偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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高価なもの食いたいので初投稿です。

実を言うと二話先の展開をどうしようか悩んでいます……


シャドウミストレス優子救出大作戦‼︎ ……いや別に優子が囚われたとかそんなんじゃないけどね

「白哉さん‼︎ 宜しければこれをどうぞ‼︎」

 

「………………? えっと……優子、これは一体……?」

 

「今日はバイト先でランチプレートの綺麗な盛りつけ方を教わったんです‼︎ ついでに余り物もいただいたので早速実践しました‼︎」

 

「そ、そうなんだな……」

 

「そ、それで、どうですか? いい感じに映えてますか……?」

 

「えっ⁉︎ えっと……お、俺が盛りつける時のイメージよりも結構良く出来ていて、その……美味そうだな……」

 

「そ、そうですか。そう言ってくれると嬉しいです‼︎ …………………えへへっ

 

 

 ………………………………

 

 

 

 あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ‼︎

 

 この俺・平地白哉は、お裾分けする料理は何がいいのかと優子に聞こうとしたら、オシャレなカフェのランチプレートみたいにソーセージやらエビフライやらが大皿に盛りつけられたなんかの料理を、優子に逆にお裾分けされていた……

 

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何を渡されているのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……

 

 一般の手作りお弁当とか、タッパーに詰められた余り物の料理とか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

 

 

 

 優子が魔族探しを始めて二日目となった。初日にて早速二人の魔族──喫茶店『あすら』の店長兼マスターの白澤さんとリコさんを見つけたらしいけど、それ以降は桜さんの行方の調査どころか魔族探しすら完全に忘れてしまうという現象が起きているようだ。まだ二日目だけどね。

 

 その代わりと言ってはなんだとは思うが、このようになんか『あすら』の余り物で豪勢なもの作って、家族だけでなく俺や桃達に献上しています。いつも夕飯のお裾分けしてた俺が今度は優子にお裾分けされるとは……なんか複雑だな。優子が作ったものってわけじゃないとは思うけども。

 

 

「………………ちょっとこの場で味見させてもらってもいいか?」

 

「えっ? あっ……は、はい。どうぞ」

 

 

 リコさんが作ったものだったとしたら、食べた瞬間に変な感じになる可能性も危惧できなからな。この場で一回味見して、ヤバそうって感じだったら優子には悪いけどこれは返品させとかないと。

 

 というわけでソーセージを食うことにします。一口丸ごとサイズのヤツもあったからまずはそれから。普通にパクってする程度だとどのように体の変化が起きるのかっていうのが分かりづらいと思うから、こういうのが妥協……なのか?

 

 パリッ。モグモクモグモク……

 

 

「……美味い。一度調理されてしばらく経ったはずなのに、皮はパリッパリで中はジューシー。肉汁も結構溢れてくるな」

 

 

 そしてソーセージ一本だけ食べても変な気分にはならない。このプレート分だけなら食べても問題ないだろうな。

 

 

「お、美味しかったですか⁉︎ そ、そうですか……‼︎ そ、その、自分が作ったわけじゃないのに、こんなに嬉しいと思ったことはないと思います……」

 

 

 あ、これリコさんが作った方のヤツか。まあそうかもしれないとは思っていたけどさ。

 

 

「それって自分の料理を卑下してるってことにならないか? そういうのはよくないぞ。優子の作る飯だって充分美味いぞ。お世辞とかじゃなくて」

 

「えっ……あっ。そ、そうですか……そ、そっか……私のも美味しいんですね……ニェヘヘ……

 

 

 ゲッ。ヤベッ、口が滑った。安易に変な褒め方したら優子が一時的にヤンデレモードになるの忘れてた。けど人の良さを褒めるのは癖となってるし、本当はいい事なのだからやめようにもやめれないんだよな……

 

 ……とりあえず、指摘ぐらいはするか。このまま放っておけば優子が色んな意味で危なくなりそうだし。

 

 

「優子、顔。顔。ヤバい事考えてそうな顔になってるぞ」

 

「ハッ⁉︎ わ、私ってばまた……‼︎ す、すみません。ありがとうございます……」

 

 

 やっぱり今回のも自分がヤンデレったってことに気づいてたのね。ヤバい状態にならずに済んだぜ。助かった……

 

 

「で、でしたら……偶には私が作ったのもお裾分けしますので、そ、その……その時は、期待してもらってもいいですか……?」

 

「えっ。………………お、おう。その時を楽しみにしておくよ」

 

 

