偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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試行錯誤しながらの初投稿です。

現状毎週土曜日投稿確定なのに、色々な意味でやっちまった……


気がついたら精神世界にて檻の中に閉じ込められていた件……ハァッ⁉︎ 俺、優子にキスされてたの⁉︎

 

 一体何故こうなってしまったんだ。

 

 俺は確か、優子が夢魔の力を使って自身の記憶の世界で桜さんの手掛かりを探し終えるのを待っていたはず。その時は優子は寝ていて、俺・桃・ミカン・拓海の四人で彼女の寝顔を見ながら待機していたはず。

 

 なのに……これは一体どういうことなんだ。

 

 いつの間にか俺の意識は朦朧として途切れてしまい、目が覚めた時には、俺は何故か優子の部屋ではなく、刺々しい檻の鳥籠の中に閉じ込められていた。

 

 何故こんなことになってしまったのかは全く皆目検討がつかない。そもそも何故優子が寝たのとほぼ同じタイミングで、俺が気を失ってしまったというんだ? タイミング的にもおかしい気がするが……

 

 いや、今はとにかくこの状況をなんとかしなければいけないよな……こんなところで愚痴を言っている場合じゃねぇ。

 

 仮にこの世界が夢の世界とかじゃなかったら、桃達は俺が消えたことでドタバタしてるだろうし……いや夢の世界であってくれ頼む。そっちの方が不安要素が少なくて済む……のか?

 

 っていうか……こんな住所とかも不明な場所で不気味な檻の中に閉じ込められているというのに、よくそんなに動揺とかしてないな俺。『なんで?』とか『ここどこ?』みたいなことは思ってはいるけど、それでも薄いよなこの反応は……

 

 これって所謂、優子みたいにサプライズに慣れたってヤツか? ……いや、これはサプライズとは違うと思う。つーか慣れていいものじゃないだろこんなサプライズは。慣れてしまったら危機感とかが薄れてしまって、もしもの緊急事態とかの時に対処出来なくなる可能性だってあるし……

 

 

「って、そんなことを考えてる場合じゃないな。早くここから出ないと。我が名は召喚師・白哉───‼︎」

 

 

 そうして俺はいつもの召喚師覚醒フォームに変身した。体内から感じている魔力の質や量の違和感は……うん、ないな。感覚が変わったりとか、込み上げてくる魔力が少なかったりとか、なんか気持ち悪いとか、そういった違和感はないな。問題ない。

 

 とりあえず、魔力を上昇・増幅させたことで力も強くなったはず。この姿での助走を掛けて飛び蹴りをすれば、檻の棘によるダメージを少なくしながらのこじ開けができるはず……‼︎

 

 後ろの鉄格子ギリギリまでバックしてから……全速力ダッシュ‼︎ そしてその勢いを加えながらジャンプ・両足伸ばしてキィーーーック‼︎ ぶっ壊れろォッ‼︎

 

 

 ガンッ

 

「………………〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

 

 い、痛ってェェェェェェッ⁉︎ この檻めっちゃ硬い‼︎ まるで超硬いダイヤモンドにパンチして骨が折れたような硬さじゃねェか⁉︎ 骨折はしなかったし棘の部分は思ったよりも全然痛くなかったとはいえ、この硬さは想定外だった……‼︎ 鉄格子は細い癖に……‼︎

 

 ……いや、ちょっと待てよ。別にこんなことしなくても力の強い召喚獣に力を貸してもらって、そいつに檻をこじ開けてもらえば良かったじゃん。そうした方が手っ取り早いし負担も減るんじゃね? 何やってたんだ、俺は……

 

 まあとにかく、誰かを呼んでもらって助けてもらうとしよう。情け無いけど。誰を召喚すべきか……

 

 そうだ、剛鬼にしよう。仲間を傷つけられると鬼の様に色々と強くなる心配性ゴリラらしいから、俺が閉じ込められているって知ったらガチおこで思いっきりこの檻を破壊してくれるし……いや彼の力や性格を利用してるようで最低じゃん、俺。けどここから脱出する為だし……

