偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

49 / 117
久々の投稿以来のオリキャラ追加だよってことで初投稿です。

今回登場するオリキャラはなんと、桃との繋がりがあるようで……⁉︎


クラスメイトを動物園に誘おうとしていただけで、桃色魔法少女の幼馴染に出会えたというね。

 

 雲一つなく快晴となっている青空に、一つの航空機がとある空港にゆっくりと滑降した。その航空機から次々と乗客が降りていく中、最後に降り立った一人の青年が、航空機の梯子を降りたその場で立ち止まり空を見上げた。

 

 

「……日本の青空、懐かしい」

 

『そうでごわすな。遠くから見れる東京タワーも懐かしいでごわす』

 

 

 その青年、背丈がバスケ選手並みにとても高い。顔立ちはそれだけで容姿端麗と言っていい程に整っているが、前髪で右目が隠れており、首は一般の人よりも少々長く見える。その首には金色のネックレスを掛けており、それには何やら小さい写真を入れているかのような装飾が付いていた。服装は藍色の襟無しのシャツに太く黒い縁のある群青色のパーカー、深緑色の長ズボンと濃いめの配色となっていた。

 

 そんな青年の左肩の上に乗ってそこからの景色を眺めているのはいるのは、一匹の小熊。全身が深緑色の毛で覆われている何の変哲もない姿ではあるが、普通の熊と異なる点は額に十字傷がついているということだ。

 

 

『にしても、日本は相変わらず平和な雰囲気が良く出てるでごわす。留学中はイスラム教のテロリストの完全鎮圧とか、ウクライナ侵攻を軍にさせていたロシア政府の粛清とか、色々と物騒で大変だったでごわすからな』

 

「……ラグー。僕がそういった人助けをやってたってことは、内緒にしたいからどこにも口外しないで。特に彼女からは結構な説教を喰らってしまう」

 

『言われなくてもそうするでごわす。騒動は避けたいでごわすからね』

 

 

 何やら人助けしたというには規模が大きすぎるという、耳にした者がどうにも聞き逃してはいけないと思いそうな、とんでもない事を口にした青年と小熊──ラグー。そんな常識外な発言をしたにも関わらず、何事もなかったかのように受付まで赴き上陸の手続きの書類を済ませていく。

 

 

『ところで主人よ……帰国したら何がしたいのでごわすか? 十年ぶりの日本の観光でごわすか?』

 

「……それもいいけど、まずはあそこへ向かう」

 

『あそこ? ………………あぁ、主人のあの思い出の場所でごわすな。同志、日本に着くまでによくそこのことやあの女の子のこととかを口にしていたごわすからね』

 

「……うん。あそこでの思い出は、いつまで経っても忘れられない」

 

 

 上陸後の行き先をその場でのラグーとの話し合いで決め、書類を済ませた青年。ゴンドラによって運ばれてきた荷物を受け取り空港を出た彼は、再び青空を見上げて徐に呟いた。

 

 

「……それじゃあ行こう。桃が桜さんの代わりに守っている、多摩町へ」

 

 

 

 

 

 

 オッス、白哉だ。ちょっと困ったことが起きてお悩み中なんだ。

 

 ホラ、この前優子が桃にみんなで動物園に行こうって約束したじゃん? それに使うVIPチケットが原作よりも三人多い八人まで使えるとのことで、俺もクラスメイトの一人や二人を誘うことにしたんだけどさ……

 

 全滅。今のところ全滅中です。偶然見かけたクラスメイトや同級生数名に声を掛けたんだけど、みんな行く日に用事があったり『めんどくさい』と言ったりして断られ続けているんだ……マジで泣きそう。

 

 ちなみに結構縁が良い全蔵にも声を掛けようとしたが……今日から自転車一人旅で色んなところを周っているらしく、少なくとも動物園当日の夕方には帰ってくるとのことだ。日本一周じゃないとはいえ、なんて挑戦的かつ贅沢な……‼︎

 

 いや、他人の夏休みの過ごし方を妬むのはよそう。人にはそれぞれの夏休みってものがあるんだ。大人になって夏休みが数日になる前に、たくさん夏休みを満喫しておけばいいんだよみんな。

 

 さてと……誰かを誘う件はどうしよう。もう俺の知ってるほとんどの同級生は誘ったんだけど、現時点で全滅状態だよマジで。でも、よく考えたら近日の用事なんてみんな大抵決まっているようなものだから、こっちの用事と合う確率なんて低いもんな……

 

