではない。

 

 光。人類や他の魔族などに与えられ、我が一族が手にするのに限りがあるものだ。

 

 我が一族は必要以上の輝きを放つ光を浴びてしまえば、その間のみとはいえ魔力が低下したり、身体の調子が悪くなり活発に動くことが出来なかったり、最悪消滅してしまう恐れがあるのだ。浴びても正常でいられるのは、月夜の光や蝋燭の灯火と同格の明るさのみ。

 

 しかし、それでも我が一族は光を欲しがっていた。特に欲していたのは……太陽

 

 月に代わり大空に昇り、月とは異なる彩色で美しく輝き、周りの空を青色に染めて晴天にし、周りに漂う白い雲をくっきりと見せ、海や大地を照らし、人類に活力を与える源となりし優しい光。

 

 あの全てを包み込むような光を、我が一族はなんとしても浴びたかった。何としてでも、人類と同じ時間帯に立ちたかった。あの光を浴び、我が一族にもさらなる生力を与えてもらいたかった。

 

 特に先祖はそれを望んでいた。世間の情報を手に入れるべく人類の夜の街に潜伏していた時、太陽の話題を持ち掛け話し合っていた人類の言葉に耳を傾けたのだ。『やっぱり太陽の光は俺達を元気にしてくれるな』と。

 

 あの話題を耳にしてから、先祖は太陽を欲するようになった。その話を聞いた同族も共感し、同じ感性を持つようになった。

 

 それ以来、我が一族は太陽の光を浴びても正常でいられる方法を探し続けた。人類の農産物の摂取、一族の血液と他種の血液の配合、様々な実験方法を提案し、様々なモルモットに協力を受けてもらいながら、我が一族は太陽の光が得られることを祈り続けた。たとえそれが、魔族ではない吸血鬼仲間達から孤立してしまう羽目になったとしても。

 

 だが、それは一向に敵うことはなかった。

 

 実験のために必要な材料を収集したりしようにしても、人類が起こしてしまう戦争に巻き込まれてしまうリスクがあったり、我が一族が活動できる時間帯に限りがあったりと、実験を進めるのに十分な時間を得ることは出来なかったのだ。

 

 それでも我が一族は、太陽の光に関わることならば執念深くなる性分となっていた。たとえ何百年、何千年、何万年と掛かろうとも、太陽の光を得ることを諦めなかった。人類に生きる力を与えるその光を得て、一族の無限の道標を作る。それが、亡くなってしまった先祖の無念が晴れると信じて……

 

 

 

 

 

 

 先祖のあの誓いから二千年は経っただろうか。吸血鬼の魔族の末裔の一人となった我もまた、太陽の光を浴びれるようになる手段を探していた。

 

 そのために我は夜の人類の街に赴き、一族の目的の役に立つ手段を探していた。人類が作った料理を平らげたり、人類が作った銭湯に入ったりして、それらを続けて数日経った頃には体当たりで太陽の光を浴びてみた。

 

 しかし、毎回の如く息が苦しくなり始め退散する、息が苦しくなり始め退散する、息が苦しくなり始め退散するを繰り返してしまう一方だった。

 

 それでも我は諦めなかった。何としてでも太陽の光を浴びても丈夫な身体となり、成功した経緯を同族に報告し、我が一族の執念を果たし先祖の願いが叶うことを信じて。

 

 

 

 

 

 

 手段を探し続けていく内に、我は個人の趣味をも見つけることができた。それは我がとある本屋に、資料となり得る本を探すために訪れた時のことだった。

 

 その本屋は各ジャンルの本の品揃えが豊富に取り揃えており、小説や漫画の内容も思わず興味を示してしまうものばかりであった。実際に太陽の光を克服しやすくなる手段とはならない内容ばかりであったが、その全てに我は虜となったのだ。

 

 それから我は目的と同行して本を集めることに没頭した。様々なジャンルの本を買ってはインターネットでその本の感想を述べ、それをインターネット越しに人類と共有し続けていった。

 

 そして我は思った。彼等にも我が手にした本を同じく手に取り、さらなる共感を得てもらいたい、と、我の目標が新たに生まれた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 一族共通の夢を叶えるための努力と同時進行で、我個人の目標達成の努力を続けていたある日のこと。我は一人の人間との、最初の運命的な出会いを果たす。