 

 

「背に腹は変えられないか……剛鬼、召喚‼︎」

 

 

 さぁ剛鬼よ、いきなりで悪いけどお前の力を貸してくれ‼︎ お前の力で俺をこの檻から出してくれ‼︎

 

 ………………アレ? で、出て来てくれない……? そ、そんなはずは……ネガティブ思考で『戦いたくない』って面倒臭がる餓狼だってすぐに出てくれたのに、剛鬼はネガティブな性格じゃないはずなのに……

 

 と、とにかく剛鬼は今は呼び出しに応じれないってことが分かった。ならば他の召喚獣を呼び出すしかないな、うん。今はそれしかない。とはいえ、次は誰を出せばいいんだ? この檻を破壊するのに適してそうなのは……

 

 あっ、餓狼。さっき名前出してたじゃん。彼の格ゲー戦法なら檻をバッキバキに破壊できるかもしれない。彼に賭けるか。

 

 

「今度は成功してくれよ……餓狼、召喚!!」

 

 

 さぁ餓狼、最新の格ゲームソフト買ってやるから助けてくれ……!!

 

 ………………えっと……か、彼も出てきてくれないんだけど……

 

 あ、あれぇ? なんで二匹連続で召喚に応じてくれないのさ? 一体どういう理屈や原理なのだというの……? いくらなんでもこれはおかしすぎると思うんだけど……

 

 えぇい!! こうなったら出せる奴ならなんでもいい!! とにかく召喚術を連発しよう!! そうしよう!!

 

 

「頼む、誰か出てきてくれよ……!! 海王、召喚!!」

 

 

 海水を生成して操る器の大きい鯨を呼び出す───応じてくれず。

 

 

「聖、召喚!!」

 

 

 氷の力を自在に操るツンデレ麒麟を呼び出す───応じてくれず。

 

 

「凌牙、召喚!!」

 

 

 動き回って風と水の力を同時に操るちょい頑固なサメを呼び出す───応じてくれず。

 

 

「朝焼、召喚!!」

 

 

 仲間に飛行能力を付与出来る無口な孔雀を呼び出す───応じてくれず。

 

 

「猛虎、召喚!!」

 

 

 必死になりすぎて先に出そうとすることを忘れてたけど、物体ならほぼ何でも壊せるポジティブ系メス虎呼び出す───応じてくれず。

 

 

「クソッ……!! 曙、召喚!! 襟奈、召喚!! メェール、ボーフ、ハリー、コウラン、ピッピ、ピョピョン、ハムイン・ボルタ、ヒヒン、シバタ、クリッタ、召喚!!」

 

 

 やけくそになって他の召喚獣を呼び出せるか試してみた。けど、誰も応じてくれなかった。あのメェール君でさえも来てくれなかった。……いや、違う!! そんなはずはない!! これは何かの間違いだ!!

 

 

「こうなったら彼だ……‼︎ 白龍様、召喚!!」

 

 

 さすがの白龍様なら俺の呼び掛けに応じてくれるに違いない!! 俺に特典のことを教えてくれたし、なんやかんやで全力で俺のサポートをしてくれた方なんだ!! 絶対助けてくれる!!

 

 ───けど、その希望も敢え無く潰えた。あの白龍様も、俺の呼び掛けに応じてくれなかったのだ。

 

 

「ッ……‼︎ クソッ、クソッ‼︎」

 

 

 な、なんでなんだ……⁉ なんで誰も来てくれなかったんだ……⁉ なんで先程まで俺がいたところに桃達と一緒にいた白龍様も、みんなが俺が急に倒れたことで慌ててるはずなのに何もしてくれないというんだ……⁉

 

 お、俺、みんなの期待を裏切るようなことを無意志でやってしまっていたのか……⁉ みんなを失望させるような真似をしてしまったのか……⁉︎ じ、実際どうなんだ……⁉

 

 誰か……‼︎ 誰でもいいから、教えてくれよ……!! 心が、虚しくなってしまう……‼︎

 

 

 