 ……あっ。そういえば一人声を掛けてない奴がいた。拓海だ。拓海がいたな。彼は陰陽師の仕事とバイトの他にやることがないとかって、どっかで呟いていたような気がするんだよな。それが本当だとしたら誘えるかもしれない。運はまだ俺を見放してはいないかもしれない。

 

 よし、早速仙寿神社に行って拓海を動物園に誘いに出掛ける‼︎ 後に続け……いや誰も後に続く奴なんていないけどな。ってか、このやりとり前にもやったような気がする。

 

 

 

 

 

 

 んで、仙寿神社。何かしらの依頼を終わらせて帰ってきた拓海を見かけたってことで、今大丈夫か聞いて許可をとってから誘っているところである。

 

 

「動物園?」

 

「そ。優子が白澤さんからもらったVIP待遇のチケットを十人分もらったからってことで、何人か誘って日曜日に行こうかと思ってな。桃とミカンはもう誘ったし、お前も一緒にどうだ? 予定がなければで良いんだけどよ」

 

 

 そしたら拓海は顎に手を当てて何かを考えているかのような様子を見せる。もしかして何か依頼か予定とかあるとか?

 

 

「………………VIPってどんなことができるんだい?」

 

「えっ? そうだな……今の時期ならトラの赤ちゃんとふれあえるけど───」

 

「じゃあ絶対行く。動物の赤ちゃんは大好きなんだ」

 

「即答かよ⁉︎」

 

 

 えっ。あっ、そうなんだ……お前も動物の赤ちゃん好きだったんだな。ってか赤ちゃんとふれあえると聞いた瞬間に『じゃあ絶対行く』ってなんだよ。どういう判断基準で参加しようって決めてんだよ。

 

 

「本当にいいのか? さっきの様子からして、何か予定があるように見えたんだけどよ……」

 

「ん? あぁ確かに先程までは予定あったよ。とはいってもデパートで色々買い物しようかな程度だったから、別の日に行けば問題ないと思って」

 

 

 女子かよ。

 

 

「あっそう……それならいいんだけどよ……」

 

 

 ってか今気づいたんだけど、それって赤ちゃんとふれあえないのならば断るつもりだったってことになるんじゃないのか? そうだとしたらそれはそれで悲しくなるんだが? 泣きそう……

 

 まあ何はともあれ、これで一緒に動物園を回ってくれる人を一人確保することができた。後一人、誰かを誘えればいいんだけどな……

 

 

「……こんなところに神社なんてあったんだ。この辺はあまり来てないから知らなかった」

 

『思い出のある町でも、同志が行ってない場所もあるのでごわすか』

 

「……どうやらそうみたい。あっ、人見えたから口閉じて。怪しまれる」

 

『了解でごわす』

 

 

 ん? なんか階段下から声が聞こえてきたな? 低音からして男性二人か? しかもそのうち一人は『ごわす』という古い鹿児島弁を使っているんだけど。珍しいじゃねーかオイ。

 

 とりあえず参拝客なら通行の邪魔にならないように道を開けておかないとな。おっ、来た来た……

 

 

 

 うわお背が俺よりも高い男性が一人。しかもメカクレ。肩の小熊が可愛い。

 

 

 

 ………………ん? 小熊? なんで小熊がいるの? しかも律儀な感じに肩に乗ってるし。可愛い。

 

 というか……この男性の隣に人がいないんだけど? 階段下を見ても他の人が近くに立っていたりもしてないっつーか、いないんだけど? アレェ……?

 

 

「……君、さっきから落ち着きがないよ。大丈夫?」

 

「えっ? あっ、すみません。ちょっと気になることがあったもので、つい……」

 

「……ん?」

 

 

 いけないいけない、挙動不審な動きをしちゃったから怪しまれてしまったよ。いくら状況がおかしいと思ったからといって、初対面の人や変な方向をチラチラと見るのはアカンな。そっちの方がおかしく思われちまうよ、マジで。

 

 ……というか、なんかこの人も俺の顔をジィーッと見つめてきているんですけど……。俺、今なんか怪しまれるような事をしてしまってたのか? ってかこの人の顔スッゲーイケメンなんですけど。

 

 えっと……とりあえず何故見てくるのかを問いかけようか。

 

 

「な、なんでしょうか……?」

 

「……君の顔、どっかで見たような顔をしてるね。そっちはそうでもなさそうだけど」

 

「へっ? あ、あの……本当に何なんですか貴方は……?」

 

「……隣の君も、なんとなくそんな感じが……」

 

 

 ちょっと、拓海の方も見始めたぞこの人。やめてください腐女子が勘違いしそうなんで。俺は優子と付き合っているんで。そもそもNL派ですから。拓海はただ平等で過保護になるタイプだけなんです。変な扉開かせないでくださいお願いします。