 う、上目遣い……‼︎ 照れ顔からの上目遣い……‼︎ や、やめろ……俺をこれ以上ドキドキさせんどいてくれ……‼︎

 

 この後ランチプレートみたいなものを受け取った俺は、それを優子が作る飯も色々と想像しながら食べた。そのおかげなのか食っても変な気分とかにならずに済んだようだ。というか前も『あすら』の飯食ったことあるとはいえ、よく躊躇なくこれ食えたな俺……

 

 

 

 

「……どう思う、二人とも」

 

 

 優子が桜さんの行方調査と新たな魔族探しをしてから四日目が経った。優子を何故かまた置いて行かれたリリスさん含め四人で見送った後、桃は俺達に優子の様子について問いかけた。……ついに怪しむようになったか。まあ原作読んだ俺はここら辺でそう言うとは察してたけど。

 

 

「明らかに変ね。シャミ子がこんなシャレオツなカフェご飯を覚えるなんて……六畳間で食べると違和感が───」

 

「そこも気になるけど違う」

 

「俺にそれをお裾分けしに来た時、何故か知らんが毎回何かしらのアプローチを掛けて来てる気が───」

 

「それは色々な方面で期待に胸を膨らませられるんだけど、それも違う」

 

「おいちょっと待て。期待に胸を膨らませられるってなんだ。どういう意味で言ってんだコラ」

 

 

 引っかかる言葉に対するこの問いかけは無視されました。まあからかい上手の千代田さんみたいなキャラの桃だから、俺と優子の関係に関する質問は都合の良い時だけ無視するだろうなとは思ってるけどさ……やっぱり腹立つ。

 

 そんなことは置いといて、みたいな感じに本題に戻されました。解せぬ。

 

 優子が調査をド忘れし続けてるのはこれで四日目。桃的には二日目までは彼女ならギリありえると思っていたらしいが(優子に失礼だなオイ)、二日間大事なことを忘れ続けるのは不自然すぎると感じているようだ。確かに連日で重要なところを忘れるってのは不信感を抱いてしまうな。

 

 ミカンも最近の優子の様子が心配のようで、家でも元気に見えるのに言ってることが要領を得ず、昨日なんて店員さんスイッチが入りっぱなしで、気づけば小一時間も二人でカフェセレブごっこを楽しんでいたと語る……

 

 待てや。なんでそれを小一時間もやれる。つーか乗っかる方もどうかしてるぞ。そもそもカフェセレブごっこってなんだ。ツッコミどころ満載やろがい。

 

 リリスさんも疑問に感じたのか優子の意識に入ってみようとしたが、優子の脳内空間がボケボケになっていて入り口が見当たらなかったらしい。眠りが浅くなっているか、あるいは出先で術または暗示か何かかけられている可能性があると憶測もしているようだ。

 

 

【このままだとまずいかもしれないメェ〜】

 

「うおっビックリした⁉︎ メェール君いつの間に⁉︎」

 

 

 おま、メェール君いきなりひょこっと顔を出さないでくれませんかね⁉︎ しかも気配を隠さないでいいから‼︎ っていうか魔法少女二人に察知されることなく割り込めるとかすごくね⁉︎ というか。

 

 

「まずいかもしれないって、どういうことだ?」

 

【マスター、よく考えてほしいメェ〜。シャミ子ちゃんが自分自身の成すべき事を連日忘れてしまう。家でも小一時間もセレブカフェ店員モードになる───】

 

「セレブカフェ店員って何だよ」

 

【……話を遮らないでほしいメェ〜】

 

 

 それはマジでごめん。変なワードが出たものだから、ついツッコミを入れちまった。

 

 

【さっき供述した二つを含め、ましてや容態を確認しようにも脳内空間が正常ではない……これはシャミ子ちゃんに対して何かしらの悪影響を及ばしているってことになるメェ〜。もしこのままシャミ子ちゃんを放置すれば……】

 

「……洗脳みたいな仕打ちを受け続けている優子が、本来の優子じゃなくなる……そんな感じか?」

 

【平たく言えばその通りだメェ〜】

 

 

 本来の優子じゃなくなる、か……それは何というか、優子そのものがどこかに消えてしまったみたいで、なんだか心がすごく痛く感じてしまうな……

 

 いや俺が転生して関わった時点で、優子がヤンデレになって何割かは原作通りの性格にはならなかったと思うけども。人の事を言えないなオイ。

 

 

【ここでマスターに質問するメェ〜。もしもシャミ子ちゃんがバイト先で、あんなことやこんなことをされていたらどうす───】

 

「優子に限らず仲の良い人がそうなったら、そのようにした馬鹿どもを捕らえて禁縛・尋問する。そして奴らが洗脳した人達全員を元に戻すよう脅迫する。流石の俺も心を鬼にするわ」

 

「「『それは心を鬼にするってレベルじゃないよ(わよ)(ぞ)⁉︎ もはや修羅の領域に達しそうな程の怖い顔になってるから‼︎」」』

 

 

 息合ってんじゃん。三人揃って息もセリフもぴったしになることってある?