「───一先ずは安心しな。アンタはみんな裏切るようなことはしてないし、失望させるようなこともしてないぞ」

 

 

 

 声が聞こえてきた。小学生ぐらいの男の子のような、声質の高い男性の声。それも聞き覚えのある気がする声だ。

 

 俺以外にも人がいた。そこは正直喜んでいたが、一体どこから声が聞こえてきたのかは分からなかった。俺と同じくこの檻の中にいる……ってわけではないだろうけど。

 

 どこから声が聞こえてきたのか探る為とりあえず顔を上げてみた……ら、すぐにどこから声が聞こえてきたのかが分かるようになった。ってか、その声の持ち主が目の前にいたのだ。

 

 檻の前に立っていたのは、俺と身長が同じであろう一人の人物。しかし全身が羽織っている白いローブで覆われており、性別の区別が見た目ではつかなくなっている。

 

 というか……誰なんだ? こいつは。いや初対面の人にいきなり『こいつ』呼びは正直可笑しいけども。一体いつからここに来てたんだ? まさか刑務所とかでいう門番……じゃないだろうな? この檻からしてその可能性はあるだろうけどさ……

 

 

「はじめまして……と言いたいところだろうけど、こっちからしたら『()()()()なんだよな。時々こちら側から一方的に話しかけてきたようなものだし」

 

 

 は? 『久しぶり』? 『こちら側から一方的に話しかけてきたようなもの』? ちょっと待て。いきなり何を言ってやがるんだこいつは。まるで『お前本当は俺とどっかで会ったことあるんだろ』って言ってきてるようなものじゃねェか。俺、お前に話しかけられた覚えなんて……

 

 ん? ちょっと待てよ。話しかけられた覚えがないんだったら俺、さっき『聞き覚えのある気がする声だ』って思うはずないよな? 俺、どこで初対面であるはずのこいつの声を聞いたというんだ? うぅむ……

 

 

「やっぱり覚えてない感じか? まあ話しかけてたってのは夢の中(・・・)での話だし、仕方ないけどさ」

 

 

 えっ? 夢の中で話しかけてた、だって? いや俺、寝てた時の事はそう簡単には覚えて……

 

 

 ──よぉ。はじめまして、と言ったところか。どうだ? アンタはこの世界には結構慣れているか?

 

 ──ん? 一体どこから話しかけているのか、だって? どこって、アンタの夢の中だぞ? それも白龍様とかいう偉い人がいる場所とは別の。

 

 

 ………………ん? あ、あれ? 何かが脳内に流れ込んできてるような……。しかもこれらのセリフ、どっかで聞いたことがあるような気がするけど……

 

 

 ───やれやれ、ここに来て困難にぶち当たったか。さぁ、この後アンタはどうするんだ?

 

 ───このままこの世界の本来の流れに任せてみるか? それとも……

 

 ───アンタ、これまでずっとシャミ子が自分の歪んだ性格に悩まされていた時、いつも見切り発車な感じになんとかしようとしていたんだろ? あの頃を思い出しながらどういう風に話せばいいのだろうかって考えれば、自然と千代田桃へ掛ける言葉が思い浮かぶはずだ。

 

 ───どうだ? 少しは決心がついたか? ……そっか。なら、アンタがすべきことはもう決まってるな。行ってこい。

 

 

 ……そうか、そういうことか。思い出したぞ。全部。

 

 

「お前……夢の中でごくたまに話しかけてきて、桃の説得を促してもくれたんだったな」

 

「おっ? なーんだ、思い出してくれたのか。そいつはよかった……あと、話しかけてくれて嬉しいぜ‼︎ やっとこうやってアンタと話せる時が来るなんてな‼︎ かぁっー、長年待っても報われる時があるってのは本当なんだなー‼︎」

 

 

 なんだこいつ。フレンドリーさと面倒臭さがベストマッチしたかのような、ウザい度合いの高い性格の持ち主だったのかよ。

 

 うーん、なんだろうなこいつ。まるで慎重に原作崩壊を回避しようとしてる俺とは違って、なんでもかんでも大雑把にやりそうな気がするのだが……なんだか、俺と性格が正反対な気が……

 

 ん?