 

 その人間の名は千代田桜。高校生ぐらいの年齢でありながら、多摩町を支える存在となっている魔法少女であった。話によれば、彼女は多摩町を魔族と魔法少女が仲良く手を取り合う町にしようと奮闘していたのだ。

 

 桜殿は我に興味を示していた。後輩の魔法少女から我を見かけたとの情報を聞き、我の行動を調べていた時のこと。そこで太陽の光を浴びたいという我の意志と、手にした様々な本を人類の手にも渡らせ共感させたいという我のもう一つの願いに面白味を感じ、我を多摩町に招き入れようとしていたらしい。

 

 我もそんな桜殿に興味を持った。光の一族と闇の一族。今でいう魔法少女と魔族。本来ならば敵対関係にあるはずの存在をも受け入れ、自分達と同じ立場に立たせようという意志と優しさに、我は圧倒されたのだ。

 

 それから我は多摩町で暮らすことを決意した。そして桜殿の提案で種類豊富な本屋を独自で設立する決意をも固め、様々な本の会社に懇願して数年前もの多数の本を提供したりして開店の準備を進めていった。

 

 そして数日後に店を無事開くことに成功。古い本や新刊、様々なジャンルの本を他の本屋よりもより多く取り揃えているという口コミにより店は繁盛。我は達成感に浸っていた。

 

 しかし、同時に虚しさも感じていた。自身の趣味による目標は達成できたとしても、未だに一族の夢を叶えることは出来ずにいる。その事実に目を瞑ることはなかったものの、その事による悔しさは今でも忘れられずにいた。

 

 だが、同時に理解もしていた。遠き理想郷というものは実現出来ないものが多い。仮に実現出来る可能性があったとしてもそれは低いに等しい。だから可能性が完全に潰れてしまうことも別に恐れてなどいない。希望が完全に崩れてしまうことも覚悟していた。

 

 あの時までは、そういう風に諦めかけていた……

 

 

 

 

 

 

 あれからどれくらいの時間が経ったのかは分からぬが、今から十年前であることは確かだったな。その日は『本の祭典 スカーレット』のクリスマスセール期間中であったため、我は張り切ってこの日のセールの準備に勤しんでいたのだ。

 

 その開店準備中、あの桜殿が我の店に来てくれた。この時の我は何か気になる本でも見つけたのだろうかという期待と、桜殿と再会したことによる喜びに胸を膨らませていた。

 

 だがこの時、我はまだ知らなかった。この再会から我の運命が変わっていくことに。

 

 

「やっほー! 『すぎこしの結界』バージョンアップしたよ‼︎ それとこれ、効果は違うけど予備の結界の紙もあげるね‼︎」

 

「おぉ。すまぬな桜殿、何から何まで───」

 

「今から天災みたいなのが来るから二・三日戸締りをしておいて! 外出もしないで!」

 

「……む?」

 

 

 いつも通りのテンション高めな様子を見せていたが、ここで我は二つの気掛かりさを感じた。

 

 一つ目は桜殿の喋るスピードがいつもよりも早いこと。これは何やら急な用事があるにも関わらず、置き手紙ではなくわざわざ我に直接口実で伝えたいことがあったからではないのか。そんな疑問が我の脳内に浮かんでいた。

 

 二つ目は『天災』という言葉が出たこと。天災とは果たしてどのような災害なのだというのだ。非日常的な出来事を好む我でも『期待』よりも『不安』が過ぎってきた。これまで多摩町は平和で災害などが出てなかった町だと聞いたのだから、『天災』が来るという言葉にはかなり警戒してしまう。

 

 『天災』とは一体どのようなものなのだろうか、そう問いかけようとしたのだが……それは遮られた。

 

 

 

 彼女と運命の出会いを果たすことになるのと同時に。

 

 

 

「あっ。あとね、この子をしばらく預かってて‼︎ 訳あって無表情だけど無愛想ってわけじゃないよ‼︎ 気に入ったりこの子がここにいたいって言えばそのまま住ませてもいいから‼︎」