 

 えっ、修羅みたいな顔? ……俺、そんなになる程にまで怒ってたの⁉︎ えぇっ、我ながら怖っ……

 

 

「と、とにかく……喫茶店『あすら』に魔族がいることは分かった。準備も終わったし、結界を強行突破しよう」

 

 

 お、ついに原作での重大イベントに繋がるサブイベントの発生だな。ここで今、俺がやるべきことはただ一つ……

 

 

「始めよう……シャミ子の就職断固拒───

 

 

 

「シャドウミストレス優子救出大作戦、開始だッ‼︎」

 

 

 

 これから行う作戦名を無理矢理改名させることだッ‼︎

 

 

「………………えっ?」

 

「えっ? じゃねーよ。なんだその反応は」

 

 

 俺のカッコ良いキメ台詞を台無しにするような反応しやがって。その時の時間を返せコラ。

 

 

「あの……一応私が言おうとした作戦、白哉くんにも教えたはずなんだけど……」

 

 

 うん、聞いたよ? 昨日ちゃんと聞いたよ? 作戦の内容はまあ中々良いとは思うよ。けど、それとこれとは違うところがある、

 

 

「賛同したのは作戦の内容だけだよ。問題はその作戦名だ。お前が言おうとした作戦名は『シャミ子の就職断固拒否作戦』だろ? それだと『優子をニートにしよう』という過保護すぎる親みたいな思考をしてるように思えてきて、優子が大人になってもマジで就職しなくなって、ダメ人間ならぬダメ魔族フラグまっしぐらになりそうで仕方ないんだよ。だから作戦名は優子を調査ド忘れループから逃れさせるために『シャドウミストレス優子救出大作戦』にする。異論は認めん」

 

「いやなんか後先のことを考えすぎていないかしら⁉︎ ……ま、まあ『救出大作戦』の方が『就職断固拒否作戦』よりも結構前向きに聞こえるから余程マシではあるけど……」

 

「ほーら、常識人な魔法少女からもそれなりの評価だぞー。参ったかー」

 

「ッ……負けた」

 

『いや何の勝負をしているのだお主ら二人は……』

 

「ホントにね」

 

 

 黙らしゃい。今後の優子の将来に関わるのかもしれない大事なところでもあるんだよ今回やる作戦の名前ってのは。優子を勝手にニートになどさせてたまるかってんだ。俺ァ優子をヤンデレニートにさせるのはごめんだ。

 

 まあとにかく、俺達は作戦実行のために桜ヶ丘公園にレッツラゴー。何故そこへ向かうのかって? そこから結界を狙撃するためです。

 

 魔法少女は結界に干渉できないため、人形に魂を移したリリスさんにハートフルモーフィンステッキを持たせ、それに秘められた魔力を使って結界を書き換えてしまおうという算段である。ちなみに狙撃担当はミカン。本人曰く、近くだと緊張して全然当たらないが、超遠くからだと結構当てられるとのこと。普通、逆じゃね?

 

 まあ何はともあれだ。俺はミカン達の発射用意を見守りながら、何かしらの不祥事とかが起きないのかどうかを確かめるために傍観させていただくとしますわ。わあ、発射されようとする矢がめっちゃ光るー。

 

 

 

 

 

 

 陰陽師の高校生・仙寿拓海はご機嫌だった。その理由は、夏休みが来たことで大量に来た陰陽師への依頼を終わらせたからでも、夏休みの宿題を日記以外全て終わらせたからでもない。それらによって、久しぶりに喫茶店『あすら』に顔を出せるからである。

 

 彼は『あすら』には最低でも二週間に一回ぐらいは顔を出し、よく店の手伝いをしていたが、上記の二つの出来事……主に多く蔓延ってきた陰陽師への仕事の依頼が多忙となっていたため、『あすら』を訪れる機会が取れずにいたようだ。

 