 

 

「えっと……俺達と会った記憶が思い出せない感じですか? 俺も貴方と会った記憶がないのですが、記憶探しならある程度は手伝えま───」

 

「おいコラ、まともに受け止めんな」

 

 

 嘘をついているのかもしれない初対面の人の言葉を、すぐ信じて捏造しようとすな。お前……もしかしてオレオレ詐欺に遭うタイプなのか? それはアカンて。騙され続けて人生転落するって。過保護も大概にしなさいよ。

 

 

「………………あっ」

 

 

 おや? この男性が何かを思い出したかのような様子を見せてきたんだけど、やっぱり気のせいだったとか? 俺ら初対面のはずだから、普通に考えて出会った記憶なんてあるはずないよな……?

 

 

 

「……君達、確か召喚師の平地白哉と陰陽師の仙寿拓海、だったよね?」

 

「へっ? あっはい」

 

「そうです。よくご存知で……」

 

「「………………えっ?」」

 

 

 

 えっ? えっ………………えっ?

 

 この人、今なんて言った? 『召喚師の平地白哉と、陰陽師の仙寿拓海』?

 

 いや待て。ちょっと待て。ホント待て。なんでこの人、俺達の名前だけじゃなくて、俺が召喚師であること、拓海が陰陽師であることも知ってるんだよ? この事はほぼ一部にしか知られてないはず……あっ、拓海はそうでもないか。霊に関する依頼を色々と受けてきたんだし。

 

 問題は俺の方よ俺。なんで俺の方までバレているんだ? 最後に両親にバレた時から無関係な人達にバレないようにとメェール君達に苦言していたというのに……

 

 ん? この人何故かスマホを取り出していじり始めたんだが? 名前と職業(?)知ってるアピールしておいて何してんだこの人……

 

 

「……はいこれ。君達の事を思い出した証拠」

 

 

 あれ? なんか画面を見せてきたんだけど。これはTwi……じゃなかった、『つぶやいたー』のダイレクトメールか? しかも過去のメッセージをよく見たら、俺の召喚師覚醒フォーム時の写真とか拓海が陰陽師である事が書いてある文とかがある。ってか俺、いつの間に撮られてた……? 盗撮とか犯罪だろこんなもん。

 

 ハッ⁉︎ もしやこのメールでやりとりしている相手が、何かしらの目的で俺達のことを調べてそれを拡散してるとかじゃないだろうな⁉︎ もしそうだとしたら、それは立派なプライバシー侵害───

 

 

 

 ………………ん? @FreshP_0325? アカウント名は『桃色』?

 

 

 

 ………………えっ?

 

 

「も、桃……か……?」

 

 

 は? えっ? ちょっと待って? なんで桃とダイレクトメールでやりとりしてんの? あいつ誰にもアカウント教えないはずだよな? 俺と拓海とは初対面なはずだよな?(関係ないだろうけど) なんでこの人、本当に桃のアカウントを───

 

 

《そういえば桃、今でもそうだけど実はあの頃から恋する乙女だったわね》

 

《それを私が知ったのも十年前に引っ越す前の時で、その事を聞かれた時の桃の顔が結構乙女な顔を見せてくれていたのよ。その時のアワアワとしていた桃の照れ顔が頭から離れられなくて……》

 

 

 ふと、廃工場調査の時にミカンが話していた、十年前の桃についての事が頭に過ぎった。その時に知ったな、桃にも本気で恋愛路線で惚れる男がいたのかって。

 

 ………………まさか、な……?

 

 

「あの、すみません……」

 

「……何」

 

「つかぬ事をお聞きしますが……このアカウントって、千代田桃のだったりしますか……?」

 

「……うん、そうだよ」

 

 

 間を空けての即答かよ(それは即答と言えるのだろうか)。とりあえずこのアカウントが桃本人のであることは確定した。そしてこの人が桃との繋がりのある人である可能性も出てきた。あとはもう一つの可能性、この人が桃を恋する乙女にした初恋の人なのかどうかだが……

 

 

「……そういえば、自己紹介がまだだった。

 

 

 

 はじめまして。僕は(いしずえ) 柘榴(ざくろ)。千代田桃の幼馴染で、大学を卒業したばかりの……光の一族の一人だよ。よろしく」

 

 

 

 ………………は? この人、今、なんて言ったの? お、幼馴染……? しかも光の一族、だって……? 光の一族は巫女(今でいう魔法少女)だというにわか情報で男はいないと思っていたけど、ここにきて男の光の一族ってマ? めっちゃレアな人に会ってしまったんだけど。

 

 というか、桃の初恋の人の可能性、増してきた? しかもその初恋の人に桃は今でも惚れているんだったよな?

