偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
今回はついに、あの原作キャラが登場……‼︎
って、おや?白哉君の様子が……?ってこれはヤバいヤツじゃん⁉︎
どうも皆さんおはようございます。平地白哉です。昨日は驚くべき光景に遭いました。どんな光景かって?
俺や優子のところに謝罪しに来た人達が、魔族三人と魔法少女一人……善良(一人は微妙な)魔族に囲まれる善良魔法少女という光景である‼︎ 何それ? 逆人外ハーレムか何か? その魔族の内一人は女性だけど。
……えっ? 何故そんなくだらないことを連想してるのか、だって?
だってよく考えてみろよ。本来なら敵同士の関係にある光の一族と闇の一族──魔法少女と魔族──だよ? 別に優子と桃みたいに共闘してる関係になったわけではない上に、二人一組で出会ったとはいえお互い初対面だよ? なのに会った日から争ったりせず一緒にいるって感じになってんだよ? なんか、レアじゃね?
まあそんなことは置いといて。自分からレアだとか言っておきながらこの有様はないけど。
そんなわざわざ謝罪をしに来てくれた、白澤さんとブラムさんからは桜さんの事で分かっている情報(俺の場合はブラムさんの話をもう一度聞く形で)、リコさんと奈々さんからは魔法少女のコアの特徴の話をそれぞれ聞かせていただきました。ついでに奈々さんはブラムさんの命を狙う者には容赦しない性格であることも知れました。過激派ブラコン魔法少女ってマ?
それと、重要となる情報も獲得。訳あって聞くことになった、たまさくらちゃん誕生秘話(その話に出たモデルとなる白猫にブラムさんが出会った話もついでに)にて良子ちゃんがある接点に気づく。
白澤さんとブラムさんが白猫と出会ったのは十年前の十二月二十八日。そして二人とも桜さんに最後に会ったのが十二月二十五日。その猫を見るまで三日しか間がない。リコさんと奈々さん曰くコアは動物の形で動く。そして普通の猫とは違い壁に溶け、足跡は残さず花びらを出している。
これがどういう意味をしているのか。良子ちゃん曰く、その猫が桜さんのコアである可能性があるということだ。普通の猫ではあり得ないことをいくつも見せたらそりゃそう思われるのも無理もないよな。
そして白澤さんとブラムさんによる目撃情報の順番を辿ると、その猫はせいいき記念病院──俺が事故で一時期、優子が病弱だったため長期間入院してた病院──を通っていったことが判明した。
さらに有益な情報として、清子さんの供述から優子が一度その猫に会っているということも判明された(ただし十年前の出来事だからなのか、優子本人はその事を覚えていない模様)。
優子がその猫に会ったという事実を言ったのは十年前の年末。それも白澤さんとブラムさんが猫を目撃した情報の直後。それが優子の夢じゃなければ……十年前、優子は桜さんのコアと思われるその猫と接触し、何らかの話をしていた可能性があるとのこと。原作の物語でも注目すべき最重要課題がここで出てきたのだ。
♢
一度情報の整理とかする為に解散し、翌朝となって俺は吉田家にて優子・桃・ミカン・そして白澤さんから桜さんに関する話を聞いて駆けつけて来てくれた拓海の四人で集まることに。
しかし、一日経っても優子は猫に会ったという記憶を思い出せていない模様。十年前の体調が悪かった頃の記憶だもんね、思い出せないのも無理はない。
いや、ミカン? 酸味のある果物を食べさせれば思い出すかもしれないという心理に至るのはどうかと思うぞ? 優子もそういったのぐらい前から偶には食べてるし、その時に既に記憶を思い出してるのかもしれんぞ? だからその可能性は一旦置いといてくれね?