 その間は店の経営等のことをとても心配しており、陰陽師の仕事中に『胃薬を飲んでいそうなマスターの身に比べたらアンタの恨みは弱いんだよ‼︎』と怨霊に八つ当たりする程だとか。怨霊、哀れ。

 

 だがその仕事も一昨日にて終わり、そんな多忙な中でも夏休みの宿題を日記以外全て終わらせ、拓海はついに自由時間を長く作れるチャンスを得た。そして、その一部を『あすら』の助っ人に行くという行動に使ったのだ。それが今日である。

 

 ご機嫌にスキップしていた拓海は『あすら』の看板を目にした途端、そこの扉の前まで大きなスキップをし、その場で着地した。好きなものが目に入った時の小学生か、みたいなツッコミが起きそうなのを気にせず、拓海はその扉を思いっきり開いた。

 

 

「こんにちはー‼︎ マスターにリコさん、陰陽師の仕事に区切りがついたので久しぶりに店の手伝いに来ま……し、た……?」

 

 

 が、開けた瞬間に見えた光景に呆気を取られて固まってしまう。彼の視線の先にいたのは、『あすら』での実質先輩に当たるリコとマスターこと白澤、そしてクラスメイトでもある魔族のシャミ子だった。

 

 しかしシャミ子の方はリコと同じ『あすら』の制服を着ている。何故? 夏休み期間中の長期間バイトでも体験するつもりだろうか? 拓海は思わず動揺してしまい始める。

 

 

「あ、拓海君。久しぶりだね。突然だけど紹介するね。この子は四日前から働いてくれてる───」

 

「シャミ子君、ですよね? ウチのクラスメイトなので知ってます。というかここに働き始めたんだ……」

 

「なんや、優子はんにはシャミ子ってあだ名があったんやな。それに拓海はんのクラスメイトだったんやな〜」

 

 

 リコがシャミ子の事で何かしら呟いていることに耳を傾けてはいるものの、シャミ子がこの店でバイトし始めていることが未だに信じられないと感じており、さらには今の彼女の様子に疑問を抱いていた。

 

 

「あー……シャミ子君、大丈夫かい?」

 

「───ハッ⁉︎ すみません、ボーッとしてました……ってあれ? 拓海くん? 来てくれたんですか?」

 

「この店の助っ人として久しぶりにね………………なんかいつもと調子が良くないと思うけど、大丈夫?」

 

 

 この時の拓海は静かに警戒態勢に入っていた。いつもなら負けず嫌いな精神を見せたり揶揄われたら根性で押し返そうとする強い意志を見せたりする彼女が、今は目のハイライトを失い虚ろとなっている。彼女がこのような状態になるのは何やらおかしい……拓海はそう危惧しているのだ。

 

 何故彼女が虚ろ状態になっているのか。働き始めたことによる環境に耐えられていないからなのか。はたまたリコや白澤との事で何かしらの問題があるのか。拓海の疑問は広がっていくばかりだ。

 

 

「む? お疲れなのだろうか……? 優子君、しばらく拓海君に任せてもらうから休憩に入ってくれたまえ。奥でまかないでも食べてて」

 

「……マスターが何かをやらかしたわけではない、か」

 

「えっそれどういう意味? 僕何かやってはいけないことでもしてたの?」

 

 

 拓海の徐に呟いた言葉が白澤に刺さり焦らせ、とばっちりという形を作って受けてしまう。理不尽である。白澤、哀れ。

 

 

「なー優子はん。もしかしてなんやけど……」

 

 

 刹那。リコが何やらシャミ子に問いかけようとしたのを遮るかの如く窓の割れる音が響いた。シャミ子以外がその音がする方向に振り向くと、床には一本の矢とそこに結び付けられた一枚の紙──矢文──が突き刺さっていた。

 

 黄緑色に光るその矢は物質的なものではなく、完全なる光の結晶で作られしものだった。数秒にしてその矢は自然と消え、そこに残ってたのは一枚の矢文だけだった。それを拓海が恐る恐る手に取り、開く。

 

 

 

『逃げたら撃ちます

 穏便にお願いします

 ごめんなさいね

 

 ひなつき』

 

 

 

「………………ひな、つき……?」

 

 

 リコと白澤が矢文の内容の事で何やら揉め事になっている中、拓海は一人矢文の書き手の苗字に目を当てていた。『ひなつき』。その苗字を持つ知り合いで、非論理的な造りとなっていた矢を放てる存在は一人しかいない。

 

 

「……陽夏木さん、一体何を考えているんだ……」

 

 