 

 ………………

 

 

 

 俺、とんでもない人と出会ってしまったんだけど、どうすればいい?

 

 

 

「……そういえば、流れるように桃の幼馴染だって教えてたけど、君は本当に桃と会ったんだ」

 

「あっはい。そうなんです」

 

「……彼女と話すことも多々あった?」

 

「はい。というか訳あって俺の幼馴染と一緒によく会います。というかなんか気づいたら縁を結ばれてた、みたいな……?」

 

「……友達になってくれた?」

 

「えっ? 友、達……? なろうとかはお互い言ってないんですけど、お互いなったのかなって感じですかね」

 

「……そっか」

 

「す、すごい……白哉君、突然の連続の質問にほとんど淡々と答えていっている……」

 

 

 淡々と、と言えるかこれが……?

 

 って、さっきから何してんの俺は。何流されるかの如くこの人……礎さんの質問に答えていってんの。もうちょっとさぁ、状況の整理する時間とかあっただろうがよ……

 

 

「……よかった」

 

 

 えっ? 何が?

 

 

「……僕、十年ぐらい前に訳あって海外に行ってそのまま留学していたんだ。桜さん……先輩魔法少女の代わりに町を守ると決めた桃に協力したい一心を抑えて」

 

 

 えっと……なんか過去談を話してきたんだけど。突然すぎて何故だか虚無感が……

 

 

「……ここに帰ってくるちょっと前までは、桃を日本に残すのは不安だった。彼女はみんなが思ってる以上に頑張り屋で、どこか強がりな一面もあったから。そんな彼女を一人にするのは、なんだか心細かった。いつか壊れてしまうんじゃないかって思ってた」

 

 

 あ、あぁそうなんだ……礎さんも桃の事が心配で仕方がなかったのか。訳ありで海外に行かなきゃならない事情をすっ飛ばしてまで、桃の事を見ていたかったんだな。それほどまでに昔の桃はいじっぱりだったと……なんかさらっと桃の過去の一つが聞けたんだけど、話してよかったんですか?

 

 

「……でも、君達やその友達との話をメールを通して聞いてから安心したよ」

 

 

 えっ? 安心? 何故そう思えるんです?

 

 

「……桃は先程まで人と関わるのを避けてたみたいだけど、君やシャミ子っていう魔族と出会ったことを話してからは、少しずつ彼女の曇りが消えていっているように感じたんだ。それも『明日どのようにしてシャミ子と白哉くんをくっつかせようか』っていう変な相談もするぐらいに」

 

 

 あっそうなんだ。桃の奴、俺達と出会った時の事とかも礎さんに話したんだな。桃が信用できる人だから、心配してくれている人だからと安心して話したんだな。俺達に黙ってそんなことをしていたのは癪だけどな。

 

 というか。

 

 

「そうやって揶揄われた本人の一人、俺です」

 

「……ウチの幼馴染がごめん」

 

「いえ、もう慣れたことなので」

 

 

 慣れたといっても耐性がついたとは限りませんけどね。まあ、そのシャミ子……優子と付き合うことになったから多少は耐性ついたとは思うけど。

 

 

「……というか、本当にごめん。こちらが一方的に喋っちゃった」

 

「大丈夫です。桃の意外な素顔の一つを聞けたので」

 

「───あっ。そういえば礎さん」

 

「……柘榴でいいよ」

 

「ざ、柘榴さん。柘榴さんはここへ何をしに?」

 

 

 話の区切りがつけると思ったのか、途中から黙り込んでいた拓海が礎さ……柘榴さんにそう問いかけた。喋りづらくて大変だったろう? ごめんな気を遣わせてしまって。

 

 

「……この辺に来るのは初めてだったから、あちこち歩き回っていたら偶々ここに着いた」

 

「あ、あぁ……偶然で来たんですか」

 

 

 そういやさっき『こんなところに神社なんてあったんだ』っていう言葉が出ていたような気がする。十年ぶりの多磨町の観光に来たってことなのか? まあ十年も来なかったら、そりゃあ町の様子がどうなっていたのかわからないから気になるだろうけどさ。

 

 

「……でもせっかく来たから、お参りさせて」

 

「あっはい。お賽銭箱はあそこです」

 

「……うん」

 

 

 流されるように賽銭箱へと誘導する拓海、なんかいつもの彼じゃない感が出てるな。口うるさい感じもウザキャラオーラも出てないし、これって完全に柘榴さんのペースに流されてる感じか? 誰かのペースに流される拓海、初めて見た気がする……