あと拓海。お前は何唐辛子とかハバネロとかいった辛いものをたくさん持ってきてんねん。ここは辛いもの大好きクラブorパーティー会場じゃねーんだぞ。えっ? 身体に刺激を与えるものを必要以上に摂れば、辛味による刺激によって欠片ぐらいは思い出すのではないかという算段らしい……
すまん拓海、そのりくつはおかし……ではなくてその理屈はさすがに通らないぞ。ミカンが優子に酸っぱいものを食べさせてる時のように、辛味の強いものをたくさん食べさせても記憶は思い出せることはないぞ。手段を考えてくれるというか手伝ってくれるのは嬉しいけど、本当にごめんな。今回はその手段は通らんわ。
『……仕方がない。こうなったら説明せざるを得ないであろう』
「説明? リリスさん、一体何に対しての説明をしてくれるのですか?」
『シャミ子の力についてだ‼︎ これ魔族的には部外秘だから、桃とミカン、あと念のため拓海の前では説明したくなかったのだが……よりしろチケットのおかわりを前にして背に腹は変えられないからな。皆の者にも教えるぞ』
あっ、やっぱり桃に賄賂を渡されたんすね。本来なら敵対関係にある人達の前で説明なんてしたら、対策をされたり逆にその力を利用されてしまう可能性だってあるからな。説明したくないって思うのも無理はないな。
……でも、賄賂を渡されて即落ち二コマみたいに『やっぱり教えちゃる‼︎』な感じに切り替えないで欲しかったですね。優子じゃなかったら子孫に失望されかねないですよその判断は。
『………………今、賄賂を渡されて即落ち二コマみたいに《やっぱり教えちゃる‼︎》な感じに切り替えないで欲しかった、って思われているような気がするのだが……気のせいか?』
「……すみません、そう思ってました。ってかほとんど鮮明に読まれるとかなんか複雑……。俺、思ってたことを顔に出してましたか?」
『いや、ただの勘で言ってみたのだが……まさかそこまで当たるとは思わなかった……』
勘かよ。勘で俺の考えてたことを当てたのかよ。それはそれでめっちゃすごいことですよリリスさん。勘だけで思考を大幅当てるなんて……
さて、本題に戻していただきました(唐突な話の切り替え)。
優子の力は夢に潜る力だと言っていたリリスさん。あれは実は優子向けにすごく噛み砕いた説明だったらしい。それを正確に表現すると、人・動物・無生物……あらゆる有情非情の無意識に侵入する能力らしい。
無意識というのは、人間でいう個々の心の中の深淵にあるところで、記憶や先天性知識などが蓄積されている場所のこと。リリスさんの一族はその場所に入り込んで、勝手に覗き見したり改竄したりすることが可能なようだ。夢はリリスさんの一族無意識領域の入り口みたいなものであるため、彼女達のことを夢魔と呼ぶ者達もいるそう。
つまり簡潔に結論を出すとこうだ。優子の力を彼女自身に使えば、十年前の記憶を見ることができるかもしれない、ということだ。……この説明だけ言えば何をすれば良いのか概ね分かるやん。わざわざ何処かの知らない人達の為にとはいえ、こうも長々と説明する必要なかったやん。
ちなみに俺達が優子と一緒に夢の中に入ることは出来ないらしい。返って弾かれるのがオチだそうだ。リリスさんが優子の夢に易々と入れることができるのは、リリスさんが優子の魂の身内であるからだそうだ。
しかし、色々な事を知りたいという大事な場面で、俺達が優子と同行できないってのが悔しいところだな。彼女の身に何かあった時に何もできないってのが、なぁ……
「白哉さん……桃……私、一人でもやってみたいです。私、不思議と白哉さんと話したこと以外、小さい頃の記憶があまりないので見てみたいです」
うおっ。優子、いつに無く強気だな。そりゃあ完全に失いかけている幼い記憶というものがどうなのかってのは、誰もが気になりそうなものだしな。そう思うのも無理はない。
……ってかなんで俺と話したことしか覚えてないの? なんで他の記憶は忘れているの? ヤンデレ特権ってか? そこは逆にすごくね?