 

 

 そう言われて押し付けられたのが、後に我の妹となる奈々だった。しかしこの時の彼女は目のハイライトが失われており、無表情であった。彼女の身に何があったというのか。不思議と『天災』よりも聞くことを優先すべき点が出てきた。

 

 

「……桜殿、何故この娘は───」

 

「ごめーん、今急いでいるから。また今度」

 

「お、おい……」

 

 

 質問させてくれる余裕など与えてもらえず、桜殿とはそれっきり会うことはなかった。何故我に奈々を匿わせようとしたのか理解できなかったが、少なからず我を頼ってきたことは確か。愚痴など言わずに奈々を預かることにした。

 

 この時、我はまだ気づいてなかった。この選択が我と奈々、お互いの運命を大きく変えることに───

 

 

 

 

 

 

「……君、名前は何というのだ?」

 

「……馬場奈々です」

 

「……ここに来るまではどこに住んでいたのだ?」

 

「……すみません。実はここに来るまでの記憶が全部抜けてて、分かっているのは名前と、バナナが好きであることだけ……」

 

「えっ。……い、いや自分の好きなものを覚えているだけでも良いことだと思うぞ? それが記憶を思い出す起点となると思───」

 

「何本も食べたのですが、それでも不思議な程に一ミリも思い出せないのですが……」

 

「そ、それは……すまなかった……」

 

 

 桜殿に奈々の世話を頼まれたため、彼女が失ってしまった感情を取り戻してもらうために次々と質問を投げかけることにした。どの質問にも何かと答えてはくれたり何かしらの反応はしてくれるのだが、どの問いかけに対しても無表情でしか答えてくれなかった。

 

 その後も試行錯誤を繰り返した。おすすめの小説や漫画を薦めたり、どこか連れて行ってあげたり、プレゼントとしてぬいぐるみなどを渡したりするも……

 

 

「……ふふ、ここのパート面白いですね。メスガキが分からされた後に主人公も別の意味で分からされるってのが……」

 

「……なんでプリクラで世紀末風の写真ができるんですか? ある意味凄すぎて呆然しますが……」

 

「……たまさくらちゃんのぬいぐるみ……たま……? 猫のキャラで『たま』っていう言葉を聞くことが多いのはなんででしょうか……?」

 

 

 このように心の底から『面白い』と言っているかのような反応を見せてくれるが、どの言葉を伝えてくれようと、失った感情を取り戻し表に出すことはなかった。

 

 それが何日も続いていたが、それでも我は諦めなかった。あの時の彼女を見ていると、自身と一族の目標を諦めたかもしれないもしもの自分を連想してしまう。そんな彼女を救うことを諦めてしまうことは、太陽の光を克服しようと頑張ってきている自分を否定してしまうことと同じ事だ。

 

 だから我は諦めず奈々と接し続けた。たとえいつしか我と関わることを拒絶されようとも、彼女が笑顔を取り戻すまで続けていく、そう誓った。

 

 

 

 

 

 

 匿い始めてから何日経ったのか、それとも何ヶ月か経ったのか、気がつけばそんな事を数えるのを忘れてしまっていた。それほど彼女の失った感情を取り戻そうと必死になっていたということらしい。時間を忘れるとは我としたことがうっかりだったな。

 

 そんなある日のこと、我が夕飯としてビーフシチューを作った時の事だった。いつもなら好き嫌いはあまりせず、出されたらすぐに口に運び、ゆっくりながらも全部平らげてくれる奈々であったが、この日は何故か出されてもすぐに手をつけることはなく、そのビーフシチューをまじまじと見つめていた。

 

 

「……どうした? これは嫌いな食べ物だったか? 無理して食べなくてもいいのだぞ?」

 

「………………えっ? あ、いえ別にそういうわけじゃないんです。ただ……このビーフシチューを見てると、何か忘れていた大切なことを思い出しそうな気がして……」

 

「大切なこと……?」

 

「……多分、気のせいだったと思います。すみません、いただきます」

 

 

 何やら引っ掛かりを感じたが、そんな我の考えなど気にせずそう言って彼女はビーフシチューを一口運んだ。途端、彼女の手は突然止まり……

 