 

 あっ、礼儀よく二礼二拍手一礼してる。もうお参りを終えた感じか。早いな。

 

 

「一体何をお願いしたんですか?」

 

「……世界平和。それと千代田桃の幸せ。ちなみにどの桃の名前を持つ人の事を言っているのかを分かりやすくするために、さっきみたいにフルネームにしてる」

 

「いや何故桃をフルネームにしたのか、なんて聞いてないですが……」

 

 

 まあ、願い事に限らず伝えたい内容を具体的にするという考えは間違ってはいないのだけど……というか、この人は願い事をする時も桃の事を考えているんだな。

 

 ん? ちょっと待てよ? ということは、この人も桃の事が………………いや、そうとは限らないな。うん。この人の場合はなんというか、お兄さんポジションみたいな感じに桃の事を想っているだけだろうから……恋してることを匂わせてすらいない感じだったし。

 

 断言しよう。桃よ、もし柘榴さんに惚れているとしたら積極的にアプローチをかけろ。そうでないと彼は気づいてくれないぞ、うん。俺は優子の好意に気づいても決断を後回しにしてきたけど(汗)

 

 おっそうだ(唐突)

 

 

「柘榴さん……の方がいいんでしたっけ? 先程までの桃を想う発言からするに、貴方、桃に会いたいんですか?」

 

「……うん。やっと大学卒業できたし、帰って来れたのだから。彼女の元気な姿が見たい」

 

「いつ会いたいんですか?」

 

「……見つけられたらって感じかな。会えたら嬉しいけど」

 

 

 ふむ、すぐに会いたいっていうほどの重症ではないのか(初対面の人を重症扱いするのは失礼だけど)。会いたいけどできれば感覚で会えたらなって感じか。なるほどな……

 

 よし、それならばいけるな。

 

 

「でしたら会ってくれませんか? それもサプライズな感じに」

 

「……えっ?」

 

「白哉君、それは一体どういう意味なんだい……?」

 

 

 言葉の意味を理解できなかったのか、拓海が柘榴さんの代わりもしながら問いかけてきた。ふふふ、お前は突然の桃との繋がりのある人登場に驚きすぎたのか、俺がここに来た目的の事を忘れたのか? なら俺がその事を含めて、柘榴さんに何をしてほしいのかを伝えるからよく聞けよ?

 

 

「実は俺達、日曜日に動物園に行くことになっているんです。そのVIP待遇のチケットが八人分あって、後四人ほど誘えるんですけど、友達は全員予定があって……」

 

「……そうなんだ」

 

「で、今思いついたって感じなんですが、柘榴さんも一緒にどうかなって感じなんです。実はその日、桃も一緒に来るんですよ」

 

「……えっ」

 

 

 おっ? ここで驚いた様子を見せてるな。それがどういった感情なのかは分からないが。

 

 

「……ちなみにVIPは何ができるの?」

 

 

 アレ? なんかデジャヴを感じる……

 

 

「えっと……この時期ならトラの赤ちゃんとふれあえま───」

 

「トラめっちゃ好き。ホントに一緒に来ていいの?」

 

「すんげえ食いついて来た⁉︎ い、いいですけど……」

 

「……よし」

 

 

 ビックリしたぁ……ここまでの中で一番のクソデカい声でトラ好きを主張してきたよこの人。しかも謎の間を空けずに。いやそれとも桃と同じくネコ科好き? だとしたらやっぱりお似合いなんじゃ……

 

 おっといけない、本題の続き続き。

 

 

「ただし、条件を加えさせてください」

 

「……条件?」

 

「貴方が俺達と一緒に行くってこと、桃や彼女と縁のある人には内緒にしておいてください。何人か誘えたってことだけは伝えますけど、当日になって彼女とかなり縁のある貴方が一緒に来るとなったことを知った桃が、どんな反応を見せてくれるのか気になるので」

 

「……つまり、ドッキリを仕掛ける形で会ってほしいってこと?」

 

「そういうことです」

 

 

 それにもし桃が本当に柘榴さんに好意を示しているとしたら、彼の名前を伏せておいた方が、彼女がどんな面白そうな反応を見せてくれるのかの期待もできるしな。

 

 

「……確かに桃が突然僕が来た時にどんな反応をするのか、僕も気になってきた。その提案、乗ったよ」

 

「えっ? いいんですか?」

 

「……うん。サプライズで桃と久しぶりに会うという企画、なんか面白そうだし」

 

 

 あの、すみません…… 一般人でもドッキリ番組の仕掛け人になれる感じなのかって思い込んでます? 自分、カメラを仕込んでいるどころか用意すらしていませんよ? そもそもテレビ会社の都合上ほぼ無理だし。