「……わかった」
おっと、ここで桃がすぐさま了承したな。自分は何も出来ないからとはいえ、宿敵……仲の良い人のことは信じてあげたいものな。その精神を持ってくれるのは優子の幼馴染でもある俺も嬉しい限りだ。
……だったら、俺も優子を信じよう。この前まで完全には信じることが出来てなかった宿敵でも信じるようになったんだ。原作で無事に帰って来てくれるとはいえ、幼馴染が信じてあげられなくてどうする。
「優子、頑張って帰って来てくれよ。無事でいてくれることを信じてるからな」
「びゃ、白哉さん……」
……えっ? なんで信頼してる言葉をちょっと掛けただけで頬を赤くしてくるの? 別にこれ、キュンってなるセリフではないかとは思うんだけど……
「あ、あの、白哉さん……その……も、もし私がいい情報を持って帰って来れたら……その……えっと……な、中々申し上げにくいの、ですが……」
って、なんか突然何かをお願いしてくるような雰囲気を見せてくるんだけど。な、何を要求する気なんだ……? ま、まさか俺の童貞を自分の処女でもらうとか、じゃないよな……? いや桃の前というか人前でそんなこと言うことのできる根性を優子が持っているはずが……って、ど、どどど童貞ちゃうわ(自分で言ってるけども)‼︎
「キ、キ、キ………………ギュッて、してもいいですか? そ、その……も、もしかすると私、結構ショック気味な経験を十年前にして忘れてしまったって可能性があるので……」
えっ……? あっ、あぁ……そ、そういうことね。記憶探りしてる時のことを考慮して、終わった後のアフターケアみたいなことをしてもらいたいってことね。確かに脳裏にトラウマ的なものを再び植え付けてしまったりとかしたら、中々立ち直れそうにないかもしれないからな。仕方ないよね。
………………なんだろう。ちょっと何かを期待しすぎた自分がいた気がするんだけど、気のせいかな? 優子の事だから行き過ぎたことを考えてしまうのではないかとは考えてしまうけどな。本人に失礼だけど。
アレ? というか『ギュッてして』って言う前になんか『キ』って言葉を連発していたような……気のせいか? ってか仮に本当に連発したとして、『キ』から始まるもので優子がしてほしいことってあるのか?
キ……キ……キ……
キス、か……?
……ハッ⁉︎ い、いやいやいやいやいやいやいやいや‼︎ ない‼︎ さすがにない‼︎ そんなこと言ってくるはずがない‼︎ 絶対ない……とは言い難いな‼︎ 俺に対してはヤンデレっ娘になりかけてしまうんだって分かりきっている時点で‼︎ 仮に思ったとしても優子が桃の前でそんな事を言う勇気なんてないはずだ‼︎ 絶対そうに決まってる‼︎
と、とにかく‼︎ さっさと優子には寝て記憶を辿ってもらおう‼︎ そうしよう‼︎ ってかそうしないと俺が余計な事を考えそうで、こっちの身が持ちそうにないもん‼︎
「お、おう……ハ、ハグならいくらでもしてやるから、その……早く準備してくれないか……?」
「あ、は、はい……」
ひ、人前でこんなリア充に近いやりとりすんのめっちゃ恥ずかしいな……リア充はよくこんなイチャイチャという恥ずかしいやりとりを躊躇いもなくやれるな……
と、とりあえず桃を睨んでおくか。この事で揶揄ったりしてきたらただじゃおかないってな。
「えっ……? なんで私睨まれたの?」
「……揶揄い過ぎたツケが少しだけど出たのよ。察しなさい」
「自業自得だね」
「えっ……えっ?」
悪い事したって自覚がないんだけど、みたいな反応するのやめろよ。お前、今までどれだけ俺と優子を恋愛関連で揶揄ってきたのか分かってんのか。ミカンと拓海にも指摘されてんだからいい加減気づけよ。
『……ま、まあとにかくやってみる価値はあるな。夢魔は習うより慣れろ! シャミ子よ、お主の記憶からコアの情報をサルベージしてみせよ‼︎』
「ハッ⁉︎ あっ。は、はい! 頑張ります‼︎ そこで私の勇姿を見ているがいい‼︎ おやすみなさーい‼︎」
あっ。リリスさんから使命を受けた優子が恥ずかしさを紛らわすために、すぐさまソファに掛け布団敷いてお昼寝タイムに入った。スヤッ…とした感じが可愛いな。というか寝るまでのスピードがのび○並ってどういうことなの……
とりあえず、優子が寝てからしばらくは俺達の動く幕は無さそうだな。この後緊急事態が起きるけど、原作通りに進めば優子は無事に起きてくれるから問題はないな。後はそのイベントで俺も関わるべきかどうかだけ………………ど………………
刹那。俺が今見ている景色は唐突に様変わりし始めた。
あ、あれ………………? な、なんだ……? 急に、視界がぼやけ始めたんだけど……? それも、歪んだ幻覚みたいにぐにゃぐにゃってなって、色とかも疎になって……
えっ……寝不足……? いや、寝不足だとしてもこんなにも視界が二次創作のホラーシーンみたいに気持ち悪くぼやけるはずがないんだけど……というか、なんか頭がボォッーとして来た気がするんだけど……
あっちょっ……なんか、倒れそ───
半刻後。俺は何故か優子の部屋ではなく、刺々しい檻の鳥籠の中に閉じ込められていた。なんで?