 

 

 

 “神様曰く、お前の心の中にもう一人の僕ポジションみたいな何かが生まれたのではないか、とのことだ”

 

 

 

 まさか、あの時白龍様が言っていた、『お前の心の中にもう一人の僕ポジションみたいな何か』ってのは……

 

 

「お前……まさか別の人格の俺、なのか?」

 

 

 ふと俺がそうフードの人に問いかけた途端、そいつから何やら俺に睨みついているかのような殺意を感じた。えっ!? まさか俺、選択肢を誤ったのか……⁉︎

 

 

「……ハァ、なんで勘がいいんだよアンタは。()()正解だな」

 

 

 へっ? えっ、あっ。そ、そうなんだ……ビ、ビックリした~。結構ハラハラしたぞコノヤローが。なんで殺意放ってたのさ。警戒してしまったぞオイ。もしかして今の無意識だったってか? よりタチ悪い気がする。

 

 というか、なんで()()正解なんだ? 本当は答えが間違ってたってのか? アンタ、本当は何者……

 

 

「おっと、悪いが今はこの状況をどうにかしたいんだろ? それに関係ない質問とかは後にしてくれ」

 

「へっ? ………………あっ、そうだった」

 

「……なんで今ヤバい状況になっているんだってことを忘れるんだよ」

 

 

 いや、それはスマン。けど、さっきの突然の檻の外からの登場は色々と警戒したりしてしまうし、何なら殺してくるのではないかってのも恐れていたからな? 見知らぬ場所で檻の中に入れられて、そして突然の見知らぬ人の登場だぞ? だからそいつのことを優先して警戒しちまうんだよ。場所の環境が環境ってのもあるけどさ。

 

 ……で。

 

 

「ここは一体どこなんだ? そしてこの檻はなんだ?」

 

 

 俺が周りをキョロキョロと見回しながらそう問いかけると、フードの人は苛立ちを見せるかのような態度で溜息をついた。いや、この状況を理解してないってわけじゃないんだよ? ホントごめんて……

 

 

「………………一応、アンタが今いる部屋はアンタ自身の精神世界になってるぞ」

 

「は? こんな檻に閉じ込められてるのに、俺自身の精神世界……白龍様と夢の中で話してた時と同じ場所にいるってか? 何を根拠に───」

 

「床、見ろよ」

 

 

 えっ、床? そういえばそこは全く見てなかった気が……

 

 あっ、チェス盤のような白黒の市松模様だ。そういや俺はこういった場所の夢の世界で白龍様と直接話し合っていたっけ。上を見たら天井が無くて宇宙空間って感じだし、向こうに見える家具とかもメートル単位のデカさだし。

 

 ………………はっ? 嘘? ここって本当に俺の精神世界なの? 自分の世界で訳もわからず閉じ込められてたの? マジで?

 

 

「そしてこの檻はクローズハート・プリズン。別名『心閉ざしの牢獄』。入れられた者の大まかな力を無力化させる幽閉型魔法だ。アンタはこの檻によって変身はいつも通り可能のようだとはいえ、召喚術を一切使えなくなり、条件下以外の方法では脱出や破壊ができないようになっているんだ」

 

「無力化の、幽閉型魔法……」

 

 

 条件に合わせた方法でしか解くことが出来ず、閉じ込めた者の力を封じる魔法……だから思いっきり飛び蹴りしてもビクともせず、白龍様達も呼ばなくなったのか……

 

 しかし、一体誰がこんな魔法を掛けたというんだ? ……ハッ⁉︎ まさか……俺の他にも転生者がいて、そいつが己の欲望の為に邪魔な俺を閉じ込めようと……⁉︎

 

 ……いや、それはないだろうな。そんな自己中心すぎる奴がいたら転生専門?の神様が黙っているわけないだろうし、そもそもそんな奴を転生させてくれるわけがない。大体転生させて好き放題させたら、転生元の世界が崩壊する可能性もあるしな……

 

 

「そしてこの魔法の発生元なのだが………………魔族との不完全な契りにより、魔族の夢魔の力の発動と同時に生まれたんだ」

 

 

 ………………ん? んんん? 今、なんて? 魔族との? 不完全な? 契り?