 

 

「じゃ、じゃあ是非お願いします……。あっ、場所は○○公園で○時集合となっていますけど、念のため俺達は多摩駅でお会いしましょう」

 

「……うん、わかった。良い機会をありがとう。日曜日、楽しみにしてるよ。それじゃ」

 

 

 そう言って柘榴さんは手を振りながら神社を後にしていった。降りている時に吠えているように見えた肩に乗ってる小熊の頭を撫でながら。

 

 

「しかし……本当にいいのかい白哉君?」

 

「何がだ?」

 

「柘榴さんも動物園に誘ったことだよ。いくら優しいとはいえ初対面だし、本当に千代田君の幼馴染なのかどうかも確信してないし……」

 

「さっきの『つぶやいたー』のDM見ただろ。桃はアカウントをそう簡単に他人に教えない主義なんだ。なのに柘榴さんはあいつのアカウントとメッセージを交わし合った。これは紛れもなく桃の幼馴染である証拠だ」

 

「は、はぁ……あっ、そういえば陽夏木さんもシャミ子君がフォローするまでは探してフォローすることもできなかったって言っていたような……それなら分からなくもないか」

 

 

 そうだよ。ミカンも優子がフォローするまで桃のアカウントを見つけることすらできなかったんだよ。そういうわけだから───

 

 いや待て。おま、いつの間にミカンとSNSでのやりとりをしていたんだよ。初耳なんだけど。ミカンもミカンでなんでそのことを今まで教えてくれなかったんだよ。なんか傷つくんですけど。

 

 

 

 

 

 

『なんで彼らが桃殿の知り合いだとわかっていながら、おいどんを喋らせてくれなかったのでごわすか?』

 

「……後でバレるからいいやと思って」

 

『ひどいでごわすよその判断は⁉︎ 普通バレてはいけないことがバレたらよくないでごわすよ⁉︎』

 

 

 

 

 

 

『拓海ともう一人誘えた。もう一人が誰なのかは当日になってからのお楽しみにさせて。「今日は事前バレは気分じゃない」って本人に言われたから』

 

「ってのが三日前に送られてきた」

 

「何よそのメッセージ……」

 

 

 日曜日、動物園の日当日の、ネコにたくさん会えるとある公園。ミカンは桃が自身宛てに送られてきた、白哉からのつぶやいたーのメッセージを見て呆気に取られた様子を見せていた。

 

 白哉が自分達と一緒に動物園に来てくれる人が二人増え、その内の一人が拓海であるということは理解した。しかしミカンが問題としているのは、白哉が誘うことのできた人物が友人なのかすら教えてくれず謎じまいになっていることである。白哉が何故もう一人の名前を伏せたのか、そうする動向は何なのか、ミカンはそれが気になって仕方がない様子だ。

 

 しかし、そのメッセージを送信された本人である桃は動揺すらも見せていない様子だ。メッセージが来てから三日も経っているとはいえ、普通なら名前を伏せられた者が何者なのかが気になって仕方がないはず。なのに何故冷静でいられるのか、ミカンは疑問を抱いた。

 

 

「貴方よく落ち着けるわね。白哉と一緒に来てくれるその人が何者なのか警戒するかと思ったのだけど」

 

「……予感がするんだ」

 

「予感?」

 

「うん。もしかすると私と仲の深い人が来るかもしれない、勘だけどそう感じたんだ」

 

 

 そう呟く桃の表情は、何かに期待しているかのような笑顔だった。それも長年待ちかねていたものが来たことを知った時のように。今まで自分達の目の前でそのような笑顔を見せなかった桃を見て、ミカンは徐に呟いた。

 

 

「……私達とは他の、桃と仲の良い人、ねェ……一体誰なのかしら───あっ」

 

 

 この時、ミカンの脳裏にとある記憶が蘇った。

 

 十年前、徐に桃に問いかけた恋バナの記憶。その頃の桃がしどろもどろになるという、滅多に見られない光景の記憶。そして恥ずかしがりながらも恋している男性の事を語ってきた時の記憶。それらが導き出される可能性とは……

 

 

「………………まさか、ね」

 

「ん? ミカン、何か言った?」

 

「いや、なんでもないわ」

 

 

 笑顔でそっぽを向きながら、徐に呟いていたことを敢えて否定したミカン。予想している桃と仲の良い人が誰なのかを察したことを隠すための反応だろうか。

 

 と、隠し通せるタイミングが良かったのか。

 

 

「桃‼︎ ミカンさん! おはようございます‼︎」

 