♢
「びゃ、白哉くん⁉︎」
「きゅ、急にどうしたのよ白哉⁉︎」
「だ、大丈夫か⁉︎ 気をしっかりするんだ‼︎ 白哉君‼︎」
シャミ子が寝始め、自身の記憶の世界へと行き始めしばらく経った頃だった。先程まで元気にシャミ子の目覚めを待機することにしたはずの白哉が突然、意識が朦朧とした状態となりそのまま倒れ込んでしまったのだ。
そのまま地面に衝突しそうな白哉を桃が受け止め、ミカンや拓海と共に声を掛ける。しかし彼は一向に目覚める気配はない。寝息も立てていない。かといって脈や心臓の鼓動が止まっているわけでもない。ただ本当に気絶しただけである。
「ど、どういうこと……? シャミ子が寝た途端、白哉くんが急に倒れるなんて……」
先程まで健康な状態であり、魔力の乱用なども一切していないはずの白哉。そんな彼が何故、突然気絶してしまったのか……そんな疑問が過ぎる中、リリスはある点に気づいた。
『もしやこれは……不完全な契りによる影響が出始めたせいか……⁉︎』
「不完全な、契り……?」
これまで得たものの中になかった魔族に関する情報に困惑する桃。やはりかと悟ったかのように苦虫を噛み潰した顔をしたリリスは、桃達の方を振り向き口を開く。
『余達の一族はある行為によって、悠久を共にするパートナー……眷属の上位互換的存在を作る契りがあるのだ。その契りを交わした者は、相互の人間関係での相性が良ければ、一族と同じ夢魔の力を得ることができる。しかし、その者が一族との契りを途中でやめてしまったりしてしまうと、その一族が夢魔の力を使用し始めたのと同時に意識を奪われ、奪われた側の夢魔の力が自動的に一族の見ている夢の世界に入り込んでしまう可能性があるのだ』
どうやら魔族には眷属の他にも仕える存在……否、魔族と共に支え合う存在がいたようだ。その存在──パートナーになるにはそれに沿った行為による契り──契約の手順が必要となる。
だが、その契りが何かしらの影響で中断され最後まで行わなかった場合、両者の夢魔の力が不調ながらも自動的に共和され、パートナーとなるはずの者の夢魔の力が魔族の元へ赴き、牙を向く可能性がある。リリスはそう捉えているようだ。
「じゃ、じゃあ……その契りを中途半端にしたせいで、シャミ子君が夢魔の力を使ったのと同時に白哉君が無自覚にも手に入れた夢魔の力が自動的に発動して、その力がシャミ子君が今いる世界に入り込んでしまった……ってことなのかい?」
『……うむ。その可能性は大いにある』
「それじゃあ白哉だけじゃなくてシャミ子も危険じゃない‼︎ なんとかして二人とも起こしてあげないと‼︎」
「刺激で起きるほど浅い眠りじゃないぞ‼︎ 夢の中が酸っぱくなるだけだ‼︎」
不完全な契りによって、白哉とシャミ子は互いに苦しめられている。その事実を把握し肯定された拓海は言葉を失い、ミカンはどうにかして二人をレモンの酸味で起こそうとする。そんな中……
「……その契りとは、一体どういうものなのですか? それと二人が契りとやらをすることになった要因と、それが中断された原因……リリスさんは何か分かりますか?」
桃だけが、冷静に事の原因を把握しようとリリスに問いかける。
本来ならば、宿敵とその幼馴染が危険な目に遭っており、それによって一番困惑することになるのは桃自身であるはず。だが、彼女はそんな二人に一度手を差し伸べられた事があった。だからこそ、二人を救いたい。その意思が彼女の冷静さを保たさせているのだ。
桃のその予想外の反応に呆気に取られたのか、動揺していた一同は静まり返り、思わず呆けた表情を見せる。しかし、リリスさんは今すべきことが何なのかを把握し、我に返って口を開く。