 

 

「なんだ? その魔族との不完全な契りっていうのは。なんか、その言葉に引っ掛かりを感じるんだけど……」

 

「……そうだな、教えないとどのみちアンタはここから出られないからな。教えるよ、外の世界でリリスさんとやらが他の奴らにも説明した、その不完全な契りとはどういうものなのかをな」

 

 

 そう言ってフードの人は、魔族との不完全な契りについて説明し始めた。

 

 優子の一族はある行為によって、悠久を共にするパートナー……眷属の上位互換的存在を作る契りがあるらしい。その契りを交わした者は、相互の人間関係での相性が良ければ、一族と同じ夢魔の力を得ることができるとのこと。力の共有……みたいなものかな。

 

 しかし、その者が一族との契りを途中でやめてしまったりしてしまうと、その一族が夢魔の力を使用し始めたのと同時に意識を奪われ、奪われた側の夢魔の力が自動的に一族の見ている夢の世界に入り込んでしまう可能性があるそうだ。

 

 そしてその行為というのが……愛撫らしい。

 

 ………………って、は? 愛撫? それ、控えめに言って変態どもが好きなあの行為じゃねェか。危機管理フォームといい、強化する為の手段の一つに肌面積が関係してるといい、サキュバスか? やっぱりリリスさんの一族は皆サキュバスってか? 優子は純情なキャラだってのに……

 

 ……アレ? ちょっと待てよ?

 

 

「この檻がその不完全な契りと魔族……優子が夢魔の力を使ったことによって出来ていたってのはわかった。けど、気になった点がいくつかある。その不完全な契り……優子はいつ、誰に対してやってたというんだ? お前は何か知ってるのか?」

 

 

 今のはフードの人が俺みたいに優子の事をよく見てるとは思えないから問いかけたってのもある。けどそれ以上に、不安と恐怖というものを感じた。

 

 優子は俺に好意を持っている。それも偶に重たくなる愛だ。そんな愛を持った彼女が他の男と契約とか関係なく卑猥な行為をするはずがない。したらしたらで、何というか……

 

 

 ズキッズキッズキッ

 

 

 そういったのを考えるだけで、なんかこう、心臓がすごくズキズキとして痛くなるんだ。優子が知らない男と契りをするなんて、なんだか考えられないって思えてきて……すごく嫌になる。なんでこんな思いを持つようになるんだ? 自分でもそれは分からない。

 

 

「………………ハァ、呆れた。ここまで説明させておいて、アンタがその説明通りの出来事によってそうなったにも関わらず、まだ気づかないってのかよ」

 

「は?」

 

 

 気づかないって、何にだよ……?

 

 

「シャミ子が不完全な契りを交わしたのは、知らない男とかでもなく、ましてや全臓や拓海といったアンタの知り合いとかでもない……

 

 

 

 平地白哉、アンタと交わしたんだよ。それも無意識に」

 

 

 

 ………………………………

 

 えっ?

 

 俺と? 交わしてた? 中途半端にとはいえ、契りを?

 

 えっ? えっ?

 

 ………………………………

 

 

 

「りぁjfうるぇvcにrmじcおびKhxぢゅgぜいぬmzxjなるとhdにゅfgkmびゅgんcvc」

 

 

 

「気持ちはわかるけど何言ってんのかは分らんから落ち着け」

 

「落ち着けるわけねぇだろはっ倒すぞコラァこのボケナスビがァッ!!」

 

「急に口悪くなったな……」

 

 

 いやそりゃあ口も悪くなっちまうでしょうが!?