「! シャミ子……」

 

 

 シャミ子とリコと白澤の三人が集合場所に来た……

 

 ん? リコと白澤?(ナレーターが頭にクエスチョンマーク浮かべんな)

 

 

「桃はんお疲れさ〜ん」

 

「………………あ、お疲れ様です。……え?」

 

「重いです……」

 

 

 桃、予想外の同行人の登場により豆鉄砲を喰らったかのような曇りのある表情になる。人数的な点と白哉と一緒ではないという点で白哉が誘えたという人物の正体ではないものの、何故あすら組の二人が来たのか……桃は頭の整理と理解に苦しみだした。

 

 余談だが、到着するまで何故かリコはシャミ子におんぶしてもらっていた。何故なのかは不明である。

 

 

「申し訳ない……リコ君を止められず申し訳ない……」

 

「動物園初めて行くわぁ、楽しみやなぁ。今日はよろしゅーな~」

 

 

 リコの制止が叶わなかった事に謝罪する白澤を余所に、当の本人はそんな事お構いなしのマイペース。店の接客で客を怒らせてしまう理由が分かる光景である。

 

 

「あら〜。桃はんエラいかわいらし〜格好してはる! なんで? なんでなん?」

 

「あっはい。でも着替えま───」

 

 

 今の浮かれ気味な自分をリコの目の前で晒すのに抵抗を感じたのか、桃が曇り気味な表情のまま一度この場から離れようとした──刹那。

 

 

「悪い、お待たせ。ちょっと訳あって少し遅くなったわ」

 

「(ウッ、このタイミングで……‼︎)」

 

 

 運が悪かったのか、その場を離れようとしたタイミングで白哉がこの公園に来たことに気づく。しかも白哉の言う通り誘われた拓海ともう一人の人物の姿も。

 

 

「(困った……白哉くんがこのタイミングで来てしまったら、魔法でできるとはいえ着替えようとしたら何故そうするのかと責めてくるかもしれないし、どうしたらいいものか……)」

 

 

 最悪ともなりうる可能性の出たこの状況を、どう打破しようかと葛藤する桃。自身が苦手意識を持っているマイペースなリコと、彼女も来ている事実を知らない白哉(転生者である彼はリコが来た理由を知っているが)。この二人に対してどのような対応をすれば良いのか悩み───

 

 

「………………えっ」

 

 

 その思考を、不用意にも停止させた。何故ならば、白哉と拓海の後ろからついて来た、一人の男性の方に視線がいったからだ。

 

 最初に手を差し伸べられた鮮烈な記憶から、自分を恋の沼に落とした人物。姉・桜と共に自分の塗り潰された景色を彩らせてくれた彼。十年前に海外留学することになっても、メールなどを通じてでも心の支えになろうとしてくれた、五歳年上の男性……

 

 

 

「ざっ………………柘榴……?」

 

 

 

「……久しぶり、桃」

 

 

 千代田桃の幼馴染──礎柘榴が、自身の目の前で再び姿を現したのだ。

 

 彼とは本来、この場でこういった機会での再会どころか、再会することすらないと確信していた──というよりはこの町に戻ってくることすらないだろうと思い込んでいた桃。しかし、その考えはまさかの空振り。みんなと一緒に動物園に行くという時に姿を現したのだ。

 

 それでも桃は、内心柘榴と再会できたことは喜ぶべきであることは頭の中では理解していた。だが突然過ぎるため素直に喜べない。そんな葛藤を表すが如く、柘榴の隣に立っていた白哉を睨みつけた。

 

 

「(ちょっと……どういうことなの白哉くん。彼、私の幼馴染なんだけど。しかも十年前から留学していたはず……どういうことなの)」

 

「(今年でもう卒業して、帰って来てブラブラしてたという状態の彼とタイミング良く出会っちまったんだよ。で、お前の幼馴染だという証拠を出されたから誘ってみたら……って感じだよ)」

 

「(何その少々フワッとしたような説明は……‼︎)」

 

 

 桃へのサプライズという名目でのドッキリとして、今まで柘榴が今日この場に来ることを隠していた白哉。少々適当さのある返答に怒りを覚え睨みつけている桃に対し、彼は日頃の恨みを一つ晴らさせてもらうと言っているのか目を逸らした。それが適切な対応かどうかは不明だが。

 

 

「う、嘘……白哉が呼んだもう一人って、あの柘榴さんの事だったの……?」

 

「ミカンさん? 桃も何やら驚いているみたいですが、知り合いですか?」

 

「「………………?」」

 

 