 

 

 この数ヶ月間、流すことのなかった涙を、数滴も雨垂れのように瞳から溢し始めた。

 

 

 

「ど、どうした⁉︎ やはり口に合わなかったか⁉︎」

 

 

 この時の我は焦りを見せた。何かしらのアレルギーでも起こしてしまったのではないのかという焦燥感を感じたからだ。しかし奈々はそれを否定するようにゆっくりと首を横に振り、腕で涙を拭いながら答える。

 

 

「いや、違う……違うんです……‼︎ なんでこう思えてきたのか、よく分かっていないんですが……

 

 

 

 この味、なんだか懐かしいと思えてきて……」

 

 

 

 そう彼女の表情には、満面に近い程の『嬉しい』という感情の込められた笑みが浮かばれていた。どうやら我が作ったビーフシチューが失われた記憶と関与していたらしく、その時に鮮烈に感じた味によって、失われた笑顔を引き出されたようだ。

 

 これには我もさすがに歓喜するしかなかった。この数ヶ月間取り戻してあげることの出来なかった彼女の感情の一つを、この場で呼び戻すことができたのだから。

 

 

 

 

 

 

 あれからさらに数日が過ぎていった。失われた感情の一つを取り戻したことが大きな要因となったのか、奈々──我が妹は表情をいくつか取り戻していった。それと同時に余所余所しさも消え、会話する時も砕けた感じになり、何故か『兄さん』と呼んでくれるようにもなった。

 

 我が何かやらかせば怒り、我が何か行動すれば何故か呆れられたり、面白いものを見かけたら笑ったりとしていき、今では普通の女子高生か女子大生と同じ感情を持つようになった。失った感情が戻ることはとても喜ばしいことだ。

 

 我が妹がそこまで感情を取り戻してしばらくした頃、彼女は我にこう問いかけた。

 

 

「兄さん、太陽の光を克服したくない?」

 

「したいぞ」

 

 

 この言葉に我は思いっきり耳を傾けながら即答した。まさか徐に呟いた目標の事を覚えているとは思ってもみなかった上に、『自分なら克服させることができる』と言ってるような発言に思わず期待してしまったからだ。

 

 我が反応したことに気づいたのか、我が妹は何処からか某プ○キュアな可愛いデザインをしたステッキを取り出しては光らせた途端……今では見慣れた魔法少女の姿へと変わっていった。

 

 

「ごめんね兄さん。ずっと黙っていたけど……実は私は魔法少女で、兄さんが何かしらの魔族であることは桜さんから聞いてるの。けど私は恩を仇で返したくないし、争い事はしたくないの。そこのところ分かってくれる?」

 

「……あぁ、分かってる。君が我に対して敵対する気がない事は知っている。だから君が魔法少女であってもこれまでの関係を変えるつもりはない。安心するが良い」

 

「そう、よかった………………って、ちょっと待って。その反応からして、もしかしてずっと気づいてたの⁉︎ 私が魔法少女だってことに⁉︎」

 

 

 桜殿に連れて来られたのだから、その日からきっとそうだろうとは思っていたのだ。半分は勘だがな。……と言ったら我が妹は何故かショックを受けたようだ。魔族である我の事を心配してずっと黙っていたようだが、意味がなかった事を知って……でそうなったのだ。あの時は少し申し訳なかったな。

 

 

「……で。もしかしてだが、君の魔法は我に太陽の光を克服させることのできる能力があるというのかね?」

 

「えっ? あぁ、うん。私の魔法は天候に関する力を操る能力で、一部の場所に雨を降らせたり地帯に雪を積もらせたりできるの。で、その力を活かして兄さんの体に影響が出ないように、体内に太陽の光の物質を取り入れる特訓を影ながらしていたの。……兄さんの使い魔さん達に手伝ってもらいながら」

 

 

 太陽の光の物質を体内に直接取り入れ、我に太陽への抗体力を持たせる、ということらしい。悪くない作戦だったな。

 

 それにしてもまさか我の使い魔にも協力してもらっているとは……どおりで最近使い魔達がいつもよりも疲れている様子が窺えるわけだ。

 