 拓海の警戒心がより一層高まりだした。魔族に対しても無闇に攻撃するなんて事は考えないはずのミカンが、穏健派な魔法少女が、人一倍に優しい性格の彼女が魔族を攻撃するだなんてあり得ない。そう確信してきたからだ。

 

 しかし今はどうであろうか。魔族側が穏やかにならなければならない前提でとはいえ、魔族の命を狙おうとしているではないか。何故そのような真似をするというのだ。拓海の疑問は増していくばかりだ。

 

 

「……急にすみません。二名と使い魔二匹です。入っていいですか」

 

 

 扉の開く音とウェルカムベルの鳴る音。拓海はその音に反応し振り返ると、そこには召喚師覚醒フォームの姿の白哉と魔法少女の姿の桃が(それぞれの肩に乗っている羊っぽい何かとシャミ子と似た顔をした何かも)。

 

 

「……‼︎ 白哉君、桃君……‼︎」

 

「あれ、拓海くん? なんでこんなところに───」

 

 

 いち早く拓海の存在に気づいた桃の言葉を遮るが如く、拓海はすぐさま懐から陰陽札を取り出し、それを見せつけながら臨戦態勢に入った。それを見た二人は思わず目を見開く。

 

 

「は? ちょっ、拓海?」

 

「………………二人とも、ここに何しに来たんだ。マスターとリコ先輩の命を狙うというのなら、こっちも容赦はしない……‼︎」

 

「「えっ? どういうこと?」」

 

 

 何故拓海が突然敵対する前提の宣戦布告みたいなことを言うのか、そう思い込んでいるかのような呆けた表情を見せる白哉と桃。そんな二人を気にせず、拓海は睨みつけながら、陰陽肌から青白い灯火のような物質を滾らせる。この灯火は妖術の発動に必要となる霊力と呼ばれるものであり、いつでも霊術を発動できる状態になっているというわけだ。

 

 

「とぼけないでくれ。君達はいつでも戦えるようにと姿を変えてるじゃないか。それに先程だって陽夏木さんが光の矢を放っていた。それはつまりここに魔族がいるという情報を君達は既に掴んでいるという証拠。二人に一センチでも触れてみろ。その時は───」

 

 

 刹那。拓海の右腕にしがみつくものが。白澤である。短い手で必死に拓海の腕を抑えており、表情からも慌てている様子が目に見えている。

 

 

「拓海君落ち着いて‼︎ ちゃんと矢文を見て矢文を‼︎ 『穏便に』‼︎ 『穏便に』って書いてあるから‼︎ 無闇に刺激させないで‼︎」

 

「えっ……? えっと……」

 

「にしてもお二方共えらい凝った格好ですなあ。今日はぶぶ漬けしかないんやけど大丈夫?」

 

「リコ君も煽らないで⁉︎ ホント二人ともやめて⁉︎ お願いだから‼︎」

 

 

 必死に臨戦態勢を解くように懇願する白澤に、いつも通りほんわかしながらもこちら側から喧嘩を売る雰囲気を出しているリコ。そんな二人を見て呆然としたのか、拍子抜けな感じとなった拓海は思わず陰陽札に滾らせていた霊力を解き、臨戦態勢も解いてしまった。

 

 

「あー、その……とりあえず、話を聞いてもらってくれるか? お前の誤解を解きたいし、そもそも俺達は優子に用があるからさ」

 

「えっ。あ、あぁ……うん」

 

 

 拓海が冷静になったと判断したのか、二人での話し合いを申し込んだ白哉。一方の拓海も拍子抜けが収まってないからか二つ返事で了承することに。

 

 その間、桃・白澤・リコの三人はシャミ子の元へ行き、そこでシャミ子に関わる話し合いをすることに。彼等がどのように話し合ったのかは……原作『まちカドまぞく』三巻またはアニメ二期四話(十六話)をご覧ください。以上、宣伝パートでした。

 

 

 

 

 

 

 ハ、ハラハラしたぁ……まさか今日に限って拓海が『あすら』の助っ人に来ていたなんてな……しかもミカンの書いた矢文を見て俺達が『あすら』の魔族──白澤さんとリコさんの命を狙っているのだと勘違いしてしまうとは……いや『逃げたら撃ちます』って書いたらそりゃそう勘違いしやすいけども。

 

 一時は戦闘フラグになりそうでどうなるのかと思ったけど、白澤さんが拓海を止めてくれたおかげでそうなることはなかった。とはいえ、マジで戦闘フラグにならなくて済んだぜ……友情崩壊フラグして原作に大きな影響を与えそうで怖かったから……

 