 

 だってさ、ほら……お、俺と優子が、その……キ、キスをしてたってさ……信じられないでしょうが⁉︎ それ、本当なのかって思うわ‼︎ キスした記憶もされた覚えもないんやでこっちは‼︎ いやマジで‼︎

 

 い、いつ⁉︎ ど、どこで⁉︎ ど、どんな感じにキスしてたのさ俺達二人は⁉︎ 状況とか色々と気になっちゃうでしょうが‼︎

 

 

「そりゃあそんな反応するわな……仕方ない、俺が精神世界を通して見た実際の光景を見せてやるからよく見とけよ?」

 

 

 そう言うとフードの人はどこからか出てきた映画のスクリーンっぽいものに向けてリモコンの電源ボタンを付け、画面に付いたメニューっぽい表示から何かの一覧をスクロール。そして何かしらの画面が出たところで『決定』ボタン。

 

 すると何ということでしょう。俺の部屋の光景が横向きながらも映っているのではありませんか。よく見ると画面の左側には二千××年六月×日十七時半……俺が着ぐるみバイト後に昼寝して起きる数分前だな。

 

 これってもしかして……このフードの人、俺が寝てる間にその時の周囲を何かしらの方法で撮影してるのか? 白龍様みたいに俺の記憶を何かしらの形で共有することができるのか? ある意味スゲェけど、なんかこう、プライバシーってものが……

 

 

『白哉さん、お風呂借りに来ましたー。……アレ、返事がない? 寝てるのかな……あっ、鍵開いてる。入りますね』

 

 

 おっ? なんか優子の声が聞こえてきた……って、この時の俺鍵かけてなかったのか⁉︎ 不用心すぎるやろこの時の俺って……まぁ訳あって急いでシャワー浴びようとしてたから、必死すぎて忘れてしまったのかな? ちゃんと戸締りしなきゃダメじゃん。

 

 

『……フフッ。寝顔、初めて見ました。可愛いですね』

 

 

 入って来た⁉︎ 寝顔見られた⁉︎ なんかすごく恥ずかしいんですが‼︎ 俺の寝顔を家族以外に見られたことないからすごく恥ずかしい‼︎ 実を言うと俺、一度も居眠りとかしたことないんだわ‼︎ いやマジで‼︎

 

 優子の表情をよく見ると、なんかアワアワした表情になってから突然顔に影を落とし、そして何か気づいたかのように目を丸くしてきた。これって、ミカンに助けられた時の彼女の香水の匂いが俺に付着してたことに気づいたものの、事故であることにもすぐに気づいたって感じか?

 

 よかった、誤解し始めたけどすぐに解けたって感じか。助かっ───

 

 

『白哉さん………………んむっ……んむっ?』

 

 

 ………………へっ? 『んむっ』? なんか優子の口から聞き捨てならないような言葉が聞こえてきたような……しかもよく見たら、とろんとした目をした優子が急速に顔を近づけてるような………………

 

 えっ? これって……

 

 ま、まさか……

 

 

 

『めぴゃああああああああああああ⁉︎』

 

「優子にキスされちゃってるじゃん俺ェェェェェェッ⁉︎」

 

 

 

 嘘ォォォォォォッ⁉︎ やっと能天気な俺でも飲み込めちゃったようだな⁉︎ 全てはフードの人の言う通りだ‼︎ 俺、優子にマジでキスされてたわ⁉︎ しかも優子も赤面発狂してるからホントに無自覚みたいだったし‼︎

 

 そ、そっか……‼︎ あの時唇が甘いと感じたのも、翌日になって午前にはなんだか優子が余所余所しかったのも、全てはあの日の優子の無自覚キスが原因だったのか……‼︎ 俺、昼寝してた時にそんな事をされてたのか……‼︎

 

 

「これで分かっただろ? この出来事によってアンタ達二人は不完全な契りをしてしまい、シャミ子が夢魔の力を発動したのと同時にアンタがここに閉じ込められてしまったってわけだよ」

 

「マ、マジかよ……俺、そんなことされてこんなことになってしまったのか……」

 

 