 

「で、ようやく使い魔さん達に二十四時間もの間太陽の光を克服させる魔法をかけることに成功したんだけど……で、出来れば、兄さんも受けて……みる? 私の新しい魔法」

 

 

 どうやら失敗してしまう可能性も考慮して、我に新しく開発した魔法の実験をしてもらっていいのかの許可を取ろうとしていだようだ。太陽を克服する魔法……こんなの……

 

 

「受けないわけにはいかぬだろう? それに失敗したりしたらまた改良させておけば良いのだ。喜んで協力するぞ、我が妹よ」

 

「兄さん……‼︎ ありがとう‼︎ 私、この魔法で兄さんの目標を果たせることができるよう頑張るね‼︎ 出来れば一発成功する気で‼︎」

 

 

 我が協力してくれるってことを理解してか、素直に喜んでいる様子を見せる我が妹。前まで顔にまで出せていなかった嬉々とした表情を見ていると、それを思い出した今でも正しい選択をしてよかったって思えたな。あそこまで眩しい笑顔を見せてくれたのだからな。

 

 そして……

 

 

「サンライトエンデュランス‼︎」

 

 

 我に向けて両手を翳し、橙色の光を放つ我が妹。この光に包まれた我の体内は外部も含めて全体を優しく温め、太陽の光に対する免疫力を急上昇させることが可能……らしい。この魔法で我は太陽の光を浴びても具合が悪くなったりもしなくなるとの事だ。

 

 

「……終わったよ、兄さん。試しに太陽の当たるところに出てみて、ヤバそうだったらすぐに茂みの中に入ってね」

 

「うむ。では……突撃‼︎」

 

 

 我が妹の魔法・サンライトエンデュランスが成功することを信じ、我は身を挺して太陽の光が直撃する位置に飛び出した。何の躊躇いもなく。上手く適応されないと判断すればすぐさま日陰に戻れば良いだけの話であるし、そもそも我が妹の魔法が適応されないはずがない。そう確信していたからだ。確信は考えすぎだったのだろうか?

 

 青空を見上げて直視した太陽の日差しは、想像を超える程に輝いていた。我の視界に入った途端にその視界を白く塗られるほどに、その光は綺麗であった。

 

 ここで我はとある点に気づいた。その光を直視しても、即座に眩しさに慣れたその眼が焼かれなかったことである。それは我が妹の魔法を受けると太陽の光による悪影響が一つ減ったという利点を知れたということでもある。これには我も喜ばしいことであった。

 

 だが同時に不安要素を一つ思い出すこととなった。不安要素となる唯一の難関が、その太陽の光の強さとその暑さによる我が体への影響である。何事も無く見れることが出来ても、直接当たって体が溶ける前兆でも起きてしまっては見る時間が短くなりあまり意味がないのだ。

 

 しかし、不思議なことに我の体に悪影響というものは及んではいなかった。体が温かくはあるがそれも悪影響には含まれず、寧ろ当たるだけで体が活性化されているかのように感じた。

 

 ふと我が体の方へと見下ろした視線の先には、太陽に照らされた自らの腕が映っている。我等吸血鬼の身を黒く灼き骨まで焦がし尽くすはずの太陽の光は、一切の影響を我に与える事はなかった。

 

 そう、これはつまり……

 

 

「………………成功、だな」

 

 

 徐にそう呟いた途端、我の視界は何かによって光を遮りだした。この時の我は自らの状態に気が回らなくなるほどに歓喜していたため、遮られた最初の間はそれに気づいてはいなかったが。

 

 

「に、兄さん大丈夫⁉︎ まさかサンライトエンデュランスに何か不都合でも起きたの⁉︎」

 

 

 我が妹に声を掛けられ、我は正気を取り戻した。彼女の声に焦燥感が出ていたためか、どうやら先程まで彼女の呼び掛けを聞き取れていなかったようだ。我としたことが馬の耳に念仏状態だったとは……

 

 しかし、そうなってしまったのも無理もないはずだ。先祖の代から長年もの間目標にしてきた、叶うことのない期間が続いても諦めることのなかった太陽克服の夢を、この時を持って達成させることが出来たのだから。