 と、とりあえず拓海が落ち着いてくれたおかげで話し合いを作る機会を作れたし、誤解を解きやすくなったし、よかったと思う。

 

 ってなわけで、優子の事は桃に任せてもらい、俺は拓海の誤解を解くことを試みることにした。優子が桜さんの行方を探してること、そのために魔族を探すことになってること、最近『あすら』に行ってる優子がその目的を忘れてること、なども全て。

 

 

「───ってなわけなんだけど、どうだ? 俺達が白さ……マスター達の命を狙ってないってことが分かったか? 分かってくれるとありがたいのだけど……」

 

「………………うーん、ここに来た理由は理解したけど……」

 

 

 あれ? 一押しが足りない? まだ誤解が解けてない感じ? 嘘をついてないだろうなと思っている感じではあるみたいだけど……

 

 

「白哉君、一度ここに来たよね? ここにマスター達魔族がいることを陽夏木さん達に話してないかい?」

 

 

 あっ。そういえば俺、確かに一度ここに来てたな。それも拓海に連れて行ってもらって奢ってもらったんだっけ。で、そこで白澤さんとリコさんという魔族がいたことも知った……あっ、ここは原作を知ってたから会うから知ってたけども。

 

 

【マスターはこの事を誰にも教えてはないメェ〜。そもそも『あすら』に行ったことどころか、君に奢ってもらったってことすらも話してないらしいメェ〜。誰にも。素で忘れてたってのもあるかもしれないけどメェ〜】

 

 

 オイ、本当の事を言うな。

 

 

「そ、そうなのか。ならマスター達の命を狙うとは思えないし、こっちも安心するよ……というか君、喋れたんだ。餓狼って狼もそうだったけど」

 

【一匹を除いて僕らマスターの召喚獣はみんな喋れるメェ〜。あ、僕が言うマスターはこの店のマスターじゃないメェ〜よ】

 

 

 そんぐらい拓海も分かっとるわ。説明しなくてもいい……いやマスターと呼ばれている奴が二人いて紛らわしいから説明は必須か。

 

 とりあえず、メェール君の説明で完全に誤解は解けたようだ。俺が白澤さんとリコさんの事を桃とミカンに教えなかったことが誤解を解くことに最適となったようだ。よかったよかった。

 

 ……って、うおっ⁉︎ 両手をテーブルに思いっきり叩きつけて朴を勢いよく垂れてきた⁉︎ い、一体何を……

 

 

「本当に申し訳ない‼︎ 君達がマスターとリコ先輩の命を狙う輩になったのではと勘違いしてしまって‼︎」

 

「えっ。あ、いや別に……こっちも勘違いさせてしまったわけだし、やり方がやり方だったから……」

 

 

 あ、盛大なる謝罪ってわけですか。勢い良くバンッてやるな紛らわしい。というか大袈裟な感じが強くない? 気のせい? 俺の気のせいなの?

 

 

「白哉くん、拓海くんとの話し合いは終わった? 今日のところは撤収するよ。シャミ子を寝かせたいから」

 

「おっ、中々良いタイミングで。少なくとも区切りがつけるぞ。ってか終わった終わった、誤解解けた」

 

 

 どうやら桃の方も優子の回収に成功した感じかな。優子を担いで左手だけで支えているようだ……左手だけで? 普通片手だけで人を支えられるわけないよね? どんだけ腕力高いねん。

 

 ま、とにかくこれで『シャドウミストレス優子救出大作戦』はこれで完了したな。さっさとずらか……帰るとするか。

 

 

「それじゃあ俺達はこの辺で。あ、マスター。すみませんが優子のバイト代は本来のシフトの時間通りでお願いします。俺達が勝手に連れて帰ってアレなんですが。それでチャラで」

 

「どんなチャラのさせ方なんだい……?」

 

 

 喧しい。後々面倒な事を増やすわけにはいかんのよ。だから余計に話を広げようとはしないでくれ。はよ帰らせてくれ。頼むから。

 

 

 

 

 

 

 夕日をバックに歩く帰り道。俺が優子を背負い、桃がミカンに撤収の電話を掛けた後に頭の上で足パタパタさせてるリリスさんを握りしめている。リリスさん可哀想。

 

 つーか俺、優子を背負う役をやるとか言わない方が良かったか……? だって、胸……胸が俺の背中に当たってるからさ、理性の問題がちょっと……

 

 あっ、優子が調査をド忘れした原因はやっぱりリコさんの料理のせいでありました。というか食べた量の問題だけど。

 