『……シャミ子がこの事を耳に入れてしまえば卒倒するだろうから、今まで黙ってきたのだが……お主達に早急に理解してもらうためだ、やむを得ん。白状せねばならん』
腹を括ったかのように真剣な顔となり、顔を引き締めるリリス。そして桃と顔を見合わせ、口を開く。
『余達の一族の契りとは……
愛撫。簡潔に言えば愛のある性行為と同じものだ』
「「「………………は?」」」
予想外の解答に、思わず呆けた声と拍子抜けした表情で目を丸くする桃達。魔族の契りとは、呪文などによって悪魔の紋章を付けるものなどといった、魔術的な何かなのかと思い込んでいたなのだろう。
そんな拍子抜けな表情となっている三人を他所に、リリスは説明を続ける。
『悠久を共にするパートナーというのは、余達一同では人間達で言う夫婦と同じ存在である。その存在であることを証明させる為には、それ相応の行為をする必要がある……それが愛のある性行為だ。無論、その行為の一つとして前座である接吻──キスも必須行為となっている』
「………………キス? キス⁉︎」
接吻──キス。その言葉に何か引っ掛かりを感じたのか、桃は察した表情に変わり、リリスに問いかける……というよりも、問い詰めているかの如く目を輝かせながらリリスとの距離を詰めてきた。
「それって、シャミ子と白哉くんがいつの間にかTo LOVE○みたいなハプニングキスをしていたってこと⁉︎」
『うおっビックリした⁉︎ いきなりズイッと距離を詰めてくるな‼︎ そして何故そんなに嬉しそうなのだ⁉︎』
突然の桃のテンションの変わり様に引き気味となるリリス。先程まで自分がシリアス……厳粛な雰囲気を出してきたのに、それを自らぶち壊してきたことに対して、リリスは呆気に取られていた。
恋愛お節介女子と化してしまった桃をミカンと拓海が宥めたところで、リリスは苦い顔を浮かべながらも説明を続けた。
『ま、まあ……桃の質問は半分は正解ではあるな。シャミ子と白哉は確かにキスをしていた。だがそれはシャミ子が、一・二ヶ月程前にて昼寝中の白哉にうっかり……それも無意識にな。まあシャミ子には一族の契りを教えなかったのだし、白哉への愛の執着感が曖昧な部分もあるのだから、それ以降の契りの手順は行わなかったのだがな』
シャミ子、いつの間に意外と結構大胆なことをしていたんだ……。桃達三人のシャミ子に対するイメージが多少卑下されていたのか、リリスから明かされた衝撃の真実に呆気に取られたような表情を見せる。
これまでシャミ子は白哉に対する好意があるというのに、それを周囲に透かされているというのに、その好意を本気で白哉にぶつけてこなかった。その為か、桃達はシャミ子を恋しているのに奥手な魔族だと思い込んでいたのだ。
だが別に進展できるようなことを一切していないわけではなかった。無自覚にとはいえ、それ以上の行為は自粛していたとはいえ、白哉にファーストキスという名の純潔を与え奪い取っていた。そんな大胆な行為をしていたシャミ子に対し、桃達は思わず息を飲んだのだ。
「そ、そうなんだ……シャミ子ってば、私達の知らないところで……見てみたかった……」
『いや人のキスってのはそう易々と見せてくれるものではないと思うのだが……』
未だに白哉とシャミ子のイチャイチャを楽しみにしている様子の桃に呆れるリリス。しかしすぐさま表情を戻し、言葉を締める。
『とにかく……白哉が目を覚ますには、シャミ子が目覚めるのを待つか、白哉自身がとある条件を満たすか、そのどちらかしかない。今は二人を信じて待つしかないぞ』
「そんな……」
「ッ……」
自分達が今出来ることは、二人が無事であることを祈るしかない。その事実を突きつけられたミカンと拓海はそれ以上の言葉を失い、俯くしかなかった。
───しかし、やはり彼女だけは違った。