 よ、予想外だった……まさか二ヶ月程前に起こった優子のやらかしによるツケが、重要な場面の時に発生して俺に降りかかってくるとは……。しかもそのやらかしが、昼寝してる俺に対してのキ……キ……キスだなんてな。ってかなんで災厄みたいなものが優子じゃなくて俺に降りかかるんだよ。最悪すぎるだろオイ。

 

 

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ

 

 

 けど……なんでだろうな。さっきから心臓の鼓動音が止まらなくなっているんだけど。しかもなんだか顔が熱くなってきている気がする。それに……『嬉しい』という感情が、強く湧き上がってきている気がする。

 

 ……けど、なんで嬉しいと思ったのだろうか? 可愛くて純粋なタイプの子とファーストキスができるのは正直嬉しいけども。

 

 

「……ここまできたら、もうそろそろわかってくるだろ?」

 

「えっ?」

 

 

 わかってくる? 一体何の話なんだ?

 

 

「実はその檻はな、お前のとある心情に関わってくるんだよ」

 

 

 俺の心情と関係してる? それはいったいどういう意味なんだよ?

 

 

「その檻はな、閉じ込めた者の本心を欲しているんだよ」

 

「俺の?」

 

「あぁ。そのクローズハート・プリズンにはもう一つの別名がある。その名は……『真意を求める空洞』。ま、これを英語訳すると意味が合ってねぇと思うけどな」

 

「真意を求める、空洞……」

 

 

 真意……誠の心、偽りなき意思ということか。つまりこの檻は、俺が心の中では本当はどう思っているのかというのを求めており、それを言わない限りはここから出してくれない……ってことなのか。

 

 

「自分自身の本性を打ち明けない限り、たとえ魔族が夢魔の力をやめたのと合わせて共に起きたとしても、感情は精神世界に置き去りにされてしまう。それも魔族との不完全な契りによって生まれたものなのだからな。これはおそらく、シャミ子の事をどう想ってるのかを明かさないと開きそうにないな」

 

 

 ………………優子への本心、か。

 

 正直に言って、それを明かすのは難しいかとは思う。

 

 これまで俺は優子のことをどう想っているのか、何故優子の重たい愛を蔑ろにしなかったのか、その答えをずっと見つけることが出来ていなかった。

 

 ましてや優子からの告白もどきに対する返事にも答えられずにいたんだ。拒絶することも、受け入れることも出来ずに。そもそもどのようにして答えるべきなのかも、あの時からずぬと決めることが出来なかった。

 

 一年間も自分の感情に未だに気づけていない。そんな情けない俺が、未だに答えの出てない優子への本心をきちんと打ち明けられるわけが……

 

 

 

「───だからこそ、あの吸血鬼の魔族に言われたことをしてみるべきじゃないのか?」

 

 

 

「………………えっ?」

 

 

 吸血鬼の魔族……ブラムさんの事か? 俺、彼に何か言われてたっけ……?

 

 

「彼からこう言われてたんだろ? 『自分の本当の気持ちが分からないのならば、機会がある時に昔を振り返ってみるといい』って。そして『昔の事を上手く思い返してみれば、何故そういう風に彼女と接していこうかなどといった大切なことに気づくことが出来るはず』だって」

 

 

 ……あぁ、確かに昨日言われてたな。ブラムさんに優子の事が好きなのかどうかを聞かされて戸惑っていた時、俺は自分の本心がどうなのかは分からないとは打ち明かしていた。その時に彼からそういう感じにアドバイスを受けた。それはとてもタメにものだったな。

 

 そしてその思い返す機会……まさかこういった場面で出来るだなんてな。いや、こういった状況では『思い返す機会』というよりも、『思い返さないといけない場面』となるけども。そこから自分の本心を見つけて打ち明かさないと、このクローズハート・プリズンとやらから出られないし……

 

 

「それに、それを言われたアンタも考えていたんだろ? 『念のため前世の事も思い返してみるとしよう』って。『転生前と後、何故か何かとの関連性がありそうな気がする』とも」

 

「……俺の心まで読めるのかよアンタ。ってか、俺が前世の記憶持ちなのも知ってしまったのかよ……」

 

 