 リコさんの料理は心を癒す料理だが、食べ過ぎると最高に……ってはならないと思うけどハイッ‼︎ってなって健忘が出てしまうらしい。そして、貧相暮らしだった優子はもったいない精神のせいで破棄寸前の料理を持ち帰ってめっちゃ食べたそうだ。一日普通のもの食ってゆっくり寝れば忘れた用事も含め元通りだとか。

 

 うーん……これ、俺が原作の知識を持ってなかったらどうなってたんだ? 疑心暗鬼になったりして頭がおかしくなったりしちゃわないか? なんか、もしもの自分を考えたら怖くなってきたな……

 

 

「………………ごめん、白哉くん」

 

 

 は? 何急に俺に対して謝ってきてんだこの桃色魔法少女は? お前俺に何か悪いことでもしたのか?

 

 

「私がシャミ子の様子がおかしくなってしまったことに気づいていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない……そう思っていたら、なんだか心苦しくなって……」

 

「……それはお互い様だ。俺も微塵でも気づいた事を言わなかったら、桃もミカンも一日早く行動に移さなかったと思うから。どっちもどっちだろ」

 

 

 ま、原作通りに事を運びたかったから黙ってたってのもあるけどな。我ながらひでーなオイ。

 

 

「けど、白哉くんの幼馴染をこんなになるまで放っておいてしまったから───」

 

「このアホ」

 

「痛っ⁉︎」

 

 

 また一人で思い悩もうとしていたので、ゲンコツ一発かましてやりました。あの筋力バカスゲー魔法少女にだぜ? 『痛っ』って言わせてやったぜ? それって日頃の揶揄われた恨みを晴らせたってことになるよな?

 

 や っ た ぜ 。

 

 ……というか。

 

 

「この程度の攻撃でも『痛い』とか言うんだなお前も」

 

「……私、痛覚の失った何かだと思われてるの?」

 

 

 おっ、なんか呆然とした顔になったな。これは俺の話を聞き入らせるチャンスだ、とことん言わせてもらうで。

 

 

「そうやって一人で悩み込むのやめろよな。優子があそこへ向かう要因である『桜さんを探すために魔族も探す』ってのもこいつが自分から決めて宣言したことだし、俺もお前もそれが上手くいくと信じて受け入れたんだろ? その事でウジウジと一人だけ引き摺るとかカッコ悪いっての」

 

 

 ここで桃が何かに気づいたかのような表情になる。あの時の公園のところで俺や優子に言われたことを思い出したようだな。よし、後もう一押しさせてもらうとするか。

 

 

「悩み事が出来たらちゃんと誰かに相談しろ。手を差し伸べてもらえ。『一人はみんなのために』『みんなは一人のために』。その精神を持った方が、お前だけじゃなくみんなを強くするんだよ」

 

 

 一人でなんとかしよう、なんて考えは孤独な闘いを続けることと同じこと。孤独な闘いを続けることは自ら破滅の道を辿るのと同じことだ。その道を一人で回避することができるのはあくまで創作の世界でだけだ。そのように上手く事が運ぶわけがない。

 

 

「だから……誰かを助けたいなら、誰かに救われたいという意思を持て。願え。それが、今お前がすべきことだ」

 

 

 ここで敢えて桃と視線を合わせずそう告げる俺。こうすれば俺の今の顔を見た桃もきっと心境を変えられていき、自分が本当にすべき事やしてもらうべき事を理解してくれるはずだ。そして孤独の道から外れてくれると信じたい。ってかそうであってくれないと優子達も悲しむ。

 

 

「救われたいと願うこそが、私のすべきこと……」

 

「───ん……? あれ……?」

 

「あっ。悪い優子、起こしちまったか」

 

 

 どうやら俺達の会話によって優子が起きてしまったようだ。しかも案の定うつらうつらな状態のままだ。無理に起きないで欲しかったんだがな。

 

 

「私の、すべきこと……何かあったような気が……私の今の最重要事項……えーっと……」

 

 

 どうやら俺が伝えた最後の言葉か桃の呟きを聞き取っていたらしく、健忘状態ながらも無理にその事を思い出そうとしているようだ。本来なら優子が今すべきなのは桜さんの行方を探すことだが……原作知識を持つ俺は彼女がこの後言うセリフを知っている。

 

 

 

「……そうだ‼︎ 私の使命は……桃をニコニコ笑顔にすること……‼︎」

 

 

 

 これである。そしてこれを言った後優子はすぐにまた眠りについた。まるで寝言でも言ったかのようだ。

 