「………………二人が助かる方法なら、まだ何かあるのかもしれない」
「桃……?」
「たとえそれがどんなに厳しい条件であっても、効率が悪くて根拠が希薄だとしても………………私はあの二人を断固助けに行きたい‼︎ あの時手を差し伸べて助けようとした二人を、今度は私が手を差し伸べて助けたい‼︎ ……だから、どんな手段でもいい。なんとかして、リリスさん」
このとある魔法少女の決意が、一度路頭に迷い込んだ魔法少女の決意が、幽閉された二人への想いが……運命の歯車を、今ここで動かすこととなる───
♢
私が昔体験した記憶。白哉さんと話した時しかくり抜かれていて、それ以外は全て忘却の記憶として奥底に閉じ込められていた。私はその記憶がどの様なものなのかを知りたくて、白哉さんや桃に『一人でやってみたい』と宣言した。
そしたら桃は合意してくれて、白哉さんからは無事に帰って来てほしいという言葉を掛けてくれた。桃から信頼されている部分があるんだってことに気付けたのも嬉しかったけど、それ以上に白哉さんから私の事を大切に想ってくれているんだってことを知れて、とても嬉しかった。
あっ。けどその時のセリフに、白哉さんが故意とかを持ってるわけじゃないのは分かってます。いやホントに分かってます……分かってますよ? 元から誰にでも優しい白哉さんが私を揶揄うかのような事を言うはずがないですし、まだ好意とかも向けてくれるはずもない……あれ、なんか泣けてきそう。
けど、それと同時に不思議と不安も過ぎってきた。もしも夢魔の力の使い方を誤ったらどうなるのだろうと考えたら、なんだか白哉さんと離れ離れになる可能性も考慮してしまって……胸が痛い。
だって忘れてしまっていた幼い頃の自分の記憶に潜るんですよ? 何が起きるのか不思議ったらありゃしないじゃないですか。もしかすると記憶が飛ぶ程に嫌だった経験をしたりしていた可能性もありますし、ホントに背筋が凍りそうですよ。
だから私は、白哉さんにお願いしたんです。無事に帰って来れたら私のわがままを聞いてほしいって。そういったお願い事をするのは結構久しぶりで……アレ? 初めてでしたっけ? 自分の事でわがまま言うことなんて。なんか自分の記憶が曖昧になってるんですが……
最初は、その……キ、キスをお願いしようとしたんです。けど、それを頼むなんて愛が重いなって感じましたし、この前無自覚にも寝ていた白哉さんに対してそれをしてしまったっていう記憶がまた蘇ってきて……何より桃達が目の前にいる時に頼むのも恥ずかしかったので、断念しました。
いや、でもハグもハグで大概でしたね。ギュッてしてたら白哉さんへの依存度が高くなりそうな気がしますし、白哉さんの匂いを嗅いで狂いそうな気もしてきて……やっぱりあの頼み事も我ながら恥ずかしかったです。
それでも、白哉さんは終わったらハグしてくれることを約束してくれました。無論白哉さんも恥ずかしいと感じていた為、それを表してる表情を見せていましたが。こんな私の、あんな恥ずかしい頼み事を了承してくれるなんて……白哉さんは相変わらず私を無意識に虜にしてきますねホントに。こんな考え事をする自分は痛いですが。
けど、そのおかげで私は元気を出せた気がする。絶対に夢魔の力に慣れて、自分の記憶を通してとっておきの情報を手に入れてみせる。そんな誓いを心の中で立てることができた気がしたんです。
その想いを胸に、私は眠りについた。そして……私の十年前の記憶の扉に入ることができました。
その世界はずっと病院であろう廊下で、まるでダンジョンでした。幼い頃の記憶は入り組んでることが多いとごせんぞが言っていましたが、個室ばっかりですね。しかもなんか暗い感じだからホラーものだと捉えられてるのかな?