 というか、召喚獣以外にも俺が転生者であることを知った奴がここにもいたとは予想外だった。予想外すぎてすごいリアクションとか出来なかった……

 

 

「その件は今はいいだろ。今こそ前世を念入りに思い返して……いや、寧ろ前世の記憶を中心に、何もかもを思い返してみないといけない。アンタは前世でこの世界の大抵の設定や物語についてを知ることが出来たんだろ? そこに何かヒントがあるはずだ」

 

 

 ……前世、か。

 

 よく考えてみれば、俺はこの世界で優子を中心に起こりうる出来事……原作の物語の知識を、よく前世での創作物──漫画やアニメ──を通して得ていた。全てとは言えないけども、その知識はとても役に立った。

 

 この場面ではこのように介入しておけば良いとか、この場面はこういう感じなのかとか、そういったのをあらかじめ前世で得た上で、この世界で自分がどのように関わったりしていけば良いのかを考えることが出来たのだから。

 

 けど、ここで疑問点が生まれた。なんで俺は前世で原作知識を……『まちカドまぞく』の物語を覚えようとしたんだろう。他にも好きになって知識を覚えるべき漫画やアニメだってあるはずなのに、何故あの時から『まちカドまぞく』の事を知ろうと思ったんだろう。

 

 あのおかげでこの世界で転生したとなっても、不安要素となるものが多くなくて済んだのに、この引っ掛かる気持ちはなんだ? どうしても、どうしても前世の事を思い返さないといけなくなってきた。そうでもしないと、大切な何かを忘れてしまいそうな気がする……

 

 

「どうしても気になるってんなら、それこそ思い返すべきだぜ、アンタの前世を」

 

 

 ……そうだ。こんなにも引っ掛かりを感じているんだ。ここで前世の事を振り返り、何故『まちカドまぞく』の事を理解しようとしたのかを理解するんだ。そうしないと、本当に大切な何かを忘れたままこれから起こりうる未来に立ち向かっても、何も変えることが出来ないかもしれないから。

 

 自分自身に、昔の……前世の自分に問いかけるんだ。俺自身の為にも、そして……優子の為にも。

 

 

 

「───教えてくれ、前世の俺」

 

「───どうして俺は、この世界の事を前世で知り尽くそうと思ったんだ」

 

「───そして、どうしてそこから俺が優子の側に寄り添おうと思えるようになったんだ」

 

「───俺が長年置き去りにして、答えることの出来ずにいた本心を取り戻すためにも」

 

「───どうか、どうか、教えてくれ───」

 

 

 

 過去と現在の自分にそう暗示を掛けながら、俺は静かに静寂とした夜空のような景色から瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 そして気づいた時には、クローズハート・プリズン……『心閉ざしの牢獄』『真意を求める空洞』は、求めてきた真意を受け入れたかの如く砕かれ爆散した。

 

 突如現れた金色に輝く聖なる槍が、暗闇を切り払うかのように───

 

 

 

 

 

「ここで傍観者……アンタらに告げるぜ」

 

「彼が───平地白哉が思い返した過去が何なのか」

 

「そしてそこから、彼が見出した答えが何なのか……」

 

「その真実は、今この場でお見せすることは出来ないぜ」

 

「だから、どうしても知りたいってんなら……」

 

 

 

「シャミ子が一度起きて、平地白哉の夢の世界へと行く時まで待て。話は……それからだぜ? ま、もうすぐ行く機会が来るけどな」

 

 




書きたいこと書いてたら、下書きにはなかった展開とかまで出てしまって……
長く書き過ぎた……‼︎
原作パートに触れている文を書けなかった……‼︎
ここで区切って良かったのか分からなくなった……‼︎
ここで白哉が見出した答えを書いても良かったんじゃないかと後悔し始めた……‼︎
今回はある意味問題作じゃねェか……‼︎

すいません‼︎ 白哉くんが見つけた答えが何なのかは次回以降までお待ちください‼︎

そして今回もシリアスパート維持の為におまけパートは無しです‼︎ ご了承を‼︎
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