 

「………………?? ………………違うっ‼︎ ぜんっぜん違う‼︎」

 

「いや、今後のお前のためのことも考えるとそれと同時進行で進めないとアカンやろ」

 

「どういう意味⁉︎ 後なんで関西弁⁉︎」

 

 

 おっ、どうやら桃の調子が戻ってる感じだぞ。先程までの自己嫌悪感がなくなって来とる。優子、ナイス。

 

 

「とりま今はお前は心の底から笑顔になれるようにしろ。桜さん探しはそれからだ」

 

「あれっ⁉︎ なんか私の最重要事項を無理矢理変えられた⁉︎」

 

 

 いいからお前は言われた通りの事ができるようにしやがれ。それが今の優子の為ってもんだ。とりあえず、今日はさっさと帰って優子を寝かしておこう。そうしよう。うん。

 

 

 

「………………シャミ子が白哉くんを好きになる理由、分かったかも。私もこんな感じに、あの人の事を好きになっちゃったから………………ハッ⁉︎ な、何呟いてるのかな私⁉︎ こんな事、シャミ子や白哉くん達に聞かれたら恥ずか死してしまう……‼︎」

 

 

 

 ……ん? なんか桃がぶつぶつ言ってたけど、何言ったんだ? 聞こえへん。……ま、いっか。なんか聞かれたくない感を出してる感じだし、無難に聞かない方が互いの身のためだな。

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その15

拓海「お疲れ様でしたー。……ふぅ、今日は災難だったな。突然陽夏木さんの矢が店に放たれたり白哉君と桃君が入り込んできたり、これらを魔族狩りの象徴みたいなものかと勘違いしたりして……いや状況が状況とはいえ、一歩間違えたらどうなることかと───」
?「あっ……た、拓海……?」
拓海「ん? ……あぁ陽夏木さん? どうしたのこんなところにまで来て」
ミカン「……桃から電話で聞いたわ。あの時、貴方も『あすら』に助っ人で来てたのね」
拓海「まぁね。陰陽師のもう一つの仕事、みたいな感じに偶に働いてるよ。それで、一体何しに───」
ミカン「その……ごめんなさい」
拓海「へっ? いや、急に頭下げられても……」
ミカン「あの時は知らなかったとはいえ、拓海の仕事仲間の人達の命を狙ってるみたいな勘違いをさせてしまったわ」
「結界のせいで私達魔法少女はあそこに行けない上に方法が方法だったとはいえ、もっと最適な方法があったのかもしれないって思えてきたの」
「そうでなきゃ、もしもあの時店長さん達に何かあったら……本当にごめんなさい」
拓海「陽夏木さん……」
「(そっか。陽夏木さん達も本当は無理矢理な作戦を望んでやってるわけではなかったんだな。『あすら』に貼られている結界のせいでもあるとはいえ、力づくな真似よりも最善な方法があったのではないかとも思って……)」
「(なのに俺は、あの時彼女達の行動を悪事なものと見なして、マスターに止められるまで白哉君と桃君を敵視して……)」
ミカン「お詫びなら今度できる限りするわ。だから、せめて桃と白哉は許してあげて───」
拓海「顔を上げて、陽夏木さん。俺はもう君達の事を怒ってないよ」
ミカン「えっ……」
拓海「元はといえばこちら側の不注意から発展したものだし、そちら側の事情ってものがあることも分かっているから。こちらこそごめんね」
「だからもう気に病まないで。これからもいつもみたいに仲良くしてもらえると俺も嬉しいよ」
ミカン「た、拓海………………そう。そう言ってくれるなら、私も安心できるわ。ありがとう、許してくれて」
拓海「別にいいよ。その代わり、何か困ってることがあったら俺にも相談してくれると嬉しいよ。俺も何かしら力になってあげたいからさ」
ミカン「えぇ、そうするわ。それじゃあまた」
拓海「うん、また」
「(………………ん? あれ? なんか陽夏木さんの顔色が変わった気がするけど、気のせいかな? 体調は悪く無さそうだけど……)」
ミカン「(あ、危なかった……‼︎ あとちょっとで呪いが発動するところだったわ……‼︎ あんな爽やかな笑顔で『力になるよ』って言われたら、結構ドキドキしてしまうじゃないの……‼︎)」

END



はい、今回は別の意味での初(?)の修羅場回となりました。そりゃああんな方法で結界貼ったら誤解されるわな……行動を移す時は相手側の気持ちを前提に行おう‼︎

 
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