とりあえず私の記憶の扉に入ることに成功したので、早速この記憶の中を巡り回ることに……なったのですが、初心者が深部から帰るのは大変であるため、ごせんぞが見失わないようなるべくゆっくり行動することに。万が一見失ったら私は気合いと根性……つまりは自力で帰らないとならないようなので。岡本真夜か何かですか?
歩き回っていたら、なんかでっかい注射器やら点滴やらといった医療器具がウキウキとしている感じに動いているのを見つけました。コアかと思ったのですが、どうやら私の嫌な思い出が変質したものらしいです。私の心にそんなものがいるとは思ってもみませんでした。ご飯も毎日おいしいのに……
ごせんぞ曰く、嫌な思い出は誰にでもあり、寧ろああいうのをちゃんと埋め立てて笑顔で過ごせているのは、私と周辺の心が健やかな証だとのこと。嫌なことによる感情は嬉しいことや楽しいことで抑えればいいってことでしょうか? その考えでなら納得がいきますね。
とりあえず、あの医療器具に接触するとノイズが出そうとのことでなんとかやり過ごすことに。危機管理フォームで身体能力を上昇させ、夢魔の力で取り出したダンボールに隠れながら移動。これぞ必殺『まぞくステルス』です‼︎ ……ごせんぞからのネーミングセンスの評価は良くなかったですが。
けど思ったよりも数が多くてバレてしまいました‼︎ しかも逃げてる途中でごせんぞとの通信が切れて逸れちゃいました……。どうやって探索しよう……いや、寧ろどうやって帰ろう……
あの医療器具のオバケに捕まっても死ぬことはないそうだけど、数日悪夢にうなされて寝込むことになるので体に悪いとのこと。どっちにしろ危険であることは確かなので必死に逃げました。というか逃げることしか出来ない‼︎ 今まさに大ピンチです‼︎
刹那。オバケ達は一斉に巨大な何かによって押し潰された。まるで倒壊したビルに巻き込まれてしまった人達のように。
えっ? 何事? 一応、私とオバケ以外は誰もいないはずなのですが……
誰かが助けに来てくれた? 桃? ミカンさん? 拓海くん? それとも白哉さん? でもみんな夢の世界に入ろうとすると弾かれるはずじゃ……
あっ、巨大な何かが動き出した。と、とりあえず助けてくれたお礼を言っておかないと………………えっ?
なんか、筋肉モリモリマッチョマンな牛さんが、デッカい棍棒を持って二本足で立っているんですが……しかも腹周り以外は軽装な感じの金メッキで赤黒い甲冑を付けているし……
な、なんですかあの牛さん? 遊○王のミ○タウロ○を連想するような怖い感じなのを出しているし……
というか、よく見たら何頭もの同じ姿をしたのがたくさん出て来ているじゃないですか。さっきのオバケ達よりも怖さが倍増しているのですが……
って……あ、あれ? なんか皆さん、一斉にこちらの方を向いているのですが……しかも赤い目を光らせて、思いっきりデカい鼻息を出してきているし……あの鼻息当たったら寒っ⁉︎
えっと……なんか、嫌な予感がしますが……
【グモオォォォォォォッ‼︎】
「やっぱり追いかけてきたァァァァァァッ⁉︎」
結局より厄介なのに追いかけられる羽目になったじゃないですかヤダー⁉︎
ちょっ、ホントになんなんですかあの牛さんは⁉︎ 突然私の記憶の中に出て来るし‼︎ 助けてくれたのかと思ったら今度はオバケ達の代わりに集団で私を追いかけてくるし‼︎ なんで私を追いかけてくるんですか⁉︎ そもそも私、小さい頃牛さんに関するトラウマでも植え付けられていたんですか⁉︎ 何があったの小さい頃の私⁉︎
ごせんぞいない‼︎ 当たり前だけど白哉さんもいない‼︎ 帰れない‼︎ オバケもまだいるかもしれない‼︎ あと牛さん達は天井の高さぐらいデカい‼︎ どどどどどどうしよう⁉︎ どうすれば⁉︎
《落ち着いて落ち着いて》
………………へっ? 今、なんか直接脳内に声を掛けられた気がする……。しかもなんだかすごく優しい感じがして、なんだか励まされている感じもしてきているような……
《君、いい武器を持ってるよね? おとーさんの杖》
えっ? なんでおとーさんの杖の事を知って……? と、とりあえず出した方がいいのかな……?