 ミカンも桃ほどではないものの、柘榴を見かけて驚いた様子を見せていた。一方のシャミ子は柘榴の事を知らないため頭にクエスチョンマークを浮かべており、リコと白澤に至ってはそれに加えてポカンとした様子である。

 

 

「……礎柘榴さん。前に話した桃が今でも恋している人、らしいわよ。しかも今年で海外の大学を卒業したみたい」

 

「えっ⁉︎ こ、この人が、あの時ミカンさんが言おうとしていた、桃を恋する乙女にした人だったのですか⁉︎」

 

「ちょっ、バラさないで……」

 

「……桃」

 

「ユエェッ」

 

 

 シャミ子に初恋の相手を完全にバラしていき始めたように見えたのか、ミカンを制止しようとする桃だったが、柘榴に呼びかけられただけで言葉になっていない声を出してしまい、ついでに顔を真っ赤にしてしまう。恋心を隠しきれなかったようだ。

 

 

「あっ……えっと……ひ、久しぶり……」

 

「……久しぶり。元気にしてた?」

 

「う、うん……シャミ子達と仲良くできたから、おかげさまで」

 

 

 後ろに手を組んだ腕を背中につけ、すりすりと動かして緊張を和らげようとする桃。明らかに惚れてしまった男性の前で耐性を持てないまま会話をする乙女の図に見えなくない。シャミ子達の前では見せなかった光景である。

 

 これでも平然とどうにか装うとしているが、いつもの彼女との違いに気付かなかったのか、柘榴はお構いなしに……

 

 

 

「……その服、似合ってる。清楚さもあって結構可愛いし、いつもと雰囲気が違って見えてすごくいい」

 

 

 

「ん ゙ん ゙ん ゙っ‼︎」

 

 

 今の彼女のファッションを褒め称え、恋する乙女の大袈裟な胸キュン表現を曝け出させてしまう。というか何だこの恋愛クソ弱魔法少女は。

 

 桃はそのまま照れ照れとなってしまい、表情筋を戻すことが出来なくなってしまっている顔を袖で隠す羽目に。

 

 

「う、うん……そ、その……あ、ありがとう……」

 

「……悪い気してないのならよかった」

 

 

 それでも精一杯の感謝の意を示し、柘榴にあらぬ誤解を与えてしまう可能性の阻止に成功する。そして、好きな人に褒められたという事実が頭から離れられなかったのか……

 

 

「………………やっぱり着替えるのやめる」

 

 

 三分前の浮かれ気味モードを解除しようとした自分を、否定してしまった。

 

 

「こ、これが恋する乙女状態の桃……」

 

 

 そしてシャミ子、宿敵の意外な素顔を見て唖然とする。

 

 

「………………やっぱりこういうサプライズは良くなかったんだな……」

 

 

 ついでに白哉、ドッキリ企画を考えたことを少しだけ後悔した。

 

 何これ。

 

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その18

白哉がシャミ子達と一緒に動物園に行くことになった日

メェール【なんで僕らはついて来ちゃダメなんだメェ〜?】
白哉「いや動物園でお前らが登場してみろ? 喋る動物だとか人離れしてる動物だとかで人だかりが来て、園の動物達が見向きもしてくれなくなるぞ?」
「それに園から逃げ込んだ奴だとも勘違いされる可能性だってあるし、その動物達に紛れ込んでしまったら怪しまれるしで、もうめちゃくちゃパニックになるぞ?」
メェール【あっ……】
白哉「一部は見た目や種族的にそうならないかもしれないけど、万が一のこともある。だから悪いけどみんなには留守番だ」
メェール【……それなら仕方ないメェ〜。写真撮りたがってる子達もいるけど、なんとか説得してみせるメェ〜】
白哉「えっ待って? もしかして動物園の動物達を撮る気なのか? お前達の方がよっぽど珍しいのに……」
メェール【思い出はちゃんと記録に残しておきたいんだメェ〜】
白哉「ハ、ハァ……そうなのね……」
メェール【ちなみにマスターとシャミ子ちゃんの夜迦はどれも記録してないメェ〜。コンプライアンスってヤツだメェ〜】
白哉「それは言わなくて結構ですッ‼︎」

END



突然の桃の幼馴染かつ想い人、登場⁉︎ これはまたラブコメ展開始動の予感……‼︎

ちなみにラグーは『調和と公正の天使』を意味するラグエルを参考に名付けました。メタ子もミカンのナビゲーターであるミカエルちゃんも天使の名前が由来だし、光の一族という設定をつけられた柘榴にもナビゲーターは付けたいし、そのナビゲーターの名前も天使を由来しないと無作法というものだから……ね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。