 

 

「ありがとう、我が妹よ。我等一族の夢を叶えさせてくれたことを誇りに思うぞ。愛してる」

 

「ッ⁉︎」

 

 

 思い返してみれば、さすがに『愛してる』までは言い過ぎたかもしれぬな。いくら長年の夢を叶えさせてくれたとはいえ、だからといって勘違いされそうな言葉を使うのは良くないな。うむ。

 

 

 

「………………愛してるって言ってくれた。こそばゆいけど結構嬉しいかも……えへへっ」

 

 

 

 後日。我の太陽克服の話を聞いた同族達も我が妹にサンライトエンデュランスを付与してほしいと色々な手段(力づくは除く)で頼んで来たが、我が妹は我との恩恵があるからなどといって快く引き受けたようだ。我が妹よ、なんと優しい性分なのか……

 

 

 

 

 

 

 ……という話を白哉にした後、彼にも魔族や魔法少女との関わりのある話をさせたせいで放心状態にさせてしまった。いくら我が長話したからとはいえ、求めるべき等価と求めるべきではない等価というものがあるのだなということを改めて知った経験だったな。

 

 

「いやなんて話を原稿用紙に書いてるの。もしかしてこの経験を参考にした小説を書くつもりなの?」

 

「否、ここから色々絞り出して書くことはできぬから悔しくもお蔵入りとなったのだ」

 

「じゃあ書く意味ないじゃん。参考になるとか言ってたあの時の兄さんはどこへ行ったの」

 

 

 ぬぅ、書く意味ないとは失礼な。小説の参考には出来ずともきちんと意味ならあるわ。

 

 

「この日に聞かされた話は白哉君の為になることを考えやすくなるぞ。今後の魔族や魔法少女と関わる時の事とか色々と。それにこういった経験は書き留めておくべきである」

 

「……原稿用紙を日記代わりにしてるってこと? それ、別に白紙に書けばいいんじゃ……」

 

 

 分かっておらぬな我が妹よ。原稿用紙を日記代わりにするということは、物語のプロットを作りながら記憶に入れるのと同じこと。つまりは頭の中にきちんと記憶させたいことは原稿用紙に書くのが一番、それが我の記憶術なのだよ‼︎

 

 ………………しかし……

 

 

「よく考えてみれば、我と我が妹の馴れ初めを話すことも、誰かの長話を率先して聞くことも初めてであったな」

 

「えっ? そうだったっけ?」

 

 

 うむ、そこは確信できるぞ。常連客でもただ本を買いに来るだけか軽くお話しする程度しか絡む機会はなかったからな。それも全て、人気による客の混雑だったり相手側の時間が限られているという偶然もあったりしてな。だから我の過去を話す機会もなかった……

 

 だが、この日は違った。我の店の本を買う以外の目的で来た者、魔族を探すという目的で来た彼──白哉からは不思議な何かを感じた。

 

 彼は一族の末裔でもなんでもないというのに、普通の者とは違う何かを感じる。我等兄妹の話を聞かせておけば今後何かしら面白い反応を見せてくれるだろう、彼の話を聞けば我自身も何かが変わるのかもしれん。そんなもしもが不思議と次々に浮かんでくる。

 

 本当に、不思議な男だ。我にここまで興味を持たせるとはな。どうにもまた関わりたいと思ってしまう。

 

 

「………………そういえば彼、ばんだ荘というところで暮らしてるらしいな。そこで長話させてしまったお詫びの品を渡しに行くとするか」

 

「そうだね。桜さんの作ってくれた結界はあの人との絡みのある穏健派魔法少女と関われるから行けるし、後日行ってみましょうか」

 

「うむ。また会えるのが楽しみである」

 

 

 白哉よ。君という存在がどれほど周りを楽しませてくれるのか、期待させてもらうぞ。

 

 




ん……? あれ……? なんか、奈々さんがブラムさんに対してどっかで書いた覚えのある感情を出してるような……それもシャミ子の白哉君に対する反応と似てるような……アレ……?

まあとにかく、前回の話の補完となる初めての番外編はこれまで‼︎ 土曜日からまたいつもの原作回に戻りますよー‼︎
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