「こ、これ?」
《そうそう。ここは君のフィールドだし、いい感じに変形できると思うよ。ずるい武器に変えてあいつらをやっつけちゃおうよ》
そ、そっか‼︎ ここは夢の世界だから私は実質やりたい放題なことができるんだった‼︎ 他にこの状況を打開出来そうな手段はないかもだし、やるだけやってみないと……‼︎
「わ、わかりました。ずっ……ズルイブキー‼︎」
『ブモッ⁉︎』
『『『ブモモッ⁉︎』』』
なんとかの杖を巨大化させた途端、それを見た牛さん達は一同に止まり戸惑いを見せてきた。変形させたこの武器って殺傷能力が高いから、牛さん達もそれを見た途端に恐怖を感じたのでしょうか……?
って、お、重い……‼︎ そういえば私も一度武器をデカくして持ったら潰されてしまったんだった……。こ、このまま押し潰されたら元も子もない……‼︎ と、とりあえずやぶれかぶれに振り回して……‼︎
「と、とりゃあー‼︎」
【ブモォッー⁉︎】
それはほんの一瞬だった。私がズルい武器を振り下ろしただけで、牛さん達全員の上半身が跡形もなく削り取られていた。きっと振り下ろした時に発生した衝撃波らしきものによるものだろう。そして残った下半身も光の粒子となって私の目の前で消えていき、私を追いかけていた牛さんの姿は、もうどこにも見当たらなくなった。
………………いや、その……使った自分がなんですけど、あっさりすぎませんか? たった一回の攻撃で、数十体もの人間みたいに体を動かせるデカい動物を一斉に倒せるとかどんだけ強力なんですか? さっきまで逃げていた自分が嘘のように感じるのですが……
あっ、また何かが出て来た。今度は桜色のなんかモヤっとしたものみたいだけど……先程の牛さんやオバケみたいに敵意は無さそうかな?
《……やればできるじゃん‼︎》
「ありがとうございます。貴方は……えっと………………さては……通りすがりの、メレンゲの思い出ですね‼︎」
《違う違う!
……えっ?
この後のメレンゲさん曰く、私と会うのはこれで二回目らしいのですが、なんかしっくりと来ないというか何というか……本当は来られないそうですが、今は私の記憶を媒介に無理矢理浮上しているとのこと。意識のある記憶ってことですかね? 予想がつきにくいのですが……
で、本来の見た目でお話したいとのことで、杖を構えて集中してと頼まれました。何かをイメージする必要は……ないのでしょうか? とりあえず、いけると思い込みながら集中……集中……‼︎
ふんぬらば〜〜~‼︎
「よーし形成OK‼︎ ご協力ありがと〜〜〜‼︎」
その言葉で気づいた時には、メレンゲさんの姿は大きく変わっていった。黒い長髪、桜色のノースリーブっぽい服の上に白衣、右肩に掛けているピンク色のマント、ピンクと白のフリフリスカートといった、正に正統派な魔法少女の衣装の女性だ。
「あなたの町のかけつけ一本おまもり桜‼︎ 魔法少女★千代田桜━━━━ただいま見参ッ‼︎」
………………えっ……?
今、この人自分のことをなんて……? 千代田……桜……?
ええええええええええええっ⁉︎ えっちょっ、ええええええっ⁉︎ も、も、桃のお姉さんの桜さんんんんんんっ⁉︎ 一番大事な人の手がかりを探す筈が、まさかの本人降臨⁉︎ しかもこんなぬるっとした感じに⁉︎
………………封印されしお父さんへ───なんか……とっても大事な人に助けて頂きました……
この時、私はまだ知らなかった。この千代田桜さんが十年前に何をしていたのか。それが私の……そして白哉さんの運命に大きく関わっていたことに。
こんな事をしてる間にも、白哉さんが今、自分の事で苦しめられていることに。
そして……この出会いの後に、私と白哉さんの運命の歯車が大きく動くことになったことに。
ん? 今回のおまけはどうした、だって? ないよ‼︎
シリアス回に突入したってのに無暗にギャグでお茶を濁せないもの……